【感想・ネタバレ】グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命のレビュー

あらすじ

「グローバリズムへの懐疑」「テロの恐怖の前に世界は」「Gゼロ時代で不安定化する世界はどうなる」「トランプ旋風にみる反知性主義の潮流にどう抗するか」「日本はどうあるべきか」──当代一の知識人が混迷の世界を読み解く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

グローバル化が進む中BrexitをやTrumpなどのナショナリズムの風潮の強まりに悲しむと同時に学ばなければならないと思い購入。就活がやっと終わったので読破。自分が後で見直せる様にいくつか気になった点をピックアップして書きます。

【中東地域・ISIS】
・現在ISISが台頭している理由
近代化におけるプロセスとして暴力的行為、過激派の台頭は付き物。特に中東地域は個人の自由度が低い事もあり民主化への推移における弊害は大きい。

・近代化の定義
識字率向上(特に女性) → 出生率低下
これによって女性に対しても平等に教育の機会を設けられる事で民主主義の肝となる参政権獲得に繋がる。

・現在先進国と対立している理由
文明的な違いではなく近代化移行前の時間軸のズレ。宗教的な対立に思われがちだが同じ事がアフリカにも起こると著者は予測。

【アメリカ】
・個人主義的思考の欠陥
アングロサクソン的個人主義思考は平等の思考には繋がらない。彼等が平等だと感じていたのは黒人を周縁として追いやり、白人の中での平等を作り出しから。
黒人奴隷解放から始まり2009年には黒人初オバマ大統領が出てきた事から彼等の平等は不安定になった。

・経済破綻とトランプ出現
人種差別について言及するトランプだがそこはネックではない。真のネックは自由貿易、TPPなどによる経済破綻だ。(リーマンショックが原因と勘違いされがちだが)
個人的には人種差別は彼が大統領になる為のマーケティングに過ぎないのかと思った。無駄にそういうセンシティブな話題に言及する事でアメリカ国内に及ぼす影響を考えてほしいものだ、、

・軍事志向的政策
アメリカ経済が弱くなってきた事からアメリカはイラク戦争などから分かる様に軍事力で存在感を出す他なくなった。侵攻国の規模が彼等の国力を図る指標になるという言葉は印象的だった。


【ヨーロッパ】
・ヨーロッパ内での差
同じ言語を話さず、その上で違う文化を持つ為欧州という言葉がイデオロギーとなってしまった。内部では嫌い合うような現状もありEU解体の流れに向かうと予言。
また、ドイツにはヨーロッパを牽引する力や資質はない。

・2005年までにユーロはなくなるという予言
→Brexit, Frexit未遂などから近しい傾向は伺える。

【日本】
・核武装の是非
アメリカと中国が北朝鮮への影響力を持つ中、日本は唯一の被爆国という立ち位置から武力を持っていない。
トッドによると日本も核武装する事で均衡を保つべきとか。

・アメリカとの関係
アメリカとの同盟関係はアジアにも味方がいない日本の視点から見ると一国依存となってしまっている為、"選択肢"としての同盟関係とは言えない。

【国際社会の方向性】
・欧州、米国、極東で経済圏を形成。国家単位でなくこの地域単位で保護主義的政策を取るべき。
→日中韓はその様な経済連携を探る機関を設立すべし。

・民主主義
国を牽引するエリート層が自国の中間層にも目を向け、グローバリゼーションという幻想から一度離れる事で節度ある民主主義が実現可能。これは世界に目を向ける事を止めるのではなく、各国々のエリート層がもっと自国に目を向けるべきなのだとという意味で解釈した。

【各国の文明について】
・"グローバリゼーション"という夢
結論から言うと文明が一つにまとまるということは家族的視点からも経済的視点からも不可能との事。思想としては魅力的と言及するも、極限まで近づいていく事はあるが一つになる事はないと断言。


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本の内容に関係なく個人的な意見を。
やはり政治的な要因や経済的要因も大きいがこの本は人類学者の視点から書かれていることもあり、文化の差等の描写に非常に惹かれた。

個人主義的で自由度が高いアングロサクソン文化。
その中でもイギリス人になる事を周縁部分に位置する移民にも社会的に強いる為テロが多発するイギリス。フランス人として平等に扱う事で政治的革命に対して寛容なフランス。

上下関係を重んじ、集団主義の日本ドイツなど文化によって政治に影響を及ぼすことは間違いないのだなあと改めて実感した。

個人的には身を置くには個人主義的文化の方が好きなので日本との違いを学問的な観点から再確認できて良かったと思う。自分は将来海外移住も考えているので参考にしたいと思った。

彼の著書の一つである経済幻想において各国の自由度について詳しくランキング付けしているとの事なのでそちらにも目を通そうと思う。

また、各国の周縁部分の人々には共通点があるという彼の言葉はかなりしっくりきた。東北を訪れた際に会った夫婦からトッドはフランスの地方の老夫婦を思い出したとか。寧ろ各国の文化を反映しているのはエリート層という言葉も頷ける点はあった。

各国で"成功"を掴むには勿論現地の風習に従う必要があり、それは都市や高等教育以上を経験した層に反映されやすいというのは覚えておこうと思った。


2017/6/19

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2017年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新書では氏の考えが充分に伝わらないと思いました。気になった部分を列記しておきます。「グローバル化が進んだ今の時代に権力を握っているのは、実際のところ政治家たちではなくて、自由貿易という経済思想なのです。」「現在の貿易を概観すると、確かにグローバル化によって世界的に流通するものもあるが、大部分は欧州内、北米内といった地域単位、大陸単位で行われている。これに基づいて、世界を欧州、北米、極東に分けるべきだ。それぞれで内需を拡大し、地域経済を立て直し、各極を基礎に置いたグローバル化を構築すべきだ。」

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2016年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者の主な主張は以下の通り。
・今後30年間の地球を予測する際には、中東などの途上国の問題に集中してはならない。先進国にこそ本物の危機が存在する。
・先進国が直面している危機として共通する要素は、信仰システムの崩壊(集団が共有する展望の欠落、経済は何が良い生き方なのかを定義しないため限界がある)、歴史上存在しなかった高齢化、教育革命(高等教育を受けた人の割合増加、自由競争が生活水準を押し下げ、文化的に不平等な世界に)、女性の地位向上(女性が男性よりも高い教育を受ける社会)であり、途上国で起きていることは(かつての先進国でも経験された)移行期に伴う混乱。発展段階が違う社会が共存している。
・移民問題に代表されるように、(適応限界を超えた)急激なグローバル化に対する揺り戻しが起きているのではないか。自己偏愛的な社会になりつつある。

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2018年07月01日

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