エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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著名な歴史人口学者の思考の仕方を整理した本。
本国では、(本人いわく)敵が多いせいか、日本人向けオリジナルというのがよい。
下記の項目を一つひとつ自分や他者の作品にふれながら語る。
入力
対象
創造
視点
分析
出力
倫理
未来
入力から出力までのところは、大量のデータを仕入れて、創造的知性によってモデルをつくって、検証する、という流れが、自分にはしっくりくる。
以下、重要と思ったところ。
・歴史とデータが重要という見解は共感する
・彼の分析の仕方では、数字の裏に人がいることを読み取る。「統計的想像力」というのは面白い
・著者にとって書くことのイメージが変化してきたこと。肉付けしながら書く。か、頭の中でモデルを構築してディクテーションする。どちらが良いというのではないが、頭の使い方のバリエーションという点では参考になる。自分はそもそも後者の方が馴染むかもしれない。
・倫理を研究者としてつらぬくというのはおかれた大学のようなコミュニテイに環境適応することではない。研究の良否に忠実になること。価値判断は不要
・ポストコロナで思想は変わらない。深刻化するのみ。エイズの時との比較が芸術家になる前に必要
・予測が得意というのはなかなか言いづらいもだが、最後や勇気をもつということだといっている。なお。予測は創造的知性とは異なる -
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文中で色々な学者、政治家に対する批判や、自身に対する批判も出てくる。学者の考え方、学説の違いは、そこに至る基本的な考え方、社会に対するスタンスの差による事が分かる。作者の「思想ではなく事実から始めよ」「思想やイデオロギーが出発点にあると…それに合致した事実ばかりに注目し、前提にそぐわない事実を排除してしまい…結果として自分の考えに合わせて現実を歪めてしまう…まともな研究と言えない」「ひたすらにデータを収集し事実の積み重ねの中からやがてモデルを生み出していく」というスタンスから、ソ連崩壊、リーマンショック、英国EU離脱が予見出来たと。学者はかくあって欲しい。
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Posted by ブクログ
グローバル経済の拡大による一部の富裕層とそれ以外の分断、いきすぎたグローバル経済が国民の分断を加速させる。国という共同体意識、ものづくり経済が奪われていく事への対する警鐘を鳴らし続けてきたトッドの言葉。以下、考えるべきポイントと感想。
・「日本の人口動態は危機的状況にある。人口減少、高齢者層の増加、少子化、日本政府は危機感を抱きながら後手後手に回り続けてきた。」
⇒同感。一番サポートすべき子育て共働き世代=国の生産性を維持して、且つ次世代への投資をしてる人たちをこの国はどう扱っているか?日本人として真剣に向き合うべき問題だ。このままだと老人とともに落日していく国だ。
・「自由貿易とは世界の富裕層が一つになった安い人々から労働力を搾取する事である」⇒同感。上位10%が株式の80%を保有している。日経の株高を享受したのは外国人投資家をはじめとするグローバル資本だ。上がらない給与、上がる株価。この歪な構造への大きな疑問符が投げかけられている。
・「能動的な連帯」⇒日本をどこにもっていきたいか、国民から発せられるムーブメントの欠如。日本はまるで成熟しきった大企業だ。変わらない事が一番気持ちいい、楽だ、ここに安住してしまっている。あとは沈んでいくのみだ。違う、国をどうしたいか、能動的な連帯化をもつべきだ。人口動態にどう手をうつか。地に足着いたものづくり経済をどう維持し成長させていくか、世界と伍して闘う組織に人も国も変わらなくちゃいけない。じゃあ、どうしたらよいのか。それを国民一人一人が考えて行動にうつして大きな渦を巻き起こしていく必要がある。 -
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教育の高度化が進み、高度教育を受ける層が増えなくなってから、教育は同じ層を再生産することになっており、分断を作り出している。そのことにより、エリートと大衆は分断され、民主主義は崩壊している。民主主義といっても、家族制度が違うアングロサクソン、日本とドイツ、ロシアといったところでは違うルートをゆく。格差を生み出すのは行き過ぎたグローバル化であり、保護主義とは自由主義の一種であり、全体主義とは全く違う。
EUはドイツに支配されており、ドイツや中国の推し進めるグローバル化によって世界的な分断を生み出しているのだと思った。分断とは、それぞれがポジショントークに終始し、それぞれの層が固定化することであり、それでは民主主義は機能しないのだと思った。 -
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フランスの知識人による一味違う社会のものの味方を教えてくれる一冊。この本はエッセイ集のような感じなんだけど,主な論考は,表紙にも書かれている教育による格差,そこから引き出されるエリートの問題についての話と,著者の専門の人口についての話がメイン。背景が読みきれないところはちょっと読みにくい部分もある。正しいかどうかはさておきとしても、日本だと安倍か反安倍か,トランプか反トランプかで凝り固まった論調しかないけれど、0か1かの話ではなく,そこから距離を取った論考なので面白い。著者の立ち位置を確認しながら読むとそのユニークさがわかる。まぁ,ドイツへの論考とかは,フランス人ならではの視点のような気がしてならない(著者はフランスの中では少数派のようだけれど)。
そりゃ教育も一様ではないから差があるのは仕方ないと思っていたけれど,日本で格差が広がっている感じが欧米ほどではない理由が,格差に反対している人たちげ毛嫌いしていそうな家父長制に求めたりするのはとっても意外。逆に言うと,フラットな関係が当たり前になればなるほど格差に対して抗議が起こるようになるとも言えるわけで,興味深い。著者は生産よりも出産と著者は言っていたけれど,自由恋愛や婚外子などの積極的な策をとったときにどうなるのか。自由には格差はつきもので,経済以外の部分でも格差が広がるどうなるのか,それを埋める方法があるのかを考えたい。結局は「国家の経済圏で人々が豊かになれ、皆が利益を得られる方法が何かを考えることでしょう」(p164)に尽きるのだろうけれど。「皆」の中に自分が入っているか。そこが大切。エリートの話はとっても面白いし,格差感は無いかもしれないけれど,エリートの問題は残念ながら日本にも当てはまっていると思う。最後に紹介されている「絶対値による会話分析法」は「法」というのが適当なのかは議論がありそうだけど,とっても分かる。小学生高学年とかの会話からでも体感できる。この本が正しいかどうかと言うよりはに,そこから自分でどう考えるのかを知るヒントになる本だと思う。 -
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新自由主義とかいうものが何なのかもよく分かっていない状況で読んだ。
経済に対する規制を外して、より開かれた状態にすること。そしてそれは、グローバリズムによって国外にも扉を開き、世界を組み込んだ市場経済を作り出す。労働力は自由に移動するし、企業はより広くマーケットを拡大できる!
やたら持ち上げられる新自由主義に対する切り込み。めちゃくちゃ要約すると、輸出にばかり目がいって、短期的な利益ばかり出そうとするから、内需を生む賃金の上昇が起きない(コストとしか見なされないから、労働力に投資しない)。大金持ちは簡単に株式で富を増やすが、その会社がどうなろうが責任は持たない。格差は大きくなるし、賃金上がらなくて需要も生まれない。そんな中で過剰な供給は続けられる。キツい。マジ無理。
教育格差の話は面白かった。高等教育を受ける人が増えて、初等教育だけが満遍なく浸透していた時に生まれていた平等的な価値観が崩壊。教育による格差が当たり前のものという認識になり、それが賃金格差に対する不平等に対して「当然だろ」と思う仕組みになった。もはや人々は格差を当然のものとして認識し始めている。
あと、右派が新自由主義に対して肯定的なのが奇妙という話も勉強になった。まさかの昔は、右派(保守)は新自由主義否定。なぜなら共同体や育んできた国内文化・繋がりを尊ぶ保守にとっては、それを破壊するグローバリズムは本来真逆の考えだったから。それが全体主義・共産主義の台頭により近づき始めた。そして何より、エリートの劣化が、責任逃れな新自由主義を肯定したのだ(市場原理が要因だからしらねぇよ!という言い訳をする)。
正直半分も理解できてないと思うが、新自由主義についての知見を少しだけでも得られて良かった
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トッドにはかねてから興味はあったのだが、ぶあつい著作にはなかなか手が出なかった。これはインタビュー・講演や雑誌への寄稿をまとめたお手軽な新書。現時点で最新のようでもあるので気軽に手にとってみた。時事ネタを扱っているのも良いし、なるほどとうならせる箇所も多いのだが、一方で分量ゆえ仕方ないながら、踏み込み不足というか物足りない感じもある。なかなかうまい広告なのかもしれない。
1,2はBrexitに関する論考で、やや内容はかぶる。本書の中では小手調べ的なかんじ
3はトッド自身の仕事や方法論を振り返っており、初読の身には大変おもしろかった
4は人口学による各国近未来予測、これも興味深い
5は中国論、日本への言及も
6,7はお膝元フランスでのテロ(およびその後の国民の反応)を受けて。切実な問題意識を感じる
フランス人らしくなく観念論は嫌いで経験主義的。定量的な歴史人口学が性に合った。ただイギリス留学で、イギリス人のヒエラルキー感覚を目の当たりにし、自分の平等主義的フランス人性に気づいたと。
「自由」をめぐるパラドクス。トッドによる家族構造が政治体制を決めるという発見は決定論的であるが、かならずしも個人の選択を決定するものではない(それでもイギリスのような絶対核家族の文化に生まれると、自由でなくなる自由にとぼしい)。ただ、それが人間の自由を否定する決定論と捉えられ批判もされている。特に自由(リベラル)な国において。自由が強迫観念になってなぜ自分が自由であるかを自覚できない。また、個人主義ほど国家を必要とする。
歴史を動かすのは中産階級。今日の先進国では、高等教育を受けた層が中産階級と言える。
→米大統領選挙のNate Silverによる分析(学歴が投票行動を決めるファクターだった)を思い出した
核家族のほうが共同体家族よりも原始的な家族形態。現代での分布から伝播モデルで推測できる
→日本での方言の分布なんかと同じ話か
普遍性と文化相対主義、多様化と画一化のせめぎあい。トッドは家族構造が似ている文化同士に普遍性を見出す。
場所(テリトリー)のシステム。移民なども行った先の文化に同化することが多い(例:アメリカ)。人間は可塑性を持った存在であり、文化の差はそれほど決定的でない(弱い価値)。ただし場所単位で見ると、永続的な「文化」が立ち現れる。それは家族由来の価値観が「弱い価値」であるからこそ
ネオリベラリズムにより家族の扶助なしに個人で生きるのが難しい状況ができてきている。個人主義的なものと矛盾がある。アメリカにとって国家とは何なのかが大きな課題。国家の再評価が必要。一方、日本では家族の過剰な重視が、少子化による家族の消滅につながっているのでは
ネオリベラリズムの次の潮流だが、世代ごとの断絶があるアングロサクソンからまた次の流れが出てくる可能性は高い。
ロシアの復活。出生率も1.8まで回復し、女性の高等教育進学率もあがって社会が安定化に向かっている。プーチンみたいな強権的なリーダーを好むのは家族構造ゆえ。
→認識が古かった。よいインプット
サウジアラビアは出生率激減、中東の不安定の核。安定化しているのはイラン
中国はいびつな人口構造、過剰投資など不安定。また中国の家族構造は平等主義的で(だから共産主義も根付いた)本来的には格差を許容できない
ドイツにも辛い。低い出生率をむりやり移民で埋めようとしているが、トルコからの移民の社会統合ができていない。シリア人は家族構造的にもっと遠いのでさらにむずかしい
ヒエラルキー的な家族構造を持つ日本では、国際関係もヒエラルキーで考えがちである(アングロサクソンや中露は対等な国際関係が前提としてある)。また、日本の家族構造では長男以外は家族構造の外で一人で生きようとするので、いったん強い国であることをあきらめると孤立主義への誘惑がある。それを乗り越えて米露と連携して中国問題にあたる(方向性は助け舟)べき。
フランスでカトリシズムはすっかり衰退したが、その文化的影響は地域ごとにはっきり残っている。
とにかく日本は少子化対策をがんばれよと