エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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先入観や偏見を避けるために、事実やデータから入ることが大切である。「データを十分に時間をかけて痛めつければ、希望する情報が得られる」と言うけれど、使う人が善良であれば、善良な人には届くと思う。
どれだけデータと情報が正しくても、先入観や偏見の強い人には届かない。そこをどう対処しているのかが気になった。読み取れていないだけかもしれない。
さらに、論理だけでなく熱い心も持っている。それゆえに軋轢を生み、大勢の敵を作ることもあるが、心がしっかりしているので揺るがない。本当に強いなあと思う。挙げられていた著作も読もうと思う。
著者はとにかくよく読む。まずはそこから真似したい。
若い頃はつぶすほどの時間があったが本を読んでいればよかったなあと思う。子供には「本を読め」というのではなく、自然に読みたくなるように働きかけているが、それを続けてかつ改善していきたい。 -
Posted by ブクログ
著名な歴史人口学者の思考の仕方を整理した本。
本国では、(本人いわく)敵が多いせいか、日本人向けオリジナルというのがよい。
下記の項目を一つひとつ自分や他者の作品にふれながら語る。
入力
対象
創造
視点
分析
出力
倫理
未来
入力から出力までのところは、大量のデータを仕入れて、創造的知性によってモデルをつくって、検証する、という流れが、自分にはしっくりくる。
以下、重要と思ったところ。
・歴史とデータが重要という見解は共感する
・彼の分析の仕方では、数字の裏に人がいることを読み取る。「統計的想像力」というのは面白い
・著者にとって書くことのイメージが変化してきたこと。肉付けしながら書く。か、頭の中でモデルを構築してディクテーションする。どちらが良いというのではないが、頭の使い方のバリエーションという点では参考になる。自分はそもそも後者の方が馴染むかもしれない。
・倫理を研究者としてつらぬくというのはおかれた大学のようなコミュニテイに環境適応することではない。研究の良否に忠実になること。価値判断は不要
・ポストコロナで思想は変わらない。深刻化するのみ。エイズの時との比較が芸術家になる前に必要
・予測が得意というのはなかなか言いづらいもだが、最後や勇気をもつということだといっている。なお。予測は創造的知性とは異なる -
Posted by ブクログ
文中で色々な学者、政治家に対する批判や、自身に対する批判も出てくる。学者の考え方、学説の違いは、そこに至る基本的な考え方、社会に対するスタンスの差による事が分かる。作者の「思想ではなく事実から始めよ」「思想やイデオロギーが出発点にあると…それに合致した事実ばかりに注目し、前提にそぐわない事実を排除してしまい…結果として自分の考えに合わせて現実を歪めてしまう…まともな研究と言えない」「ひたすらにデータを収集し事実の積み重ねの中からやがてモデルを生み出していく」というスタンスから、ソ連崩壊、リーマンショック、英国EU離脱が予見出来たと。学者はかくあって欲しい。
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グローバル経済の拡大による一部の富裕層とそれ以外の分断、いきすぎたグローバル経済が国民の分断を加速させる。国という共同体意識、ものづくり経済が奪われていく事への対する警鐘を鳴らし続けてきたトッドの言葉。以下、考えるべきポイントと感想。
・「日本の人口動態は危機的状況にある。人口減少、高齢者層の増加、少子化、日本政府は危機感を抱きながら後手後手に回り続けてきた。」
⇒同感。一番サポートすべき子育て共働き世代=国の生産性を維持して、且つ次世代への投資をしてる人たちをこの国はどう扱っているか?日本人として真剣に向き合うべき問題だ。このままだと老人とともに落日していく国だ。
・「自由貿易とは世界の富裕層が一つになった安い人々から労働力を搾取する事である」⇒同感。上位10%が株式の80%を保有している。日経の株高を享受したのは外国人投資家をはじめとするグローバル資本だ。上がらない給与、上がる株価。この歪な構造への大きな疑問符が投げかけられている。
・「能動的な連帯」⇒日本をどこにもっていきたいか、国民から発せられるムーブメントの欠如。日本はまるで成熟しきった大企業だ。変わらない事が一番気持ちいい、楽だ、ここに安住してしまっている。あとは沈んでいくのみだ。違う、国をどうしたいか、能動的な連帯化をもつべきだ。人口動態にどう手をうつか。地に足着いたものづくり経済をどう維持し成長させていくか、世界と伍して闘う組織に人も国も変わらなくちゃいけない。じゃあ、どうしたらよいのか。それを国民一人一人が考えて行動にうつして大きな渦を巻き起こしていく必要がある。 -
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教育の高度化が進み、高度教育を受ける層が増えなくなってから、教育は同じ層を再生産することになっており、分断を作り出している。そのことにより、エリートと大衆は分断され、民主主義は崩壊している。民主主義といっても、家族制度が違うアングロサクソン、日本とドイツ、ロシアといったところでは違うルートをゆく。格差を生み出すのは行き過ぎたグローバル化であり、保護主義とは自由主義の一種であり、全体主義とは全く違う。
EUはドイツに支配されており、ドイツや中国の推し進めるグローバル化によって世界的な分断を生み出しているのだと思った。分断とは、それぞれがポジショントークに終始し、それぞれの層が固定化することであり、それでは民主主義は機能しないのだと思った。 -
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フランスの知識人による一味違う社会のものの味方を教えてくれる一冊。この本はエッセイ集のような感じなんだけど,主な論考は,表紙にも書かれている教育による格差,そこから引き出されるエリートの問題についての話と,著者の専門の人口についての話がメイン。背景が読みきれないところはちょっと読みにくい部分もある。正しいかどうかはさておきとしても、日本だと安倍か反安倍か,トランプか反トランプかで凝り固まった論調しかないけれど、0か1かの話ではなく,そこから距離を取った論考なので面白い。著者の立ち位置を確認しながら読むとそのユニークさがわかる。まぁ,ドイツへの論考とかは,フランス人ならではの視点のような気がしてならない(著者はフランスの中では少数派のようだけれど)。
そりゃ教育も一様ではないから差があるのは仕方ないと思っていたけれど,日本で格差が広がっている感じが欧米ほどではない理由が,格差に反対している人たちげ毛嫌いしていそうな家父長制に求めたりするのはとっても意外。逆に言うと,フラットな関係が当たり前になればなるほど格差に対して抗議が起こるようになるとも言えるわけで,興味深い。著者は生産よりも出産と著者は言っていたけれど,自由恋愛や婚外子などの積極的な策をとったときにどうなるのか。自由には格差はつきもので,経済以外の部分でも格差が広がるどうなるのか,それを埋める方法があるのかを考えたい。結局は「国家の経済圏で人々が豊かになれ、皆が利益を得られる方法が何かを考えることでしょう」(p164)に尽きるのだろうけれど。「皆」の中に自分が入っているか。そこが大切。エリートの話はとっても面白いし,格差感は無いかもしれないけれど,エリートの問題は残念ながら日本にも当てはまっていると思う。最後に紹介されている「絶対値による会話分析法」は「法」というのが適当なのかは議論がありそうだけど,とっても分かる。小学生高学年とかの会話からでも体感できる。この本が正しいかどうかと言うよりはに,そこから自分でどう考えるのかを知るヒントになる本だと思う。 -
Posted by ブクログ
新自由主義とかいうものが何なのかもよく分かっていない状況で読んだ。
経済に対する規制を外して、より開かれた状態にすること。そしてそれは、グローバリズムによって国外にも扉を開き、世界を組み込んだ市場経済を作り出す。労働力は自由に移動するし、企業はより広くマーケットを拡大できる!
やたら持ち上げられる新自由主義に対する切り込み。めちゃくちゃ要約すると、輸出にばかり目がいって、短期的な利益ばかり出そうとするから、内需を生む賃金の上昇が起きない(コストとしか見なされないから、労働力に投資しない)。大金持ちは簡単に株式で富を増やすが、その会社がどうなろうが責任は持たない。格差は大きくなるし、賃金上がらなくて需要も生まれない。そんな中で過剰な供給は続けられる。キツい。マジ無理。
教育格差の話は面白かった。高等教育を受ける人が増えて、初等教育だけが満遍なく浸透していた時に生まれていた平等的な価値観が崩壊。教育による格差が当たり前のものという認識になり、それが賃金格差に対する不平等に対して「当然だろ」と思う仕組みになった。もはや人々は格差を当然のものとして認識し始めている。
あと、右派が新自由主義に対して肯定的なのが奇妙という話も勉強になった。まさかの昔は、右派(保守)は新自由主義否定。なぜなら共同体や育んできた国内文化・繋がりを尊ぶ保守にとっては、それを破壊するグローバリズムは本来真逆の考えだったから。それが全体主義・共産主義の台頭により近づき始めた。そして何より、エリートの劣化が、責任逃れな新自由主義を肯定したのだ(市場原理が要因だからしらねぇよ!という言い訳をする)。
正直半分も理解できてないと思うが、新自由主義についての知見を少しだけでも得られて良かった