エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの本は、自分がこれまで持っていた価値観をかなり大きくゆさぶってくれる本でした。自分は、この本を読むような人の多くとおそらく共通して、日本でエリート層に属しているとおそらく言えることと思います。一方で世界情勢についてはこのような本を読んだことはなく、新聞に書いてある物の見方を受け入れてきました。すなわち、次のような考え方です。ウクライナはその全土に対して権利があり、その全土をロシアに対して守り切るのが望ましい決着である。米国を中心とした「グローバル化」の進行は受け入れるべき望ましいことであり、また必然として世界を覆っていくだろう。彼らの文化の一つである同性愛やトランスジェンダーの容認についても遅かれ早かれ世界に広まる必然である。その一方で、トランプ政権の行動や世界で起きているポピュリズムの流れには困惑し、なぜそのようなことが起きているのか、彼らが選挙で勝つのか不思議に思っていました。そのような考え方が、非常に偏った(アメリカのエリートを中心とした)ものの見方である、というのが、本書の主張を信じるならば、明らかになりました。著者の考え方もおそらく偏っていることとは思われますので、そのまま全てを信じるのがよいこととも限らないでしょうが、そういったものの見方もあるという目を開いてくれたので、これからは相対化して考えていきたいと思います。
ところで本書は私にはだいぶ読みにくいものでした。まずレトリックが効きすぎていて、言い方がまわりくどいです。また、歴史的な事件や投票結果・アンケート結果などの根拠は示しているとはいえ、国民感情を、一人の人間の感情のように語って世界情勢を説明するというアプローチはどのくらい妥当なのかよくわかりませんでした。ニヒリズムという本書のひとつの鍵になる概念は「世界の現実を否定し、戦争へと向かうような精神状態」と定義されていますが、現実を否定しているか・戦争へと向かっているかどうかは観測者の主観であるので、西洋のエリートがニヒリズムを持っている、という言説は著者の決めつけにすぎないように感じました。もうちょっと丁寧に説明してくれたらいいのにな、というのが正直なところです。
次のようなポイントは非常によく理解できました。米国は、エリート層が金を稼ぎ続けることができる金融の仕組みを作ってしまったために、他国の労働力を使えばよくて、エンジニアリングや製品の生産を自国でする必要がなくなって、国が空洞化している。それでエリート層は大衆と乖離し、大衆を代表することを拒んですらいる。その結果なのか、世界認識が大きくずれていて、西欧が世界の中心であり、多くの国が彼らを中心としてついてくるものと誤解している(彼らを中心とした「グローバル化」のビジョン)。それに対して、不利益を被っている西欧の大衆がついてこなくなっているのが今のポピュリズムの台頭である。西欧の民主主義で政治家は選挙に勝たなければならないので、そういったポピュリズムに迎合する必要があり、そこに労力を割かれる。そのため中露に比べて政治家の外交的な能力が劣ることになる。西欧はもはや、彼らを結びつける中心的な価値観が失われている。アトム化した個人の寄せ集めにすぎない。政治家も一貫した行動をとることができず外交政策も支離滅裂になっている。先のような西欧のグローバル化のビジョンに対して、実際にはその陣営に与する国は少ないということが、このウクライナ戦争とその経済制裁で明らかになった。今や米国はごく親しい日韓のような同盟国への依存性を高めていて、そのグループは世界で見れば小さい。今後、ウクライナ戦争はロシアが勝つことになると本書は予想するが、そうしてもロシアにはそれ以上の侵略を進める意図も余裕もない。そうした場合、NATOが無意味であるということが露呈し、結果として解体され、ドイツとロシアが接近するというのが本書の予言である。その時には西欧を中心とするのではなくて、本当に多様な国がそれぞれの文化をそのままに持ちながら、力を伸ばすという、別の形でのグローバル化が実現するのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
西洋の敗北とあわせてエマニュエル・トッド。日本では西側フィルターの情報が多い中で、アンチ西側、フィルターをできるだけ外して世界を見た時、ウクライナ問題とは何かをズバリと。
良い本。
ロシアウクライナ問題。西側諸国に都合のいい目線ではない切り口。そう、つまるところ、西側諸国の資本主義は寿命を迎えつつあって、NATOは自分たちの食い扶持のために侵略していっているのだ。ロシアがウクライナに戦争をしかけたのは、ウクライナという小国を侵略したいのではなく、西側諸国、アメリカにもう勘弁してくれと手を上げたわけだ。
第三次世界対戦となるかは分からないけれど、中国が台湾をどうにかするのは時間の問題だろうし、資本主義に代わる世界を救う仕組みも現れそうもない。
たしかに第三次世界対戦はすでに始まってしまっているのかもしれない。日本も核を保有しないといけなくなるのか。とはいえ、戦争をしたところで、資本主義の次の仕組みは見えないし、世界はどん詰まりに向かいつつあるのかもしれない。
ウクライナ問題を通して我々は世界がどうあって欲しいと考えたら良いのだろうか。
エマニュエル・トッドについては、もう何冊か読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
いち大衆の立場からすると、正直ジレンマ。ウクライナ戦争に至った諸悪の根源が欧米にあるというのは確かにそのとおりかもしれない。ロシアが生存権をかけて戦っているのも事実であろう(それはイスラエルも同じこと)。じゃあ、本来あるべきはロシアに対する同情論か、というとそれも違うと思う。綺麗事に聞こえるかもしれないが、とにかく早く戦争をやめさせるのが先決。でないとベトナムの二の舞になる。気持ち悪いのは、ベトナム戦争のときは米国内で反戦デモが活発だったのに、今回はそういう動きが聞こえない。直接兵士を送ってないから?それともまだまだ世界は事実を知らないから?
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Posted by ブクログ
家族構造や宗教そして教育という、我々の心理を深い次元で司る要素の分析を通して、それぞれの国の政治や経済がなぜ現在のようになっているのかを読み解く書である。無意識・下意識の階層にある何かが、目に見えるものを支配しているという考えには、大いに納得できるものがあった。
核家族か共同体家族かあるいは直系家族か、という言い回しが数多く登場する。核家族はホモ・サピエンスの原初的家族形態であり、むしろ直系家族のほうが最新なのである。ただ、絶対的な核家族は、創造的破壊が非常に得意である一方、技術や知識の継承という観点で直系家族に劣る側面がある。産業面で成功している中国・インド・日本・ドイツを観れば頷ける主張である。
ここに兄弟間の平等性・女性のステータス・父方居住かというファクターで細分化したのち、出生率・識字化のタイミングなどで国力の推移を分析することで各国の政治・経済のダイナミズムを考えていく。アメリカの創造性と野蛮性の混在の正体を暴いた10章は特に面白かった。
正直、内容理解は20パーセントほどしか進まなかった。文章自体は難解ではないが、主張を理解するのに時間がかかりそうだったため、飛ばして読まざるを得なかった。下巻は日本やドイツに触れるため、まずはここまで読み切ってしまいたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレはじめに
1戦争、ニヒリズム、耐え難い不平等を超えて
エマニュエル・トッド
現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
・私たちの生活を変えるでしょう。存在しなかったら、私たちはより悪い状況におちいっていたでしょう。
・人類には「歴史」の感覚が必要。
・私たちは謙虚でなければいけません。
・長期的な視点で物事を考えなくなりました。「自分たちがどこから来たのか:「何を生き延びてきたのか」「何を成し遂げてきたのか」といったことを考えるのをやめてしまいました。
・ある種の健忘症のようなもので…ショックが容赦ないほど大きすぎたのでしょう。…ショックが大きすぎました。そのため、私たちはかっての自分との接点を失ってしまったのです。・先進国の出生率の低さは本当に恐ろしく、…気候変動よりも恐ろしく感じています。・・・人間の知性の低下にもつながるからです。
・人は知性の担い手です。
・歴史は続いていくからです。人間の歴史はすべて、崩壊と生き残りの連続です。
・「民主主義は存続するのか」という問いに集約するのは、私には一種のジョークに聞こえます。
・・・死亡率の上昇は本当に恐ろしいことですし、西ヨーロッパでは、生活水準が下がり始めています。たくさんのネガティブなことは指摘できます。知性の低下も問題です。
・人間は人間で、火の発明、農業、街の発明などの偉大なことを、成し遂げてきました。
フランシス・フクヤマ氏
「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地
・リベラリズムは国によって捉え方が違います。
■全地球規模で起こり始めている「分断」
・今の世界には、新たな分断があります。
・われわれが目にするのは、多極的な世界です。
・米国の覇権国家としての役割が戻ることは決してありません
・力は分散されるでしょう。今後直面する課題ごとに、異なる同盟関係が形成されて行くことでしょう。
・歴史は単に繰り返したりはしません。
・生成AIの技術は、平等を促進するかもしれません。スキルや教育水準が低い人にとっては大きな力になるかもしれません。生成AIがどのようなインパクトをもたらすかについては、まだわからないことの方が多いのです。
・とても重要な人間の欲望とは「自己決定の欲望」です。
つまり、自分の意志で選択できる状態のことです。その意味では、創造性とか表現とも言えるでしょう。
2「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?
スティーブ・ロー
技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?
Q.(聞き手:五十嵐大介)一般の人たちが普通に利用することについて、人々の生活や教育、仕事の向上に役立つのでしょうか?
・二つの立場があります。
一つは、「AIはインテリジェント・アシスタントとして役に立つ」という肯定的な立場。もう一つは、「自動化された技術は、人の仕事を奪ってしまう」という否定的な立場。
・人間の業務とは、技能の束なのです。
・人と接するような立場では、いろいろな技能を組み合わせることも求められます。
・長い年月をかけて行われてきた仕事が自動化されていくのは、今後さらに進んでいくでしょう。
・農業を例に挙げれば、世界中で―とりわけ先進国ではー20世紀初頭の農業従事者数のわずか数%の人たちによって、当時よりもより多くの農産物を生産しています。製造業でも同様です。
・雇用数は減っていますが、生産量は増えています。
・AIツールを使ううえで、注意すべきことは、「信用しすぎるな」「みちびかれても、支配されるな」と言うことです。
・生産性を高め、自動化をさらにすすめる必要がある、労働力不足は世界共通の深刻な問題です。
・「孤独の問題」「高齢者の孤立」の問題全てがすべて片付くわけではありません。しかし、サービスにより少なくとも一つは解決するでしょう。
この分野には大きな可能性があり、様々な取り組みがなされています。
■AIが影響を与えるのは「カスタマーサービス(コールセンター)」「マーケティングと営業」「ソフトウェア・エンジニアリング」「研究開発」の四つの分野の雇用の影響の範囲。
・コールセンターの仕事はきつくて離職率が高い。自動化が進むのは必ずしも悪いことではない。有効な手段と言えるでしょう。
・ソフトウェア・エンジニアリングの分野では、自明の理ですが、テクノロジー労働者はハイテク業界に集中しているわけではなく、あらゆる業界に広がっているからです。
AIが研究者に取って代わることはできなくても、生産性や革新性の向上に寄与することはできます。
・マーケティングや営業部門でも同様です。
AIの利用は、ターゲット広告やおすすめ商品など、売り込みが成功する確率を上げることに焦点が置かれてきました。
なので、生成AIがマーケティング分野でより大きな成果をあげているのは、当然のことです。その分野の効率化は収益に直結します。
このように見ていけば、AIは有能なアシスタントにはなっても、仕事自体を奪われることはないでしょう。
・研究開発の分野では、弁護士と同じで、膨大な法律文献や科学文献を読み込んで検索することも自動化できます。また見落としも防げます。いわば顕微鏡のようなものです。これまで見えなかったものが突如はっきり見えるようになり、生物の仕組みの解明の手掛かりが与えられた。
ディープラーニング(深層学習)の、画像認識や単語認識、パターン識別によって、どこを見ればいいのかというところまで予測できるようになりました。
生成AIの、分子設計や製薬において、試験管やペトリ皿で行われていた実験がコンピュータ・シュミレーションとしてできるようになりました。
これにより、数千のリストから数個の標的薬物を絞り込み、本当に良いものを作れるようになります。そして、開発にかかる時間も大幅に短縮されました。こういったワクワクすることがもたらされたのも、生成AIのおかげでした。
・「AIが未熟練労働者の技術レベルを上げる」というのは、テクノロジーの最近の歴史をみると、労働者によってそれほど勇気づけられる状況ではありません。
・私が危惧しているのは、技術レベルの高い人と低い人の二極化が進み、中間層が空洞化する可能性です。
・中間賃金の仕事を行って生活を営む中間層の人々に適した仕事をどのように創造するかは、かっては、製造業が中間層の受け皿になっていました。しかし、今はそうではない。
・「新しいテクノロジーが是正の手段になり得る」というのは、歴史の教訓から言うと、私は少し懐疑的に思っています。
■AI時代に必要になってくる教育
・仕事で役立つ、目に見える技術的スキルとコミュニケーション能力
・対人関係を円滑に進められる幅広い能力は、社会にとって不可欠なものです。画面越しであっても、言葉によって意志を伝えあうことの大切さ
・人々の政府に対する関心を高めた
・この先どうなってゆくのか、インターネットを見れば、すこし想像がつきます。良いことも、革新的なことも、一方で、悪いこともたくさんありました。
・つまり、良いことも悪いこともたくさんあります。
・AIには、データの収集と蓄積が必要不可欠であり、膨大な計算能力が求められる
・鉄道時代と似ています。大手IT企業数社による、独占というより、「寡占」なのです。
・頑なに知ろうとしないのは、良い選択とは言えないでしょう。
・無暗に怖がるのではなく、慎重であること。大切なのはこれです。
メレディス・ウィテカー✖安宅和人✖手塚眞 鼎談
進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か
・AIという技術そのものが悪いわけではない。
■AIの進歩の裏にある「権力集中」という問題
・この業界における資本力や技術力などの、あらゆる集中を理解しなければなりません
■たった数年間で、AIはこれほどまでに改良された
■人間の肉体的な労働が、人工的な知能を支えている
・実際にかなりの人間の労働力を必要としている
・何千人、何万人、何百万人もの人々の労働とデータなしに勝手に出来上がるシステムなど何一つないのです
・学習の仕方や時間は、人間にとってかなり大切なものになってきます。
・「創造性」、人間の創造とは「0から1」を生みだすことではありません。
・過去から存在している作品から学習していますよね。
・自分自身の体験から得た知識や情報、これを自分の中で編集しています。
・創造の、「編集する技術」、「組み合わせの技術」「情報を学習し、組み合わせることで創造している」、これはAIができることです。
■人類は「AI」とともに生きていくしかない
「もうわれわれはこの技術と一緒に生きているんだ」と考えるしかない
・一般の人は、とりあえず使い倒すことから始めたほうがよいでしょう。従来型のデータサイエンスは、訓練なしには使用することができませんでした。しかし、生成AIなら使うことができます。
・AIと人間は「パートナー」のような関係
・未来はどこにも書かれていないので、私たち自身が未来を有益な形にする責任がある。
そのためには、現在地を明確に示す地図が必要。現在地を正しく示した公平なデータがなければ、適切な意思決定ができないからです。
・20世紀に自動化技術と工業技術の分野でリードしてきた日本
・アメリカと中国に挟まれた日本。地政学的な意味合い。
・「人間の尊厳」とは何かについて、われわれは深く考える必要に迫られるでしょう。そうした時代をわれわれは生きています。
・「免疫力」が、社会全体、全世界的に必要になるでしょう。
・日本のみなさん、現実から目を背けないでください。実際に起きていることからあなたの目をそらし、惑わせようとする言説に注意してください。
3支配者はだれか?私たちはどう生きるか?
マルクス・ガブリエル
戦争とテクノロジーの彼岸「人間性」の哲学
■「人間である」という共通点から始まる道徳
・哲学者スキャンロンの言葉、「私たちは人間性を共有しているという事実から、お互いに何かを負っている」。カント、「わたし達はお互いに何かを負っていて、それは相手の人間性への敬意なのだ」
岩間陽子×中島隆博 対談
・今から日本が核兵器を保有するということは、アメリカのシステムに正面から盾突くことになるわけです。そのコストが相当なものになることはわかりますよね。
・日本には二つの側面が重要になってくると思います。「自分で力をつける」という面と、「チャンスを見つけて対話の場を作っていく」という面。
・日本はもはや大国ではないが、相対的にはまだまだアジアのリーダー格の国であると同時に、多くの中小国とも友好的な関係を維持しています。その多義的な立ち位置を、外交上十分に活かしていくことが必要です。
・二つの側面の両方をやりながらチャンスをうかがっていくべき。戦争を望んでいるわけではないでしょう。
・ポイントは見失わずに、安定的な国際的コミュニティをどこに見出すか。そのチャンスを必死で探していく時代が、これからも続いていくのだろうと考えています。
おわりに -
Posted by ブクログ
何時の時代にも「考えてみるべきであろう」というテーマは在る。そんなことに関する話題を提供してくれるのが本書である。豊富な話題を提供してくれる一冊であると思う。
本書は識者達へのインタビューや鼎談、対談を色々と集めて纏めたモノである。幾つもの読み応え在る内容を纏めている。新聞の特集、その下敷きになるフォーラムというのが下敷きになっているようである。
幅広い話題が取上げられているが、敢えて一口で纏めるのであれば「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」というようなことになるのだと思った。
ロシア・ウクライナ戦争のような大規模な軍事衝突が展開している他方、各国で民主主義体制が揺らいでいるかもしれないような様子も見受けられ、更に著しい人口減少という社会の行方がよく判らなくなるような傾向も強まり続けている。歴史が転換している真っ只中なのかもしれない。そんな中に、急速に進歩を遂げる「生成AI」なるモノのような新技術が台頭している。
本書では、「歴史の転換点」ということで、戦争や民主主義というようなことを論じる要素と、「AI」のような技術が辿った経過、現況、可能性、未来予想というような要素とが併存していると思う。結局「揺らぐ世界の中で進む技術革新という様相が導く先は?」ということだ。
正直、個人的には「生成AI」なるモノはよく判らない。
想い起してみると、自身が生きて来た年月の中、インターネットの登場と普及、携帯電話の登場と普及というような「そこまでの時代には考え悪かったような新技術と、それがもたらした社会の様相の変化」ということが起って来た。何れに関しても、自身が長じて、青年、壮年というような年代以降の出来事で、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」でそうしたモノに接してきて、現在時点でもそうしていると思う。
「生成AI」なるモノに関しても、壮年というような年代以降に登場して普及しようとしているので、何となく「自身で勝手に適度なと想える距離感」で接したいと個人的には思っている。が、巷では何やら「利用を当然視」というように動こうとしているようにも感じる。例えば「生成AI」なるモノで文案のようなモノを作成出来るとされているが、そういう程度のことなら、自身で勝手に考えて綴る方が気に入るモノが簡単に速く出来ると思うことが在る。そういう感覚だが、そのうちに「少数意見」であることすら認められないような感じになるのかもしれない。新しいモノは、古いモノを塗潰してしまうような一面も在るように思う。
こうした感覚も持ちながら、本書のAI関連の色々な論に触れた。過大に信頼も出来ず、過大に無視も出来ないという、よく在る新技術の一つであるAIだが、最初期に登場した頃の経過を見て考えると、色々と恣意的な要素や偶然が入り込んでいるようでもある。
AI関連で、本書では「既に他界して久しい有名漫画家の、御本人が描く新作を想わせるようなモノを、AIで創ることを試みる」ということに取組んでいる方の話しが収録されていた。それを興味深く拝読した。「漫画作品を創る」という例を通じて、AIの可能性と限界というようなことを考え易い話しだったと思う。
AIを利用して「漫画作品を創る」となれば、人気作品の主要人物を有名漫画家御本人が新たに描いたかのように再現する、または新しい作中人物を御本人が描いたかのように創るようなことは出来るようになるらしい。そしてそれらしくストーリーも組み立てられそうだが、かなり困難なことがあるという。有名漫画家が人生経験を通して有している思想性、想いが作品には少なからず跳ね返っているが、そういうモノは再現する術が無いのだという。
こういうようなことは記憶に留めておかなければならないと個人的には強く思った。「人生経験を通して有している思想性、想いのようなモノはAIで如何こう出来る筈も無く、そういうようなことこそ大切にせねばならず、そう出来るのが人間である」とでも言い続けたいような気もする。
技術革新が目覚ましい中ではあるが、「冷戦の終結で段落したかのようだった歴史」がまた揺らいでいる中、「人が人らしく?」というような、遥かな昔からの哲学のような思索が益々求められているのかもしれないというような気もする。
本書は、広く色々な話題を巡る識者達の論を集めたというような感なのだが、「モノを考える材料」として貴重であると思った。 -
Posted by ブクログ
「人類の終着点」とはエグいタイトル。終着点と言いつつ、副題で「戦争、AI、ヒューマニティの未来」と。未来、それが明るいのか暗いのかはわからないけど、歴史が続くのであれば、決して終着ではない。一方、今の不透明・混乱な時代に生きる我々からすると、今後どうなるのか=終着ということだろう。
民主主義の問題、資本主義の問題、リベラルの問題、、、、今の世界を覆う問題を解説するものは多い。しかし論点が複雑で、自分の理解が大雑把でも正しいのかどうか自信がなかった。この本は、インタビュー・対談方式の構成で、体系立ってはいないけれど、わかりやすく解説されている。
グローバリゼーションとテクノロジーが、急速に世界を変えている。マルクス・ガブリエルはTwitterやフェイスブックを禁止にすべきだと述べているが、これらがなかった時代が不便で困っていたかと思うとそうではない。むしろ今の社会の混乱や分断の原因がこれらにあるのであれば、規制するというのは自然な発想で、決して極論ではない。
今の世界を代表する知が、大いに語っていて、今の世界の状況を冷静に知ることができる良書。 -
Posted by ブクログ
ベース情報が既に1年前ではあるが、書かれている内容は古くなっておらず、新鮮な状態で拝読(つまりウクライナ戦争が膠着状態であるということだが)。タイトルの通り、ウクライナ戦争に至る過程は、まさにアメリカ中心世界の終わりの始まりで、アメリカの生産力低下・エリート層の劣化・民度の劣化等、総合的劣化が根本にある。分断が進む世界=不安定化ではない、という言説を信じたくはなるが、これは誰にもわからない。プーチン独裁のロシアが世界の覇権を握る未来像は想像もしたくないが、世界が行き過ぎたグローバリズムから緩やかな分断に移行していくことは間違いないように感じる。本書は池上氏の質問にエマニュエル・トッド氏が回答する形式での対談本になっているが、池上氏の質問力の高さにも目を見張るものがあり、奥深さを改めて感じた。
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Posted by ブクログ
ロシアと西側の代理戦争としてのウクライナ戦争に関する報道は、その量と内容についてジャーナリストが持つ信仰のようなものが影響しているという指摘は報道内容に対して自分の軸をちゃんと持たなければいけない、という気持ちを強くさせる。単なる戦争、軍事的な分析だけでこの争いを語るのではなく、多面的側面から読み解くからこそエマニュエル・トッドは先を見通すことができるのだろう。ジャーナリストとして中立的立場である池上彰も自身の軸を持って語っているので大変参考になる。
いずれにしても問題だらけだな、世界は。その問題を上手く利用してやろう、という国々の利己的な思惑は恐らくなくならないけど、勝ち負けだけじゃなく、もう少し穏やかになって欲しいと思う。 -
Posted by ブクログ
警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する
グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。
EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。
圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし、その結果なにが起きたか。各国は通貨の切り下げなど金融緩和や財政出動もできず、独自の産業政策も不可能になりました。
EUでの勝者は、ドイツだ。ユーロ安でドイツの輸出産業は大いに潤った。経済危機に瀕した国々を低賃金で下請けのように使いユーロ圏がドイツにとって開かれた市場であることをフル活用している。
IMFによって改革された国、韓国も、グローバル化で破壊された国である。
雇用の不安定化がもたれされた。雇用も自由化されて、労働市場の柔軟性を高めたことが、正規職から非正規職への置き換えが進んでいった。失業率は7.5%、就職準備をしている人をふくめると若年層の失業率は、20%である。
つまり、IMF以降は、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなってしまったのです。
グローバリズムは、短期的な数字を追う。そのために、設備投資、研修、リサーチといったことがおろそかになる。長期的に成長が必要なはずの生産性の向上や、所得向上のためのコミットメントも生まれない。
その結果、技術開発は進まず、所得も増えず、成長が鈍化していく。目先のパイの奪い合いが行われるだけで、パイそのものを大きくするためのインセンティブはうまれない
信号や、車線がない道はめちゃくちゃになって道路の効率性は著しく落ちる。同様に、単なるグローバズムが困難しかもたらさない。ある程度の規制がどうしても必要なのである
人間の欲望を放置するのが、グローバル資本主義、欲望そのものを基準にしようとする、無法地帯になるのも当たり前なのです
日本には日本的なものが残る。でもグローバル資本主義は、それが残らなくなるまでにグローバルしていく
世界には、2つの未知の巨大リスクを抱える地域がある。それは、中国と、ドイツだ。
日本は、人類学上の理由から、アングロサクソン・モデルとはきわめて異なった資本主義の調整されたモデルを示している。
グローバリズムは、国境を前提としないもの、一方で、インターナショナリズムは、真逆の概念です。
デフレをまねく、グローバル資本主義
①経済の不安定化
②実体経済への大きな影響―グローバル企業の巨大化
③格差の固定化
④危機そのものがグローバル化 ―リーマンショック
⑤お金第一主義、お金で換算できないものは見捨てられていく
ネオリベラリズムは成長すらもたらさない
失業の増大、格差の拡大、富が拡大するからがまんせよ ⇒ でも、実体は、そうなっていない
二国間、多国間の自由貿易協定は、規制緩和をより強く要求内容になっている ⇒ これまで以上にスピードを増して、自国の産業育成が途上国にとってますます困難になっている
第1次グローバル化 1870年代 ⇒ 大恐慌 ⇒ 第1次世界大戦で終了
第2次グローバル化 現代 ⇒ 歴史に学べ
共通事項
①多国籍企業の存在
②経済的な相互依存が平和を導くという学説の存在
③自由主義経済学が大いなる影響力をもった
④先進国と途上国との対立の先鋭化
⑤周期的な金融危機
⑥帝国主義
相違事項
①国際通貨制度
②福祉制度の違い
③国際機関の存在
ヨーロッパに期待する最善の策とは、ユーロの崩壊。アメリカの不確実性、そして、ヨーロッパの死。
世界は大劣化している
⇒新自由主義にそまりきった、現代のエリートは国民の苦しみには無関心になっている
⇒ノブレス・オブリージュの放棄、それはグローバルなレベルで統治能力の危機が起きている
グローバリゼーションの危機は民主主義の危機である
経済の危機のみならず、民主主義の危機をも引き起こしている
格差が広がり、すでに許容範囲を超えている
エリートの責任はますます大きく、圧倒的なものになってきている
日本の例として
グローバリゼーションの対極は、ネーション
言語、歴史、伝統、領土を共有し、日本のどこにうまれようが「俺たちは日本人だ」と了解し合える
価値観を共有する集団として、ネーションはちょうど都合がよい
つまり、国民意識のほうが、民主主義よりも先にあるのです
自由貿易によって相手国との市場の激しい奪い合いが起きることもある
さらにいうと、自由貿易と、安全保障とは関係がない。
今我々日本人は、その実例をみているのです。
目次
もくじ
第1部 グローバリズムが世界を滅ぼす
第2部 グローバル資本主義を超えて
トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム
新自由主義の失敗と資本主義の未来
歴史は繰り返す?――第二次グローバル化の未来
国家の多様性とグローバリゼーションの危機――社会人類学的視点から
新自由主義と保守主義
第3部 自由貿易とエリートの劣化
おわりに
ISBN:9784166609741
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:830円(本体)
発売日:2014年06月20日第1刷
発売日:2014年07月10日第2刷 -
Posted by ブクログ
ネタバレ結構、面白かった。
インタビューをされる側が、ウクライナ戦争に関しては情報戦が行われてて、情報が錯綜してて何が本当か分からない。と言っていて、正直だなと思った。
攻め込んだロシアには非があるのは当たり前だが、アメリカも焚き付けたよね?という内容は、そういう面もあるのかなー。と思わされた。
この戦争が今終わる事でメリットを得る者は誰もいない。というのは、暗い想いになりつつ、そう考えている人がどちらの陣営の上層部にもいるのかな?と思った。
アメリカ側→ロシアの思ったより高い生産力に根負けしたと思われたくない。
ロシア側→このまま戦争して、アメリカ陣営に劣らない国力を見せつけたい。
以上の事からこの戦争は長期化するとこの本は予想していた。
あまりこの件については詳しくないけど、アメリカが日本に武器を作らせたがっているというニュースを見たから、アメリカの生産量がロシアに追いついてない。という見解は無知な私には説得力があった。
明らかにアメリカ側についてる日本の国民としては怖い。
あと、ウクライナに攻め込んだロシアとイラクに攻め込んだアメリカでは、アメリカがいくら強く批判しても同じ穴のムジナだというのは、前から思っていた。
この本では、すでに冷戦は始まっており、この代理戦争がポーランド(ロシアを恨んでる)なんかも絡んでくると第三次世界大戦になりかねないと言っていて怖い。
また、ウクライナ戦争はドイツとロシアを切り離すアメリカの思惑もある。ドイツとロシアを結ぶノルドストリームを爆破したのはアメリカなのではないか?とする考えもこの本には書かれていた。
本当かは分からないけど、私はアメリカが正義の国だとは別に思っていないのであり得なくもないのかな?と思った。
この本の全てを信じるわけではない。
ただ、ニュースは画一的すぎて、なんとなく不気味な意図を感じてしまうので、一つの視点としてこの本を取り入れられて良かったと思う。
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Posted by ブクログ
言われればそうかな、という、納得感はありました。たしかに。
エマニュエル・トッドが中立的な立場で書いたと冒頭にあります。
ウクライナ戦争はプーチンのせいであるが、真の原因は、アメリカとNATOにあると暗にいっている
第3次世界大戦はすでにはじまっている
ウクライナ戦争はそもそも、ロシアとドイツを引き離そうと、アメリカが始めた戦争だ。
パイプラインの爆破も、ロシアの仕業とあるが、トッドは、アメリカとイギリスがやったに違いないといっている
ロシアにとって、ウクライナがNATOに加盟することがどれほどの脅威であるのかを西側は理解していない、いや、アメリカは理解していたからこそ、ロシアにウクライナを侵攻せしめた
そういう意味でアメリカが望んだ戦争であり、真珠湾と同様、アメリカとは、他国を戦争に向かわせることをする国なのだ。
ウクライナを支援しているアメリカも、グローバリゼーションとして生産能力を外にだしてしまっているので、どこまで体力がもつかはわからない。ロシアと、アメリカのがまん比べだ。
ロシア嫌いの地域圏というのがあって、バルト3国、ウクライナ、ポーランドである。
ポーランドが再軍備化をすすめていてフランス、ドイツなんかよりも、強い軍事国家になりつつある。そしてユダヤ人がかつて多く住んでいたところ、中流を担っていたユダヤ人が戦争によって消滅させられた
もともと、ウクライナは破綻国家であって、国家の体をなしていない。
戦後のウクライナは、非常に悲劇的なものになる。すべては破壊されて、復興はとても困難になる。アメリカが何か援助をするとも思えないから
NATO加盟国の1つに対する攻撃はNATO全体への攻撃をみなす それによって、NATO軍(西側)VSロシア(+中国、インド、西側以外)という構図になっている。
だから、ウクライナ戦は、アメリカを中心とした西側と、ロシアとの第3次世界大戦である、そして5年は続くとみている。
また、ウクライナでアメリカが破れるのではないかという確信を中国は気が付きだした
西側で工業力をもっているのは、実は、ドイツと日本なんです、アメリカでない。
ドイツも日本も、家族制度や親族システムがきわめて似通っている
ドイツも日本も、西側にいるのは、第2次世界大戦で敗れたからという理由なんです。両国とも、アメリカに占領された保護国なんです。
この状態、リベラルの自由主義というものを作り上げたのは、フランス、イギリス、アメリカなんです。
アメリカの外交施策の1つとして、同盟国を見放すというものがあります
もし、台湾で対中国戦があった場合に、西側が負けそうになったら、台湾や日本をアメリカは平気で見放すでしょう。だからウクライナでも同様のことが起きないともかぎらない
ドイツが、アメリカに従わなくなるような可能性も想定することができるのかもしれません。
日本も、岸田首相が、アメリカによって、ウクライナにつれていかれた。いいことではないんです。
中国がロシアをささえ、インドもロシアに親近感をもっています。
ロシアは権威主義だけども、それぞれの国の特殊性を尊重して、自国の価値観を他の国には押しつけていません
一方、アメリカという国は、アメリカ的な民主主義をいろんな国に押し付けています
アメリカの崩壊ということになれば、「アメリカに従っていればいいんだ」という思考停止状態から、脱して、もう一度考えなおさなければなりません。
アジアにおける日本、アジアの中の日本ということをもう一度考えるべきです。
トッドいわく、アメリカが崩壊したら、日本の取るべき道は3つ
①アメリカの傘から抜け出して、真の自立のために、核武装を行うこと
②中立国となること
③子供をつくること
目次
はじめに
第1章 ウクライナ戦争の原因とジャーナリストの責任
第2章 終わらない戦争
第3章 無意識下の対立と「無」への恐怖
第4章 アメリカの没落
第5章 多様化していく世界と我々
ロシアはもちろん悪いのだが―あとがきに代えて
年表 ウクライナ戦争をめぐる動き
ISBN:9784022952233
出版社:朝日新聞出版
判型:新書
ページ数:200ページ
定価:790円(本体)
発売日:2023年06月30日第1刷