【感想・ネタバレ】我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったかのレビュー

あらすじ

ホモ・サピエンス誕生からトランプ登場までの全人類史を「家族」という視点から書き換える革命の書!

人類は、「産業革命」よりも「新石器革命」に匹敵する「人類学的な革命」の時代を生きている。「通常の人類学」は、「途上国」を対象とするが、「トッド人類学」は「先進国」を対象としている。世界史の趨勢を決定づけているのは、米国、欧州、日本という「トリアード(三極)」であり、「現在の世界的危機」と「我々の生きづらさ」の正体は、政治学、経済学ではなく、人類学によってこそ捉えられるからだ。

上巻では、これまで「最も新しい」と思われてきた「核家族」が、実は「最も原始的」であり、そうした「原始的な核家族」こそ「近代国家」との親和性をもつことが明らかにされ、そこから「アングロサクソンがなぜ世界の覇権を握ったか」という世界史最大の謎が解き明かされる。

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Posted by ブクログ

家族構造や宗教そして教育という、我々の心理を深い次元で司る要素の分析を通して、それぞれの国の政治や経済がなぜ現在のようになっているのかを読み解く書である。無意識・下意識の階層にある何かが、目に見えるものを支配しているという考えには、大いに納得できるものがあった。

核家族か共同体家族かあるいは直系家族か、という言い回しが数多く登場する。核家族はホモ・サピエンスの原初的家族形態であり、むしろ直系家族のほうが最新なのである。ただ、絶対的な核家族は、創造的破壊が非常に得意である一方、技術や知識の継承という観点で直系家族に劣る側面がある。産業面で成功している中国・インド・日本・ドイツを観れば頷ける主張である。

ここに兄弟間の平等性・女性のステータス・父方居住かというファクターで細分化したのち、出生率・識字化のタイミングなどで国力の推移を分析することで各国の政治・経済のダイナミズムを考えていく。アメリカの創造性と野蛮性の混在の正体を暴いた10章は特に面白かった。

正直、内容理解は20パーセントほどしか進まなかった。文章自体は難解ではないが、主張を理解するのに時間がかかりそうだったため、飛ばして読まざるを得なかった。下巻は日本やドイツに触れるため、まずはここまで読み切ってしまいたい。

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

良書、歴史に関する斬新な視点を甘えてくれる
ただ、分かりづらい、難しい、専門用語が多い

歴史を語る時、政治、経済、テクノロジーなどの観点から語る事が多いが、この本は家族という観点から見た歴史を語ってる
家族のあり方の変遷、それが人々の価値観や社会のあり方に与える影響
特に、イギリス/アメリカの家族や社会の特徴と、それの影響

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2024年07月21日

Posted by ブクログ

人類史あるいは社会発展を物語る際に現代人は地政学と経済に重きを置いており、社会を語るのに国家・宗教・教育を重要視しがちだが、人間社会の最小単位である家族システムに注目すると、驚くべき相関関係が見出されることを説明する。トッドとしては家族システムで全てを説明できるわけではない、還元主義とは一線を画すと言っているが、論調的には全てを説明しようとしているように見受けられる点が引っかかる。どこまで現実を正確に表しているか、ちょっと後付け・こじ付けがすぎると思われる点もあるが、原因と結果の説明がうまく聞こえることもあるため、非常に興味深い主張ではある。
まず原初のホモ・サピエンスは外因性・移動性の高い核家族システムであり、地球上に広く拡散した。この原初の家族システムに近いのがイギリス・アメリカであり、アングロサクソンが覇権を握った遠因になるというのである。経済の躍進の前に政治的変革が根底となる。産業革命の制度的諸条件を築き上げたのは、ピューリタン革命、名誉革命による代表制統治であり、これらの統治制度を受け入れやすいのは核家族システムなのだという。当然アメリカには黒人や他の欧州人含め様々な人種が移民として来ているが核家族システムが根付いていった。19世紀末に大勢渡米したのは直系家族システムのドイツだったが、直系家族も成長を加速させる力があるとのこと。ただし、直系家族は過剰な完璧さで規範にハマリすぎる罠があり、日本やドイツに共通するポイントとなる。直系家族システムは技術伝承に向いているが保守的で創造的破壊を得意としない。(こういった説明を聞いて動物占いを連想してしまうのは私だけだろうか) 他方、中東・中国・インドの父系制社会は女性ステータスを低下させ、他社会の発明によって停滞してしまったことになる。ユーラシア大陸全体で見ると、父系直系家族、父系共同体家族などが中心で、核家族がベースとなっているのはイギリスをはじめ文字通り辺境の周縁部となる。外婚制共同体家族は共産主義や権威主義と親和性があり、中国やロシアが含まれる。我々にとって最も馴染みないのが、従兄弟との結婚が奨励される内婚制共同体家族(アラブ・ペルシャ)。シュメールや中国の初期文明では農業や文字の発明と同じ時期に父系制へ移行し、周辺の遊牧民などに伝播した。その結果、父系制氏族となったトルコ・モンゴルなどが軍事的に脅威となっていくパターンが見出される。その他、プロイセンは直系家族システムのため、長男以外の息子たちは軍への参加がスムーズで軍事力確保に繋がったというのもあった。ところで、ある程度近代化された社会では民法的に遺言・相続の意思も自由で、都市部に人口が集中して核家族化が進んでいくのは世界共通のように思われたが、今後100年たつとどのようになっていくのだろうか。
父系的社会は第二次産業に強く、女性ステータスが高い双系的社会は第三次産業に強い→前者は生産に、後者は消費に特化している。これが本当なのであれば、近い将来とんでもないしっぺ返しを食らうことになりかねない警告に受け止められる

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2026年01月28日

Posted by ブクログ

冒頭に書いてあるが、トッドによる研究の全貌を一般の読者にも読みやすい形で示した「私にとって最も大事な本」だそうだ。全人類の歴史を、家族システムという補助線ひとつで整理しなおしてみせる手際はおみごと。経済学ばかりが重視される社会科学の現状への異議申し立ても傾聴すべきと思う。「反米を煽るものではない」と言いつつ、アメリカとドイツをディスるときの筆の冴えも面白い。

日本やドイツの直系家族が経済的な効率性に優れると言いながら産業革命がテイクオフしたのは核家族のイギリスであったり、それはそれで理由が示されるのだが、全般を通して、ああ言えばこう言う的なところも多く、ウクライナ戦争にまつわる言説も含めすべての議論を真剣に受け止めていいいかどうかは留保したいところ。

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2023年02月05日

Posted by ブクログ

ホモエコノミクスに還元されないそれぞれの地域が持つ特性を、主にそれぞれの地域の伝統的な家族構成によって描く名著だと思う。
原著執筆から5年が経ち、社会情勢が大きく変化している中でも全くそれを感じさせない内容だった。

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2023年01月22日

Posted by ブクログ

今日までの人類の進化は、意識・下意識・無意識によって成り立っている。無意識に当たる家族と宗教の影響が興味深い。
一方で、翻訳が難解なため理解するのに苦労した。

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2023年01月08日

Posted by ブクログ

家族,宗教,識字化,産業,政治…見事なまでに一連のものとして,また絡み合い影響し合うものとして説明されている.まだ上巻を読み終わったところだけど,政治的,文化的,宗教的に相容れない集団が存在してしまうのは避けられない事なのかも?と.
一方で,こういった深いところ,脈々と続いて来た人類の歩みに思考が及べは,「理解は出来なくても存在を受け止める」努力は出来るようになるのかも,と希望的観測も持ちつつ,下巻へ進む…

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2023年03月01日

Posted by ブクログ

歴史人口学、家族人類学者のトッドらしい着眼点で、さまざまな国・地域の家族構成から、宗教や人々の経済基盤、ヒエラルキー、識字率などの統計を引きつつ、歴史をひもといていく。

上巻前半はかなり学術的で、人類学素人の私にとっては、多少”体力”の要る読書になったが、後半は宗教改革から、プロテスタンティズムや印刷技術の普及による変化、都市文明と核家族化の関係、18世紀までさかのぼっても北欧の女性の識字率が高かったことなど、従来の身近な知識で読み進められる話になってくる。

全体として、父系社会は、農耕が始まり定住して財産を蓄えるようになり、相続という行為が必要になって生まれてきたもので、実は核家族よりも新しい形態で、今我々が新しいと考えている核家族や男女平等というのは、むしろ原始的なものだったかもしれないという“反転“理論が背骨になっている。

ちょっと面白いのは、「いったいなぜアメリカなるものがわれわれの眼に、モダンであると同時に未開の自然のように映るのか、われわれの未来の姿を先取りして示してくれるほど進んでいるのに、なぜ習俗においてあれほど洗練度が低く、あれほど非文化的に見えるのか」という著者の問題設定。読み進む原動力になる、フランス人らしい視点かもしれない。

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2022年11月13日

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