初アニー・エルノー。すごく良かった。小説ってこんなに生身の人間を直に曝け出すことができるんだと圧倒された。
恐らく筆者自身が経験したであろう出来事を深く正確に綿密に的確な言葉を重ねて描きつつも、決して感情だけに流されることのない冷徹とも言える明晰さ。個人的な出来事を突き詰め続けることで至る普遍。特に
...続きを読む嫉妬には自分自身に思い当たる経験があり、個人的な経験を分析して突き詰めて文学に昇華させる彼女の手腕に驚いた。小説というのはこういう書き方もできるだと世界を広げてくれる作品だった。
事件は男女問わず必読。甘えのない生々しい描写に気分が悪くなるかもしれない。しかしこれが現実なのだ。本作のレビューを読むと中絶に関して日本に比べフランスが遅れているような印象を受けている人が見られたが、本当にそうなのか、いま一度自国の現状を学び直す必要があるだろう。