堀茂樹のレビュー一覧

  • ふたりの証拠
    「悪童日記」の続編だけども、表現の仕方がガラッと変わる。「悪童日記」は子供の世界「ふたりの証拠」は青年から大人への世界。登場人物に名前の無い、肩書や属性や特徴だけだった世界に、名前とともに個性が与えられて、それぞれのしがらみで、分かたれた双子の片割れであるリュカを浮き上がらせる。もう片方のクラウスの...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    初アニー・エルノー。すごく良かった。小説ってこんなに生身の人間を直に曝け出すことができるんだと圧倒された。
    恐らく筆者自身が経験したであろう出来事を深く正確に綿密に的確な言葉を重ねて描きつつも、決して感情だけに流されることのない冷徹とも言える明晰さ。個人的な出来事を突き詰め続けることで至る普遍。特に...続きを読む
  • シンプルな情熱
    先に読んだ『嫉妬/事件』と比べるとやや印象が薄い。しかし両作品に共通する、自身を客観視し対象として公平に見つめ直し明確で簡潔な文章に表現できる筆者の姿勢に非常に好感を持った。
  • 第三の嘘
    凄まじい三部作だった。
    『悪童日記』『ふたりの証拠』そして本作『第三の嘘』と、それぞれの作品に異なる衝撃があり、そして二作目を読めば一作目の、三作目まで読むとシリーズ全ての、見方や印象がガラリと変わってしまう。
    「真実」がどうであるのか考察することにさほど意味はないだろう。重層的かつ撹乱するような複...続きを読む
  • 悪童日記
    2人の少年による作文の形式をとった日記です。
    本文中にも書かれている通り、徹底して客観的な視点、事実が羅列されています。だからこそ感じる無機質感の中に、強制されない感情を抱かせてくれます。

    ただただ戦争を代表とした外的要因に振り回されるだけと思いきや、その中で強く健気に生き延びる「ぼくら」の姿。甘...続きを読む
  • 第三の嘘
    ・感想
    悪童日記シリーズの3作目
    2作目でも驚いたけど今作の展開にも驚愕。
    結局彼らはどれなんだろう?全部嘘で作り物なのかな。

    個人的には悪童日記のあの不気味さと閉塞感が好きだったから悪童日記のみで終わらせてもよかったかも。
  • 悪童日記
    「主観を一切まじえずに書かれた本がある」と勧めてもらったのがこの本だ。

    僕らは悲しい気持ちになった。とは言わず
    僕らは涙を流した。と客観的事実のみで構成される。
    不思議な本だった。
    双子の主観から捉えた世界なのに、主観的な表現がひとつもない。
    双子の目に映る世界の追体験ができるが、感情は全て委ねら...続きを読む
  • 悪童日記
    ・あらすじ
    戦時下のある国、厳しい環境下で生き残る双子の少年。
    彼らの作文形式で綴られる物語。

    ・感想
    日記調だけど書いてるのが普通じゃない倫理観の持ち主で、出てくる大人達もやばい奴しかいないから大体ヒキながら読んでた。
    でもなんだかすごくクセになる文章と作風で面白かった、

    あの子達は生来そうい...続きを読む
  • 「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード
    面白くてあっという間に読んでしまった。

    英仏の黒人差別や「文化の盗用」論が中心でイメージしづらいところもあるが、ここ数年の世界で左派が負けるメカニズムが示されており、よくバズっている日本の(何ちゃって)フェミニズムの状況を適用して考えればかなり腑に落ちる。

    かといって悲観せず、希望が持てる終わり...続きを読む
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか
    今なお世界を政治経済や軍事、テクノロジーで牽引するアメリカ。でもそれは原始的な人類に通じる点があるという……なるほど!という視点を得られた。

    エマニュエル・トッドらしい人口社会学を駆使しながら歴史、地理を縦横無尽に論じた本であり、少々いやかなり肩は凝る。途中から読みやすくなってきて、論旨も理解でき...続きを読む
  • 悪童日記
    双子の不条理な現実の受け止め方が興味深かった。一つ一つ徹底的に練習して自分のものにしていく彼らには悲壮感がない。過酷な生活に押し潰されることなく、冷静に、時に冷酷に生きていく。

    双子の『紙と鉛筆とノートを買う』の交渉、『恐喝』のゆすりは秀逸だった。

    最後は、え?という驚愕とその余韻の中で、続きの...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    90/100

    この話は男性には理解できないんだろうなと思う

    性に対して様々な多様性が進んでる中、一貫して変わらないのは妊娠するのは「身体的構造が女性」である人たちだけ。

    男性には分からない生理や妊娠などの苦しさ葛藤が、心情描写が細かい訳では無いのに切々と迫ってくるものがある。状況を淡々と文字で...続きを読む
  • 第三の嘘

    (※ネタバレ)

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    実際には離れ離れだった双子。
    二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
    二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三...続きを読む
  • ふたりの証拠
    ⚫︎受け取ったメッセージ
    双子のひとり、リュカの暮らし

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生...続きを読む
  • 悪童日記
    ⚫︎受け取ったメッセージ 
    狂気。毒。

    過酷な戦中、終戦時
    早熟で双子が感情抜きで
    事実のみを語る形をとった
    サバイバル日記

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ハンガリー生まれのアゴタ・クリストフは幼少期を第二次大戦の戦禍の中で過ごし、1956年には社会主義国家となった母国を捨てて西側に亡命してい...続きを読む
  • 悪童日記
    貧しい中でたくましく暮らす双子。東ヨーロッパ特有?の殺伐とした雰囲気。
    最後がまたすごいエピソード。あの後どうなったんだろう?
  • グローバリズムが世界を滅ぼす
    警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する

    グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。
    EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。
    圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし...続きを読む
  • 悪童日記
    重いテーマを扱った内容なのに、なぜか心に食い込んでくる面白さ。シリアスさとユーモラスが混ざり合った不思議な感動がある。
    続編もすぐに読みたくなってしまう。
  • 嫉妬/事件
    別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
    ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
    性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽい...続きを読む
  • 悪童日記
    抑揚のない簡素で淡々とした著述がより現実的な凄味を感じさせる。
    様々な立場の人々が、戦争中の市井でそれぞれ辛酸を舐めるエピソードに満ちている。二人の少年による、諦観にも似た冷徹で感情を押し殺したような視点が恐ろしくもある。楽しい瞬間は皆無で、読む程にシビアに心が削られていく感覚。
    しかし、傑作と言っ...続きを読む