堀茂樹のレビュー一覧

  • 凍りついた女

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    フランス女性作家として邦訳、これが4冊目というが・・全く 知らなかった。刊行は1981、当作の邦訳は30年弱前。
    ありきたりの言い方ながら、さすがフランス女性としか・・言いようもない。
    フランス女性と一括りにするのは大嫌い・・日本女性だって、同年代でもピンキリ、多種多様。ただ言えるのはフランス女性のお手本と言われるのがボーボワール、日本女性のそれは円地文子、有吉佐和子。

    読み始めて一驚するのは饒舌体。心に秘めた思いを吐き出すかのようにすごい勢いで語り続けて行くのが伝わってくる。改行はない、さすがに句読点はあるが、それだけで作家が内面に秘めたパッションを受けとめる。

    巻末に有る訳者の解説中~

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    2022年10月18日
  • 場所

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    ネタバレ

    2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの1984年発行でルノードー賞受賞作。
    シンプルな情熱は1991年発行。
    物語は著者の父親の生涯を描いたようなもの。しかし、編年体で何をした何がおこったということよりも、フランス社会の階層、貧困、そのなかでの幸せ、人間関係、暮らしをその地域特有の問題としてではなく、人間の普遍的な問題として捉えている。そして著者であるエルノーは大学にすすみ、文学で大学に職を得ることで、父親との精神的距離が遠くなる。父の操る言葉は決して上流階級のそれでも、文学的レベルが高級なものでもないが、それがなんだというのだろうか。生活にねざした言葉であり、劣等感に起因するおかし

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    2022年10月13日
  • シンプルな情熱

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    原典、Passion Simple
    邦題、シンプルな情熱
    今の私には、贅沢とは、ひとりの男、またはひとりの女への"激しい恋”(=パッション)を生きることができる、ということでもあるように思えるように。


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    2022年08月14日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    自分の見てきたヨーロッパはとても解像度が低かったんだと改めて感じた。

    今のEUがドイツが牽引していて、EUの移民政策に関しても、他国ではさほど問題になっていない人口減少がドイツでは深刻で、それを移民でまかなおうとした結果だというエマニュエルさんの見方も面白かった。

    もっと他の本も読んでみよう

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    2022年08月08日
  • シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧

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    ウクライナ問題に関する著者の見解がユニークなものだったので、こちらも読んでみた。

    これは2015年1月におきた『シャルリー・エブド』事件にともない起きたデモなどフランスの反応についての分析。

    原著の出版は、その数ヶ月後であることから、エッセイとか、インタビューを集めたものかと思って、読み始めたら、一冊を通してなんか堂々した論考となっている。

    まさに社会学的、人類学的な論考で、フランスの地域ごとの価値観の分布とデモへの参加率から、どういう人がデモに参加したのかという推計から始まるところが圧倒的。

    脱宗教の度合い、平等主義、権威主義の度合い、社会階層、年齢による差など、定量分析を踏まえなが

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    2022年07月10日
  • 第三の嘘

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    えらい本を読んでしまった
    アゴタ・クリストフさん怪物やでぇ…



    物語として素晴らしい完結をしていたと思っていた悪童日記がグラついて、ずっと夢の中にいる感覚

    悪童日記は完結していた
    でも3部読んだとき、全く別の完結が見られる

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    2022年03月19日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ

    第二作の「?」がつながったような、つながっていないような。流し読みだから、もう一度じっくり読んでみようと思う。つながったらすごく面白いんだろうな。クラウス(K)がよくわからない。どうなっている??「彼」もリュカなのか、クラウスなのか。小説の再読は基本しない派だけどもう一度読もうと思える作品でした。

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    2021年12月27日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    ブレグジットに対して、いわゆるエリートが反対し、庶民が賛成した構図と断言されている。日本でもだいたいそういう論調だったと記憶してます。トランプ現象に対しても同様。
    5年が経過した今、世界はコロナとCO2と戦っているわけですが、控えめに言って訳がわからない。虚構と戦っている。それでもグローバリズムを維持できればエリートとしては良いのでしょう。
    健全な民主主義を維持できる言論空間の必要性を痛切に感じますし、トッド氏のような良質なエリートの方々の活躍を切望します。

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    2021年11月06日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ

    悪童シリーズ三部作、ラストのお話。今作は一人称。おそらくクラリス目線……なのかな。
    冒頭で「私は自分の身の上話を書こうとするが、それは私自身を深く傷つける。だから私はすべてを美化し、こうあってほしかったという思いに従って描く」(p14)とあるので、どこまでが事実でどこまでが嘘なのかもうわからない。
    これを事実だと仮定すると、シリーズすべてが崩れてしまうし、美化して書いたとすると、美化されたのはおそらく「悪童日記」の方だろうし、ということはここで描かれていることはリアルなのか?
    もう、どういう気持ちで読めばいいのかわからなくて、ラストまで読めばわかるのかと思ってたんだけど、結局最後まで読んでもわ

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    2021年09月03日
  • 第三の嘘

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    「悪童日記」「ふたりの証拠」の結末「第三の嘘」。100%ネタバレです。

    物哀しい曖昧な色合いの夕暮れのような作品だった。

    「悪童日記」の内容は「ふたりの証拠」で、「ふたりの証拠」の内容もろとも一旦否定された。が、本作では冒頭に「事実であるだけに耐えがたく(中略)話に変更を加えざるを得ない」と、過去の2作品の種明かしされる。そして過去の2作品の作者であると読み取れるリュカの身の上話が前半に綴られる。

    これを読むと、まず「悪童日記」についてはかなりの部分で納得がいく。母に溺愛された。常に支え合う双子の片割れがいた。あらゆる能力を自発的に身に着けた。これらの事は「こうであれば救われたのに」とい

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    2021年08月03日
  • ふたりの証拠

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    リュカに焦点を当てて話が展開されていく…
    《悪童日記》からの続編と言う事で兎に角面白い!
    3rdstageはどんな展開が待っているのだろうか?

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    2023年06月25日
  • グローバリズムが世界を滅ぼす

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    新自由主義とかいうものが何なのかもよく分かっていない状況で読んだ。

    経済に対する規制を外して、より開かれた状態にすること。そしてそれは、グローバリズムによって国外にも扉を開き、世界を組み込んだ市場経済を作り出す。労働力は自由に移動するし、企業はより広くマーケットを拡大できる!

    やたら持ち上げられる新自由主義に対する切り込み。めちゃくちゃ要約すると、輸出にばかり目がいって、短期的な利益ばかり出そうとするから、内需を生む賃金の上昇が起きない(コストとしか見なされないから、労働力に投資しない)。大金持ちは簡単に株式で富を増やすが、その会社がどうなろうが責任は持たない。格差は大きくなるし、賃金上が

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    2020年05月07日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    「今、世界で一番危なっかしいのは、アメリカではなくヨーロッパなのです」2016年刊行時点の衝撃的な発言だが、改めて読み返してみるとなるほどと感じてしまう。EUの求心力低下が危惧される。

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    2020年04月15日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    イギリスがEU離脱したことを受け、現在の主にEUの情勢を分析した一冊。

    著者がフランス人ということもあり、フランスによってる部分はあるものの、ヨーロッパ人が見たEU、アメリカ、そして日本の情勢を知ることができた。

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    2018年11月22日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    トッドにはかねてから興味はあったのだが、ぶあつい著作にはなかなか手が出なかった。これはインタビュー・講演や雑誌への寄稿をまとめたお手軽な新書。現時点で最新のようでもあるので気軽に手にとってみた。時事ネタを扱っているのも良いし、なるほどとうならせる箇所も多いのだが、一方で分量ゆえ仕方ないながら、踏み込み不足というか物足りない感じもある。なかなかうまい広告なのかもしれない。

    1,2はBrexitに関する論考で、やや内容はかぶる。本書の中では小手調べ的なかんじ

    3はトッド自身の仕事や方法論を振り返っており、初読の身には大変おもしろかった

    4は人口学による各国近未来予測、これも興味深い

    5は中

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    2018年11月05日
  • 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告

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    ネタバレ

    第7章の「富裕層に使える国家」が面白かった。その次が第8章の「ユーロが陥落する日」。前半のグルジア/ジョージア問題はあのあたりの地理や背景にもう少し私自身が詳しくなると面白さが増すのではないかと自分の力不足を感じているところ。
    トッド先生は、ほんとにドイツの事嫌いなんじゃないかと思いますが、それ以上にフランスに歯がゆさを感じているのだとよく伝わってきます。あと、日本人がドイツと日本を同一視したり同カテゴリに置いたり、過度に親近感を抱く節があるのはちょっと本来のあり様から外れているよ、という指摘は結構重要だと思っています。
    日本について論じているところが読みたい人は編集後記を先に呼んで参照ページ

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    2018年02月03日
  • シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧

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    20180111〜0131 2015年1月の「シャルリ・エブド」襲撃事件を受けてフランス各地で行われた「私はシャルリ」デモ。「表現の自由」を掲げたこのデモは、実は自己欺瞞的で無自覚に排外主義であった-- と、著者は断じる。私も、これら一連の事件とデモは、とても違和感を覚えた。この事件の背景にある事象ーー宗教の衰退と格差拡大による西欧の没落について分析している。
    以下、私の感想;
    訳文がやや硬いせいもあるが、読むのに少し難儀した。この回りくどさはさすがフランス人の文章というべきか。
    崩壊しつつあるカトリシズムを「ゾンビ・カトリシズム」と述べているが、ゾンビという単語が先走ってしまい、色物のように

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    2018年02月24日
  • 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告

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    フランス人の作者から見ると、やはり問題は天敵ドイツなのでしょう。もちろん、最近のドイツの一人勝ちは日本にいてさえ見えてはいます。でも、周辺諸国がどれくらい虐げられてるのか、それをどう思ってるのか、それとも思ってないのか、その辺までは分からなかった。

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    2017年11月07日
  • シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧

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    力強い一冊。とにかく一行、一言に力がこもっていて読む方も力負けしないようにしないと折れてしまいそうになる。
    自分は「私はシャルリ」に違和感を覚えたが、その違和感がなんだったのかが明確に記されていてわかりやすい。

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    2017年11月27日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    人口学者の視点から見たヨーロッパとはどう見えるのか、というよりもすでにヨーロッパというものは存在していない、とまで言い切る著者の魅力は素晴らしい。
    今回は日本についての記述が多く、フランスの人口学者から見た今の日本(というネーションに存在する自分自身)についての客観的な視点が得られるのも素晴らしい。

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    2017年11月03日