堀茂樹のレビュー一覧

  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    ふたりの証拠

    ある
    けれど
    ない

    確かに町で有名な双子がかたわれだけになったのに、町のみんなは誰ひとりそのことに触れていなくて違和感があった。

    アゴタ・クリストフも翻訳者様も天才では?

    0
    2024年11月25日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    戦争というものは、かくも人の心を傷つけ続けるものなのかとあらためて思う。リュカは激しい悲しみと孤独の人だけれど、他の人々もそれぞれひとりひとりが喪失の物語を持つ。ヴィクトールの「すべての人間は一冊の本を書くために生まれた」という言葉にあるように。
    それにしても謎が回収されないままに終わってしまい、読者であるわたしは置いてけぼりだ。最大の謎は「兄弟」の存在だけれど、それ以外にもある。なぜリュカはこれほどまでにマティアスに執着したのか、なぜヤスミーヌを殺したのか、なぜ彼は神に祈らないのか...。3体の骸骨の下にある藁布団が「生温か」かったのはどういう意味なのかもよくわからなかった。アゴタ・クリスト

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    2024年10月16日
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか

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    良書、歴史に関する斬新な視点を甘えてくれる
    ただ、分かりづらい、難しい、専門用語が多い

    歴史を語る時、政治、経済、テクノロジーなどの観点から語る事が多いが、この本は家族という観点から見た歴史を語ってる
    家族のあり方の変遷、それが人々の価値観や社会のあり方に与える影響
    特に、イギリス/アメリカの家族や社会の特徴と、それの影響

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    2024年07月21日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    「悪童日記」の続編だけども、表現の仕方がガラッと変わる。「悪童日記」は子供の世界「ふたりの証拠」は青年から大人への世界。登場人物に名前の無い、肩書や属性や特徴だけだった世界に、名前とともに個性が与えられて、それぞれのしがらみで、分かたれた双子の片割れであるリュカを浮き上がらせる。もう片方のクラウスの人生が対比で語られるのかと思いきや、終盤まで出てこないばかりか、イマジナリーフレンドだったのではないかという疑念が湧いて、そう言えば「悪童日記」での靴屋のおじさんの受け答えは不自然だったかもしれないなと思い至る。

    著者は、物事が人間の成長や変化に与える影響を、すごくよくわかっている人だと思う。

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    2024年04月10日
  • シンプルな情熱

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    先に読んだ『嫉妬/事件』と比べるとやや印象が薄い。しかし両作品に共通する、自身を客観視し対象として公平に見つめ直し明確で簡潔な文章に表現できる筆者の姿勢に非常に好感を持った。

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    2024年04月06日
  • 嫉妬/事件

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    初アニー・エルノー。すごく良かった。小説ってこんなに生身の人間を直に曝け出すことができるんだと圧倒された。
    恐らく筆者自身が経験したであろう出来事を深く正確に綿密に的確な言葉を重ねて描きつつも、決して感情だけに流されることのない冷徹とも言える明晰さ。個人的な出来事を突き詰め続けることで至る普遍。特に嫉妬には自分自身に思い当たる経験があり、個人的な経験を分析して突き詰めて文学に昇華させる彼女の手腕に驚いた。小説というのはこういう書き方もできるだと世界を広げてくれる作品だった。
    事件は男女問わず必読。甘えのない生々しい描写に気分が悪くなるかもしれない。しかしこれが現実なのだ。本作のレビューを読むと

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    2024年04月06日
  • 第三の嘘

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    凄まじい三部作だった。
    『悪童日記』『ふたりの証拠』そして本作『第三の嘘』と、それぞれの作品に異なる衝撃があり、そして二作目を読めば一作目の、三作目まで読むとシリーズ全ての、見方や印象がガラリと変わってしまう。
    「真実」がどうであるのか考察することにさほど意味はないだろう。重層的かつ撹乱するような複数の物語を貫く、強烈な孤独感と、無理矢理引き裂かれ揺らぐアイデンティティ。亡命者である著者が故国と移住国に抱く感情の、言葉にし難い生々しい領域の、わずかな一端に触れた思い。

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    2024年04月03日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ

    ・感想
    悪童日記シリーズの3作目
    2作目でも驚いたけど今作の展開にも驚愕。
    結局彼らはどれなんだろう?全部嘘で作り物なのかな。

    個人的には悪童日記のあの不気味さと閉塞感が好きだったから悪童日記のみで終わらせてもよかったかも。

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    2024年03月06日
  • 「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード

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    面白くてあっという間に読んでしまった。

    英仏の黒人差別や「文化の盗用」論が中心でイメージしづらいところもあるが、ここ数年の世界で左派が負けるメカニズムが示されており、よくバズっている日本の(何ちゃって)フェミニズムの状況を適用して考えればかなり腑に落ちる。

    かといって悲観せず、希望が持てる終わり方になっているのがよかった。

    以下メモがてら。

    『エスニシティを基準にして発言や想像への権利といった特別待遇を要求することで、人々が種々のカテゴリや、個々のエスニシティに固有の発想方法を維持すると、支配者たちがそれらを用いて自らの偏見を正当化し、被害者面をする。』
    その結果、『アイデンティティ至

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    2024年01月11日
  • 嫉妬/事件

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    90/100

    この話は男性には理解できないんだろうなと思う

    性に対して様々な多様性が進んでる中、一貫して変わらないのは妊娠するのは「身体的構造が女性」である人たちだけ。

    男性には分からない生理や妊娠などの苦しさ葛藤が、心情描写が細かい訳では無いのに切々と迫ってくるものがある。状況を淡々と文字で説明しており、その状況を想像するだけで胸が苦しくなった。


    男性が悪い訳では決してないけど、結局どれほどの犠牲を女性が、社会的にも、心理的にも、払わなきゃいけないのか凄く伝わってくる。

    最後のあとがきを読んでより一層共感した。

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    2023年12月09日
  • 第三の嘘

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    ネタバレ


    (※ネタバレ)

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    実際には離れ離れだった双子。
    二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
    二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。

    (あらすじネタバレ)
    クラウスとリュカには悲しい事実(と思われる)があった。2人が4歳の時、父は浮気相手と一緒になりたいと話し、2人の母は父を撃った。その流れ弾がリュカの脊髄を損傷し、離れ離れに暮らすこととなった。2

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    2023年11月30日
  • ふたりの証拠

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    ネタバレ

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    双子のひとり、リュカの暮らし

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。

    (ネタバレ)
    祖母のいなくなった家へ戻ったリュカ。15歳。知り合ったのは自らの父との子をもうけてしまったヤスミーヌとい

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    2023年11月30日
  • グローバリズムが世界を滅ぼす

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    警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する

    グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。
    EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。
    圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし、その結果なにが起きたか。各国は通貨の切り下げなど金融緩和や財政出動もできず、独自の産業政策も不可能になりました。
    EUでの勝者は、ドイツだ。ユーロ安でドイツの輸出産業は大いに潤った。経済危機に瀕した国々を低賃金で下請けのように使いユーロ圏がドイツにとって開かれた市場であることをフル活用している。

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    2023年11月14日
  • 嫉妬/事件

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    別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
    ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
    性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽいなと思うが、どの国でも女の思考は共通しているところが多いな、と連帯感を覚えた。「嫉妬」なんて失恋した時に読んだら共感の嵐だと思う。

    やはり衝撃的だったのは「事件」。
    読んでいて自分まで下腹部が痛い気がしてくるほどだった。
    中絶を禁じるって、本当に悪しき文化だと思う。胎児の命を軽視するのはもちろん良

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    2023年09月23日
  • ふたりの証拠

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    一作目の最後、国境を超えなかった「ぼく」の物語。「ぼく」は名前を持つことで、前作とは違った雰囲気を感じる。戦後下の厳しい環境で生きていく主人公は、他人に手を差し伸べながらも、常に孤独を抱えている。地の文に、主人公の感情は一切ない。それでも、彼の心情は、読者へ強く伝わってくる。予測できない展開に、はらはらさせられること必至。

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    2023年08月07日
  • 第三の嘘

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    二人の証拠のラストで、エエェ!
    てなった後の本作。
    悪童日記や二人の証拠であった若々しさ等はなく、
    老いたリュカとクラウスの話。
    全体を通じ、悲哀に満ちていて、なんとも言えない気分に。
    内容が悲哀に満ちているのもそうだが、一人称の私が、リュカとクラウスどっちがどっち?てなることもあったのでもう一度読みたいと思う。
    間違いなく名作。

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    2023年07月09日
  • 嫉妬/事件

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    「嫉妬」も「事件」も女性として考えさせられる小説だった。アニー・エルノーの小説は自伝的。本当の所は知らない。淡々と書かれているけど、情熱的。その相反する読後の印象が自伝的だと思わせるのだろう。「事件」で知った、フランスは中絶が違法だった期間が長かったこと。フランスのイメージとは大きく異なるこの法律にヨーロッパがいかにキリスト教と結びついているのかを改めて見た気がする。
    「嫉妬」の主人公。恐らく表面上は淡々と生活はしていたのだろう。だけど、内面は相手女性への執着でドロドロしている。それを伝える文章は全くドロドロしてはおらず、一歩間違えばメロドラマ的になってしまう内容をいたく知的で詩的なものに感じ

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    2023年06月30日
  • 嫉妬/事件

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    女性の環境や人生や感性を、客観的に綴る。

    嫉妬 気が狂わんばかりの嫉妬なのに、語り口が客観的で冷静。ある日突然それがバカバカしいことだと気がつくあるある。

    時間 どこまでも自分が大事で、当然のように自分の道を進もうとする価値観が新鮮。グロテスクであるが、それが人間でもある。ヒッチ

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    2023年04月23日
  • 場所

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    アニー・エルノーの本は、2冊目となるが、彼女の書く文章がやはりどこか好きである。

    この一冊は、彼女の父が亡くなった出来事から始まり、彼が生きていた時代、つまり作者である彼女の幼い頃を小説を通して"書く"ことで、思い返す、そんな話である。

    私が1番面白いと感じた点は、過去の回想シーンと、彼女の書くという行為によって思い出される記憶と、時間が進むにつれて、これらが交錯していく点である。

    また、物語全体を通して、階級の違いが描かれ、とても納得できる部分が多く、客観的に読むことができたように感じる。

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    2023年04月01日
  • 嫉妬/事件

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    凄まじくリアルだが、小説でもノンフィクションでもないという一冊。

    女性の心情を事細かに書いてあるようだが、事実をベースに書いてあるため、非常に読みやすい。

    特に印象に残った文章は、

    ーー正常と言われている世界にいつ戻ってきたのかは、わからない。"正常な世界"とは曖昧な表現だけれども、その意味するところは誰もが理解している。つまり、ぴかびかの洗面台を見ても、列車のなかで旅行客の顔を見ても、もはや何の問題もなく苦痛も感じない世界のことである。ーー(事件)

    表現が分かりやすいのに、どこか奥が深い。そんな文章が最後まで綴られる。

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    2023年03月27日