堀茂樹のレビュー一覧
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面白くてあっという間に読んでしまった。
英仏の黒人差別や「文化の盗用」論が中心でイメージしづらいところもあるが、ここ数年の世界で左派が負けるメカニズムが示されており、よくバズっている日本の(何ちゃって)フェミニズムの状況を適用して考えればかなり腑に落ちる。
かといって悲観せず、希望が持てる終わり方になっているのがよかった。
以下メモがてら。
『エスニシティを基準にして発言や想像への権利といった特別待遇を要求することで、人々が種々のカテゴリや、個々のエスニシティに固有の発想方法を維持すると、支配者たちがそれらを用いて自らの偏見を正当化し、被害者面をする。』
その結果、『アイデンティティ至上主義の左派はアイデンティティの右派を勝たせてしまう。発言する自由や創造する自由に至るまで、ありとあらゆる自由を攻撃するあまりに。』
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Posted by ブクログ
ネタバレ
(※ネタバレ)
⚫︎受け取ったメッセージ
実際には離れ離れだった双子。
二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。
(あらすじネタバレ)
クラウスとリュカには悲しい事実(と思われる)があった。2人が4歳の時、父は浮気相手と一緒になりたいと話し、2人の母は父を撃った。その流れ弾がリュカの脊髄を損傷し、離れ離れに暮らすこととなった。2人の母は精神の病にかかり、またリュカはリハビリが必要となり、一家はバラバラになる。クラウスは4歳から愛人に育てられることとなる。腹違いの妹とともに。クラウスは本当の家族は母とリュカだけと思い続ける。8歳のとき、自分は愛人に育てられていたのだと知り、愛人を責める。腹違いの妹と近親愛に陥る前に愛人の元を去り、精神の病を患ったままの母と暮らし始める。ことあるごとに「リュカなら…」と妄想のリュカを褒め続け、クラウスには愛情を一切示さない母に、クラウスは何も言えない。そのまま55歳になっている。そこへ、リュカが現れるが、人違いだと告げるクラウス。2日後リュカは電車に飛び込み自殺。クラウスは父の墓の横にリュカを埋葬することに決める。この先母が他界したら、生きている意味もなく、4人一緒になれる日も近い、将来電車に自分も飛び込むかもしれないという余韻をのこして、完。
⚫︎感想
「第三の嘘」によって、二人が会えるチャンスがあったのにタイミングが悪く、悲しい。ついに会えても、双子の気持ちは引き裂かれたまま。クラウスは55歳になってからでなく、もっともっと早くリュカに会いたかった。なぜ今になってしまったんだと思う気持ちで、リュカを追い返してしまう。しかし互いを求め、思う気持ちは「悪童日記」で描かれる二人で一人のまま。双子を引き裂く悲劇的な出来事に加えて戦争が落とす混乱。
いつの時代も、大人が引き起こしたことに巻き込まれ、犠牲になるのは子どもをはじめとした弱者である。 -
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ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
双子のひとり、リュカの暮らし
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。
(ネタバレ)
祖母のいなくなった家へ戻ったリュカ。15歳。知り合ったのは自らの父との子をもうけてしまったヤスミーヌという女性。その子は不具であったが非常に聡明であった。ヤスミーヌは街へ出ていき、残された子であるマティアスを我が子のように可愛がるリュカ。マティアスはリュカの愛を信じられず自殺。都会へ出ていったとリュカが説明していたヤスミーヌの遺体が見つかり、その次の日からリュカは30歳でいなくなった。
最後の章では双子のもう一人であるクラウス(CLAUS)が50歳で村へ戻ってくる。
⚫︎感想
「悪童日記」の続編。村に残った方のリュカ(LUCAS)の15〜22.3歳までの話。こちらは第三者視点で描かれる。
マティアスとのやりとりが中心だが、それでもリュカのクラウスに対する思いは唯一無二である。
本当にリュカ、クラウスという双子の兄弟が居たのか?同一人物なのか?55歳になって戻ってきたクラウスは、リュカではないのか?
日記をつける行為はリュカが続けていることがわかる。日記は創作物なのだが、虚偽と真実が入り混じっているのか?謎が残るまま、第三部「第三の嘘」へ。 -
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警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する
グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。
EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。
圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし、その結果なにが起きたか。各国は通貨の切り下げなど金融緩和や財政出動もできず、独自の産業政策も不可能になりました。
EUでの勝者は、ドイツだ。ユーロ安でドイツの輸出産業は大いに潤った。経済危機に瀕した国々を低賃金で下請けのように使いユーロ圏がドイツにとって開かれた市場であることをフル活用している。
IMFによって改革された国、韓国も、グローバル化で破壊された国である。
雇用の不安定化がもたれされた。雇用も自由化されて、労働市場の柔軟性を高めたことが、正規職から非正規職への置き換えが進んでいった。失業率は7.5%、就職準備をしている人をふくめると若年層の失業率は、20%である。
つまり、IMF以降は、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなってしまったのです。
グローバリズムは、短期的な数字を追う。そのために、設備投資、研修、リサーチといったことがおろそかになる。長期的に成長が必要なはずの生産性の向上や、所得向上のためのコミットメントも生まれない。
その結果、技術開発は進まず、所得も増えず、成長が鈍化していく。目先のパイの奪い合いが行われるだけで、パイそのものを大きくするためのインセンティブはうまれない
信号や、車線がない道はめちゃくちゃになって道路の効率性は著しく落ちる。同様に、単なるグローバズムが困難しかもたらさない。ある程度の規制がどうしても必要なのである
人間の欲望を放置するのが、グローバル資本主義、欲望そのものを基準にしようとする、無法地帯になるのも当たり前なのです
日本には日本的なものが残る。でもグローバル資本主義は、それが残らなくなるまでにグローバルしていく
世界には、2つの未知の巨大リスクを抱える地域がある。それは、中国と、ドイツだ。
日本は、人類学上の理由から、アングロサクソン・モデルとはきわめて異なった資本主義の調整されたモデルを示している。
グローバリズムは、国境を前提としないもの、一方で、インターナショナリズムは、真逆の概念です。
デフレをまねく、グローバル資本主義
①経済の不安定化
②実体経済への大きな影響―グローバル企業の巨大化
③格差の固定化
④危機そのものがグローバル化 ―リーマンショック
⑤お金第一主義、お金で換算できないものは見捨てられていく
ネオリベラリズムは成長すらもたらさない
失業の増大、格差の拡大、富が拡大するからがまんせよ ⇒ でも、実体は、そうなっていない
二国間、多国間の自由貿易協定は、規制緩和をより強く要求内容になっている ⇒ これまで以上にスピードを増して、自国の産業育成が途上国にとってますます困難になっている
第1次グローバル化 1870年代 ⇒ 大恐慌 ⇒ 第1次世界大戦で終了
第2次グローバル化 現代 ⇒ 歴史に学べ
共通事項
①多国籍企業の存在
②経済的な相互依存が平和を導くという学説の存在
③自由主義経済学が大いなる影響力をもった
④先進国と途上国との対立の先鋭化
⑤周期的な金融危機
⑥帝国主義
相違事項
①国際通貨制度
②福祉制度の違い
③国際機関の存在
ヨーロッパに期待する最善の策とは、ユーロの崩壊。アメリカの不確実性、そして、ヨーロッパの死。
世界は大劣化している
⇒新自由主義にそまりきった、現代のエリートは国民の苦しみには無関心になっている
⇒ノブレス・オブリージュの放棄、それはグローバルなレベルで統治能力の危機が起きている
グローバリゼーションの危機は民主主義の危機である
経済の危機のみならず、民主主義の危機をも引き起こしている
格差が広がり、すでに許容範囲を超えている
エリートの責任はますます大きく、圧倒的なものになってきている
日本の例として
グローバリゼーションの対極は、ネーション
言語、歴史、伝統、領土を共有し、日本のどこにうまれようが「俺たちは日本人だ」と了解し合える
価値観を共有する集団として、ネーションはちょうど都合がよい
つまり、国民意識のほうが、民主主義よりも先にあるのです
自由貿易によって相手国との市場の激しい奪い合いが起きることもある
さらにいうと、自由貿易と、安全保障とは関係がない。
今我々日本人は、その実例をみているのです。
目次
もくじ
第1部 グローバリズムが世界を滅ぼす
第2部 グローバル資本主義を超えて
トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム
新自由主義の失敗と資本主義の未来
歴史は繰り返す?――第二次グローバル化の未来
国家の多様性とグローバリゼーションの危機――社会人類学的視点から
新自由主義と保守主義
第3部 自由貿易とエリートの劣化
おわりに
ISBN:9784166609741
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:830円(本体)
発売日:2014年06月20日第1刷
発売日:2014年07月10日第2刷 -
Posted by ブクログ
別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽいなと思うが、どの国でも女の思考は共通しているところが多いな、と連帯感を覚えた。「嫉妬」なんて失恋した時に読んだら共感の嵐だと思う。
やはり衝撃的だったのは「事件」。
読んでいて自分まで下腹部が痛い気がしてくるほどだった。
中絶を禁じるって、本当に悪しき文化だと思う。胎児の命を軽視するのはもちろん良くないけど、そちらを盲目的に尊重して、産む側の人権がないがしろにされるのは、本当にいいことなんだろうか。
ていうか中絶しないといけない状況に追い込む男の方が明らかに悪くない?
中絶が成功しそうなタイミングで、主人公は自分の血と体液に濡れたパンティを見る。それで、死んだ飼い猫の血と体液の染みが自分の枕の真ん中に残されていて、学校から戻ってきたときには、猫はお腹のなかで死んだ子猫たちとともに既に埋められていたことを思い出すというエピソードが、抒情的で心に残った。 -
Posted by ブクログ
「嫉妬」も「事件」も女性として考えさせられる小説だった。アニー・エルノーの小説は自伝的。本当の所は知らない。淡々と書かれているけど、情熱的。その相反する読後の印象が自伝的だと思わせるのだろう。「事件」で知った、フランスは中絶が違法だった期間が長かったこと。フランスのイメージとは大きく異なるこの法律にヨーロッパがいかにキリスト教と結びついているのかを改めて見た気がする。
「嫉妬」の主人公。恐らく表面上は淡々と生活はしていたのだろう。だけど、内面は相手女性への執着でドロドロしている。それを伝える文章は全くドロドロしてはおらず、一歩間違えばメロドラマ的になってしまう内容をいたく知的で詩的なものに感じさせる。それがとてもフランス的に思える。
この本で自分の中に強固なフランスという国への固定観念があることに気付いた。