堀茂樹のレビュー一覧
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「悪童日記」の続編。
「ふたりの証拠」のラストにはかなりの衝撃を受けたけど、この「第三の嘘」では更に物語が二転三転する。クラウスとリュカの物語がパラレルワールドのように展開していき、まるで入れ子細工みたいな物語だった。
この三冊目を読んで、リュカと血の繋がらないマティアスが不気味なほどリュカに似ていた理由がわかった。クラウスはリュカでもあってマティアスでもあったんだな。
「悪童日記」も嘘「ふたりの証拠」も嘘、そしてこの三作目のタイトルが「第三の嘘」なんとも意味深。作中、リュカは手記の不要な部分は削除し書き換えている、というようなことが書かれていたので、今私が読んできた一連の物語は、クラウス、も -
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「悪童日記」の続編。
前作では一貫して「ぼくら」という描写しか出てこなかった双子だけど、国境を越え隣の国へ行った方がクラウス、元の国に留まった方がリュカという名前で登場する。本作はリュカの物語。リュカは国境を越えたクラウスの戻りを待ちながら、手記を書き続けている。
リュカは色んな女(男も)に愛されているけど、リュカが本当に愛したのはヤスミーヌの子供のマティアスだけだったように思う。リュカとマティアスは血は繋がっていないけど、不気味なほど似ている。自分の子供時代を重ねて見ているのかな…なんて思って読んでいたら、ラストの展開には驚かされた。えっそういうこと…???前作の物語が続編で丸っと覆るような -
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ネタバレかつて検閲は保守的で道徳主義的な右派のすることであったが、今日では道徳主義的でアイデンティティ至上主義的な特定の左派が行っている。
文化盗用の定義として、はじめは支配や搾取の要素が含まれていたものの、次第に失われてしまった。
反レイシズムとして、普遍的なものの名において待遇の平等を要求するフランス的なものと、アイデンティティの名において特別待遇を求めるアメリカ的なものがある。後者は、差異への権利として、ステレオタイプをより強固にし、各々のアイデンティティを競争させる。すなわち、アファーマティブアクションの恩恵を優先的に受けるべき一番の犠牲者が誰かを決めるため、マイノリティ同士が喰いあうような事 -
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アニー・エルノー『嫉妬/事件』の次にこれを読んでみる。
ひとりの女性の幼少から大人まで。
独り言をまくしたててるような、短い分の連なり。
特に少女から大人に移行していく十代後半の脳内は、特有の悩みが充満する。比較、否定、肯定…繰り返し。
この十代の気持ちが必死に一つに、自分のアイデンティティにしようともがいている様子から引き込まれるように読んだ。自分にも覚えがあるからだろう。
結婚してからの現実。よくある不満だ。女はこうであらなければならない、男はこうあるべきだからね。
夫婦がどちらもバランスよく過ごすとしたら、話し合いしかない。
話し合いができないなら、どちらかが我慢を強いられること -
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アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』
『悪童日誌』の続編、第二弾
『悪童日誌』では語り手が双子兄弟の一人であり、固有名詞は出てこなかった
『ふたりの証拠』は、三人称で書かれた文であり、いきなり固有名詞が出て来る
もう冒頭から謎である
しかし、超ドライだが読みやすい文は変わらない
主役の双子兄弟の一人リュカは何処へ行ってしまったのか?
もう一人クラウスはなぜ戻ってきたのか?
今まで何処で何をしていたのか?
『悪童日誌』と思われる書物は創作なのか?
読み進めているとどんどん増える謎
そしてラストはまたもや衝撃!
もう第三弾『第三の嘘』は購入済み
早く読まないとーッ! -
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ネタバレ前作『悪童日記』に続いて、ラストが衝撃的だった。
『悪童日記』は、戦時中、魔女と呼ばれた「おばあちゃん」の家に疎開することになった双子の兄弟が、国境の町で強かに生き抜いた生活を日記という体裁で描いた物語だった。その前作は、双子の片方が、父親を犠牲に国境を越え、離れ離れになるところで終わった。今作は、国境を越えず町に残り、青年となった「リュカ」の物語である。
前作に引き続き、主観的な評価や描写を排した独特の文体で書かれているものの、もはや日記という体裁ではなく、普通の三人称小説として書き進められていく。リュカは、離れ離れになった双子の兄弟「クラウス」に読ませるため、手記を書き残していた。
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