堀茂樹のレビュー一覧

  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源
    下意識、無意識を分析することから、なぜ今日の世界が形作られたかを読み解き、その洞察は難解だがとても惹きつけられるものであった。
    日本は父系社会であり、女性の地位が低いことや内向きの習俗に囚われているかぎり、衰退の末路を辿るという筆者の主張には、近年の政治・経済・教育の劣化を見る限り納得がいく。
    日本...続きを読む
  • シンプルな情熱
    フランスらしい愛と性の話。24時間が不倫相手の男のためだけに使われている。男はそうではないけど。発展することはもちろんなく、肉体だけで繋がっている、ただそれだけの話。小説自体があっという間に終わるので、あとがきの長さに驚きました。
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか
    ホモエコノミクスに還元されないそれぞれの地域が持つ特性を、主にそれぞれの地域の伝統的な家族構成によって描く名著だと思う。
    原著執筆から5年が経ち、社会情勢が大きく変化している中でも全くそれを感じさせない内容だった。
  • 凍りついた女
    日本は海外と比べて開けていないと思い込んでいたけど、どこの国でも立場や性別で差別されていた時代があったし、今もあるのだろうと思った。
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか
    今日までの人類の進化は、意識・下意識・無意識によって成り立っている。無意識に当たる家族と宗教の影響が興味深い。
    一方で、翻訳が難解なため理解するのに苦労した。
  • 嫉妬/事件
    短編集2篇
    自伝風の小説。簡潔に隅々まで詳しく内なる感情をその流れるままに記録して、その時の心情が余すところなく再現される。思わず引き込まれ感情の海にどっぷり浸かって追体験した気になった。中絶場面の恐ろしさに気分が悪くなった。
  • 嫉妬/事件
    ノーベル文学賞受賞者による。
    筆者の体験したことかのように書かれている。
    事件は、中絶が禁止されていた時代のフランスで妊娠してしまった学生が中絶を果たすまでの体験。
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論
    EUが欧州統合の象徴ではなく、ドイツをトップにしたヒエラルキー構造であることを分かりやすく説明してくれる。
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源
    上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
    アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。

    個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    本作は、ノーベル文学賞受賞者のアニーエルノ著の作品で、映画化もされているみたいです。
    本作品は、一人称で書かれており、実体験をもとにしたストーリー展開で、主人公の内面の葛藤を生なましく描き、とてもリアルでした。
    著者の作品は、心に内在する熱い情熱が吹き出してくるような作品が多く、火傷したような読後感...続きを読む
  • 凍りついた女
    「場所」や「ある女」、「シンプルな情熱」より、前半部分は少し読みにくかった。
    日本と同じく、フランスの男尊女卑が当たり前のことだったということがわかったが、アニーエルノーが、自分の両親よりも大分前に生まれている世代なのだということに驚く。今でこそ日本でも認められつつある男尊女卑だが、その世代の人が、...続きを読む
  • ある女
    2022ノーベル文学賞受賞のアニーエルノーの作品。
    母親の死を契機に、母の人生を咀嚼するように、振り返るために書かれたかのような本。
     文を書くことで、母の人生を、母の価値観を、母の生活苦をそして母の心配を母の希望を母の喜びを追いかける。そうやって母の人生を文章で綴ることが唯一の追悼でああるかのよう...続きを読む
  • ある女
    母親のことが書かれている。私自身も、母親と四六時中一緒にいると息が詰まるため、一定の距離を置いている。大学に入って実家を出たときにはホッとした。ある時、実家、母親のやり方に、ふと疑問を感じ、否定する気持ちが出てきたのだ。
    晩年の母親のシーンで、自分自身と母親、また、子ども達と母親としての自分を思って...続きを読む
  • ある女
    エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
    印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
    フランスは(?)こんなにも階級...続きを読む
  • シンプルな情熱
    〇〇してから何日たった、あと〇〇時間後には…など、時間を意識せざるを得ない苦しさを思い出すとともに、時間を細切れにせず漠然と過ごせている日々はある意味幸せだと思った。
    著者の他の作品も読んでみたい。
  • シンプルな情熱
    ノーベル文学賞つながりで、川端康成を本屋で買ったついでに平積みされているのをなんとなく購入。
    私生活を書く人だと言うことくらいしか知らずに読む。

    率直な感想は「私にはもはや遠い思い出」という感じ。
    誰かを熱烈に想ったり待ち侘びたりする季節は過ぎ去ってしまった。

    描写は簡潔でそっけないほどだ。

    ...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    2022年〈ノーベル文学賞〉受賞のアニー・エルノーさんの「嫉妬」「事件」を合わせて文庫にした本。

    「嫉妬」は、別れた年下の男が、他の女と暮らすことを知り、嫉妬に苦しむ話である。
    嫉妬とは、目に見えない醜いものだと思っている。
    できるなら嫉妬は、したくない。
    嫉妬に狂うとなにも見えなくなる。
    穏やか...続きを読む
  • シンプルな情熱
    "passion"
    元々の"受難"という意味もあり、
    恋、情熱に生きるということは
    自分の魂を奪われて、
    意志が強く見える一方で、ある意味
    主体性をなくしてしまっていることなのかも、なんて。

    欲することの限界を向かえたいような、
    向かえたくないような。
    終わりを意識しながら
    美しき時を化粧しながら...続きを読む
  • シンプルな情熱
    最後の終わり方が素晴らしかった。恋することにも、いろいろなランクがあるのだと知る。パッション、情熱、受難。フランスの大人の女。憧れるけど、全てがマネすらできない、今の私。
  • ふたりの証拠
    面白くて一気に読んでしまった。悪童日記に続く2作目。主人公リュカの10代後半から20代前半までを描いた本作であるが、この子は頭が良すぎる。頭の回転が早いとか、臨機応変な対応ができるとかそういう次元の話ではない気がする。最終章の3作目にも期待したい。