堀茂樹のレビュー一覧
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ネタバレ悪童日記、ふたりの証拠で散々裏切られて慣れてるはずなのに、また新鮮に裏切られた〜
それまでの前提覆される展開大好きなので(ナウシカ、進撃の巨人、アメリカンサイコ、ユージュアルサスペクツetc)楽しかった
この本自体も嘘とも考察できるけど、この本は真実で、悪童日記とふたりの証拠はリュカの創作とするのが好きかな
4歳から別々なのに、もの書きとして成功、相手の名を名乗る、家族はいない、好きな人と体を重ねるも結ばれない、自殺(願望)と共通点多いのはさすが双子
悪童日記に登場する、一心同体で強い双子、子を迎えに来る母、子に会いに来る父、血のつながりがある祖母
ふたりの証拠に出てくる、父に愛される身体障害を持つ子、クララという女性、ペテールという男性
彼が欲しかったものなのかなぁ...
リュカ
首都で生まれる
4歳:被弾(母親が不倫した夫を銃殺)により脊髄付近損傷し、S市のリハビリ施設へ。施設が爆撃を受け、K市の農婦に引き取られる(畑仕事、ハーモニカ吹き、荷物持ちをする)
15歳:農婦が死亡し家を追われ、亡命→18歳と偽りクラウスと名乗り始める
後見人となったペテール(後に親友)の妻クララと寝る
色々な仕事をしながら本を出版
55歳:鬱病、クラウスと再会後、列車に飛び込み自殺
クラウス
首都で生まれる
4歳:母が父を銃殺し、精神病院へ入る。数ヶ月孤児院で過ごした後、親の友人アントニアに引き取られる。妹のサラが生まれる。
6歳:偶然生家を見つける
8歳:アントニアが父の愛人でサラがアントニアと父の子であること、その事が原因で母が父を銃殺したこと、リュカの体のことを知る。K市のアントニアの両親宅で過ごす。チェスを覚える。
11歳:サラと不適切な行為をする。母と暮らし始める。母はリュカしか愛していない
14歳:学校を辞め植字工見習いになる
17歳:植字工となる
サラは外科医と結婚、クラウスは適当な女たちと寝る
45歳:鉛中毒で不眠症。詩が社長の目にとまり出版。ペンネームはクラウス・リュカ。有名な詩人となる
55歳:会いに来たリュカから同居する母を隠し、母もリュカも死んだと嘘をつく。サラという妻と子、孫に囲まれて幸せだと嘘をつく -
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経済ではなく、家族構造、宗教、教育等の人々の無意識や下意識で行動を形作る文化人類学的観点から過去および現在の各民族の立ち位置を解き明かす本。新たな視点がたくさんで興味深かった。
以下、興味深かったキーポイント。
☀︎原始の人間は外婚制、核家族で、女性の地位が高い。そこから家族形態を進歩させてきたところほど日本やドイツのような直系家族やロシアや中国、中東のような共同体家族である。
☀︎民主制こそ原始的。
☀︎ロシアは共同体家族でありながら女性の地位が高い。
☀︎もともとは宗教改革から始まった識字化が、産業革命等の経済革命の素地をつくった。
☀︎直系家族は、強力な推進力を持つが、既存のシステムを変えるのには核家族よりも時間を要する。
☀︎日本は世界の競争から出たがっているように見える。
個人的には、北欧の国々は女性の方が男性よりも圧倒的に学力が高いのが面白かった。 -
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ネタバレ悪童日記の続編
「ぼくら」双子が別れ、「おばあちゃん」の家の国に残ったリュカの物語がメイン。
戦争が終わったものの、全体主義?が支配する重苦しさがある世界。
前著ではなかった固有名詞が出てきて、リュカにも個人的に人間関係を築いていく。前著同様に、感情を排した文章ながら、それぞれの人物の感情を感じさせる事柄が描かれる。
そして、リュカも、実の父親との間に生まれた子を抱える母親とその子を家に住まわせ、自分の子のように愛情を注ぐ。
リュカの話がメインで進むが、終わりにもう一人の双子が登場する。そこでは日記がもう一人のクラウスの妄想であるようなことがほのめかされる。 -
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原作はトランプ当選、ブレグジット、フランス極右政党の拡大があった2016〜2017直後に出版されているが、その当時すでにここまで情勢について分析・理解が進んでいたとは驚きだった。ブレグジットについては社会の上層が下層に寄り添った結果だと評価する姿勢だったが、あとがきで最新のイギリスの動向(ロシアフォビアと米国追従)について懸念が示される立場となっている。初等教育→中等教育→高等教育受講者割合が高まっていく傾向は先進国に共通しているが、教育の階層化によって格差が広がり社会の分断が生じている。英米はとくに、エリート層が短期的に最大利潤を得るためにグローバル化を進め、産業をどんどん労働力の安い海外に移転させた。国内産業は空洞化し特権階級である白人の中間層も生活がどんどん苦しくなっている状況で、その反動の結果がトランプによる保護貿易主義だが、今さらモノづくりやエンジニアリングを復活させることなど不可能で、安い賃金のヒスパニックなどに労働資源としての競争にも勝てず、関税を上げたせいで物価は上がりますます厳しくなる一方の状況。白人の死亡率上昇などデータでも示されている。それに対して日独はレベル1の直系家族システムの影響により垂直方向の伝承が大事にされる傾向と、もとからの保護主義傾向により英米ほどの状況にないとの分析。
そもそも工業化、都市化が進む先進国では家族システムも核家族に収斂されていくのでは?と疑問があったが、人口学者たちも同じ立場からスタートしていた模様。しかし地理データが示す結果は、家族システムによる影響が未だに継続していることを示す。日本でいえば長男が親元で老後の面倒みなければならない、といった慣習は確かに残っている。
本書は遠い過去〜最近の過去まで、様々な比較データを用いることで、現代を生きる我々がどういう世界にいるのかを俯瞰させてくれる良書である -
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人類史あるいは社会発展を物語る際に現代人は地政学と経済に重きを置いており、社会を語るのに国家・宗教・教育を重要視しがちだが、人間社会の最小単位である家族システムに注目すると、驚くべき相関関係が見出されることを説明する。トッドとしては家族システムで全てを説明できるわけではない、還元主義とは一線を画すと言っているが、論調的には全てを説明しようとしているように見受けられる点が引っかかる。どこまで現実を正確に表しているか、ちょっと後付け・こじ付けがすぎると思われる点もあるが、原因と結果の説明がうまく聞こえることもあるため、非常に興味深い主張ではある。
まず原初のホモ・サピエンスは外婚制・移動性の高い核家族システムであり、地球上に広く拡散した。この原初の家族システムに近いのがイギリス・アメリカであり、アングロサクソンが覇権を握った遠因になるというのである。経済の躍進の前に政治的変革が根底となる。産業革命の制度的諸条件を築き上げたのは、ピューリタン革命、名誉革命による代表制統治であり、これらの統治制度を受け入れやすいのは核家族システムなのだという。当然アメリカには黒人や他の欧州人含め様々な人種が移民として来ているが核家族システムが根付いていった。19世紀末に大勢渡米したのは直系家族システムのドイツだったが、直系家族も成長を加速させる力があるとのこと。ただし、直系家族は過剰な完璧さで規範にハマリすぎる罠があり、日本やドイツに共通するポイントとなる。直系家族システムは技術伝承に向いているが保守的で創造的破壊を得意としない。(こういった説明を聞いて動物占いを連想してしまうのは私だけだろうか) 他方、中東・中国・インドの父系制社会は女性ステータスを低下させ、他社会の発明によって停滞してしまったことになる。ユーラシア大陸全体で見ると、父系直系家族、父系共同体家族などが中心で、核家族がベースとなっているのはイギリスをはじめ文字通り辺境の周縁部となる。外婚制共同体家族は共産主義や権威主義と親和性があり、中国やロシアが含まれる。我々にとって最も馴染みないのが、従兄弟との結婚が奨励される内婚制共同体家族(アラブ・ペルシャ)。シュメールや中国の初期文明では農業や文字の発明と同じ時期に父系制へ移行し、周辺の遊牧民などに伝播した。その結果、父系制氏族となったトルコ・モンゴルなどが軍事的に脅威となっていくパターンが見出される。その他、プロイセンは直系家族システムのため、長男以外の息子たちは軍への参加がスムーズで軍事力確保に繋がったというのもあった。ところで、ある程度近代化された社会では民法的に遺言・相続の意思も自由で、都市部に人口が集中して核家族化が進んでいくのは世界共通のように思われたが、今後100年たつとどのようになっていくのだろうか。
父系的社会は第二次産業に強く、女性ステータスが高い双系的社会は第三次産業に強い→前者は生産に、後者は消費に特化している。これが本当なのであれば、近い将来とんでもないしっぺ返しを食らうことになりかねない警告に受け止められる -
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読みながら「スクラップ・アンド・ビルド」という言葉が頭に浮かんできた。
『悪童日記』『ふたりの証拠』に続く三部作の完結編ということになっているが、普通の小説の三部作とは全く違う。何が違うのかは実際に読んで確かめて欲しいし、そもそも感想を綴るのが非常に難しい作品ではあるのだが、あえて書くとすれば、本作のタイトルにもなっている「嘘」とは何か?という点が物語全体を通した鍵であるということと、大ヒットした作品の続編でこの仕掛けをやったのは凄い、という点に尽きるかな。
まさにこれこそ「スクラップ・アンド・ビルド」。
それにしても『悪童日記』は大抵の書店に置いてあるのに、『ふたりの証拠』『第三の嘘』が全然見つからないというのは一体どういうことなのか。一作だけ選ぶのであればそりゃ『悪童日記』になるのだろうけど、個人的にはシリーズとして読まれるべき作品だと思う。早川書房、頑張れ! -
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『悪童日記』の続編で、前作のラストで生き別れとなった双子の片割れのその後が描かれている。
戦争を背景にした悲劇の物語というベースの設定は変わらないものの、前作とは打って変わり、5ページ前後だった一章あたりの長さがどんと増えたことが特徴的で、ともなって主人公を含めた登場人物の造詣に厚みが加わったように思う。語り手も双子から三人称のものへと変わり、客観的な描写が主になったので読んでいてずいぶん印象が異なる。
またよく読むと、特に主役が変わる最終章で顕著なのだが、前作と辻褄が合わない箇所が出てくる。これは次作に繋がる意図的な仕掛けなのだが、読者は面食らうかもしれない。
総じて『悪童日記』の衝撃度には及ばないものの、本作はまた違う意味で印象に残った一冊になった。ヒット作の続編ということで、普通に考えると前作と同じような作風にするのが安パイなんだろうけど、あえてそうしなかったところも評価されているのかなと思う。 -
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非常におもしろい。
無駄な比喩がなく、本質が凝縮されたような文体。つまり、出来事の語りと視点の語りがうまく混ざり合っていた。
視点にはキリスト教や常識など文化的なものもあるし、立場や個人的な感情に立脚してもいた。
『若い男』では、周りの人から特別な意味で「見られてしまう」自分たちの関係を、そうした見方とのあからさまな対立を持ちだして掘り下げていくのではなく、相手をプライベートな人間と見なして、つまり好きな人間として相手と関わっていて、それにまつわる感情と知性と官能を描いていた。相手をあるカテゴリーに当てはめることはしてるけど、そうすることで相手を理解しようとかそういうことじゃなくて、自身の相対化に結びつけている。
『もうひとりの娘』では、両親への反抗を描いているというよりかは、愛の不在時における孤独と知性と共に生きる女性の、死者との袂の分かち方、自身の存在理由、書き続けることのあり方を掘り下げようとしていた。
感情や官能の作家というよりかは、孤独や知性の作家。自身の存在形式にえげつないほど敏感な作家なのだろう。 -
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フロイトの精神分析的に社会を意識、下意識、無意識の重層的構造としてイメージすると今まで見えなかったものが見えてくる。
•意識は政治、経済。この経済こそが決定的な要因を持つものとして分析するのが経済学。経済の発展段階の上部構造に政治があるというのが従来の考え方である。
では、経済はどのようにして決まってくるのが。なぜ世界の地域により経済に差があるのか。
例えばマルクスは(1) 原始共産制 → (2) 古代奴隷制 → (3) 封建制 → (4) 資本主義 → (5) 社会主義 → (6) 共産主義と生産力の発展に伴って進むと考えたが、西洋視点の偏りという問題点がある。
これを人間で下意識と無意識に目を向けたのが本書である。
•下意識層は教育。識字率、女性の教育率、中等教育から高等教育率の後を追って経済は成長する。
•無意識層は宗教と家族構造。これらが経済構造と政治構造に大きな影響を与えることに気づくことでコペルニクス的転回がある。
家族構造は原始は核家族から始まり、農耕の発展に連れて直系家族、共同体家族と発展する。何万年、何千年単位の大きな変化であり、数百年や数十年の短いスパンで見れば逆行や例外が起きる事はある。
この観点で見れば最も進んだ形が共同体家族であり、その次が直系家族、そして最も原始的な形が核家族であることがわかる。つまり文明発祥の地に近い場所では最新の共同体家族、その周りに直系家族があり、文明から最も離れた周縁部に核家族が残っている。
そして文明中心部では核家族時代に民主主義は経験済みで、今は英米仏といった最も遅れた地域で民主主義社会となっている。民主主義は産業革命の後の資本主義と親和性が高かったため、西洋が現在の世界覇権を握ることになったと言うストーリー。
ちなみに対戦後に社会主義国となったのはすべて共同体家族構造の地域で、権威主義に基づく平等主義が受け入れやすい土壌があったと考えられる。現在のロシア中国はマルクス主義社会主義ではないが、共同体家族構造が受け入れやすい権威主義体制となっている。
EU、ユーロはキリスト教の神に変わる支配体制。権威主義、不平等主義を受け入れる土壌がある直系家族やゾンビカトリシズムの国家が加盟している。
英国はゾンビプロテスタンティズムかつ絶対核家族であることからユーロに加盟しなかった。EU離脱はその現象。
社会主義国家が共同体家族国家にのみ発生したのと同じメカニズム。
EU、ユーロはフランスがドイツを抑え込むために作ったが、フランスの意図に反してドイツとの経済戦争になり、フランスは敗北。
EU、ユーロがもたらしたもの。
ドイツの経済的一人勝ち。
各国に財政規律=緊縮財政を強いることによる経済的低迷→失業率上昇→有能なエリートの若者のドイツへの流入→ドイツ出生率低下の穴埋め。
グローバリズムにより米国では過去にないほど経済格差が広がっているが、EUを単一国家と見た時は同じ現象が起こっている。
ドイツは経済成長のために移民導入を優先目標としており、そのためにEU内の国家さえ犠牲にしている。ウクライナへの介入もその文脈にあり、民主主義を守るなどは単なるお題目にすぎない。
ウクライナ戦争は西洋の敗北である。ロシアはGDPで測れない強さがあり、西洋以外の国はむしろロシアを積極的または消極的に支持している。
表層的な部分に囚われて本質を見誤ってはいけないことを気づかせる本書である。
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Posted by ブクログ
人類史を家族構成から読み解き、民主主義の本質に焦点を当てる。
著者によれば、現在先進国に見られる核家族の形態は原始的なものであるという。原始の人類は核家族を単位として生活していたが、それが直系家族、内婚性共同家族、外婚性共同家族などに分岐し、それぞれ独自の政治的経済的様態を生じるようになった。核家族の形態を持っている先進国においてはある意味原始の形態に収斂した結果という。
そして核家族の形態の国々(個人の自由という概念が生まれやすい)が民主主義を発展させ、資本主義に基づく豊かな生活を謳歌しているわけだが、著者はこの民主主義に警鐘を鳴らしている。
特に核家族形態を突き詰めた英米などは、資本主義に基づくグローバル化を推し進めた結果、体勢に順応した高学歴エリートとそこからこぼれ落ちたグループの分断が深まり、トランプの登場やイギリスのブレグジットなどを引き起こしたと分析している。
本書を読んでいて、いくつか疑問が浮かぶ。なぜ家族構成が分岐した後、ロシアや中国などの共同体家族は核家族に収斂しないのか?核家族に収斂するのが例外的な事象なのだろうか?今後も家族構成のあり方が多様に展開するのだとするとすると、今後我々は「どこに行くのか」?
これらについて、著者は確定的な言辞を避けているようにも思うが、もとより安易な予測はできないだろう。東西冷戦終結の頃フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」のように、リベラルな民主主義や自由経済が勝利を収めたような論調の時代感からすると、今日はあまりに混沌としていて先を見通すことができないとあらためて感じる。