堀茂樹のレビュー一覧
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ウクライナ問題やトランプ現象等、昨今の大国は「グローバル」から「ネイション」へ回帰しつつある。言うなれば「ソフトナショナリズム」とでも言おうか。かりにそこまで大げさじゃなくとも、主権を守るためにEU離脱を決断した英国の姿勢はなんら不思議ではない。むしろ連合という名のドイツ支配圏と化してしまっているEUこそ危うく、国家的アイデンティティの見えない構成国こそ危険であると著者は説く。人口学という視点からソ連崩壊、リーマン・ショック等を予言し的中してきたからこそ、その説得力に鳥肌がたつ。だが一方で、ナショナリズムが善というわけではなく、むしろ暴走の危険をはらむことを忘れてはならない。そして著者がこのタ
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経済音痴の私にとって衝撃的。確かに今の世界は何かがおかしいとはぼんやりと感じていた。本書は、現代の格差の拡大や危機の恒常化の原因がグローバリズムにあり、それが社会を破壊していることを、5人の筆者が座談を通じてわかりやすく説いている。新自由主義(ネオリベラリズム)が制約のない自由として席捲し、隣国同士の経済戦争につながっていることは、EUに見られる。われわれは真の民主主義を守るために、各国がネーションごとにまとまり、独自に規制を定め、グローバリズムから脱却することが必要。しかし世界のエリートの大半はグローバリズムを正しい方向に導く道だと信じているとのこと。…ところで情報のグローバル化は避けられな
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ネタバレグローバリズム、新自由主義を否定的に捉えた一冊。
普段からグローバル至上主義とも言える風潮に浸っているため非常に新鮮な内容であった。
本書を通じて、グローバリズムの弊害を以下のように捉えた。
・格差拡大
国境を越えて経済活動がされるため、資本を持つ大企業が残り中小企業は潰れる。
さらに大企業の中でも資本家と労働者の格差が広がる。
(さらに生産量が増え供給力が上がることでデフレに繋がる)
また、同様に大国が富み、小国は貧しくなる。(搾取される)
本書では、「経済戦争」というワードが使われていたのが印象的。捉えようによっては経済を武器にした帝国主義なのではないか。
・伝統や人間関係の崩壊
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とても感動的な本。外部からの「苦痛」であるパッションを、それに捕らわれながらもなお明晰さを失わず、自立を保っている。そんな彼女の文体は、彼女のパッションに限りなく近い。書くことと愛することが同義であるように。シンプルな情熱、それはとても純粋で、冷たい透き通った水のよう。直截的な表現で少しも自分を誤魔化さず、真摯に自分と向き合うことは、ひどく恐ろしいことだ。一歩間違ってしまえば、狂人になりかねない。それでも彼女は真正面から自分を受け止める。甘いことも、苦いことも、激しいことも、捌け口のない欲望も、かっこ悪くみじめな自分も、しっかりとした目で見据え続ける。そこに留まり、パッションを受け続けた者だけ
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非常におもしろい。
無駄な比喩がなく、本質が凝縮されたような文体。つまり、出来事の語りと視点の語りがうまく混ざり合っていた。
視点にはキリスト教や常識など文化的なものもあるし、立場や個人的な感情に立脚してもいた。
『若い男』では、周りの人から特別な意味で「見られてしまう」自分たちの関係を、そうした見方とのあからさまな対立を持ちだして掘り下げていくのではなく、相手をプライベートな人間と見なして、つまり好きな人間として相手と関わっていて、それにまつわる感情と知性と官能を描いていた。相手をあるカテゴリーに当てはめることはしてるけど、そうすることで相手を理解しようとかそういうことじゃなくて、自身の -
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フロイトの精神分析的に社会を意識、下意識、無意識の重層的構造としてイメージすると今まで見えなかったものが見えてくる。
•意識は政治、経済。この経済こそが決定的な要因を持つものとして分析するのが経済学。経済の発展段階の上部構造に政治があるというのが従来の考え方である。
では、経済はどのようにして決まってくるのが。なぜ世界の地域により経済に差があるのか。
例えばマルクスは(1) 原始共産制 → (2) 古代奴隷制 → (3) 封建制 → (4) 資本主義 → (5) 社会主義 → (6) 共産主義と生産力の発展に伴って進むと考えたが、西洋視点の偏りという問題点がある。
これを人間で下意識と無意識 -
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人類史を家族構成から読み解き、民主主義の本質に焦点を当てる。
著者によれば、現在先進国に見られる核家族の形態は原始的なものであるという。原始の人類は核家族を単位として生活していたが、それが直系家族、内婚性共同家族、外婚性共同家族などに分岐し、それぞれ独自の政治的経済的様態を生じるようになった。核家族の形態を持っている先進国においてはある意味原始の形態に収斂した結果という。
そして核家族の形態の国々(個人の自由という概念が生まれやすい)が民主主義を発展させ、資本主義に基づく豊かな生活を謳歌しているわけだが、著者はこの民主主義に警鐘を鳴らしている。
特に核家族形態を突き詰めた英米などは、資本主義に -
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表紙のスーツ姿の女性が、まず実母と重なって…手にとった一冊。こんな色が好きだった母親を想って。
「歪な関係」を抱えた人、特に親と…少なくはないと思うけれど、そんな人には共感する部分が多い作品だと思う。私的な感情を感情的に語りすぎず、適度にクールな点がより「母親」像を浮かび上がらせていると思う。 同じように、母親の異常に気づき、部屋を片付け、施設を探し、入院、他界まで…一年という時間の中で過ぎていった嵐のような昨年を振り返った。
作中の母親と実母とが重なる部分が多く、特に認知症を発症してからの様子が手に取るようにわかるため、切なくて思わず涙。
個としての輪郭が無くなっても、やはり親と子として -
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戦時中の小さな町。主人公の双子は、疎開したその町で、自分たちなりの正義を貫いて生き抜いていく。清冽で苛烈な子どもたち。まだ乳歯が生えている年齢なのに。
双子の周囲には、野卑で冷たい祖母や将校、貧しく孤独な隣人の女の子などさまざまな人々がいる。読み進むうちに善と悪、聖と俗が入り混じり混沌として、登場人物たちの印象がぐらぐら動いて変わっていった。主人公の正義すらも、正しいのかよくわからなくなった。そして人間はたしかにそういうグラデーションに満ちた存在なのだろう、と思った。
戦時中の生活や雰囲気の描写は、少し前なら現実感なく古くさいと思っただろう。今は身近な感じがして想像しやすくなっていることが、恐 -
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ネタバレ両親の庇護のもと、幸せに暮らしていたはずの賢い双子の男の子。
戦争の苦しみ悲惨さから自分たちを守るため、自ら労働し、勉強し、外国語を習得し、死に対して慣れたり、泥棒したり、傷つけられたりする訓練をする。
私はどうしても、母親としての視点で彼らをみてしまう。
心に残る場面が多くあった。
母親が双子を心配して迎えに来たのに、祖母の元を離れず目の前で亡くなっても動揺せず埋めてしまう2人。
自分のことでいっぱいいっぱいな父親を、利用する2人。
人の死にたいという要望を、抵抗なく叶えてしまう2人。
人の死が当たり前の世界に住んでいて、いちいち傷ついていたら生きていけないのだと思う。
大人たちが始めた戦 -
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ネタバレ第二次世界大戦が激化していく中、疎遠だった祖母の元へ疎開していく双子の日々の出来事を記した作文あるいは日記の体裁の物語。叙情的な表現を排し、即物的な文章で書かれており、戦争の厳しさすらやや寓意的に思える印象を与える文章だった。
昔使っていた単語帳に、”cruel” の項目があった。その単語帳は意味と共に例文が載っている形式で、その時の例文は ”The children are cruel.” だった。この小説を読んでいて、なぜだかこの例文を思い出した。
まだ社会的な価値観が形成されていない双子が、自分たちの目で見た戦時中の景色を自分たちの考えで判断し、世界を発見していく過程が記されており -
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今、語っているのはいったい誰なのか?
虚構と現実が入り乱れ、文字列に振り回されるような読書体験が面白かった。
いってしまえばフィクションは本来すべて“嘘”だが、私たちは物語の内側に入り込み、登場人物と一緒に一喜一憂したりする。
ところがこの三部作には、没入したはずの自分自身をも俯瞰し、これは信じていいのか?と立ち止まらせる。 そんな、視点が二層にズレるような奇妙な感覚があった。
1作目では、双子が「ぼくら」という1つの器官のように振る舞い、感情を排除した淡々とした文体で悲劇を記録する。 その無表情さがかえって不気味な、インパクトのある作品だと感じた。
しかし三作を読み終えるころに