警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する
グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。
EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。
圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし
...続きを読む、その結果なにが起きたか。各国は通貨の切り下げなど金融緩和や財政出動もできず、独自の産業政策も不可能になりました。
EUでの勝者は、ドイツだ。ユーロ安でドイツの輸出産業は大いに潤った。経済危機に瀕した国々を低賃金で下請けのように使いユーロ圏がドイツにとって開かれた市場であることをフル活用している。
IMFによって改革された国、韓国も、グローバル化で破壊された国である。
雇用の不安定化がもたれされた。雇用も自由化されて、労働市場の柔軟性を高めたことが、正規職から非正規職への置き換えが進んでいった。失業率は7.5%、就職準備をしている人をふくめると若年層の失業率は、20%である。
つまり、IMF以降は、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなってしまったのです。
グローバリズムは、短期的な数字を追う。そのために、設備投資、研修、リサーチといったことがおろそかになる。長期的に成長が必要なはずの生産性の向上や、所得向上のためのコミットメントも生まれない。
その結果、技術開発は進まず、所得も増えず、成長が鈍化していく。目先のパイの奪い合いが行われるだけで、パイそのものを大きくするためのインセンティブはうまれない
信号や、車線がない道はめちゃくちゃになって道路の効率性は著しく落ちる。同様に、単なるグローバズムが困難しかもたらさない。ある程度の規制がどうしても必要なのである
人間の欲望を放置するのが、グローバル資本主義、欲望そのものを基準にしようとする、無法地帯になるのも当たり前なのです
日本には日本的なものが残る。でもグローバル資本主義は、それが残らなくなるまでにグローバルしていく
世界には、2つの未知の巨大リスクを抱える地域がある。それは、中国と、ドイツだ。
日本は、人類学上の理由から、アングロサクソン・モデルとはきわめて異なった資本主義の調整されたモデルを示している。
グローバリズムは、国境を前提としないもの、一方で、インターナショナリズムは、真逆の概念です。
デフレをまねく、グローバル資本主義
①経済の不安定化
②実体経済への大きな影響―グローバル企業の巨大化
③格差の固定化
④危機そのものがグローバル化 ―リーマンショック
⑤お金第一主義、お金で換算できないものは見捨てられていく
ネオリベラリズムは成長すらもたらさない
失業の増大、格差の拡大、富が拡大するからがまんせよ ⇒ でも、実体は、そうなっていない
二国間、多国間の自由貿易協定は、規制緩和をより強く要求内容になっている ⇒ これまで以上にスピードを増して、自国の産業育成が途上国にとってますます困難になっている
第1次グローバル化 1870年代 ⇒ 大恐慌 ⇒ 第1次世界大戦で終了
第2次グローバル化 現代 ⇒ 歴史に学べ
共通事項
①多国籍企業の存在
②経済的な相互依存が平和を導くという学説の存在
③自由主義経済学が大いなる影響力をもった
④先進国と途上国との対立の先鋭化
⑤周期的な金融危機
⑥帝国主義
相違事項
①国際通貨制度
②福祉制度の違い
③国際機関の存在
ヨーロッパに期待する最善の策とは、ユーロの崩壊。アメリカの不確実性、そして、ヨーロッパの死。
世界は大劣化している
⇒新自由主義にそまりきった、現代のエリートは国民の苦しみには無関心になっている
⇒ノブレス・オブリージュの放棄、それはグローバルなレベルで統治能力の危機が起きている
グローバリゼーションの危機は民主主義の危機である
経済の危機のみならず、民主主義の危機をも引き起こしている
格差が広がり、すでに許容範囲を超えている
エリートの責任はますます大きく、圧倒的なものになってきている
日本の例として
グローバリゼーションの対極は、ネーション
言語、歴史、伝統、領土を共有し、日本のどこにうまれようが「俺たちは日本人だ」と了解し合える
価値観を共有する集団として、ネーションはちょうど都合がよい
つまり、国民意識のほうが、民主主義よりも先にあるのです
自由貿易によって相手国との市場の激しい奪い合いが起きることもある
さらにいうと、自由貿易と、安全保障とは関係がない。
今我々日本人は、その実例をみているのです。
目次
もくじ
第1部 グローバリズムが世界を滅ぼす
第2部 グローバル資本主義を超えて
トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム
新自由主義の失敗と資本主義の未来
歴史は繰り返す?――第二次グローバル化の未来
国家の多様性とグローバリゼーションの危機――社会人類学的視点から
新自由主義と保守主義
第3部 自由貿易とエリートの劣化
おわりに
ISBN:9784166609741
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:830円(本体)
発売日:2014年06月20日第1刷
発売日:2014年07月10日第2刷