ハジュン・チャンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する
グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。
EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。
圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし、その結果なにが起きたか。各国は通貨の切り下げなど金融緩和や財政出動もできず、独自の産業政策も不可能になりました。
EUでの勝者は、ドイツだ。ユーロ安でドイツの輸出産業は大いに潤った。経済危機に瀕した国々を低賃金で下請けのように使いユーロ圏がドイツにとって開かれた市場であることをフル活用している。
IMFによって改革された国、韓国も、グローバル化で破壊された国である。
雇用の不安定化がもたれされた。雇用も自由化されて、労働市場の柔軟性を高めたことが、正規職から非正規職への置き換えが進んでいった。失業率は7.5%、就職準備をしている人をふくめると若年層の失業率は、20%である。
つまり、IMF以降は、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなってしまったのです。
グローバリズムは、短期的な数字を追う。そのために、設備投資、研修、リサーチといったことがおろそかになる。長期的に成長が必要なはずの生産性の向上や、所得向上のためのコミットメントも生まれない。
その結果、技術開発は進まず、所得も増えず、成長が鈍化していく。目先のパイの奪い合いが行われるだけで、パイそのものを大きくするためのインセンティブはうまれない
信号や、車線がない道はめちゃくちゃになって道路の効率性は著しく落ちる。同様に、単なるグローバズムが困難しかもたらさない。ある程度の規制がどうしても必要なのである
人間の欲望を放置するのが、グローバル資本主義、欲望そのものを基準にしようとする、無法地帯になるのも当たり前なのです
日本には日本的なものが残る。でもグローバル資本主義は、それが残らなくなるまでにグローバルしていく
世界には、2つの未知の巨大リスクを抱える地域がある。それは、中国と、ドイツだ。
日本は、人類学上の理由から、アングロサクソン・モデルとはきわめて異なった資本主義の調整されたモデルを示している。
グローバリズムは、国境を前提としないもの、一方で、インターナショナリズムは、真逆の概念です。
デフレをまねく、グローバル資本主義
①経済の不安定化
②実体経済への大きな影響―グローバル企業の巨大化
③格差の固定化
④危機そのものがグローバル化 ―リーマンショック
⑤お金第一主義、お金で換算できないものは見捨てられていく
ネオリベラリズムは成長すらもたらさない
失業の増大、格差の拡大、富が拡大するからがまんせよ ⇒ でも、実体は、そうなっていない
二国間、多国間の自由貿易協定は、規制緩和をより強く要求内容になっている ⇒ これまで以上にスピードを増して、自国の産業育成が途上国にとってますます困難になっている
第1次グローバル化 1870年代 ⇒ 大恐慌 ⇒ 第1次世界大戦で終了
第2次グローバル化 現代 ⇒ 歴史に学べ
共通事項
①多国籍企業の存在
②経済的な相互依存が平和を導くという学説の存在
③自由主義経済学が大いなる影響力をもった
④先進国と途上国との対立の先鋭化
⑤周期的な金融危機
⑥帝国主義
相違事項
①国際通貨制度
②福祉制度の違い
③国際機関の存在
ヨーロッパに期待する最善の策とは、ユーロの崩壊。アメリカの不確実性、そして、ヨーロッパの死。
世界は大劣化している
⇒新自由主義にそまりきった、現代のエリートは国民の苦しみには無関心になっている
⇒ノブレス・オブリージュの放棄、それはグローバルなレベルで統治能力の危機が起きている
グローバリゼーションの危機は民主主義の危機である
経済の危機のみならず、民主主義の危機をも引き起こしている
格差が広がり、すでに許容範囲を超えている
エリートの責任はますます大きく、圧倒的なものになってきている
日本の例として
グローバリゼーションの対極は、ネーション
言語、歴史、伝統、領土を共有し、日本のどこにうまれようが「俺たちは日本人だ」と了解し合える
価値観を共有する集団として、ネーションはちょうど都合がよい
つまり、国民意識のほうが、民主主義よりも先にあるのです
自由貿易によって相手国との市場の激しい奪い合いが起きることもある
さらにいうと、自由貿易と、安全保障とは関係がない。
今我々日本人は、その実例をみているのです。
目次
もくじ
第1部 グローバリズムが世界を滅ぼす
第2部 グローバル資本主義を超えて
トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム
新自由主義の失敗と資本主義の未来
歴史は繰り返す?――第二次グローバル化の未来
国家の多様性とグローバリゼーションの危機――社会人類学的視点から
新自由主義と保守主義
第3部 自由貿易とエリートの劣化
おわりに
ISBN:9784166609741
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:830円(本体)
発売日:2014年06月20日第1刷
発売日:2014年07月10日第2刷 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現在の行き過ぎた(と個人的には思っている)グローバリズム、自由主義経済については懸念を感じている。という意味では自分は保守なんだと思う。一方で、本書にも書かれている通り、本来反対すべきグローバリズムを今の保守派が進めているのは、やっぱり謎。
言葉の響きで単純に「よいもの」と思い込んでいるわけではないだろうし、必ずしも個人(および企業)が自己の利益のためのみに利用しているだけだもなさそうな。そんな謎に対する1つの考えも述べられています。
個人主義、民主主義の行き過ぎ、識字率、劣化(本書ではエリート・指導層の劣化とあったが、国民全体の劣化ともいえるのではないか?)といったいろんな要素を絡めて考えていく必要があるようで。個人的にもちょっと今後も考えていきたいテーマ。 -
Posted by ブクログ
経済音痴の私にとって衝撃的。確かに今の世界は何かがおかしいとはぼんやりと感じていた。本書は、現代の格差の拡大や危機の恒常化の原因がグローバリズムにあり、それが社会を破壊していることを、5人の筆者が座談を通じてわかりやすく説いている。新自由主義(ネオリベラリズム)が制約のない自由として席捲し、隣国同士の経済戦争につながっていることは、EUに見られる。われわれは真の民主主義を守るために、各国がネーションごとにまとまり、独自に規制を定め、グローバリズムから脱却することが必要。しかし世界のエリートの大半はグローバリズムを正しい方向に導く道だと信じているとのこと。…ところで情報のグローバル化は避けられない。経済の脱グローバル化はいかにして達成できるのだろうか?
-
Posted by ブクログ
ネタバレグローバリズム、新自由主義を否定的に捉えた一冊。
普段からグローバル至上主義とも言える風潮に浸っているため非常に新鮮な内容であった。
本書を通じて、グローバリズムの弊害を以下のように捉えた。
・格差拡大
国境を越えて経済活動がされるため、資本を持つ大企業が残り中小企業は潰れる。
さらに大企業の中でも資本家と労働者の格差が広がる。
(さらに生産量が増え供給力が上がることでデフレに繋がる)
また、同様に大国が富み、小国は貧しくなる。(搾取される)
本書では、「経済戦争」というワードが使われていたのが印象的。捉えようによっては経済を武器にした帝国主義なのではないか。
・伝統や人間関係の崩壊
ヒトやモノが国境を越えて自由に行き来できるため、人間関係は希薄化し、伝統も無くなっていく。
これは伝統や人間関係を守ろうとする保守の考えとは対局の状況なのだが、なぜか保守主義者は新自由主義を信仰する。
・危機のグローバル化
国境の意味が希薄化しているため、ある国で起こった危機が他国に伝播しやすい。2016年6月に起こったイギリスのEU脱退が記憶に新しい。
ではどうするか。
一部の筆者はケインズのように保護政策をとるべきであり、政府が統制を取り、一定のルールのもと経済活動をするべきだと語る。
ただし、現在の問題として、近年のエリートが劣化し、新自由主義の旗印のもと現状を放置していると結論づける。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1980年以降、経済学は新古典派だけになってしまった。イノベーションや行動経済学も組み込まれた付け足しでしかない。
アメリカでは奴隷は財産であり、貸付対象、担保にもなった。
1791年ハイチ革命で、フランスに反乱を起こし1804年に独立国となった。ルイ14世はルイジアナから撤退し、アメリカがこれを購入して領土が広がった。ハイチ革命がなかったら、ルイジアナはフランス領のまま。
資本主義と自由との関係は複雑、ときに両立しない。
労働参加率は貧しい国の方が高い。タンザニアが87%、ドイツは60%。児童の労働率が高い。
生産性の高さは環境によるもの。富裕国に移り住めば生産性が高まる。生産設備、高いインフラなどによる。貧しい国は、個人後からではどうしようもない問題で貧しい。真面目に働かないから、欠点があるから、ではない。
ペルーは、ペルー沖の片口いわしを食べた海鳥の糞による肥料や火薬製造によって潤った。ハーバーボッシュ法まで。一次産品は、たやすく他国に奪われる。ゴムやコーヒーの例。化学産品はそれとは違う富の奪い方をする。オランダは技術力で(温室)農地を増やし、水耕栽培で垂直方向に農地を増やした。高い生産水準のためには技術力が欠かせない。
幼稚産業保護論。日本が重化学工業を保護しようとした政策は批判があった。繊維産業に特化した方が競争風位があるのではないか、と。
英国と米国は、自由貿易発祥のイメージがあるが、世界一の保護主義の国だった。自国の産業が強くなってから切り替えた。しかし、安易にやると大人になり損ねる。
現代グループは、もともと建設業。自動車はフォードとの合弁産業。いろいろな要素、優秀な人材と政府の力で伸びた。三菱は海運会社としてスタート。発展は、個人の才能、企業努力、内部相互補助、政府の支援、消費者の犠牲、のおかげで成長した。
アメリカ国防省の防衛研究がなければ、IBMもインテルもアップルもなかっただろう。
自由主義社会での成功は個人主義ではなく総合力が必要。
ゴールデンライスは遺伝子組み換え問題で、軌道に乗っていない。
特許が絡まり合った状態で、技術的な進歩ができない。特許プールで共有する方法がある。そのほかにすべての特許を短くする方法、報奨制度で初期費用をまかなう、方法もある。
缶詰の技術は懸賞金によって発明された。
ウルグアイはサッカー王国でもあり、牛肉王国でもある。コーンは、もともと粒の意味。コーンビーフは塩漬けのための塩の粒から来ている。
穀物法は、産業と、貿易に課された政府の帰省とのと戦い。最終的には撤廃することで産業側の勝利となった。自由貿易の起源とされる。が、世界で最初に自由貿易を強いられたのは南米。不平等条約のせい。日本も同様だったが、城郭改正後は30%乘関税を掛けた。WTOでは現地調達率規制は禁止されている=富裕国に有利。
貿易の自由化は敬愛援助の条件となっている。
世界貿易は、力の不均衡により自由をいう名前で不公平な貿易を強いられている。
バナナは品種改良の結果、自分では子孫を残せない。バナナ企業は巨大になり、中南米の経済を支配した。現地に対しては功罪がある。新技術の導入に役立つこともある。外資導入策が成功する国もある。フィリピンは飛び地経済の被害国でもある。安価な労働力だけを使われて技術移転しない。合弁を義務づける、雇用の制限などが必要。規制を課してノウハウを手に入れようとする努力が必要。と同時に支援策で誘致する。
コカコーラの名称はコカの葉とコーラの実に由来する。ボリビアのモラレス大統領は、ワシントンコンセンサスに反して、主要産業、公益事業を国有化、社会保障費を増やした。経済学的には後退だが、所得格差が減少し、経済は成長した。アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、ウルグアイ、ベネズエラが続いた。ピンクの潮流という。ベネズエラの失政以外は。
発展途上国では、新自由主義が惨憺たる結果を招いている。
ドイツのビスマルクは、ライ麦生産者に関税の導入を認めさせて、重工業を発展させた。社会保障制度、公的年金を導入しt。社会主義運動の弱体化を狙った施策。そのため、社会保障制度は当初、社会主義者に反対された。労働者を買収する手段と映った。
福祉給付はただではない。全員が対価を払っている。スケールメリットがあること。そのために全員が安価で済んでいる。医療保険がないアメリカの医療費と比べると一目瞭然。細分化されてる医療保険ではスケールメリットを活かせない。
自由主義派は競争の結果を受け入れるべきと考える。しかし機会の平等を徹底できるか。男女差、人種差、教育差、など。ニーズや能力の違いをどうするか。
結果の平等を促進するためには市場の規制のほかに、社会保障制度による再配分がある。
GDPには、家事労働や無償労働を計算に入れていない。ワーキングマザーという呼び方は、主婦は働いていないかのように映る.ケア労働は無償であっても欠かせないもの。GDPでは過小評価されている。
壊血病の克服のため、英海軍ではライムがラム酒に混ぜる形で配られた。ライミーズといえば英国人を指す言葉。
船乗りにライムを摂らせるように、市場の問題には政府の介入が必要。
有限責任の会社はスパイス探しの大冒険を可能にした。スミスは、他人の金でギャンブルをするもの、と批判したが、資本主義の原動力になった。
行き過ぎた金融化で、株主還元割合が90%以上に高まった。長期的な投資ができない状態。議決権を保有期間で決める方法、株主以外のステークホルダーの力を強める、株主の選択肢を制限する。経済の進歩の妨げになっている。
機械化は、雇用を失わせるのはいつの時代でも同じ。AIが特筆されるのは、それを訴えている階級に危機が迫っているから。その技能が無用の長物になりかねない恐怖。
自動織機のおかげで、織工は4倍に増えた=安くなって需要が増えた。政策を通じて雇用を維持できる。コロナで明らかになった。
理屈では、学び直しによって新しい仕事に就ける。現実には教育以外の支援が必要。学び直しがなければ、高い技能を必要としない職にしかつけない。積極的労働市場制度が必要。
いちごはベリーではないのに、ベリーの代表格になっている。
スイスは工業国。ミルクチョコレートはスイス人の発明。後のネスレ。
脱工業化論の罠。製造業は人件費の安い中国のような国で行われ、富裕国は金融やIT、コンサルなどサービス業にシフトすると言われた。しかし、サービス産業化のお手本といわれるスイスとシンガポールは世界1位2位の工業国。
脱工業化の原動力は生産性の変化。需要の変化ではない。機械化で人では減っているので従事者は減る。しかし製造高は増えている。サービスの価格が相対的に工業品より高くなっているだけ。製造業は技術革新の源泉。企業内から外注化されているので、売り上げがシフトしているように見えるだけ。製造業の衰退は、脱工業化の印ではない。製造業がなくて他の産業だけが成り立つことはない。
経済学はいろいろな味方で見るべきである。経済学の分析は、材料のでどころがどこか、を調べるべき。 -
Posted by ブクログ
リーマンショックによる大恐慌を改善方向にした国々で何が起きていたかというと,反緊縮財政を唱える政党を国民が勝利させていたという事実。つまり,国民が政治を変えた国。政治家が政治を担うのだけど,国民が任せっぱなしにしない国。
*****
歴史を学べばそんな失敗を絶対に避けられるとは言わないが,暮らしに関わるような政策を立案する前に,そこから教訓を汲む努力をするべきである。(p.45)
経済学の議論に臨む際には,古の政治家/雄弁家キケロが残した問い―「誰が得をするのか」―を考えなければならない。(pp.415-416)
時には,あからさまに一部の集団を利するような疑わしい仮定に基づいているため,経済的主張が持つ政治的性格が露わなこともある。例えばトリクルダウン説は,金持ちにより手厚く所得配分すれば,彼らはそれを投資に用いるという仮説に基づいている。実際,そうなることはなかった。(p.416) -
Posted by ブクログ
新自由主義とかいうものが何なのかもよく分かっていない状況で読んだ。
経済に対する規制を外して、より開かれた状態にすること。そしてそれは、グローバリズムによって国外にも扉を開き、世界を組み込んだ市場経済を作り出す。労働力は自由に移動するし、企業はより広くマーケットを拡大できる!
やたら持ち上げられる新自由主義に対する切り込み。めちゃくちゃ要約すると、輸出にばかり目がいって、短期的な利益ばかり出そうとするから、内需を生む賃金の上昇が起きない(コストとしか見なされないから、労働力に投資しない)。大金持ちは簡単に株式で富を増やすが、その会社がどうなろうが責任は持たない。格差は大きくなるし、賃金上がらなくて需要も生まれない。そんな中で過剰な供給は続けられる。キツい。マジ無理。
教育格差の話は面白かった。高等教育を受ける人が増えて、初等教育だけが満遍なく浸透していた時に生まれていた平等的な価値観が崩壊。教育による格差が当たり前のものという認識になり、それが賃金格差に対する不平等に対して「当然だろ」と思う仕組みになった。もはや人々は格差を当然のものとして認識し始めている。
あと、右派が新自由主義に対して肯定的なのが奇妙という話も勉強になった。まさかの昔は、右派(保守)は新自由主義否定。なぜなら共同体や育んできた国内文化・繋がりを尊ぶ保守にとっては、それを破壊するグローバリズムは本来真逆の考えだったから。それが全体主義・共産主義の台頭により近づき始めた。そして何より、エリートの劣化が、責任逃れな新自由主義を肯定したのだ(市場原理が要因だからしらねぇよ!という言い訳をする)。
正直半分も理解できてないと思うが、新自由主義についての知見を少しだけでも得られて良かった
-
Posted by ブクログ
この内容で、1800円プラス税はお買い得です。
経済学の入門書としてもバランスよく、簡潔明瞭にまとめる筆さばきには、筆者の学識の高さがうかがえます。
特に、第1部の「習うより慣れろ」では経済学を9つに分けた比較一覧表は必見です。また、あえて多数の経済学派を紹介した目的の1つとして、一般人が「他に選択の余地はない」という権力者に、きちんと反論できるためだそうですが、世の中に唯一正しい経済理論が存在しない以上、その判断はかなり困難を伴いそうです。むしろあとがきでも触れていますが、「ハンマーを持つ者には何でも釘に見える=特定の理論的視点から物事を見ようとすると視野狭窄になる」ようにならないための教養の1つとして学ぶべきものなのでしょう。
第2部「使ってみよう経済学」も経済用語の定義と背景と問題点などが網羅されているので実戦的です。
例えば問題点として、「金融分野は強力であるがゆえに、厳しい規制が必要」(P288)、「(日本も)トリクルダウンを信じて、大企業や親富裕層向け政策を採用した結果、確かに彼らは稼ぎやすくなったし、内部留保(貯蓄)は増えたが、庶民の懐は潤わなかったし、経済格差は拡大した」(P294)、「平等の最大化は、むしろ勤労意欲をそぎ、進取の気性が損なわれかねない」(P298)、「ILOの失業者の定義は、求職活動をして無職の人が統計対象だが、実は働いている人の定義も週1時間以上であればカウントされている」(P341)、「公正であるべき政府も、彼らも個々人としては一般人同様、利己的であるわけで、その集合体である政府が自分たちの利益よりも公益を優先すると過剰に期待してはいけない」(P361)、「税法を巧みに活用し税金を払わないグローバル企業は、展開国のインフラ、教育、R&D助成などにただ乗りしている」(P395)、「技術革新をもろ手を挙げて支持してきたのは、鼻息荒いビジネスエリート、売れっ子経営グル、富裕国の政治家、賢いエコノミストたちで、彼らは世界規模のグローバリゼーションの推進に貢献したが、その結果、国家間の格差は広がり金融危機も誘発した」(P412)、「ウソには3種類ある、単純な嘘、大嘘、そして統計だ。by英国政治家」(P418)など物事を多角的にみる必要性を説く。
最後は、筆者の言葉「案ずるより産むがやすし、経済学は多くのエコノミストがあなたを誤解させてきたよりもずっと平易なものだ」という本書執筆の動機で締めくくられる。
一読をお勧めします。
参考までに公式な作品紹介も掲載しておきます。
ケンブリッジの鬼才ハジュン・チャンによる、初心者のための経済学入門。
「世界経済を破綻させる23の嘘」で経済学の通説をめったぎりにした著者が、世界の全人々のために本腰を入れて書いた、経済学の正しい取扱説明書。
経済学を賢く使い倒すための本。
経済学者が決していわない経済学の5つの真実。
1 経済学の95%はただの常識にすぎない
2 経済学は科学などではない
3 経済学は、政治である
4 経済学者を信じてはいけない
5 経済学はあまりに重要だから、専門家の手に委ねるわけにはいかない
こんな信念に従って、資本主義の歴史と経済の現実をリズミカルに解説していきます。
グローバリゼーションってほんとにいいの?
資本主義って、どんなふうに発展したの?
格差と貧困は、どうすればいいの?
イノベーションって、どれくらい大事なの?
などなど、タイムリーな話題も満載。
おもしろくてためになる経済学入門。 -
Posted by ブクログ
エマニュエル・ドット氏と日韓の論客がグローバル資本主義のの行方を語ります。バブルとその崩壊を繰り返し、大企業によるの寡占化、短期利益を求めての目先のパイの奪い合い、株主はクリックひとつでやめられるが従業員はそうはいかない、国家という枠内でのガバナンスの欠如などの問題を洗い出し、それでもネオリベラリズムを支持するのはエリートが内向きな小さなグループに閉じこもって統治を放棄していると糾弾。
一般人もそれで良しとしてしまうのは、子供の頃貧しかった高齢者が今を豊かだと感じていることに加えて、ハンナ・アーレントの「全体主義の起源」を挙げて論じている。
2014年6月発売の本書ですが、ドット氏の「新自由主義と結びついたことで保守は死んだ。米国人は自由貿易や市場を信用してない。」との発言は本来の保守復権のトランプ大統領を予言しているようです。もっとも、トランプ氏の側近は氏の発言とは裏腹に生粋のリバタリアンばかりとの話もあるようですが。。。 -
Posted by ブクログ
114経済学の95%はただの常識に過ぎない
・資本主義:自家消費や政治的義務(社会主義)のためにではなく、利潤を追求して生産が整う経済
・様々な経済理論を正しく理解するためには、資本主義がどう発展してきたかを知る必要がある←経済理論の有効性は時と場合による
@cpa_1992
・先進資本主義経済が最も急成長していたのは、規制が多く重税が課されていた1950年代から1970年代だった→経済成長のために減税と行政改革は必要?
→事実は空想よりも強し
@cpa_1992
・19世紀の西欧諸国による資本主義の発展とその派生物は、自由貿易と自由市場の拡大のおかげではない、保護主義政策のおかげ?
・トリクルダウン理論
@cpa_1992
学派一覧
1古典学派:市場では全供給者が常に注意を怠らないので放っておけば良い。18世紀後半〜。労働価値説
2新古典主義派:個人は自分の行動を理解しているので放っておけば良い、ただし市場が機能不全を起こしている時は別だ。1870年代〜。個人は快楽機械
@cpa_1992
3マルクス経済学:資本主義は経済の進歩の強力な手段だが、私有財産制度が一層の発展を阻害するようになるため、いずれ崩壊する。1867〜。仕事を消費に回す金を稼ぐための非効用としてではなく、労働者に生来の創造性を発揮せしめるもの
@cpa_1992
4デベロップメンタリストの伝統:後進的経済は、もっっぱら市場任せでは発展できない。16世紀後半〜。生産能力の向上によって経済的後進性を克服する。
→TPPは、日本における自動車産業等による日本の旨味と、日本よりも経済後進国における諸産業の旨味とではどちら?
@cpa_1992
5オーストリア学派:十分に分かっている人などいないのだから、みんな放っておけば良い。1920年代〜計算論争。
6(ネオ)シュンペーター派:資本主義は経済発展の強力な手段である。だが企業がより大型に、そして官僚的になるにつれ萎縮していく。
@cpa_1992
→技術革新に注目し、マクロ経済学などを相対的に無視
7ケインズ学派:個人にとって良いことが経済全体にとって良いこととは限らない。20世紀〜。貯蓄者と投資家が構造的に分離している。
@cpa_1992
8制度学派:個人はその社会の産物である。たとえ彼らがその社会のルールを変えることがあっても。19世紀後半〜。⇆制度は制約である一方、授権性も持つ
@cpa_1992
9行動経済学派:人間はそれほど賢くない。だからルールによって自らの選択の自由に意識的に制約を加えなければならない。1940年代〜
・諸経済学の種類を知り、個々の強みと弱みを知ると、「他に選択肢はない」という権力者に騙されない
@cpa_1992
・経済的アクター
1個人ー分裂する、型にはまる、影響を受けやすい、ヘマをする
2組織ー企業、協同組合、政府
・習うより慣れろ:問題は、まずやってみること
@cpa_1992
第一部で様々な経済学派について見て、第2部で現実の様々な経済問題について見ている -
Posted by ブクログ
グローバル化とよく叫ばれる中でグローバル化を分かりやすく批判的のとらえた一冊。
読み進める前には国境が取り払われ、規制緩和が進む現代において、保護主義的な政策の重要性を説くのは一見ナンセンスに感じた。でも違った。決して保護主義政策をとって自国を鎖国状態にするということを主張しているのではなく、グローバル化の負の影響にも目を向ける必要性を訴えているように僕は感じた。なぜグローバル化が発生したのか?どうしてこれほど現代はグローバル化を謳うのか?グローバル化の正・負それぞれの影響は何か?こういった点を理解し、グローバル化の本質にせまる理解をしておくことが現代経済を見つめるためには必要だと感じた。
では、そうすればこれらをひもとけるのか?まずは歴史(第一次世界大戦前までの第一次グローバル化→世界恐慌→現代の第二次グローバル化→世界不況)をたどることが重要であると気づかされた。
内容に関しては、グローバル化が格差拡大、隣国同士のつぶしあい、エリートの劣化、統治能力の低下などデータなどを用いて負の面が分かりやすく指摘されている。 -
Posted by ブクログ
自由貿易で世界経済が復活するということに対して警告を発する。世界の経済成長率が、新自由主義が勃興する前後で約3%から1.5%へと落ちている事実など、必ずしも寄与していないという。日本では、小泉政権、そして安部政権でも、これを称賛する動きがあったのも事実。企業が儲かれば、法人税も沢山入り、国も潤うかもしれない。しかし、利益の代償として働く者の給料が減ってしまっては、企業栄えて、国滅ぶにならないだろうか。一部の富裕層のために、それはあるというのは、アメリカ、西欧を見て納得してしまう。自由主義という言葉から連想するのは、解放、個人かもしれないけど、成熟した個人ばかりの社会とは限らない。むしろ、大多数は弱者のはず。平等がすべてではないですが、せめて、脱落したものが再びレールに乗れる、そんな社会なら救いがあると思うのだけど。