黒輪篤嗣の一覧
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ユーザーレビュー
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新しい世界の資源の地図を読んで
第一部 米国の新しい地図
・マクロを見ることは大切
→シェールガスで天然ガスの供給量が急激に増えて、天然ガスが下落することを悟ったEOGは、シェールオイルに舵をきった。
・シェールオイルによって、アメリカは世界の主要な石油プレイヤーになった。これは、経済的にも地
...続きを読む政学的にも重要。
→各国との貿易で赤字を減らす要因になる。自国でエネルギーを賄えるようになったことで、地政学的にも優位な立場になった。国際的な安全保障を実現しようとした時、強硬策に出られる余地が出てきた。
・メタンガス流出問題
→シェールオイルに限った話ではないが、設備やパイプラインから漏れ出るメタンガスが問題になっている。回収すればお金にもなる。
・今や2000億円以上がアメリカ国内の化学関連設備の拡張に投じられている。
→天然ガスは燃料としても、化学製品の原材料としても使われる。安価なエネルギーが唯一の理由ではないが、中国等の人件費の安い国から再びアメリカ国内に投資が戻る結果となった。
・今もなお続くエネルギー投資
→メキシコやブラジルなど技術を持たない国は今なお世界から注目されている。ただし、他国を受け入れるかはその国次第。技術を海外に持ち出すことができれば、高い利益を上げられそう。
・パイプライン建設は容易ではない
→ 環境保護団体の反対を食らったり、大統領によって意見が変わったり、大変そう。
第二部 ロシアの地図
・ロシアの強さ
→広大な国土。莫大な量の核兵器とミサイル。サイバースキルも高い。世界に出ていこうとする意志もある。とりわけ天然資源もある。
・ウクライナにあるもの
→天然ガスの欧州向けのパイプラインがある。そこにウクライナが関税をかけている。なお、パイプラインはロシアの所有になっている。
そこで、ノルドストリームなどウクライナを回避するパイプラインが建設された。
・欧州のエネルギー政策
→①天然ガスのシステムのレジリエンスを高め、長期契約ではなく需要と供給で価格が決まる市場を形成すること。②脱炭素と高効率化、再エネ化
・2014年ロシアはクリミア併合
→軍を派遣し、住民投票で再統一を発表。欧州諸国の民間機を撃ち落とすこともし、EUからも反感を買う。アメリカは経済措置を取るが、これが長期化すると、他国はアメリカに依存しなくなり、経済措置の意味が薄れる可能性もある。
・ロシアは、まだまだ石油のポテンシャルがある。
→北極海やシベリア盆地など。
・近年、ロシアは東シフト
→特に中国との結びつきを強めている。
中国もロシアが重要なパートナーとしているが、エネルギー比率で言うと2%程度で、輸出額も米国の1/10である。クリミアの時の米国の制裁にも従っている。
・中国とロシアの一致
→西洋の普遍的な価値観や規範に対する拒絶。国家主権の経済運営の一致。米国の覇権的地位への反発。
第三部 中国の地図
・中国はアメリカと並ぶ大国
2008年の金融危機を脱したのは中国のおかげ。それにより存在感が強まった。軍事力等もある。しかし、エネルギーと人口動態に課題を抱えている。
・中国とアメリカの火種
→台湾、最も大きいのが南シナ海。
貿易戦争もある。アメリカは、中国を米国の利益と価値観に相入れない世界を築こうとする大国とみなした。略奪的な経済力で近隣国を威嚇する一方、南シナ海で島々の軍事拠点化を進める中国は、戦略的競争相手。
・南シナ海
豊富な海洋資源があり、また貿易の要衝にもなっている。中国の原油輸入の80%がここを通る。そして、中国は自国の海域であることを主張している。国際法では認められなかったが、中国はそれを無視。(9段線と言われる国境線を見ると言ってることのヤバさがわかる。)海軍にも力を入れている。
・中国のエネルギー事情。
現在、中国は世界一のエネルギー消費国。エネルギーの構成比率は、石炭6割、石油2割、天然ガス6%、残り再エネ。よって、エネルギーの地政学が中国政府の最優先事項になる。
・中国とASEAN
東南アジアは、安全保障面では米国と統合されているが、経済面では中国と統合されている。
・一帯一路
中国とユーラシア全土とをインフラ、エネルギー、投資、通信、政治、文化を通じて繋ごうとしている。新しいシルクロード。西側とは特に思想の違いはあれど、大規模な資金能力(投資、貸出)を武器としている。しかし、借り手が債務不履行になれば、中国に優位を許すため、注意が要る。
・各国の動き(予想)
多くの国は、中国の新しいグローバル経済に加わりたいと考えている。しかし、同時に自国の行動の独立も確保したいので、ロシアや米国の関係を使って、中国影響力の増大とのバランスを取ろうとするだろう。ただ、最近米国は世界の問題から手を引きつつあると多くの国に見られている。インドという大国は一帯一路に不信感を持っており、動きが気になる。
第四部 中東アジアの地図
・イラン革命
ホメイニ師は、シーア派の聖職者が支配するイスラム共和国を作ろうとした。そして、この革命を他国にも広げようとした。
・アメリカの中東関与のきっかけ
イラン革命や、ロシアなどからペルシャ湾地域の支配権を守るために深入りすることに。
・イランとサウジアラビアの対立
シーア派とスンニ派の争いに期限。現在、イランは「単一の世界的な共同体」の建設を目指して革命を広げようとしている。(イラン革命)
・シーア派とスンニ派
イスラム教の9割はスンニ派。シーア派国家のイラン。スンニ派国家のサウジアラビア。
・イラクを巡る争い
イラクはシーア派が多数を占める国であった。フセイン時代にはイラン革命の道が閉ざされていたが、フセイン打倒後、再びイラン革命の標的に。しかし、アメリカもシーア派の騒擾に対抗するため介入。さらに近年ではISISとの戦いもある。現状、主にイランにより、イラクはかなり弱体化している。
・イラクのランドブリッジ
現在、イランからイラク、シリア、レバノンに至る。イラン革命の波及地域。
・イエメンの現状
カオス国家になっている。もはや国家として機能していない。イラン系のフーシ派が力をつけており、サウジアラビアと戦争にもなっている。アラビア半島の南端だけに地理的に重要な意味を持つ。
・東地中海の資源
近年、イスラエルやキプロス付近で大規模な天然ガス田が見つかった。しかし、今のままでは争いの海になりかねない。
・ISISの誕生と発展、衰退。
世界を支配するカリフ制の復活が目標。ゆえに、国民国家への拒絶がある。イスラエルの建国には断じて反対であり、世俗化の脅威である米国にも抵抗。ムスリム同胞団からアルカイダが生まれ、イラクとシリアのアルカイダからISISが生まれた。ISISは、石油関連施設なども支配し収入を得た。またSNSを使って戦員を集めた。しかし、2019年には米国の参戦もあり、シリアも奪還。トップも討ち取った。ただ、戦闘員が未だ残されているのは事実である。
・アルカイダの作戦方針
アラブ諸国の政権や米国、世界経済を攻撃する手法として石油に重点が置かれた。
・石油の価格について
石油は生産しようと思えば供給過多にでき、現に2014年には急落した。しかし、その後OPECプラスによる減産の合意が取られ、2016年に上昇に転じた。しかし、2018年トランプが石油価格の上昇を拒んだり、米中の貿易戦争により石油価格は下落に転ずる。
・中東とロシアの関係
ロシアはサウジアラビアやイラン、シリアなどと対話ができた。サウジアラビアにとっては、ロシアは米国との関係悪化に対する防衛手段になったり、イランとの対立でも利がある可能性があった。OPECプラスにより2016年には石油価格の下落を防げた。
・新型コロナウイルスと石油生産量
自国が減産し、他国が減産しないとシェアを奪われる可能性がある。また新型コロナウイルス蔓延当初、ロシアなどは米国のシェールのシェアを取るいい機会だと考えていた。しかし、マイナス価格などの懸念もあり、皆の減産で合意した。
第五部 自動車の地図
・電気自動車
・自動運転車
安全・安心・プライバシーをめぐる議論に加え、連邦政府と州政府の役割分担を決める議論もある。
・ライドヘイリング
・目指す世界は、事故ゼロ、排出ゼロ、渋滞ゼロ
第六部 気候の地図
・太陽光発電のシェアについて
現在7割が中国で生産され、原料のポリシリコンの生産に関しても6割を占める。
・将来のエネルギー構成
→太陽光、風力、水力などが増えるだろう。安定供給の観点から蓄電池も気になるところ。
・現状を打開する技術
→現時点では、実質炭素ゼロへのエネルギー転換を進められる技術はない。しかし、可能性が高いものはある。
貯蔵とバッテリーの技術、改良型原子炉・小型原子炉、水素、3Dプリンター、建築技術、送電網の近代化、CCUS技術、DAC。
・途上国の現状
電気のない暮らしを送る人が10億人。近代的な調理用器具が使えない家に住む人が30億人。この30億人は薪や炭などを家で燃やし室内大気汚染に晒されている。
・インドのエネルギー革命
LNGを増やしたり、太陽光の開発を行なっている。目指しているのは、「天然ガスを基盤にした経済の先駆けになること」
・温室効果ガス対策の影響
エネルギーの生産や輸送や消費のあり方、戦略や投資も、技術もインフラも国家間の関係も変わり続けるだろう。異業種の企業間で提携や競争が顕著になる。
・途上国の成長
ここ20年の石油消費量の増大は、途上国によるもの。人口と所得が増加している。
・石油の将来の需要について
コロナ前に1億バレルだった消費量は、2030年代半ばにピークを迎え、2050年には1億3000バレルになると予想されている。思い切った施策が実施されても6000万〜8000万バレルにしか下がらないとされている。
・鉱物資源に関して
太陽光発電わ電気自動車が普及するほど、必要な鉱物資源を確保する必要が生まれるだろう。需要の増大に伴っては、鉱物安全保障とでも呼ぶべき、サプライチェーンの構築が大事になる。
Posted by ブクログ
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素晴らしい本で、ぼやっとしていた資源の事情についての解像度が格段に増します。
国ごとのトピック、資源ごとのトピック、歴史に着眼点を置いた展開など、ストーリーをベースに読み解ける。
必携の本と思いました。
Posted by ブクログ
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ー 以来、技術とイノベーションはエネルギー転換の要因になってきた。そのためには着想や発案から技術やイノベーションが生まれ、さらにそれらが最終的に市場へといたる必要がある。これは必ずしも短期間で起こるわけではない。エネルギーはソフトウェアとは違う。現に、リチウムバッテリーが1970年代半ばに発明されて
...続きを読むから、路上を走る車に使われ始めるまでには、30年以上かかった。近代的な太陽光や風力の産業は1970年代初めに誕生したが、規模が拡大し始めたのは2010年以降だ。しかし、デジタルから新素材や人工知能、機械学習、さらにはビジネスモデルなどまで、イノベーションのペースは、関心の高まりとともに加速している。背景には、気候対策や政府の支援もあれば、投資家の判断、異分野の企業やイノベーター間の協力、技術や能力の収斂もある。
何がいつ起こるかは、関わる者の才能や、開発を支える資力、真剣さ、困難に負けない気力、創造性の豊かさにも左右される。イノベーションからは、破壊的なものであれそうでないものであれ、新しい技術が生まれ、それによってエネルギーと地政学の新しい地図が形成されることになるだろう。しかし地図は直線的に進む未来を保証するわけではない。ある程度の頻度で、思いもよらぬ妨げに見舞われ、そのつど進路変更を余儀なくされることは間違いないだろう。シェール革命も、2008年の金融危機も、アラブの春も、2011年の福島の原発事故も、電気自動車の復活も、太陽光のコストの急落も、世界的な大流行を引き起こす感染力の恐ろしく強いウイルスの出現と経済の暗黒時代も、米国の政治を揺るがした2020年の大規模な抗議行動も、予期せざるものだった。
しかし、予期でき、備えられる妨げもある。わたしたちがそれによって具体的にどういう道を進むことになるかまでは描けないとしても、はっきり「見えている」ものもある。1つには気候をめぐる困難の数々がそうだ。しかしそれだけではない。緊張が高まり、分裂が進む世界秩序においては、国家間の衝突もそうだと言える。 ー
ウクライナ侵攻の前に出版された作品だが、世界で起きている資源戦争の今が分かる作品。
僕たちアラフォー世代は10代の頃に『沈黙の春』を読み、環境問題に向き合わなければならないと教育を受けてきた。にも関わらず、その後の30年間、ほとんど何もして来なかった罪は重たい。
そして僕たちは来年40歳になる。次の25年で何を実現出来るのか、それが2050年の未来の姿を決める。そう考えると、僕たちの年代の責任が非常に重たいのがよく分かる。
僕たちは本来は、世界を変えなければならないのに、日々の小さな仕事に振り回されているのはいったい何故なんだい???
Posted by ブクログ
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会社のとあるリーダーから推薦されたリーダーシップに関する本。イノベーションを継続的に生み出す新時代のリーダーに求められるのは「羊飼いのリーダーシップ」。従来の一般的なリーダー観とは一線を画するような内容である一方、リーダーとして普遍的に求められている要素としては従来と変わらないような気もする。スキル
...続きを読むや経験が非常に豊かで頭の切れる1人の天才がリーダーになっても、イノベーションは生まれにくい。たしかにそうだろうなあと思う一方、業務内容や社員のバックグラウンドがある程度均質化された集団では、そうしたリーダーの方が効率的気もする。ただそれはあくまでも効率「効率」を重視していて、目指すべきものがイノベーションではないからか。リーダーシップにもいろいろな形があるんですなあ。何よりも大事なのは、結局有能なリーダーは学ぶことを忘れないということ。
以下備忘録。
イノベーションに必要なことはそれに適した組織を築くこと。
1. コラボレーション
2. 発見型の学習
3. 統合的な決定
これら三つの要素を通じて、個々の天才の一片からひとつの集合天才を作り出せる組織をつくる。そしてそれには二つの課題がある。
ひとつは、イノベーションが内包するパラドックス、つまり精神的な重圧をのりこえるための意欲を引き出すコミュニティをつくる。これは、目的、参加規則、共有された価値観で結びつける必要がある。
ふたつめは、イノベーションに取り組める組織づくり。創造的な摩擦、創造的な敏速さ、創造的な解決が要素となる。
Posted by ブクログ
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エネルギー安全保障の過去から未来までを俯瞰できる一冊
脱炭素、カーボンニュートラルの世界的な潮流は間違い無いが、具体の対応はその国の地政学、資源、経済状況で異なってくる。
太陽、風、水の自然エネルギーは重要ではあるが、変化の鍵は化石燃料および資源国が握っている。
本書は、米国のシェール革命、中
...続きを読む東の宗教と石油、南シナ海、自動車業界など、今の世界を知るのに重要なテーマを広く、濃く解説する。1章ずつが短くトピックごとに明確に分かれるため全体を俯瞰して部分を読み返すのが容易。
新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻など、世界はますます先行きが見えない。資源のない日本にとって、本書の知識は教養として皆が持つべきものだと感じた。
Posted by ブクログ
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