黒輪篤嗣の一覧
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ユーザーレビュー
かなり勉強になりました。世の中は、それぞれの国が自己主張する不安定な世界で、お互いバランスを取らないと戦争の引き金を引いてしまう関係になっています。その原因や関係性を理解する上でとてもいい本でした。
Posted by ブクログ
エネルギーの視点で世界を読み解き、驚くほど近現代史の解像度を上げてくれる良書。エネルギーは経済を動かすだけではなく、世界を動かす重要な要素なのだ。
アメリカ、ロシア、中国、中東の各地域を順に読み解き、アメリカのシェール革命によるゲームチェンジ、ロシアにとってのウクライナの重要性、中国による南シナ海へ
...続きを読む の進出、中東の紛争など、ニュースで伝えられる断片的な事象の背景などが、線としてつながりで理解することができた。
話は自動車、環境と進み、石油・天然ガスからのエネルギーのシフトの行く末まで網羅されており、読み応え十分の内容であった。
Posted by ブクログ
ダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は名著だと思っていたところ、この新刊。ロシアとウクライナの戦争を理解するためにも必要な本だと思って購入。
再エネを追いかけているだけでは理解できない、生々しいエネルギーの地政学。とても勉強になる。
そして中東がここまでぐちゃぐちゃになったのは、むしろ21世紀に入って
...続きを読む からだということがわかり、愕然とする。
Posted by ブクログ
『これまでの20年以上、ウラジーミル・プーチンは大統領として壮大な「国際的事業」に取り組んできた。それは旧ソ連諸国をまたロシアの支配下に置くことであり、ロシアを世界の超大国として復活させることであり、新しい同盟関係を築くことであり、ひいては米国を押し返すことだった。どれほどロシアに原因があるかは別と
...続きを読む しても、プーチンの思惑にかなった結果になっていることは間違いない。北大西洋条約機構(NATO)の分断しかり、EUの分裂しかり、米国の政治の混乱や、醜悪さや、二極化しかりだ』―『第9章 プーチンの大計画/第2部 ロシアの地図』
自分がこの業界---ここで少し長めの無駄話になるのだけれど、石油業界(あるいは石油会社)というと、日本では一般的にガソリンスタンドやサインポールを出している石油元売りの業界(あるいは会社)というイメージが強いけれど、欧米ではむしろオイル・インタストリーと言えば石油を生産する方の業界を指すことが多いんだよね。いわゆる業界の川上(=上流)側を指している訳で、これが無いことには川下もない訳だから。石油という言葉をお堅く訳せば実はOilじゃなくてPetroleumだけど(これはむしろ原油(=Crude Oil)と同義)上流も下流も含めた業界の意味だとPetroleum Industryが使われる印象。そして石油には原油と天然ガスが含まれる。ついでに言うと20年くらい前までは天然ガスはおまけ(というかハズレ)だったのが、最近はOil CompanyじゃなくOil & Gas Companyというのが一般的になったくらいガスも商品として価値が認められるようになった(それも今後変わるだろうけど)。なんでこんな話をするかと言えば、今の日本人のほとんどは石油が輸入出来て当たり前だと無意識に考えていて、石油が戦略物質だということに中々ピンと来ないから。皮肉なことに戦前の軍部はそのことを確り理解していた---に入りたての頃、世の中ではまだセブン・シスターズという言葉が実態を伴って存在していた。なので、最初の海外赴任の頃に出版されたダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は、まだ駆け出しの自分には業界の歴史と共に暗黙のゲームのルールのようなものを知る絶好の教科書だったことを覚えている。
そのヤーギンの最新作「新しい世界の資源地図」は、米国、ロシア、中国、そして、中東という、どの国にとっても石油資源戦略上外して考えることの出来ない基軸において過去30年程の間に起きた大きな変化を概観し、更に自動車、気候問題という観点から近未来の方向性を占って見せるという大著。「石油の世紀」の続編との位置付け(「探求」は飛ばしてもいいような気がする。気候変動を気候危機と同義語と捉える向きには逆なのかも知れないけれど)であるが、後半の2つのカテゴリーについては現在進行形の部分が多く、明確な視座を提供するという訳ではない。元々著者の得意とすることは飽くまで複雑に絡み合った事象の背景にありそうな、全体を統制するかのような要因(あるいは物語)を見い出すことで、未来予想をすることではない(というのは言い過ぎかも知れないけれど)。それに、やはり四地域に関する洞察こそヤーギンの面目躍如という感じがする。
『もっと若い補佐役たちの考えは違った。「アラブの春」の盛り上がりに感激し、フェイスブックやツイッター世代に共感を覚えていた。聴衆の心を掴むオバマの演説の力を信じていた彼らは、ムバラクの追放を躊躇しないよう大統領に直言した。「歴史の正義の側」に加わるべきだ、と。「しかし、どちらが歴史の「正しい」側で、どちらが「誤っている」側なのかは、誰にもわからないのではないか」と、ゲイツはのちに書いている。「希望と理想主義によって始まった革命のほとんどが、抑圧と流血に終わるのだ。ムバラク後に何が起こるかは、誰にもわからない」』―『第4部 中東の地図/第31章 対決の弧』
米国のシェール革命、ロシアの天然ガス資源開発、そして中国のエネルギー需要の増大と地政学的平衡感覚、どれもセブン・シスターズ後の世界での大きな変化であり、ヤーギンの考察は、その時代を同時並行で走って来た身には尚更、なるほどと思わせるところがある(もっとも、そもそも岡目八目とも言うし、並走している限り歴史的な流れは見え難いというのは世の常だし、実は個別の小さな動きの背景にあるものが個々の決断全てを論理的に決定している訳でもないと思う。歴史とは、結局のところ過ぎたものを顧みて総括する以外、把握することは困難なものなんだと思っておいた方がよい、と個人的には思う)。けれど、やはりエネルギーの供給を考える上でどうしても外せないのは石油であり、それが中東地域に偏在しているという事実から目を背けることはできない。本書の各段落に費やされている頁数を比較してみても、米国(72pp)、ロシア(67pp)、中国(65pp)、中東(166pp)、自動車(58pp)、気候(53pp)と圧倒的に中東に割かれた頁が多い。資源量の偏在に加えて、宗教、民族、いわゆる国という単位の成り立ちのどれもが一筋縄では捉えられない複雑さを有していて、尚且つ、その変化も激しい地域であるのだから仕方がないと言えばないのだが、そこに、欧米露の思惑も入り乱れているので尚更だ。そして更にそこに加わる中国の一帯一路。この地域において白地図を塗り分けるようなヤーギンの考察も現時点では合理的なものと思えるけれど、未来については必ずしもその合理性の延長にある訳ではない。
『移行はどれくらいの速さで進み、どのような影響を及ぼすだろうか。予測には大きな幅がある。IHSマークイットのシナリオによれば、世界の電力消費は2040年までに最大60%増える。その時点で、風力・太陽光が全発電量に占める割合は24%から36%になると予想されている。どちらにしても現在の7%からは大幅な上昇になる。予想に開きがあるのは、容易に想像がつくとおり、技術や発明、政策や経済の未来については、どうなるかわからず、さまざまな想定がなされうることによる』―『第43章 再生可能エネルギーの風景/第6部 気候の地図』
例えば、IHS Markitという会社は、少し前にファイナンス情報を提供するMarkitと合併する前までIHS(Information Handling Service)という会社で、石油業界の情報提供会社としてはもう少しシンプルな会社だったし、そのIHSだって石油部門に関してはCERA(Cambride Energy Research Associates。ヤーギンが設立)を買収したことで単なる情報サービスから脱して業界の雄であったWood MacKenzieと肩を並べるシンクタンクのメインストリームに出てきたという印象。そもそもその前はもっとシンプルな探鉱情報(いわゆるスカウト情報とマップ)を提供する業界的には最大手だったPetroconsultantsという会社を買収して参入して来た部外者的会社だったという印象が未だに自分には残っている。そういう栄枯盛衰を傍で見てきた身としては、業界の常識が変わるのは本当にあっという間ということを忘れてはいけないと思うこと頻り。例えば、どんな類の開発にも付き物であるHSE(Health-Safty-Environment)だって、20年くらい前までは工事現場的な単純なHSだったのが、今やSHSE(Social-HSE)と社会的責任も負わなければならない立場を操業者に課すこともある。けれど、例えばアフリカ東岸に於ける開発で負わなければならない社会的な責任とはどこまでの範囲を含んだものなのか。その国の資源に対する適切な開発はもちろんのことだが、貧困救済までも考慮した地域の活性化策も含むのか、はたまた地域間の貧富の差の解消策も含むのか、民主的な為政者の支援策も含むのか、と考えだせば切りがないし、より問題は複雑になる。だから単純な物語というのは本当は存在しない、とどうしても思ってしまうのだ。
ヤーギンの本はいつも大部で読むのが一苦労という感じだけど、歴史書的な記述で混沌とした社会情勢の変化などを筋立てて語るので、判り易いと言えば判り易い。でも、例えば日本史における司馬遼太郎の「創作」のように少し判り易くし過ぎているところもあるのだろうと思いながら読んだ方がいいようにも思う。
Posted by ブクログ
ロシアとウクライナの戦争を契機に資源価格が高騰している背景をより深く知りたくて、本書を読んだ。地政学の第一人者である著者が、アメリカ、中国、ロシア、中東のエネルギー事情を丁寧に紐解いており、分かりやすかった。
日本は東北大震災以降、原発稼働を最小限にしているため、電力供給を火力発電に多く依存してい
...続きを読む る。火力発電の燃料となる石炭・天然ガスは輸入していることから、海外の紛争や政治リスクは、エネルギー供給を不安定化させ、日本にとっても重要な問題である。
本書で面白かった点のまとめ
①アメリカはシェールオイル・ガスの発展により、世界有数の石油・天然ガスの輸出国となった
・紛争リストが高い中東に天然資源の輸入を依存するのは、アメリカ経済にとって打撃を被る可能性がある。そのため、シェールオイル産業の発展で、自国内で天然資源のサプライチェーンを構築できたことは、経済安全保障において重要。
・とはいえ、中東諸国の石油産油量は世界トップであり、石油価格は中東諸国の動向によっても影響される。石油価格の高騰はアメリカ経済にとっても負の影響があるため、中東諸国への介入をアメリカがゼロにすることは考えにくい。
②中国の東シナ海の進出は、天然資源の確保と航路を抑えることが目的
・中国が東シナ海進出の歴史的根拠としているのは、第一次世界大戦時に中国が作った地図。欧米と日本に領土割譲をされていた、当時の中国は、軍事力では欧米諸国には叶わないため、自国領土の正当性を地図で示し、その地図において、現在の東シナ海までを中国領土としていた
③ロシアとウクライナの対立
・EUROとロシアの綱引き状態にあるウクライナの紛争は2004年の大統領選挙にまで遡り、2004年のオレンジ革命に対してプーチンは反発していた。そのため、ウクライナを経由していたガスパイプラインから天然ガスをロシアは抜き取った。まさに報復
④イランは革命輸出
・イラン革命でイスラム原理主義に回帰し、ジハードの名の下へ革命輸出をしている
・シーア派が主流のイランでは、同じくシーア派のシリア、イエメン、レバノンをテロリズムで支援する。
・イラン革命後にフセインと対立し、イラン・イラク戦争。その後、フセインがさらなる領土獲得と石油資源を求めてクウェートへ侵攻
・イラク戦争後のイラクにもイランは進出し、シーア派の革命輸出の拠点にしようと画策した。
・中東の大国であるサウジアラビアは、王国でもあるため、革命国家であるイランとは対立関係にある
⑤ISIS
Posted by ブクログ
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