堀茂樹のレビュー一覧

  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源

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    上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
    アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。

    個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現象。識字が課題となる初等教育の普及段階では、教育が平等主義とつながっているが、高等教育になればなるほど、当然のことではあるが格差が広がる。民主制は指導者が必要だから、エリートも必要なわけだが、経済格差と教育格差がリンクして議論されている日本でも、まさにこの部分を直視して問題の落としどころをさぐらねばならないのだろうと思う。

    もう一つ面白かったのは、同性婚の法的承認がなされ、女性の社会的ステータスが高い国ほど出生率が高い、という相関関係があるという事実。女性のステータスに関しては、社会的システムの整備など十分想像できる結果だが、同性婚については個人的には新たな視点で勉強になった。

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    2022年12月30日
  • ある女

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    ネタバレ

    2022ノーベル文学賞受賞のアニーエルノーの作品。
    母親の死を契機に、母の人生を咀嚼するように、振り返るために書かれたかのような本。
     文を書くことで、母の人生を、母の価値観を、母の生活苦をそして母の心配を母の希望を母の喜びを追いかける。そうやって母の人生を文章で綴ることが唯一の追悼でああるかのようだ。これは場所で父親を追悼した時と同じ手法である。ただ母の場合は性についてより赤裸々に描写している。
    日本では私小説という分野が盛んで、小説家の家族は結構なんでも赤裸々にバラされてあらあらということがあるが、これはネタ探しというよりもう少し内省的である。フランスの民衆も歴史に翻弄され、貧しいながらも懸命に生きていたことがよくわかる。日本の手練れの小説家ならこのエルノーの母親を題材に面白い小説を書けるのに、面白くかかないところにこの本の面白さがある。

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    2022年12月28日
  • ある女

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    母親のことが書かれている。私自身も、母親と四六時中一緒にいると息が詰まるため、一定の距離を置いている。大学に入って実家を出たときにはホッとした。ある時、実家、母親のやり方に、ふと疑問を感じ、否定する気持ちが出てきたのだ。
    晩年の母親のシーンで、自分自身と母親、また、子ども達と母親としての自分を思って怖くなった。

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    2022年12月28日
  • 凍りついた女

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    「場所」や「ある女」、「シンプルな情熱」より、前半部分は少し読みにくかった。
    日本と同じく、フランスの男尊女卑が当たり前のことだったということがわかったが、アニーエルノーが、自分の両親よりも大分前に生まれている世代なのだということに驚く。今でこそ日本でも認められつつある男尊女卑だが、その世代の人が、結婚当初には既におかしいと感じていて、1981年に本にしているという現実が、日本の遅れを感じさせられた。
    現代のフランスは、どうなのか?日本と同じように、性による役割分担が、未だに染み付いているのだろうか。知りたくなった。
    『女の場合、やる気はどれもこれもひとりでに、必然的に失せていく。』とは、まさに昨日私自身が夫に喋っていたことと同じ内容だった。女の場合=子育てではあるが。子育てをしていると、自分自身の興味関心好奇心なんて、それどころではなくなり、その内、それらはなくなっていく。もちろん、アニーエルノーと同じように、私は子供が可愛くて可愛くてたまらない。けれど、それとは別次元の戸惑い、空虚なのだ。

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    2022年12月28日
  • ある女

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    エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
    印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
    フランスは(?)こんなにも階級がかっつりしているんだなあと思いつつ、このような小説は果たして今の世代に当てはまるのだろうか、将来もこういった”階級”の小説、階級を超えようとする営みはあるのだろうか、なんてふと思った。この本で描かれているような、工場勤めの労働者階級と、大学を出て知識人と、という形はもう少し違う形で、存在するのだろうなあ…そういうものを可視化する小説(狭間にいるからこそ書けるもの)を、どこかで目にするんだろうか。もう少し透明な色な気もするんだけど、そうでもないのだろうか。

    というのは話の本筋の一つだけれど、『ある女』を読むと、父親の方の『場所』も読んでみたいと思う。

    「この本は伝記ではないし、もちろん小説でもない。おそらく文学と社会学と歴史の間に位置する何かだと思う」

    これは彼女の母の物語であり、アニー・エルノーの物語であり、そして娘の物語だった。私も自分の母の物語をいつか紡ぐことになるのだろうか。
    そういったことをつらつら読みながら、静謐なフランスの雰囲気に囲まれる本だった。良かった。

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    2022年12月03日
  • シンプルな情熱

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    〇〇してから何日たった、あと〇〇時間後には…など、時間を意識せざるを得ない苦しさを思い出すとともに、時間を細切れにせず漠然と過ごせている日々はある意味幸せだと思った。
    著者の他の作品も読んでみたい。

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    2022年11月23日
  • シンプルな情熱

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    ノーベル文学賞つながりで、川端康成を本屋で買ったついでに平積みされているのをなんとなく購入。
    私生活を書く人だと言うことくらいしか知らずに読む。

    率直な感想は「私にはもはや遠い思い出」という感じ。
    誰かを熱烈に想ったり待ち侘びたりする季節は過ぎ去ってしまった。

    描写は簡潔でそっけないほどだ。

    自己と対話するような語り口が同じフランス人作家のマルグリッド=デュラスを思い起こさせるが、例えば「ラマン(愛人)」や「太平洋の防波堤」のようにフランス領インドシナを舞台にした異国情緒による風景の拡がりみたいなものは感じられない。アニー=エルノーの描く世界は閉じた狭い街と部屋の中という感じがする。

    今回、川端康成とアニー=エルノーを続けて読んで、ノーベル文学賞とはなんぞや?と改めて思った。
    普段気に入った作家の小説ばかり読みがちなので、世間的に認められている本もちゃんと読んでおかないとなぁ!と反省しました。

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    2022年11月22日
  • シンプルな情熱

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    "passion"
    元々の"受難"という意味もあり、
    恋、情熱に生きるということは
    自分の魂を奪われて、
    意志が強く見える一方で、ある意味
    主体性をなくしてしまっていることなのかも、なんて。

    欲することの限界を向かえたいような、
    向かえたくないような。
    終わりを意識しながら
    美しき時を化粧しながら、
    ただひたすら"待つ"。

    もしかしたら、ギャンブルのように
    "待つ"ことのゲームを
    楽しんでいるのかもしれない。
    (Aが好き、というより、相手はAであることが相応しい、という感覚もある?)

    恋、情熱について
    哲学しているようでもあり、
    情熱の温度が少しずつ
    下がっていく様子さえ、
    丁寧に描かれているのが良い。

    Aがくるため、用意されていた
    ウイスキーの記述。

    クラフトビールや、好きなアイスを
    買っておいて、別離したあとに
    なんでこんなに買ってたんだっけって
    思ったことあったな、なんて
    回想したり。
    愛人関係でなくとも、
    過去の誰かとの逢瀬、情事に
    思いを馳せる、そんな純文学。

    山田詠美さんも薦めておられたのか、納得。
    詠美さんも久々に浸りたくなった。

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    2022年11月12日
  • シンプルな情熱

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    最後の終わり方が素晴らしかった。恋することにも、いろいろなランクがあるのだと知る。パッション、情熱、受難。フランスの大人の女。憧れるけど、全てがマネすらできない、今の私。

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    2022年10月30日
  • 場所

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    ネタバレ

    2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの1984年発行でルノードー賞受賞作。
    シンプルな情熱は1991年発行。
    物語は著者の父親の生涯を描いたようなもの。しかし、編年体で何をした何がおこったということよりも、フランス社会の階層、貧困、そのなかでの幸せ、人間関係、暮らしをその地域特有の問題としてではなく、人間の普遍的な問題として捉えている。そして著者であるエルノーは大学にすすみ、文学で大学に職を得ることで、父親との精神的距離が遠くなる。父の操る言葉は決して上流階級のそれでも、文学的レベルが高級なものでもないが、それがなんだというのだろうか。生活にねざした言葉であり、劣等感に起因するおかしな言い回しでさえ愛おしくなる。
     著者は冷静に父をみながらも、父の視点でものを見ている。
     このような視点の多重性がこの作品の良さなのかもしれない。
    小品なので2時間もあれば読めてしまいます。

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    2022年10月13日
  • シンプルな情熱

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    原典、Passion Simple
    邦題、シンプルな情熱
    今の私には、贅沢とは、ひとりの男、またはひとりの女への"激しい恋”(=パッション)を生きることができる、ということでもあるように思えるように。


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    2022年08月14日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    自分の見てきたヨーロッパはとても解像度が低かったんだと改めて感じた。

    今のEUがドイツが牽引していて、EUの移民政策に関しても、他国ではさほど問題になっていない人口減少がドイツでは深刻で、それを移民でまかなおうとした結果だというエマニュエルさんの見方も面白かった。

    もっと他の本も読んでみよう

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    2022年08月08日
  • シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧

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    ウクライナ問題に関する著者の見解がユニークなものだったので、こちらも読んでみた。

    これは2015年1月におきた『シャルリー・エブド』事件にともない起きたデモなどフランスの反応についての分析。

    原著の出版は、その数ヶ月後であることから、エッセイとか、インタビューを集めたものかと思って、読み始めたら、一冊を通してなんか堂々した論考となっている。

    まさに社会学的、人類学的な論考で、フランスの地域ごとの価値観の分布とデモへの参加率から、どういう人がデモに参加したのかという推計から始まるところが圧倒的。

    脱宗教の度合い、平等主義、権威主義の度合い、社会階層、年齢による差など、定量分析を踏まえながら、大胆な仮説を提案。

    著者は、『シャルリー・エブド』事件への抗議デモに参加した人は、「言論の自由」という名のもとに、本当は(集団的な無意識レベルでは)、反イスラム的な動機で参加している。この動きは、反ユダヤ、人種主義、全体主義に向かう危険性をもっていると主張。

    そして、それはフランスに限ったことではないというか、ヨーロッパ全体で起きていることの一つの断面でしかないとする。

    この本がフランスででると、非難があつまったようだが、11月には、ISによる同時多発テロがパリでおき、そしてそれへのフランス人の反応をみるかぎり、著者の主張が残念ながら、裏付けられたとする。

    ヨーロッパにおけるポピュリズム的な動きがなかなか理解できずにいたのだが、そこにアプローチするための一つの大きな視点が得られたように思う。

    著者は、フランスより、日本のほうが、自分の言っていることを理解してくれる、とお世辞かどうかわからないが言っている。そこはどうかわからないのだが、私は、著者の意見をそのままに受け止めるわけではないが、一つ一つ、なるほどな議論だと思った。

    それは別に日本的な価値観が著者と近いというより、問題との距離感が違うだけではないかとも思うが、もともとの文化の宗教との関係がヨーロッパとは違うという視点はなるほどと思った。

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    2022年07月10日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    ブレグジットに対して、いわゆるエリートが反対し、庶民が賛成した構図と断言されている。日本でもだいたいそういう論調だったと記憶してます。トランプ現象に対しても同様。
    5年が経過した今、世界はコロナとCO2と戦っているわけですが、控えめに言って訳がわからない。虚構と戦っている。それでもグローバリズムを維持できればエリートとしては良いのでしょう。
    健全な民主主義を維持できる言論空間の必要性を痛切に感じますし、トッド氏のような良質なエリートの方々の活躍を切望します。

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    2021年11月06日
  • グローバリズムが世界を滅ぼす

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    新自由主義とかいうものが何なのかもよく分かっていない状況で読んだ。

    経済に対する規制を外して、より開かれた状態にすること。そしてそれは、グローバリズムによって国外にも扉を開き、世界を組み込んだ市場経済を作り出す。労働力は自由に移動するし、企業はより広くマーケットを拡大できる!

    やたら持ち上げられる新自由主義に対する切り込み。めちゃくちゃ要約すると、輸出にばかり目がいって、短期的な利益ばかり出そうとするから、内需を生む賃金の上昇が起きない(コストとしか見なされないから、労働力に投資しない)。大金持ちは簡単に株式で富を増やすが、その会社がどうなろうが責任は持たない。格差は大きくなるし、賃金上がらなくて需要も生まれない。そんな中で過剰な供給は続けられる。キツい。マジ無理。

    教育格差の話は面白かった。高等教育を受ける人が増えて、初等教育だけが満遍なく浸透していた時に生まれていた平等的な価値観が崩壊。教育による格差が当たり前のものという認識になり、それが賃金格差に対する不平等に対して「当然だろ」と思う仕組みになった。もはや人々は格差を当然のものとして認識し始めている。


    あと、右派が新自由主義に対して肯定的なのが奇妙という話も勉強になった。まさかの昔は、右派(保守)は新自由主義否定。なぜなら共同体や育んできた国内文化・繋がりを尊ぶ保守にとっては、それを破壊するグローバリズムは本来真逆の考えだったから。それが全体主義・共産主義の台頭により近づき始めた。そして何より、エリートの劣化が、責任逃れな新自由主義を肯定したのだ(市場原理が要因だからしらねぇよ!という言い訳をする)。

    正直半分も理解できてないと思うが、新自由主義についての知見を少しだけでも得られて良かった

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    2020年05月07日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    「今、世界で一番危なっかしいのは、アメリカではなくヨーロッパなのです」2016年刊行時点の衝撃的な発言だが、改めて読み返してみるとなるほどと感じてしまう。EUの求心力低下が危惧される。

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    2020年04月15日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    イギリスがEU離脱したことを受け、現在の主にEUの情勢を分析した一冊。

    著者がフランス人ということもあり、フランスによってる部分はあるものの、ヨーロッパ人が見たEU、アメリカ、そして日本の情勢を知ることができた。

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    2018年11月22日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    トッドにはかねてから興味はあったのだが、ぶあつい著作にはなかなか手が出なかった。これはインタビュー・講演や雑誌への寄稿をまとめたお手軽な新書。現時点で最新のようでもあるので気軽に手にとってみた。時事ネタを扱っているのも良いし、なるほどとうならせる箇所も多いのだが、一方で分量ゆえ仕方ないながら、踏み込み不足というか物足りない感じもある。なかなかうまい広告なのかもしれない。

    1,2はBrexitに関する論考で、やや内容はかぶる。本書の中では小手調べ的なかんじ

    3はトッド自身の仕事や方法論を振り返っており、初読の身には大変おもしろかった

    4は人口学による各国近未来予測、これも興味深い

    5は中国論、日本への言及も

    6,7はお膝元フランスでのテロ(およびその後の国民の反応)を受けて。切実な問題意識を感じる


    フランス人らしくなく観念論は嫌いで経験主義的。定量的な歴史人口学が性に合った。ただイギリス留学で、イギリス人のヒエラルキー感覚を目の当たりにし、自分の平等主義的フランス人性に気づいたと。

    「自由」をめぐるパラドクス。トッドによる家族構造が政治体制を決めるという発見は決定論的であるが、かならずしも個人の選択を決定するものではない(それでもイギリスのような絶対核家族の文化に生まれると、自由でなくなる自由にとぼしい)。ただ、それが人間の自由を否定する決定論と捉えられ批判もされている。特に自由(リベラル)な国において。自由が強迫観念になってなぜ自分が自由であるかを自覚できない。また、個人主義ほど国家を必要とする。

    歴史を動かすのは中産階級。今日の先進国では、高等教育を受けた層が中産階級と言える。
    →米大統領選挙のNate Silverによる分析(学歴が投票行動を決めるファクターだった)を思い出した

    核家族のほうが共同体家族よりも原始的な家族形態。現代での分布から伝播モデルで推測できる
    →日本での方言の分布なんかと同じ話か

    普遍性と文化相対主義、多様化と画一化のせめぎあい。トッドは家族構造が似ている文化同士に普遍性を見出す。

    場所(テリトリー)のシステム。移民なども行った先の文化に同化することが多い(例:アメリカ)。人間は可塑性を持った存在であり、文化の差はそれほど決定的でない(弱い価値)。ただし場所単位で見ると、永続的な「文化」が立ち現れる。それは家族由来の価値観が「弱い価値」であるからこそ

    ネオリベラリズムにより家族の扶助なしに個人で生きるのが難しい状況ができてきている。個人主義的なものと矛盾がある。アメリカにとって国家とは何なのかが大きな課題。国家の再評価が必要。一方、日本では家族の過剰な重視が、少子化による家族の消滅につながっているのでは

    ネオリベラリズムの次の潮流だが、世代ごとの断絶があるアングロサクソンからまた次の流れが出てくる可能性は高い。

    ロシアの復活。出生率も1.8まで回復し、女性の高等教育進学率もあがって社会が安定化に向かっている。プーチンみたいな強権的なリーダーを好むのは家族構造ゆえ。
    →認識が古かった。よいインプット

    サウジアラビアは出生率激減、中東の不安定の核。安定化しているのはイラン

    中国はいびつな人口構造、過剰投資など不安定。また中国の家族構造は平等主義的で(だから共産主義も根付いた)本来的には格差を許容できない

    ドイツにも辛い。低い出生率をむりやり移民で埋めようとしているが、トルコからの移民の社会統合ができていない。シリア人は家族構造的にもっと遠いのでさらにむずかしい

    ヒエラルキー的な家族構造を持つ日本では、国際関係もヒエラルキーで考えがちである(アングロサクソンや中露は対等な国際関係が前提としてある)。また、日本の家族構造では長男以外は家族構造の外で一人で生きようとするので、いったん強い国であることをあきらめると孤立主義への誘惑がある。それを乗り越えて米露と連携して中国問題にあたる(方向性は助け舟)べき。

    フランスでカトリシズムはすっかり衰退したが、その文化的影響は地域ごとにはっきり残っている。

    とにかく日本は少子化対策をがんばれよと

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    2018年11月05日
  • 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告

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    ネタバレ

    第7章の「富裕層に使える国家」が面白かった。その次が第8章の「ユーロが陥落する日」。前半のグルジア/ジョージア問題はあのあたりの地理や背景にもう少し私自身が詳しくなると面白さが増すのではないかと自分の力不足を感じているところ。
    トッド先生は、ほんとにドイツの事嫌いなんじゃないかと思いますが、それ以上にフランスに歯がゆさを感じているのだとよく伝わってきます。あと、日本人がドイツと日本を同一視したり同カテゴリに置いたり、過度に親近感を抱く節があるのはちょっと本来のあり様から外れているよ、という指摘は結構重要だと思っています。
    日本について論じているところが読みたい人は編集後記を先に呼んで参照ページを読むのが便利だと思います。流石文春、その辺のマーケティング解ってますね。

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    2018年02月03日
  • シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧

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    20180111〜0131 2015年1月の「シャルリ・エブド」襲撃事件を受けてフランス各地で行われた「私はシャルリ」デモ。「表現の自由」を掲げたこのデモは、実は自己欺瞞的で無自覚に排外主義であった-- と、著者は断じる。私も、これら一連の事件とデモは、とても違和感を覚えた。この事件の背景にある事象ーー宗教の衰退と格差拡大による西欧の没落について分析している。
    以下、私の感想;
    訳文がやや硬いせいもあるが、読むのに少し難儀した。この回りくどさはさすがフランス人の文章というべきか。
    崩壊しつつあるカトリシズムを「ゾンビ・カトリシズム」と述べているが、ゾンビという単語が先走ってしまい、色物のように感じてしまった。
    著者はEU統合に懐疑的で、ドイツが大嫌いだということはすごく感じた。

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    2018年02月24日