堀茂樹のレビュー一覧

  • ふたりの証拠

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    三部作の二作目。人の悲しさ残酷さ 世の中がさらりと書かれているようで、逆に 今身近な事?とも思わされる。結末が、少し怖い。

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    2023年02月22日
  • 嫉妬/事件

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    縁あって読む事になった小説。「嫉妬」「事件」の2作収録につき別々に感想を書く。

    「嫉妬」
    嫉妬に駆られている自分を冷静に見つめようとしながらもそれを失念し、ふと気付くと嫉妬が原動力になって色んな事をやらかしている、やらかそうとしていた事を冷静になった自分が書き記している、という作りになっていて面白いなと思った。
    嫉妬から解放された主人公(?)が、当時の心情を分析しながら回想する時の冷えた描写が中々刺さるし、明け透け過ぎて笑えてしまう事もしばしば。
    しっかり消化するには脂身多め(自分的に)だが、何度も再読する価値があるな、と思った。

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    2023年02月18日
  • 嫉妬/事件

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     映画「あのこと」を先に観てから原作読みました。映像が何せ衝撃だったので、小説はそれに比べると淡々と書かれていた印象。それでも、主人公の苦悩、女性だけが受ける苦痛はひしひしと伝わってきました。
     人工中絶が合法化されたのは日本の方が早かったことを解説を読んで知り、とても意外でした。未だ日本では経口妊娠中絶薬が認可されていないなど、海外より遅れている印象があったからです。でも、解説によれば、日本で中絶が合法化されたのは、優生保護法により不良な子孫を残さないために中絶が必要になったとのことで!ぞっとしました。
     本書により優生保護法についても考えるきっかけになりました。

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    2023年02月05日
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか

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    冒頭に書いてあるが、トッドによる研究の全貌を一般の読者にも読みやすい形で示した「私にとって最も大事な本」だそうだ。全人類の歴史を、家族システムという補助線ひとつで整理しなおしてみせる手際はおみごと。経済学ばかりが重視される社会科学の現状への異議申し立ても傾聴すべきと思う。「反米を煽るものではない」と言いつつ、アメリカとドイツをディスるときの筆の冴えも面白い。

    日本やドイツの直系家族が経済的な効率性に優れると言いながら産業革命がテイクオフしたのは核家族のイギリスであったり、それはそれで理由が示されるのだが、全般を通して、ああ言えばこう言う的なところも多く、ウクライナ戦争にまつわる言説も含めすべ

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    2023年02月05日
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源

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    下意識、無意識を分析することから、なぜ今日の世界が形作られたかを読み解き、その洞察は難解だがとても惹きつけられるものであった。
    日本は父系社会であり、女性の地位が低いことや内向きの習俗に囚われているかぎり、衰退の末路を辿るという筆者の主張には、近年の政治・経済・教育の劣化を見る限り納得がいく。
    日本版あとがきに書かれている著者のメッセージが響いた。"アングロサクソン世界の動向、とくに米国の動向が今後の日本にとって最大のリスクになる"

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    2023年02月04日
  • 嫉妬/事件

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    2023.1.14

    喉の奥に胸の奥に、後味がざらりと残る。

    追体験とはこのようなことを言うのか、
    と考えさせられるくらい、とめどない感情の波に呑み込まれ揺さぶられてしまう。
    読者の想像力や思考力を試しているかのような、畳み掛けるような筆致が続く。

    これは、遠い昔の話ではないのではなかろうか。
    いま我が身に起こったばかりのような迫真さ。

    中絶にまつわる世界情勢が巻末で解説されている。
    この本がノーベル文学賞受賞の話題と共に世界に広まることで、女性の人権と政治と宗教を見つめ直す契機とせねばならない。
    だからこその受賞ではと思い巡らせる。

    邦題は「事件」だが、映画版のタイトルは「あのこと」

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    2023年02月04日
  • シンプルな情熱

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    フランスらしい愛と性の話。24時間が不倫相手の男のためだけに使われている。男はそうではないけど。発展することはもちろんなく、肉体だけで繋がっている、ただそれだけの話。小説自体があっという間に終わるので、あとがきの長さに驚きました。

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    2023年01月28日
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか

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    ホモエコノミクスに還元されないそれぞれの地域が持つ特性を、主にそれぞれの地域の伝統的な家族構成によって描く名著だと思う。
    原著執筆から5年が経ち、社会情勢が大きく変化している中でも全くそれを感じさせない内容だった。

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    2023年01月22日
  • 凍りついた女

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    日本は海外と比べて開けていないと思い込んでいたけど、どこの国でも立場や性別で差別されていた時代があったし、今もあるのだろうと思った。

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    2023年01月16日
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか

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    今日までの人類の進化は、意識・下意識・無意識によって成り立っている。無意識に当たる家族と宗教の影響が興味深い。
    一方で、翻訳が難解なため理解するのに苦労した。

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    2023年01月08日
  • 問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

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    ネタバレ

    EUが欧州統合の象徴ではなく、ドイツをトップにしたヒエラルキー構造であることを分かりやすく説明してくれる。

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    2022年12月31日
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源

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    上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
    アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。

    個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現象。識字が課題となる初等教育の普及段階では、教育が平等主義とつながっているが、高等教育になればなるほど、当然のことではあるが格差が広がる。民主制は指導者が必要だから、エリートも必要なわけだが、経済格差と教育格差がリンクして議論されている日本でも、まさにこの部分を直視して問題の落としどころをさぐらねば

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    2022年12月30日
  • ある女

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    ネタバレ

    2022ノーベル文学賞受賞のアニーエルノーの作品。
    母親の死を契機に、母の人生を咀嚼するように、振り返るために書かれたかのような本。
     文を書くことで、母の人生を、母の価値観を、母の生活苦をそして母の心配を母の希望を母の喜びを追いかける。そうやって母の人生を文章で綴ることが唯一の追悼でああるかのようだ。これは場所で父親を追悼した時と同じ手法である。ただ母の場合は性についてより赤裸々に描写している。
    日本では私小説という分野が盛んで、小説家の家族は結構なんでも赤裸々にバラされてあらあらということがあるが、これはネタ探しというよりもう少し内省的である。フランスの民衆も歴史に翻弄され、貧しいながらも

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    2022年12月28日
  • ある女

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    母親のことが書かれている。私自身も、母親と四六時中一緒にいると息が詰まるため、一定の距離を置いている。大学に入って実家を出たときにはホッとした。ある時、実家、母親のやり方に、ふと疑問を感じ、否定する気持ちが出てきたのだ。
    晩年の母親のシーンで、自分自身と母親、また、子ども達と母親としての自分を思って怖くなった。

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    2022年12月28日
  • 凍りついた女

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    「場所」や「ある女」、「シンプルな情熱」より、前半部分は少し読みにくかった。
    日本と同じく、フランスの男尊女卑が当たり前のことだったということがわかったが、アニーエルノーが、自分の両親よりも大分前に生まれている世代なのだということに驚く。今でこそ日本でも認められつつある男尊女卑だが、その世代の人が、結婚当初には既におかしいと感じていて、1981年に本にしているという現実が、日本の遅れを感じさせられた。
    現代のフランスは、どうなのか?日本と同じように、性による役割分担が、未だに染み付いているのだろうか。知りたくなった。
    『女の場合、やる気はどれもこれもひとりでに、必然的に失せていく。』とは、まさ

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    2022年12月28日
  • ある女

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    エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
    印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
    フランスは(?)こんなにも階級がかっつりしているんだなあと思いつつ、このような小説は果たして今の世代に当てはまるのだろうか、将来もこういった”階級”の小説、階級を超えようとする営みはあるのだろうか、なんてふと思った。この本で描かれているような、工場勤めの労働者階級と、大学を出て知識人と、という形はもう少し違う形で、存在するのだろ

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    2022年12月03日
  • シンプルな情熱

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    〇〇してから何日たった、あと〇〇時間後には…など、時間を意識せざるを得ない苦しさを思い出すとともに、時間を細切れにせず漠然と過ごせている日々はある意味幸せだと思った。
    著者の他の作品も読んでみたい。

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    2022年11月23日
  • シンプルな情熱

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    ノーベル文学賞つながりで、川端康成を本屋で買ったついでに平積みされているのをなんとなく購入。
    私生活を書く人だと言うことくらいしか知らずに読む。

    率直な感想は「私にはもはや遠い思い出」という感じ。
    誰かを熱烈に想ったり待ち侘びたりする季節は過ぎ去ってしまった。

    描写は簡潔でそっけないほどだ。

    自己と対話するような語り口が同じフランス人作家のマルグリッド=デュラスを思い起こさせるが、例えば「ラマン(愛人)」や「太平洋の防波堤」のようにフランス領インドシナを舞台にした異国情緒による風景の拡がりみたいなものは感じられない。アニー=エルノーの描く世界は閉じた狭い街と部屋の中という感じがする。

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    2022年11月22日
  • シンプルな情熱

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    "passion"
    元々の"受難"という意味もあり、
    恋、情熱に生きるということは
    自分の魂を奪われて、
    意志が強く見える一方で、ある意味
    主体性をなくしてしまっていることなのかも、なんて。

    欲することの限界を向かえたいような、
    向かえたくないような。
    終わりを意識しながら
    美しき時を化粧しながら、
    ただひたすら"待つ"。

    もしかしたら、ギャンブルのように
    "待つ"ことのゲームを
    楽しんでいるのかもしれない。
    (Aが好き、というより、相手はAであることが相応しい、という感覚もある?)

    恋、情熱について
    哲学し

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    2022年11月12日
  • シンプルな情熱

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    最後の終わり方が素晴らしかった。恋することにも、いろいろなランクがあるのだと知る。パッション、情熱、受難。フランスの大人の女。憧れるけど、全てがマネすらできない、今の私。

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    2022年10月30日