堀茂樹のレビュー一覧

  • ふたりの証拠
    どんな過酷な状況も、感じるより慣れることで飄々と乗り越えてきた双子の少年。その青年期となる本書ではそれなりに愛情や絶望に囚われる。

    リュカを取り巻く登場人物も多彩で、それぞれがドラマチックだった。
    現状を変えたくても、自分では変えられない、変われない。それゆえに生じる苦しみを何パターンも見せられて...続きを読む
  • 悪童日記
    翻訳なので、難しいと思っていたが、
    章が細かく分かれており、非常に読みやすい。
    ぼくらが感情なく淡々と物事を進めていく。

    ハンガリーの戦時中の話。
    特に盛り上がる所もないように思うが、続きが気になり読み進めてしまう。婆さんと関係が築けていくのが
    なんだかほっこり。

    ぼくらの今後が気になるため、二...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    身体を傷つける具体的な内容や醜い心を包み隠さない内容等が書かれており、うわ!と思わず声が漏れてしまった。人間が窮地におかれた時の見せない醜くい部分も人間らしいなと思う。
  • 「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード
    被害者至上主義。

    日本でも大概酷くなってると思うのだが、その比ではない。
    それに人種とか、アホみたいな歴史的事実が絡んでくるから、なお恐ろしいことになっている。厨二が厨二のまま生きていけると思っているのは日本だけではないというか、日本をこうしたい人たち。

    誰かが、形を変えた共産主義者だと言ってた...続きを読む
  • 悪童日記
    おもしろい、とは言えないのだが、興味深い作品であることは間違いない。

    ファクトで固められた語り。故の生々しい描写。
    日記、ということで一つ一つのエピソードは短いものの、印象的なやり取りが多いこと。
    双子が結構サイコパスチックなところ。

    中盤までは結構読むのしんどかったが、後半は結構加速。彼らが女...続きを読む
  • 凍りついた女
    凍りついた女

    著者:アニー・エルノー
    訳者:堀茂樹
    発行:1995年8月31日
    早川書房

    昨年、ノーベル文学賞を受賞した著者。1冊も読んだことがなかったが、昨年10月に「シンプルな情熱」という作品を読んだ。発売当時は日本でも大反響があり、「場所」「ある女」とあわせて〈証言〉三部作と呼ばれているら...続きを読む
  • 悪童日記
    二次大戦から終戦にかけてのハンガリーを舞台にしている。作中にはっきりそうと書かれる部分は一度もないが、歴史を踏まえて読むとまた面白い。二次対戦中の人々の悲惨な様子が淡々と描かれている。
  • シンプルな情熱
    積読の本を「片付け」ようと思い手に取った。
    ノーベル賞受賞アニー・エルノーの代表作。映画化されて大層話題にもなった。A役が有名なバレエダンサーで適役だということだったように思う。

    さて、「シンプルな情熱」は、まさしく「シンプル」な「情熱」であった。(繰り返してる笑)
    「シンプル」であることの剥き出...続きを読む
  • ふたりの証拠
    悪童日記の続編。国境を越えなかった双子の片方、リュカのお話。
    悪童日記ほどの引き込まれ感は無かった。
    全体的に陰鬱な印象。
  • 嫉妬/事件
    著者が過去の自分の手紙を読み返しながら、この小説を書いているようで、オートフィクションという特殊なこのタイプは、はじめて読みました。読みづらかったです。

    嫉妬では、心の中での私と、もう一人の私と、さらにもう一人のわたしで会話しているかのようで、自走、仮想、妄想とずっと一人で、狭い部屋にいる感じです...続きを読む
  • 「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード
    本書はフランス人が書いた物だが、日本の身近な会議でも「傷つく」ことを理由として自分の世界に閉じこもろうとする人に出会い、本書のテーマは世界的な動向だと感じる。
  • シンプルな情熱
    おフランスの恋とはこのように没入的なのね…だけど時間をおくと、恋情もセックスもこのように乾いてカチリと表現できるのね。で、これがベストセラーになるのね。深いな、フランス。
  • 第三の嘘
    悪童日記から続く物語の最後となる3作目。2作目と異なり、語り口は一人称視点に戻るが、「私」は明確に2人となり、描かれる年齢や時代も悪童日記から大きく変わる。
    その変化のせいだろうか、社会の残酷さや生きることの難しさ、悲哀という根底にある空気感は変わらないものの、悪童日記とは異なる読後感であった。
    ...続きを読む
  • 「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード
    Géneration offensée. De la police de la culture à la police de la penséeをこういうキビしいタイトルに訳すというのは出版社のアイディアなのか訳者の先生なのか……とくに「超過敏世代のデスロード」の「デスロード」が……まあ訳者の先生だ...続きを読む
  • 第三の嘘

    1.おすすめする人
    →過去の戦争に興味がある、前2作を読んだ

    2.感想
    →前2作を読んで、途中でやめようと思ったが、
     この3作目も読んでよかった。
     やっと全ての辻褄と意味が分かる。
     伏線の回収の仕方が素晴らしい。
     好みのレベルで★をつけているため★3だが、
     作品的にはとっても意味深いも...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    全体的にかなり読みやすい。描写や表現はノーベル賞受賞するくらいだからやっぱり凄い、と納得した。
    「嫉妬」は主人公が別れた後、男性が他の女性と暮らしていることを知り、激しい嫉妬に駆られる心情が描かれた作品。女性心理を凄く強烈に描いていて、失恋後だったらちょっとは共感できるのかもしれない。嫉妬によって妄...続きを読む
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 下 民主主義の野蛮な起源
    いやー難しいけど面白い!
    伝統的な家族形態,初等教育,高等教育が政治システムや国の在り方までの起源となり,様々な「敵」をなぜ作るのか,なぜ必要悪なのか?
    こんなにも説明ができるものなのかと感嘆.
    最終的にどんな国家のシステムも否定しない,かつ変化の途上とするのは,読後の満足感にはつながらないけど,世...続きを読む
  • 第三の嘘
    三部作完結篇。
    何と言うことだ。様相がまたもや変わった。

    この三部作は、合間を開けずに一気に読むことをお勧めする。最終巻を読んでいる時に多忙で途切れ途切れに読んでしまい、内容がきちんと把握できなかった。予想を裏切る展開に頭が混乱して理解できない。

    戦争の中、子供達が生き残るためにいかに過酷であっ...続きを読む
  • ふたりの証拠
    双子の片割れリュカは祖母の家に残った。
    一心同体だった二人がなぜ別々に生きることにしたのか。リュカたる人物が『あの双子』とは思えない程丸くなっている。何故?寂しさからか?私の頭は分からない事だらけだ。
    そして不遇の子マティアス。なんと賢く忍耐強いことか。『双子』が自分達に試練を加えて鍛えていた頃を彷...続きを読む
  • シンプルな情熱
    映画化を観て、
    これが小説だとどのように表現されるのかと、
    楽しみにして読んだ。

    醒めた視点は共通するが、
    原作はなんという内的な情熱の物語か。
    独白とも異なり、
    このような出来事があったという事柄は少なく、
    あくまでも自己批判的、内省的なパッションと、
    書くことに関する言語化というか、
    何が私の...続きを読む