堀茂樹のレビュー一覧
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長い間、著者の『悪童日誌』に続編があると知らなかった。三部作であり、その続編が本書であると知り、手に取った。
双子の一人が辿るストーリーにフォーカスされる。二部ではさらに歳を取り青年になるが聡明な雰囲気は変わらない。同時に、どんよりとした小説全体の雰囲気は登場人物の生き辛さと相俟って更に印象を強める。
愛情表現も、優しさの示し方も、何か偏っているように感じる。一人だからだろうか。それは、孤独だからだという事なのだろうか。「ふたりの証拠」という意味深なタイトルが最初から読者をその世界に誘っていく。
それと、双子の一人は既にだいぶ落ち着いてはいるのだが、前作での悪事を思い出し、読者を何か落ち -
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ネタバレある女
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹
発行:1993年7月31日
早川書房
2022年ノーベル文学賞、アニー・エルノーの小説。日本で出版された最初の3冊である『シンプルな情熱』『場所』『ある女』のうち、今週は『場所』と『ある女』を続けて読んだ。『シンプルな情熱』は2年前に読んだ。『場所』は死んだ父親について書いた本だったが、この作品は母親について書いた本。前者を読んで著者の父親像を知っていくにつれ、その時に母親(妻)はどうしていたのだろう、どう受け答えし、対応していたのだろう、と何回も思った。この作品でその答えが出るのかと思っていたら、違っていた。父親(夫)との絡みは殆どなかった。 -
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ネタバレ場所
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹
発行:1993年4月15日
早川書房
2022年ノーベル文学賞を受賞した作家。その年に、日本での翻訳出版1冊目である『シンプルな情熱』を読んだ。この『場所』は、日本における翻訳出版としては2冊目。フランスでは、『シンプルな情熱』が1992年出版され、『場所』はその8年も前の1984年に出ている。シンプルな情熱がベストセラーになって注目を集めたが、それまでの代表作は場所だったようである。場所はロングセラーだと訳者はあとがきで言っている。
アニー・エルノーは自分のことを書く小説ばかりだが、ノンフィクションではなく、あくまで小説、訳者は「テクスト」と -
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ネタバレ2022年のノーベル文学賞。
読後、ポッドキャストの「翻訳文学試食会」、「空飛び猫たち」、「世界文学放談胡椒とマルガリータ」を聞いたり、ネット上での感想を漁ったり、した。
読んでいる最中も賛否両論だろうなと予期していたし、実際そうだった。
個人的には、どうーでもいいー体験がどうーでもいいー水準で綴られる文章だなー、と思っていた。
というのも、作者自身を思わせる語り手が、エッセイとも当時の覚書とも区分けしづらい文章を綴る、その行為自体を描くタイプの文章だから。
下世話な覚書を小説に昇華させようとする苦肉の策、とも。
性質上、作家たるワタクシが、子供もいる中年なのに、子なし妻ありの若い男と期間限定 -
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ネタバレ嫉妬/事件
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹(嫉妬)、菊池よしみ(事件)
発行:2022年10月15日
ハヤカワepi文庫
初出:200年5月、単行本(早川書房)
ノーベル文学賞が発表される時期になった。2022年の受賞者であるアニー・エルノーは、その年に初めて読み(『シンプルな情熱』)、去年も1冊(『凍りついた女』)を読んだ。これが3冊目。中編小説が2本収められているが、『事件』の方は2022年に「あのこと」というタイトルで映画化されたようである。この文庫本も、本来の表紙カバーと、映画化用のものと、2枚重ねになっていた。
そのカバーにも書いてある「オートフィクション」というジャンル -
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ネタバレ凍りついた女
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹
発行:1995年8月31日
早川書房
昨年、ノーベル文学賞を受賞した著者。1冊も読んだことがなかったが、昨年10月に「シンプルな情熱」という作品を読んだ。発売当時は日本でも大反響があり、「場所」「ある女」とあわせて〈証言〉三部作と呼ばれているらしい。それよりも前、1981年に書かれたのがこの「凍りついた女」。
「シンプルな情熱」は、高校教師と作家をしている中年女性で、子供は大きくなって自宅にはおらず、普段は独り暮らし、東側の国の外交官でフランスに駐在する年下の男との、性愛について語る自伝的テクストだった。今回は、目指していた高校教師になれ -
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積読の本を「片付け」ようと思い手に取った。
ノーベル賞受賞アニー・エルノーの代表作。映画化されて大層話題にもなった。A役が有名なバレエダンサーで適役だということだったように思う。
さて、「シンプルな情熱」は、まさしく「シンプル」な「情熱」であった。(繰り返してる笑)
「シンプル」であることの剥き出しの「情熱」。(再び繰り返してるだけ笑)
そう、私(たち)はこのシンプルさにこそ感動し共感する。
近代人はこのシンプルさを捨てて生きてきた。人生は複雑だ。複雑であることは人間にとって重要で、シンプルさを追い求めることは「人間性」の否定でもあり、近代人である我々は複雑さをそのまま受け止めてきた。それ