堀茂樹のレビュー一覧

  • 第三の嘘
    三部作の最後ということだけれども、先の二作と比べたとき、双子の関係性が一番不幸で、悲しくなった。

    一、二作目の『悪童日記』と『二人の証拠』では、リュカとクラウスという双子の兄弟を巡って、全く違った物語が語られつつも、二人の関係は、一心同体のものとして描かれていた。『悪童日記』の二人は、理不尽な生活...続きを読む
  • ふたりの証拠

    1.おすすめする人
    →過去の戦争に興味がある、人間の本性を知りたい

    2.感想
    →「悪童日記」を読んでからの「ふたりの証拠」は
     かなり読みやすくスラスラいける。
     最後の章で、どれが本当でどれが作り話なのか、
     謎が生まれる。
     「悪童日記」を読んだ時には、
     もう読みたくないと思ったが、
     「...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    劇薬みたいな小説エッセイだった。
    40歳にもなって年下男の今カノを特定しようとする様はほぼホラーなのだが、その辺りの葛藤描写が精神病にも近い妄執となっており楽しめた。
    ここまで言語化できるという点が面白い。

    20代前半で望まぬ妊娠した主人公が3ヶ月間で如何にして堕胎したのかを書いた『事件』はよりシ...続きを読む
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか
    家族,宗教,識字化,産業,政治…見事なまでに一連のものとして,また絡み合い影響し合うものとして説明されている.まだ上巻を読み終わったところだけど,政治的,文化的,宗教的に相容れない集団が存在してしまうのは避けられない事なのかも?と.
    一方で,こういった深いところ,脈々と続いて来た人類の歩みに思考が及...続きを読む
  • ある女
    母親が亡くなった後、記憶を頼りに書かれた母親の姿、回顧。ノルマンディの小さな村に生まれ育ち、貧しい中で常に上を目指して精力的に生きて来た母親と、大学に行き、いわゆる”社会的階級”の壁を乗り越えた娘。
    認知症になって施設に入った母親を、複雑な思いで見守る娘の気持ちが率直に書かれている。ボーヴォワールの...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    仏映画 あのこと
    この原作が事件。エルノーの自伝的小説。それだけに生々しく、想像することを拒絶しそうになる。

    60年代フランスはIVG 人工妊娠中絶が違法。
    この時代背景でもって、彼女は苦しむ。
    果たして中絶することとは、権利であるのか。
    それとも。。。

    あとがきが秀逸であり、本当に考えさせられ...続きを読む
  • シンプルな情熱
    2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの代表作といってもよい作品。自身の不倫の経験を冷徹に観察することによって成立した作品。不倫相手を待つ苦しみ、不倫相手の離別との苦しみが主に描かれる。そして、情事の絶頂も少し触れる。情事の最中の肉体的な快感や葛藤には触れない。不倫という関係で得られる感情の...続きを読む
  • 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告
    フランスの知識人にドイツ嫌いが多い理由がよくわかった。彼の主張にももっともな部分はある。日本人向けに書いたという点も多少割り引いた方がよいかと。
  • シンプルな情熱
    とても短い小説なのですぐに読める。
    内容もただ「恋」の話だから難しくもない。
    文章もシンプル。
    .
    原題は『Passion simple』

    passionはもともと外部から被害を受けたときに生じる「苦しみ」「苦難」「苦悩」を意味する語であり、Passionとpを大文字で書くとイエス・キリストの「受...続きを読む
  • 嫉妬/事件
     2022年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家アニー・エルノーの短編集。『嫉妬』(堀茂樹訳)と『事件』(菊地よしみ訳)所収。

     自伝的フィクション(オートフィクション、autofiction)の作家だそうで、自身の経験をもとにしたフィクション。社会問題はさておき、そしてそのことと個人の経験が...続きを読む
  • 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告
    平和な日本にいると、ロシアによるウクライナ侵攻は
    社会主義専制国家によるヨーロッパ民主主義国家への
    暴走行為のように見えてしまう。

    著者のエマニュエル・トッドはフランスの人口学者。
    経済と人口動態から世界の力関係を見ると、
    ロシアの脅威よりもEU、ドイツを利するシステムこそ
    ヨーロッパひいては世界...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    自身の思考、感情などを言葉にしようとする意志の力に感嘆するものの、それ以上にこころをゆすぶられるものはなかった。
  • シンプルな情熱
    ノーベル賞を受賞したので読んでみた。
    評価ご真っ二つに分かれるとあった。女性の性について素直に書くと言う事、その時期を書き綴った事、を作品として評価されたものであるようだ。
    一読で私は何とも表現しがたかった。やはり外国の人は性の捉え方が日本と違うように感じる。
    読んで悪い本ではないが、また読み進めた...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    2022年ノーベル文学賞作品

    届いた小説は、文字が大きく行間が広く、むかし読んだ山田詠美の小説みたいなレイアウト。
    その割には1080円と値段が高い文庫本。
    ネット注文だったので、届いた時に、見た目にはガッカリする。

    読んだ感想は、読みやすい。
    その時の“私”の気持ちを淡々と解説し続けている。
    ...続きを読む
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか
    歴史人口学、家族人類学者のトッドらしい着眼点で、さまざまな国・地域の家族構成から、宗教や人々の経済基盤、ヒエラルキー、識字率などの統計を引きつつ、歴史をひもといていく。

    上巻前半はかなり学術的で、人類学素人の私にとっては、多少”体力”の要る読書になったが、後半は宗教改革から、プロテスタンティズムや...続きを読む
  • シンプルな情熱
    ノーベル文学賞受賞。
    初めて読む、アニー・エルノー作品。
    生のすべてを捧ぐような情愛。道ならぬ恋。
    同時にそれをどこか客観視するような筆致。
  • 嫉妬/事件
    「オートフィクション」とは何なのか。「私小説」とは違うのか。残念ながら、私には2作ともあまり面白く感じられなかったし、文学的価値もよくわからなかった。

    『嫉妬』は、自分の心の動きをこれでもかと冷徹に書いていく筆致はよかった。どんどん嫉妬にはまってストーカーのようになっていく心理は怖くて、嫉妬ってや...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    本年度のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーさんの著書2冊を1冊にまとめたお得な本。……と思ったが、本文のフォントサイズはでかいし、空行は多いし、解説込みでも223ページしかないのに1,188円もする。
    んで、ノーベル文学賞には興味がなくて、「事件」を原作とする映画が12月に公開されるので読んで...続きを読む
  • シンプルな情熱
    今年のノーベル文学賞受賞したアニー・エルノーの文庫本が平積みされていたので衝動買いしました。

    妻子ある外国人男性との不倫体験を回想し、まるで独り言のような脳内妄想をそのまま書き起こしたような印象。

    この体験記が人の目に晒されることにも自覚的で、
    恋に翻弄される女心を赤裸々に包み隠さず描写している...続きを読む
  • 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告
    「問題は英国ではない、EUなのだ」とよく似た内容ではあったが、EUの主導権を握っているのがドイツであり、EU自体が一枚岩になっていないことが理解できた。
    他民族が一緒に暮らすコンビビアリティの難しさを実感し、これから世界はどの方向に向かっていけばいいのかわからなくなった。