堀茂樹のレビュー一覧
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仏映画 あのこと
この原作が事件。エルノーの自伝的小説。それだけに生々しく、想像することを拒絶しそうになる。
60年代フランスはIVG 人工妊娠中絶が違法。
この時代背景でもって、彼女は苦しむ。
果たして中絶することとは、権利であるのか。
それとも。。。
あとがきが秀逸であり、本当に考えさせられた。後にフランスにおいても合法となる中絶。
実存主義的に考えるなら、人は無限に将来に向けて自分を発展させていく、まさに己が主体。そこで妊娠するとは、他者に主体を移すこと。
ボーヴォアールによれば、
子を持つことが女性にとって重荷だとすれば、
それは風習が女性に子を持つ時期の選択を許さないから。
マ -
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ネタバレ2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの代表作といってもよい作品。自身の不倫の経験を冷徹に観察することによって成立した作品。不倫相手を待つ苦しみ、不倫相手の離別との苦しみが主に描かれる。そして、情事の絶頂も少し触れる。情事の最中の肉体的な快感や葛藤には触れない。不倫という関係で得られる感情の起伏に人間の心理の真理があるのではないかとエルノーは考えているようだ。これは「場所」や「ある女」で自身の両親の心理に迫った手法で、自身の心理に迫ることで、人間の本質を捨象しより高い位置で理解したいと考えているようである。
作品の前半、恋愛の苦しさにどうしようもなくなっている著者に日本なら和歌や短歌 -
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とても短い小説なのですぐに読める。
内容もただ「恋」の話だから難しくもない。
文章もシンプル。
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原題は『Passion simple』
passionはもともと外部から被害を受けたときに生じる「苦しみ」「苦難」「苦悩」を意味する語であり、Passionとpを大文字で書くとイエス・キリストの「受難」の意味になるとあとがきで初めて知った。
この作品は正しくPassionで、その様が簡潔な文章で綴られている。
じっくり向かうとノーベル文学賞で、表面的に流すとただの不倫話。
本場フランスでは賛否両論だったらしいが、それもよく分かる。
否定的な批評は"平板な文体"と言い、支持派は"平板なのではな -
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2022年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家アニー・エルノーの短編集。『嫉妬』(堀茂樹訳)と『事件』(菊地よしみ訳)所収。
自伝的フィクション(オートフィクション、autofiction)の作家だそうで、自身の経験をもとにしたフィクション。社会問題はさておき、そしてそのことと個人の経験が切り離せるかどうかもさておき、正直エルノーの人生に興味はないし、今回ノーベル文学賞を受賞したということと、そのために文学カフェで取り上げるようになったこと(私が提案したわけだけど)がなければ、わざわざ読むことはなかっただろうなと思う。ナルシシズムのかおりがするものを基本的に受けつけないというのもある -
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歴史人口学、家族人類学者のトッドらしい着眼点で、さまざまな国・地域の家族構成から、宗教や人々の経済基盤、ヒエラルキー、識字率などの統計を引きつつ、歴史をひもといていく。
上巻前半はかなり学術的で、人類学素人の私にとっては、多少”体力”の要る読書になったが、後半は宗教改革から、プロテスタンティズムや印刷技術の普及による変化、都市文明と核家族化の関係、18世紀までさかのぼっても北欧の女性の識字率が高かったことなど、従来の身近な知識で読み進められる話になってくる。
全体として、父系社会は、農耕が始まり定住して財産を蓄えるようになり、相続という行為が必要になって生まれてきたもので、実は核家族よりも -
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今年のノーベル文学賞受賞したアニー・エルノーの文庫本が平積みされていたので衝動買いしました。
妻子ある外国人男性との不倫体験を回想し、まるで独り言のような脳内妄想をそのまま書き起こしたような印象。
この体験記が人の目に晒されることにも自覚的で、
恋に翻弄される女心を赤裸々に包み隠さず描写している。
しかしそこにはまるで艶かしさは感じられない。
なぜならそれは過ぎ去ったことで、今の自分は空虚だからと言わんばかりだ。
しかし、ノーベル文学賞とのつながりは今ひとつ分からなかった。
映画化もされているそうだけど、
なんとなくエリック・ロメールの映画のイメージに近い気がした。
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ネタバレカバー裏の窓には筆者の肩書として歴史人口学者・家族人類学者とあります。私は存じ上げなかったのですが、数字を引き合いに出して議論するちょっと面白いことをいうオジサンだな(失礼!)、という印象でした。
何が面白いかというと、時事的なトピックについて欧州人として率直かつ分かりやすく語っている点。例えば表題ですが、Brexitの件です。私がぼんやり考えていたのは、折角国連みたいな連帯組織であるEUにいるのになぜに抜けてしまうのか? もったいないなー、英国、みたいなとらえ方です(バカ丸出し済みません)。筆者から言わせると、いやいやEUがやばいのであって、寧ろ英国はフツーですよ、と説きます。一部移民の制 -
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人類学者であるエマニュエル・トッド氏が欧州の力関係を明らかにし、ドイツの支配構造を浮き彫りにしたインタビュー集。第一章『ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る』では14年のクリミア危機を背景として、ロシア脅威論の裏に潜むドイツ帝国の覇権や欧州におけるアメリカの凋落、ドイツに隷属する周辺国家の思惑などが指摘されている。冷戦対立に起因する《西側諸国VSロシア》という固定観念を脱却し「各国間の諸システムの間の純然たる力関係を見る」ことで、《アメリカVSドイツ》の新たな対立構造が現れる。諸国の家族制度比較を通じて経済性質の差異を解説するなど、人口学者的な視点からの分析も印象的だ。第二章以降では、自由主義に追従
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「ヨーロッパとは何か? ヨーロッパとはドイツを怖がる全ての国民の連合。そして、この定義はドイツ人を含む」という冗談がかつてEU本部のあるブリュッセルで流行った、とトッド氏は言います。EU内一強となったドイツを抑制する力が働かず、暴走する危険について氏は警鐘をならしています。
トッド氏は、家族形態の分類から国家や地域の文化的背景を特定し、出生率、高齢化率、識字率などの統計データの動向により国家の発展や衰退を予測する手法で、ソ連の崩壊を予測したことで知られています。
本書では、日本について言及した部分も多く興味深く読みました。日独の直系家族制度の類似性と相違点。日本の家族の重視とその功罪、など -