堀茂樹のレビュー一覧

  • ふたりの証拠
    悪童日記では感情を持たないのかと思ったけれど、今回は小さなマティアスを慈しむ様子が意外であり救いにも思えた。とはいえみんな闇の中であることは変わらない。タイトルの意味が最後の方でつながったと思ったら、「あれっ?」・・・すぐ次の「第三の嘘」を読みます!
  • 悪童日記
    戦争の激化で疎開した双子の少年が、独特の生きる術によって生きぬいていく。感情が一切描かれず他者からの過酷な仕打ちも、気遣いも淡々と処理されていく。双子が不気味で、読んでいて楽しくないのに引き込まれてしまう。
  • 「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロード
    かつて検閲は保守的で道徳主義的な右派のすることであったが、今日では道徳主義的でアイデンティティ至上主義的な特定の左派が行っている。
    文化盗用の定義として、はじめは支配や搾取の要素が含まれていたものの、次第に失われてしまった。
    反レイシズムとして、普遍的なものの名において待遇の平等を要求するフランス的...続きを読む
  • 悪童日記
    双子の男の子が、戦争中の国で逞しく生きていくお話。他人からの悪口に傷つかないよう、お互いに罵詈雑言を浴びせあったり、目が見えない、耳が聞こえないふりをしたり…。2人のトレーニング風景にくすっとしつつ、戦時下の不穏な空気が漂って不気味だった。
    三部作らしいので続きがどうなるか楽しみ。
  • 悪童日記
    過激な描写は多いが、心理描写が無く起こった事実だけを記しているので読んでいて不快感が無い。
    双子が生き抜くための過酷なトレーニングを淡々とこなしていく姿には爽快感すら感じる。
    結末も予想外でとても面白い作品でした。
  • ふたりの証拠
    悪童日記の続編。
    国境を越えなかったリュカのその後の生活を描いている。
    悪童日記と比べ、ザ戦争描写は表立ってないが、
    初めて女性、子供を愛すること、そしてその葛藤等が綴られてる。
    と思ったら最後のどんでん返し!
  • 第三の嘘
    「悪童日記」「ふたりの証拠」と3冊一気読みして、読後ゾワッとした。時系列、人物描写、思い出して辻褄合わせようとしてもグルグル合いそうで合わない、繋がらない。再読しても完全に理解できるかどうか…。作者の闇を感じたのは私だけかな。
  • 嫉妬/事件
    ノーベル文学賞に身構えたが、非常に読みやすかった。

    作者の経験をから書かれた、ノンフィクションとも私小説とも言えない感じの文章。
    それだけに生々しく苦手な描写も有り。
  • 嫉妬/事件
    『嫉妬』と『事件』の2作品。
    どちらも興味深いテーマだった。
    妊娠、中絶、出産。女性としての生殖機能があれば必ず考えなければならないできごと。
    何を選択してもみんなが幸せになれる世の中になればいいのにね。
  • 嫉妬/事件
    私は終えた。嫉妬に囚われた想像界、ここではそれは、嫉妬の虜であり、かつ観客であつわた私自身よ想像界だったわけだが、そこに現れるさまざまな形象を抽出することを。
  • 凍りついた女
    アニー・エルノー『嫉妬/事件』の次にこれを読んでみる。

    ひとりの女性の幼少から大人まで。
    独り言をまくしたててるような、短い分の連なり。

    特に少女から大人に移行していく十代後半の脳内は、特有の悩みが充満する。比較、否定、肯定…繰り返し。

    この十代の気持ちが必死に一つに、自分のアイデンティティに...続きを読む
  • 悪童日記
    サイコパスって感じの本、ぶっ壊れてる。
    面白くてすぐ読み終わった。
    不思議な感じ、一回読んでみてもいいと思う。
    過激な描写もあるし、怖いところも多い。ラストは、え!!って感じ。
  • ふたりの証拠
    アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』
    『悪童日誌』の続編、第二弾
    『悪童日誌』では語り手が双子兄弟の一人であり、固有名詞は出てこなかった
    『ふたりの証拠』は、三人称で書かれた文であり、いきなり固有名詞が出て来る
    もう冒頭から謎である
    しかし、超ドライだが読みやすい文は変わらない
    主役の双子兄弟の一人リ...続きを読む
  • ふたりの証拠
    前作『悪童日記』に続いて、ラストが衝撃的だった。
    『悪童日記』は、戦時中、魔女と呼ばれた「おばあちゃん」の家に疎開することになった双子の兄弟が、国境の町で強かに生き抜いた生活を日記という体裁で描いた物語だった。その前作は、双子の片方が、父親を犠牲に国境を越え、離れ離れになるところで終わった。今作は、...続きを読む
  • 第三の嘘
    予想を裏切る展開と、ラスト。
    三部それぞれが、物語として成立していながら、通して読んだ時の、新たなる発見がすごい。
    2人のどちら側からの視点なのか、実際なのか創作なのか、その全部が、層になっていて、切ない。
     匂いや 温度 視覚を感じる描き方だった。
  • ふたりの証拠
    三部作の二作目。人の悲しさ残酷さ 世の中がさらりと書かれているようで、逆に 今身近な事?とも思わされる。結末が、少し怖い。
  • 嫉妬/事件
    縁あって読む事になった小説。「嫉妬」「事件」の2作収録につき別々に感想を書く。

    「嫉妬」
    嫉妬に駆られている自分を冷静に見つめようとしながらもそれを失念し、ふと気付くと嫉妬が原動力になって色んな事をやらかしている、やらかそうとしていた事を冷静になった自分が書き記している、という作りになっていて面白...続きを読む
  • 我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか
    冒頭に書いてあるが、トッドによる研究の全貌を一般の読者にも読みやすい形で示した「私にとって最も大事な本」だそうだ。全人類の歴史を、家族システムという補助線ひとつで整理しなおしてみせる手際はおみごと。経済学ばかりが重視される社会科学の現状への異議申し立ても傾聴すべきと思う。「反米を煽るものではない」と...続きを読む
  • 嫉妬/事件
     映画「あのこと」を先に観てから原作読みました。映像が何せ衝撃だったので、小説はそれに比べると淡々と書かれていた印象。それでも、主人公の苦悩、女性だけが受ける苦痛はひしひしと伝わってきました。
     人工中絶が合法化されたのは日本の方が早かったことを解説を読んで知り、とても意外でした。未だ日本では経口妊...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    2023.1.14

    喉の奥に胸の奥に、後味がざらりと残る。

    追体験とはこのようなことを言うのか、
    と考えさせられるくらい、とめどない感情の波に呑み込まれ揺さぶられてしまう。
    読者の想像力や思考力を試しているかのような、畳み掛けるような筆致が続く。

    これは、遠い昔の話ではないのではなかろうか。
    ...続きを読む