あらすじ
ジェンダー、人種、肌の色――正しさは“属性”で決まる?
人の立場や出自で行動をジャッジし、「傷つきました」の一言で議論が終了……
歌手の髪型、ヨガの流行、日本風パーティにまで、過敏な抗議が止まらない。
文化を検閲し社会を分断する風潮は、どこへ行き着くのか?
フェミニストで反差別運動の旗手が、アメリカの議論に欠けている普遍主義の視点から、世界的ポリコレの暴走に対話の活路をもたらすエッセイ
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Posted by ブクログ
面白くてあっという間に読んでしまった。
英仏の黒人差別や「文化の盗用」論が中心でイメージしづらいところもあるが、ここ数年の世界で左派が負けるメカニズムが示されており、よくバズっている日本の(何ちゃって)フェミニズムの状況を適用して考えればかなり腑に落ちる。
かといって悲観せず、希望が持てる終わり方になっているのがよかった。
以下メモがてら。
『エスニシティを基準にして発言や想像への権利といった特別待遇を要求することで、人々が種々のカテゴリや、個々のエスニシティに固有の発想方法を維持すると、支配者たちがそれらを用いて自らの偏見を正当化し、被害者面をする。』
その結果、『アイデンティティ至上主義の左派はアイデンティティの右派を勝たせてしまう。発言する自由や創造する自由に至るまで、ありとあらゆる自由を攻撃するあまりに。』
Posted by ブクログ
このままではそのうちウォークと極右しかいなくなってしまうのではないかと恐れているので、本書やハイト&ルキアノフの『傷つきやすいアメリカの大学生たち』のような本を読むと安心するというか これもある意味「傷つき」の回避と言われればそれまでかもしれないが
「映画も料理も〈DNA〉で評価する」の章が特に面白かった ある映画作品あるいは制作陣やキャストが気に入らないこと(批判すること)と、上映を禁止させるのは違うと(当たり前のことだが)再確認してホッとした。「出自にかかわらずさまざまな役を演じることこそが、つまり、よりいっそう多様な表象によって普遍性を豊かにすることこそが、達成すべき目標なのに。(p. 134)」はまさにその通りだと思った
ただイスラモフォビアとまでは言わないが、著者が抱くイスラム文化への警戒心の強さを感じた この点はフランス(あるいは西欧)特有かな?
Posted by ブクログ
かつて検閲は保守的で道徳主義的な右派のすることであったが、今日では道徳主義的でアイデンティティ至上主義的な特定の左派が行っている。
文化盗用の定義として、はじめは支配や搾取の要素が含まれていたものの、次第に失われてしまった。
反レイシズムとして、普遍的なものの名において待遇の平等を要求するフランス的なものと、アイデンティティの名において特別待遇を求めるアメリカ的なものがある。後者は、差異への権利として、ステレオタイプをより強固にし、各々のアイデンティティを競争させる。すなわち、アファーマティブアクションの恩恵を優先的に受けるべき一番の犠牲者が誰かを決めるため、マイノリティ同士が喰いあうような事態となってしまっている。
大学はあらゆる人に開かれ、異なる考え方が交流する場所であり続けなければならない。
保守陣営は、特権者たちの支配を復活させるため、単一文化主義に戻るため、好き勝手に言葉を投げつけられるようにするため、ポリコレを批判するため、代案や本当の解決策は、誠実な反レイシストからしか出てこない。
Posted by ブクログ
最初は、タイトルだけ見て、ポリコレ的な話なのかな?と思った。ディズニー映画のキャスティング論争のような。
でも、紹介されている様々な事例、文化盗用の話を知って、ここまでか、、と驚いた。もちろん、著者が特に強い事例を持ってきているのかもしれないけれど。
私は普段、人種についてあまり気にしない。それは自分が日本で暮らしているからかもしれない。でも世界ではこんなにも人種に執着して、互いに監視している。不思議に思えてしまう。
最後に書かれていた、「多様性だけでなく、平等を擁護することを学びなおす必要がある」は大事な視点だと思った。多様性の前に、誰もが同じ人間であり、同じ自由と責任を持つこと、この前提が必要だな、と。
以下メモ
・文化盗用
あるグループが、「他者の文化」を借用するだけで文化的支配とみなされる
文化盗用を咎める諮問官達の狙いは、強く存在すること。そのために「傷つけられた」と大きく声をあげる
SNSのおかげで簡単に人を叩ける
自分は傷ついたと注目を集められる
文化盗用を糾弾する発言をすることで友達が作れる
アイデンティティが形成される
マスメディアはその火種に飛びつき、大きく報じる
・事例
アメリカ人が娘の誕生日を日本風に開催したことで、周囲の母親たちが人種差別と悪口を言う
エルヴィスの有名な曲は、黒人ブルースのカバーだったと非難する
コーンロウ(編み込みの三つ編み/黒人の伝統的な髪型)を白人が真似て非難される
黒人差別を主張する展示会の主催者が白人だったことで、展示会が中止に追い込まれる
トランスジェンダーの役をトランスジェンダーではない人が演じることで騒ぎになる
ZARAの発売したズボンが、自分の叔父がはいていたものと似ている、盗用だと主張する
ジャークライス問題:ジャークはジャマイカの伝統的料理で、スパイスを肉に塗りこんで焼くもの。お米をジャークするのはおかしい、しかもスパイスが使われていない、文化盗用だと批判
・アイデンティティ至上主義
自分たちを傷つけるものを検閲する
かつて検閲は、保守的で道徳的な右派が行っていた
今や左派の方が検閲に走る
・マイノリティが一丸となって、不平等と戦ってきたのに
今日では、フェミニズムが「白人もの」か「黒人のもの」かをめぐって争っている
・アファーマティブアクションの恩恵を優先的に受けられる一番の被害者が誰であるかを決めるために「マイノリティ」と「マイノリティ」が互いに相手を食いあうような事態が始まる
反レイシズムの2つのビジョン
・普遍的なものの名において、待遇の平等を要求する
・アイデンティティの名において特別措置を求める
・アイデンティティ至上主義者の論理を突き詰めれば
自分自身と同じ属性のアイデンティティの人物しか演じられなくなる
トランスジェンダーの役はトランスジェンダーだけが、
同性愛者の役は同性愛者だけが
では、ゾンビの役は誰が演じる?
・このような集団ヒステリーの原因の多くは、若い世代の過敏な皮膚感覚
若い世代は自分の存在を主張するためになげくのが一番と教わってきた。犠牲者至上主義
・今や学生に自信のアイデンティティを傷つける可能性のある授業には「出席しなくていい権利」がある・例えば、自殺や性的暴行がでてくる文学を扱うような授業
※アファーマティブ・アクション(積極的格差是正策)
歴史的に差別されてきたマイノリティ(人種や女性など)に対して、進学や就職の際に『特別な下駄』を履かせたり、優先枠を設けたりして、無理やり格差を縮めようとする制度
Posted by ブクログ
西洋圏において、文化的マイノリティを守るという名目のもと、マイノリティのアイデンティティを侵害する表現等がないか目を光らせ、引っかかった場合に執拗にその対象者をバッシングし、引きずり下ろすという、この傾向について述べたもの。
この傾向が特に強いのがアメリカの大学生で、タイトルの「傷つきました」はマイノリティが差別発言等を告発する意味もあるが、大学へ講義の撤回等を要求するこの大学生のことも指す。大学側は傷つきやすいこの若者に配慮し、次回の講義の予告をして不愉快な内容だと思えば出席を回避できるよう配慮する等を行っているところもあるという。
多文化主義に対する反発ってなんで起きるのだろうか、既得権益を持っている人かな?と思っていたが、こういう行き過ぎたマジョリティ側へのバッシングに対する反発という意味もあるのかもしれない。と思うと、この人たちは自ら差別を招いているのではないかと…。行き過ぎた主張や活動は一般人をドン引きさせ、理解も支持も得られないというのは考えればわかりそうなものだが…差別をなくすのが目的だと思っていれば。
現に著者が講義中に学生からまさにアイデンティティ至上主義的な抗議を受けた際のことをこの本でも記載しているが、マイノリティの歴史等を少しでも勉強していれば知ってて当然と思しき知識を以て反論したに過ぎないように思える。結局、アイデンティティ至上主義者は機械的にNGワード的なものを検閲し、感情的・脊髄反射的に反応しているだけということがわかった事例だ。要はピュアなんだと思う。だから、考えないし、考えないからこういう反論をいとも簡単に食らって何もできないし、差別をなくすための道筋を考えようともしないのだろう。
もしかすると、日本のXで盛んに発信されている政治的発言のように、承認欲求の手段となっている可能性があるのかなとも思った。
個人的には文化盗用の意味がわかったのはよかった。文化盗用は、一時日本の着物が何かで取り上げられて話題になったことがあったが、なんでそんなことになったのかそのときはわからなかった。支配者階級の、特に白人が主体となった時に問題とする人がいるということ、だから黄色人種である私がよくわからなかったのだということが、この本でわかったのは収穫だった。
Posted by ブクログ
被害者至上主義。
日本でも大概酷くなってると思うのだが、その比ではない。
それに人種とか、アホみたいな歴史的事実が絡んでくるから、なお恐ろしいことになっている。厨二が厨二のまま生きていけると思っているのは日本だけではないというか、日本をこうしたい人たち。
誰かが、形を変えた共産主義者だと言ってたな。
誰もが勝者になりたくて、被害者になる。
一旦ポジションを得れば、無敵モードだ。
左派の大学の現状が、目を覆わんばかりで、どうするんだって感じ。
Posted by ブクログ
本書はフランス人が書いた物だが、日本の身近な会議でも「傷つく」ことを理由として自分の世界に閉じこもろうとする人に出会い、本書のテーマは世界的な動向だと感じる。