【感想・ネタバレ】「傷つきました」戦争 超過敏世代のデスロードのレビュー

あらすじ

ジェンダー、人種、肌の色――正しさは“属性”で決まる?
人の立場や出自で行動をジャッジし、「傷つきました」の一言で議論が終了……
歌手の髪型、ヨガの流行、日本風パーティにまで、過敏な抗議が止まらない。
文化を検閲し社会を分断する風潮は、どこへ行き着くのか?
フェミニストで反差別運動の旗手が、アメリカの議論に欠けている普遍主義の視点から、世界的ポリコレの暴走に対話の活路をもたらすエッセイ

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Posted by ブクログ

面白くてあっという間に読んでしまった。

英仏の黒人差別や「文化の盗用」論が中心でイメージしづらいところもあるが、ここ数年の世界で左派が負けるメカニズムが示されており、よくバズっている日本の(何ちゃって)フェミニズムの状況を適用して考えればかなり腑に落ちる。

かといって悲観せず、希望が持てる終わり方になっているのがよかった。

以下メモがてら。

『エスニシティを基準にして発言や想像への権利といった特別待遇を要求することで、人々が種々のカテゴリや、個々のエスニシティに固有の発想方法を維持すると、支配者たちがそれらを用いて自らの偏見を正当化し、被害者面をする。』
その結果、『アイデンティティ至上主義の左派はアイデンティティの右派を勝たせてしまう。発言する自由や創造する自由に至るまで、ありとあらゆる自由を攻撃するあまりに。』


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2024年01月11日

Posted by ブクログ

このままではそのうちウォークと極右しかいなくなってしまうのではないかと恐れているので、本書やハイト&ルキアノフの『傷つきやすいアメリカの大学生たち』のような本を読むと安心するというか これもある意味「傷つき」の回避と言われればそれまでかもしれないが

「映画も料理も〈DNA〉で評価する」の章が特に面白かった ある映画作品あるいは制作陣やキャストが気に入らないこと(批判すること)と、上映を禁止させるのは違うと(当たり前のことだが)再確認してホッとした。「出自にかかわらずさまざまな役を演じることこそが、つまり、よりいっそう多様な表象によって普遍性を豊かにすることこそが、達成すべき目標なのに。(p. 134)」はまさにその通りだと思った

ただイスラモフォビアとまでは言わないが、著者が抱くイスラム文化への警戒心の強さを感じた この点はフランス(あるいは西欧)特有かな?

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

かつて検閲は保守的で道徳主義的な右派のすることであったが、今日では道徳主義的でアイデンティティ至上主義的な特定の左派が行っている。
文化盗用の定義として、はじめは支配や搾取の要素が含まれていたものの、次第に失われてしまった。
反レイシズムとして、普遍的なものの名において待遇の平等を要求するフランス的なものと、アイデンティティの名において特別待遇を求めるアメリカ的なものがある。後者は、差異への権利として、ステレオタイプをより強固にし、各々のアイデンティティを競争させる。すなわち、アファーマティブアクションの恩恵を優先的に受けるべき一番の犠牲者が誰かを決めるため、マイノリティ同士が喰いあうような事態となってしまっている。
大学はあらゆる人に開かれ、異なる考え方が交流する場所であり続けなければならない。
保守陣営は、特権者たちの支配を復活させるため、単一文化主義に戻るため、好き勝手に言葉を投げつけられるようにするため、ポリコレを批判するため、代案や本当の解決策は、誠実な反レイシストからしか出てこない。

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2023年09月10日

Posted by ブクログ

西洋圏において、文化的マイノリティを守るという名目のもと、マイノリティのアイデンティティを侵害する表現等がないか目を光らせ、引っかかった場合に執拗にその対象者をバッシングし、引きずり下ろすという、この傾向について述べたもの。
この傾向が特に強いのがアメリカの大学生で、タイトルの「傷つきました」はマイノリティが差別発言等を告発する意味もあるが、大学へ講義の撤回等を要求するこの大学生のことも指す。大学側は傷つきやすいこの若者に配慮し、次回の講義の予告をして不愉快な内容だと思えば出席を回避できるよう配慮する等を行っているところもあるという。

多文化主義に対する反発ってなんで起きるのだろうか、既得権益を持っている人かな?と思っていたが、こういう行き過ぎたマジョリティ側へのバッシングに対する反発という意味もあるのかもしれない。と思うと、この人たちは自ら差別を招いているのではないかと…。行き過ぎた主張や活動は一般人をドン引きさせ、理解も支持も得られないというのは考えればわかりそうなものだが…差別をなくすのが目的だと思っていれば。
現に著者が講義中に学生からまさにアイデンティティ至上主義的な抗議を受けた際のことをこの本でも記載しているが、マイノリティの歴史等を少しでも勉強していれば知ってて当然と思しき知識を以て反論したに過ぎないように思える。結局、アイデンティティ至上主義者は機械的にNGワード的なものを検閲し、感情的・脊髄反射的に反応しているだけということがわかった事例だ。要はピュアなんだと思う。だから、考えないし、考えないからこういう反論をいとも簡単に食らって何もできないし、差別をなくすための道筋を考えようともしないのだろう。
もしかすると、日本のXで盛んに発信されている政治的発言のように、承認欲求の手段となっている可能性があるのかなとも思った。


個人的には文化盗用の意味がわかったのはよかった。文化盗用は、一時日本の着物が何かで取り上げられて話題になったことがあったが、なんでそんなことになったのかそのときはわからなかった。支配者階級の、特に白人が主体となった時に問題とする人がいるということ、だから黄色人種である私がよくわからなかったのだということが、この本でわかったのは収穫だった。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

被害者至上主義。

日本でも大概酷くなってると思うのだが、その比ではない。
それに人種とか、アホみたいな歴史的事実が絡んでくるから、なお恐ろしいことになっている。厨二が厨二のまま生きていけると思っているのは日本だけではないというか、日本をこうしたい人たち。

誰かが、形を変えた共産主義者だと言ってたな。

誰もが勝者になりたくて、被害者になる。
一旦ポジションを得れば、無敵モードだ。

左派の大学の現状が、目を覆わんばかりで、どうするんだって感じ。

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2023年08月25日

Posted by ブクログ

本書はフランス人が書いた物だが、日本の身近な会議でも「傷つく」ことを理由として自分の世界に閉じこもろうとする人に出会い、本書のテーマは世界的な動向だと感じる。

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2023年06月14日

Posted by ブクログ

Géneration offensée. De la police de la culture à la police de la penséeをこういうキビしいタイトルに訳すというのは出版社のアイディアなのか訳者の先生なのか……とくに「超過敏世代のデスロード」の「デスロード」が……まあ訳者の先生だろうな。ははは。なんかしらんけど「デスロード」っていうとあの先生を連想しちゃうのよね。あ、「男たちのデスロード」っていう本出してたんだった。

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2023年05月25日

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