あらすじ
戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。独創的な手法と衝撃的な内容で全世界に感動と絶賛の嵐を巻き起した女性亡命作家のデビュー作。
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Posted by ブクログ
第二次大戦末期のハンガリーと思われる街を舞台に、おばあちゃんの家に疎開させられた双子の男の子が、残酷な世界を持ち前の才能を持ってサバイブする。目を向け難い戦争の現実が背景にあるが、その中に生活する人々の人間らしさをダイナミックに描いた傑作。
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読書で感情が揺さぶられた時の、「すごい本を読んだ」ではなく、「すごい本を読んでしまった…」という感覚がとても好きです。
これまで「好みと合わなそう」と避けてたのですが、「すごい本を読んでしまった…」以上の感想が出てこなかったです。
とにかくストイックな双子たちの言動と、戦時下にして占領下という特殊すぎる環境、綺麗事が通用しない時代の中で、彼らは本当に「悪童」なのだろうか…??と、読んでいて混乱してしまいました。
自分達の感情はもちろん、双子の固有名詞すら登場しない文体だから、読者からするととんでもないエピソードや事件が、全く特筆すべき出来事でないかのように投下されていくスピード感が癖になります。
終盤にかけては、ほぼ全章で「鎧の巨人と超大型巨人の正体」が明かされたシーンのような不意打ちを味わいました。
1冊の物語として完成されているので、続編を読むことでこの余韻がぶち壊されてしまうのではないかと不安です。
この後の2冊を読んだ方々のご意見を伺いたいです…。
Posted by ブクログ
なんかすごかったなと思った。
まずこの小説は事実のみ語られるので、なぜそのような行為をしたのかこちら側が考える必要があり、それが普通の小説とは違うなと感じ面白さを感じた。
また戦時中のことを描かれているということもあり、たとえフィクションではあるが、今の時代とかけ離れており、本当にそういったことがあったんだと思わせる描写も少なくなかったと感じる。
ぜひ第二章も読みたいと思わせる本でした。
Posted by ブクログ
「牝犬の子め!おまえたち、わしに同情したって言いたいのかい?」
「違うよ、おばあちゃん。ぼくらはただ、ぼくら自身のことを恥ずかしいと思ったんだ」
という割と始めの文章を読んでこの小説絶対面白いなと思った。そして、あっという間に読み終えた。主人公の双子の子は自分達の考えや価値観があって周りの人に左右されない。自分達で考えて行動する。生々しい出来事も淡々とした文章でサラッと読めた。2部、3部も読みたいと思い購入した。
Posted by ブクログ
『悪童日記』は、不条理文学と呼ぶにふさわしい作品だと思います。決して心が明るくなる物語ではありませんが、感情を排した無機質な文体が、かえって戦争の悲惨さや人間の虚無を鋭く突きつけてきます。
戦争下で「強くならなければならない」「非情でなければならない」という状況は、人生の儚さや生きることの無意味さを一層際立たせます。読み終えた後には重苦しく、後味の悪さが残ります。
それでも、この奥行きのある文章は、戦争の現実や人間の生き方について深く考えさせてくれました。
Posted by ブクログ
戦時中から戦後にかけてのナチスドイツとソ連の狭間であるハンガリー国境付近の祖母のもとに疎開した双子の男の子の日記形式で進む話。
固有名詞が出てこなくて、双子も個性はなく「ぼくら」としか書かれていません。お互い会話もしません。
過酷な戦時を生き延びるために二人は痛みに耐える練習、断食の練習などをして日々過ごします。生き延びるためにいろんな悪事もします。
周りに流されることのない二人だけの判断基準。感情を抑えた客観的事実だけを連ねる日記。徹底した無感情な日記が不気味でもあり、逆にその裏の感情を想像してしまう。心まで武装してるの?と思ってしまう。
最終ページが衝撃的だと聞いてはいたのですが、いや、なるほどね!
エグいシーンが多いので、笑顔で人に勧められる小説ではありませんが、これは傑作というのが分かります。読後も引きずるタイプのやつ。マジですごい。
Posted by ブクログ
この物語の主人公たち(ぼくら)はとても異質な双子、自分たちが生き残るために必要であると感じたことは善悪という感性はなく、ただ必要であるからという理由で淡々とこなす。しかし意外と人情深いところもあったり(おそらくこの少年たちにとって有益、若しくは恩義を感じた人に対して。例えば将校、おばあちゃん、神父などがそれに該当すると考える。)、逆に自分たちにとって取るに足るものではないと判断した人に対しては容赦なく切り捨てていく。
彼らに感情が無かった訳じゃない。ただそこでの生活は感情を殺して生きることがベターだったから。だから機械のフリをした人間と感じた。とにかく本人たちの価値観と信念が明確で、そこから外れた物や人はあらゆる手段を用いて排除、もしくは自分たちのための糧として活用する、冷酷な一面もある。
ここで注目すべきは悪童日記の題名である。日記形式で話が区切られ、転々と場面が変わる展開、また著者はそこに一切の感情を明確に描写はしない。これがかなりシリアスな展開を含んでいても淡々と物事は進んでいくので、読んでいてもそこまで重い気持ちにはならず、またサクサクと読めてしまう不思議な感覚があった。
非常に面白かった。
Posted by ブクログ
ドライな文章で、客観的に見たら悲惨な兄弟の人生を描く。
怖くて悲惨なんだけど、かわいそうと思うのは許されないような生き方。
でもふたりはちゃんと家族愛を知っている。
それが一般的なものからかけ離れていたとしても。
こういう価値観もある、そうしないと生きていけなかった。
…と衝撃を受ける作品。
Posted by ブクログ
淡々とした客観的描写から、人々を翻弄する戦争の過酷さ、双子の倫理観、彼らの変化や成長、おばあちゃんとの関係の深まりなどが伝わってくる。
目的のためには手段を選ばず、冷酷に、感情を捨てて行動する双子。どうやってピンチを切り抜けるかとハラハラする場面もある。最後も意外な展開だった。
他の人も書いているが、漫画の『ミギとダリ』を思い出すのは、双子だからというだけでなく、作者のユーモアに通底するところがあるからかも。
続編も読みたい。
Posted by ブクログ
「いたずらっ子の双子の話」とだけ前情報を仕入れて読み始めた。
戦争の影響で、都会から田舎の祖母のもとに預けられた双子が書いた日記という体の小説。
双子は日記を記すにあたってルールを決めている。
客観的な事実のみを記入し、感情などという曖昧なものは排除する。
「母親が大好き」はどれくらい好きなのかわからないから不可。
「夜、母親を思い出す」は事実であれば可能、といった感じ。
したがって、双子の日記には母親がどれだけ恋しいかという表現は全く無い。
しかし、「日記には書かれない」だけで、双子は恋しいと思っていたのかもしれない。本当の所は誰にもわからないが、母親に対して何も思っていないわけではない、という表現は随所に存在する。
しかし、感情はノートには書かれない。
悪童日記三部作は一貫して、「ノートに書かれたことと、書かれないことの違い」「何かを書くと、書いたことのみが事実とされ、(事実であっても)書かれないことは読者にとっては事実にならず、消えていく」という、表現物と事実の齟齬のようなものがテーマになっている気がする。
例えば、どんなに忠実な日記を書こうと思っても、文字数や表現の関係で書かないことは絶対に出てくると思う。
朝ご飯はパンにした。
朝ご飯はパンかご飯か考えたけどパンにした。
朝ご飯はパンかご飯か食べないか考えたけどお腹が空いたし、ご飯は冷凍があると思ったけどなかったのでパンにした…。
食事の選択にしろ、人は色んなことを考えたうえで生きている。全部の思考を書くのは困難なので、「朝ご飯はパンにした」だけを記入すると、日記の中では、「ご飯にしようか迷った自分」「冷凍のご飯があると勘違いしていた自分」は、日記の中にはいなくなる。読んだ人には伝わらない。
この、「記述された事実」と、「消えた事実」を、事実しか記入されない日記を読んでいると意識してしまう。
前述のルールのため、記述は非常に淡々としている。
語り口は淡々としているのに、戦時下の状況はめまぐるしく移り変わっていき、文章量はそこまで多くないのに読み終えた後の満足感は驚くほど高い。
最後の一文を読んだ後、しばらく余韻に浸ってしまった。
双子は決してお互いを区別することなく、一貫して「僕ら」と記述され、二人で一つとなり強かに生き抜いていく。
双子は時には悪事も行うが、私利私欲のために生きているというよりは、双子なりの倫理観は持っていて、双子の倫理観と世間の倫理観が異なる場合には双子の倫理観を優先して双子なりの罰を与える、という印象。
Posted by ブクログ
独特の文体と設定が面白く、一気に読んでしまった。
強くなるためにお互いに罵り合い、傷つけ合う双子。
ラスト一行は驚き。三作品の中でもこれが一番。
Posted by ブクログ
久々にここまで刺さる小説を読んだ。
海外作家の文章だけれど癖がなく、するする読めてしまうが、「え?えええ?ちょっと待て」みたいな場面や描写が何度も出てくる。
完全なる善人などいなくて、人間はどこまでいっても人間、愚かだと感じる。登場人物みながある面では優しく、ある面では残酷であることがそれを物語っている。
Posted by ブクログ
なんて読む手の止まらない文章だろうか。
ぼくら、の目線で見る景色
ぼくらが何とも斜に構えた感じで、起こったことに対する対応が読めない
次はどんなクールを見せてくれるのかと手が止まらなくなる
戦争下での悲惨さ、過酷な状況で生きる子どものたくましさ、適応した感情の起伏に心が打たれるとか言って人にオススメもしやすい。
ただし本心では厨二心が揺さぶられまくっている。
いやこれ続編ってどうなるのさ、ラストの鳥肌回収できるの?気になってしょうがない。
Posted by ブクログ
タイトルどおり悪童日記です。
第二次大戦中の欧州のとある国の出来事を、ある双子の子どもの視点で語っています。
彼等は生きるために知恵を駆使して狡猾に振る舞います。
Posted by ブクログ
面白かった。
2人の少年の感情が書かれていないから、我々はこの2人の少年のことを知っているようで知らないということが起きて面白い。
森の中で遺体を見つけたらしいと分かるあたりで、この話は全てを書いているわけじゃないんだと分かり(遅かったかも)、最後の最後にあれなのも納得だし手法が凄いと思った。
Posted by ブクログ
戦時中の小さな町。主人公の双子は、疎開したその町で、自分たちなりの正義を貫いて生き抜いていく。清冽で苛烈な子どもたち。まだ乳歯が生えている年齢なのに。
双子の周囲には、野卑で冷たい祖母や将校、貧しく孤独な隣人の女の子などさまざまな人々がいる。読み進むうちに善と悪、聖と俗が入り混じり混沌として、登場人物たちの印象がぐらぐら動いて変わっていった。主人公の正義すらも、正しいのかよくわからなくなった。そして人間はたしかにそういうグラデーションに満ちた存在なのだろう、と思った。
戦時中の生活や雰囲気の描写は、少し前なら現実感なく古くさいと思っただろう。今は身近な感じがして想像しやすくなっていることが、恐ろしかった。
淡々とした文章なのに、語られる内容は衝撃的で落差がすごい。
でも、解説で続編があると知り、それが一番の衝撃だったかもしれない。
Posted by ブクログ
両親の庇護のもと、幸せに暮らしていたはずの賢い双子の男の子。
戦争の苦しみ悲惨さから自分たちを守るため、自ら労働し、勉強し、外国語を習得し、死に対して慣れたり、泥棒したり、傷つけられたりする訓練をする。
私はどうしても、母親としての視点で彼らをみてしまう。
心に残る場面が多くあった。
母親が双子を心配して迎えに来たのに、祖母の元を離れず目の前で亡くなっても動揺せず埋めてしまう2人。
自分のことでいっぱいいっぱいな父親を、利用する2人。
人の死にたいという要望を、抵抗なく叶えてしまう2人。
人の死が当たり前の世界に住んでいて、いちいち傷ついていたら生きていけないのだと思う。
大人たちが始めた戦争に巻き込まれていくしかない子どもたちが、こんなにも残酷にならざるを得ない世界の悲惨さがなんとも言えず悲しい。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦が激化していく中、疎遠だった祖母の元へ疎開していく双子の日々の出来事を記した作文あるいは日記の体裁の物語。叙情的な表現を排し、即物的な文章で書かれており、戦争の厳しさすらやや寓意的に思える印象を与える文章だった。
昔使っていた単語帳に、”cruel” の項目があった。その単語帳は意味と共に例文が載っている形式で、その時の例文は ”The children are cruel.” だった。この小説を読んでいて、なぜだかこの例文を思い出した。
まだ社会的な価値観が形成されていない双子が、自分たちの目で見た戦時中の景色を自分たちの考えで判断し、世界を発見していく過程が記されており、二人のしたたかさに舌を巻く場面が多かった。どうしてもハンガリーという、第二次世界大戦を通しドイツのナチズムの支配からソ連の支配に移っていく苛烈な舞台で、こんな時代を生き残るための双子なりの術が目につきやすい。けれども、双子はただ周りに反発するだけでなく、双子なりの愛や見方で世界を理解しようとしていたと気付くと、物語により深みが産まれていった。
個人的には、よく引用されやすい章ではあるが、乞食のマネをする章が一番好きだった。隣に住む「兎っ子」のマネをし、乞食として1日物乞いをする。お金や食べ物をくれたり、仕事をくれようとする人、何もないからと撫でていく人もいる。最後にはもらったものを全て捨てていくが、その時の「帰路、ぼくらは道端に生い茂る草むらの中に、林檎とビスケットとチョコレートと硬貨を投げ捨てる。 髪に受けた愛撫だけは、捨てることができない。」という文章はハードボイルドさに溢れていて好きだった。
実は三部作の一作目なのに驚いた。
Posted by ブクログ
これはいい。
曖昧さを排除し、真実しか綴らない日記というだけあって淡々とした展開だけど、
これが非感傷 無感情 効率中の双子の性質を引き立てている
戦時中の混沌とした世界に適応して、誰も信用せず二人だけの世界で生きていく決意たるや
アニメ「ミギとダリ」がイメージに重なった
Posted by ブクログ
第二次世界大戦期のヨーロッパの地獄を、少年たちの目線から描く傑作。少年たちの日記がそのまま作品になっており、とても読みやすい。
少年たちの成長物語のような娯楽性を兼ね備えつつも、当時の価値観や世俗を批判的に描いている。
母親が目の前で死んだり、祖母を自らの手で殺したりと、地獄の経験を乗り越えてひたむきに生きる姿に胸を打たれる。実の父親の死を利用し、ひとりが他国に逃げるラストの余韻がとんでもない。
Posted by ブクログ
双子の男の子の話なので、アニメ「ミギとダリ」を思い出しながら読んだ。淡々と書かれているが、内容は結構ハード。え〜っていう展開が続く。最後も意外だった。「戦争がどんなものか、女はまるっきりしっちゃいねえんだ」に対する女の言葉が秀逸
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文体がどこまでもシンプルなので非常に読みやすかったが、シンプルすぎる故に言いようのない不気味さも感じられた。あまり他にないタイプの作品だったので新鮮で面白かったし、考察したい要素も散らばっているので再読したい。
Posted by ブクログ
だいぶ昔に読み、面白かったのだが消化不良であった本書を再読。果たして物語において双子は本当に「悪童」だったのか。
双子や母親、祖母との関係性を先の大戦における国家同士のアナロジーとして読んでみたいとも思った。双子の国とは。そこには確かに寓話性がありそうだが、本書だけでは読みきれぬ、しかし確かに何かを示唆する異物感が残る。その正体が何かを知りたく、検索すると『悪童日記』は三部作の一冊であった。そんなことも、今更知ることになる。
日記なのか。兎っこは何を意味するのか。双子は周到に自分たちを鍛え上げていく。物事を為すにも完璧に作戦を練り上げる。そんな双子が証拠となるような日記を残すという矛盾。異物感の一つはそれだが、続編で解き明かされていくのだろうか。また、家族の関係性も、行動の動機もよく分からない。
初めて読んだ時とは全く異なる読後感。三部作全て読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
大好きな小説の1つ。
独特な文体で、淡々とログの様に情景が描写されるその手法がなんとも言えずハマった。
淡々とつづられる文章とは裏腹に、そんな事が起こってしまうのかというショッキングな出来事もよく起こる。
気がつけば文章から目が離せず、釘付けになりながら読み進めてしまった小説。
「双子」のお話だが、その内容は書かれた「日記」という事なので、こういった表現になっているんだろうか。
Posted by ブクログ
ここ数年積読だった本。
Xによると10年前に私は映画を見たらしいけど、記憶がない。
名前すら出ないおそらく顔と頭がいい乳歯レベルの双子男子がサイコパスな日常を歩んでいる日記。
双子、どちらが書いているとか名前とかないし常に一緒なのでさっぱり区別がつかない。
お母さん恋しいのかと思いきやあっさりだし、ラスト急展開だしなんか見落としたのかと思った。
おばあちゃん、すごい嫌なやつなのにこの双子はなぜ殺さなかったのか?
なぜ倒れてから甲斐甲斐しく世話をしたのか?
続編を読まずにはいられないのでネットで買う。
Posted by ブクログ
「悪童日記」三部作の一作目
戦時下にて自らの矛盾、不条理をさらけ出す大人たち。一方「ぼくら」は独自のルールで強かに生き抜いていく
ラスト1ページの衝撃たるや!