【感想・ネタバレ】悪童日記のレビュー

あらすじ

戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。独創的な手法と衝撃的な内容で全世界に感動と絶賛の嵐を巻き起した女性亡命作家のデビュー作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

この物語の主人公たち(ぼくら)はとても異質な双子、自分たちが生き残るために必要であると感じたことは善悪という感性はなく、ただ必要であるからという理由で淡々とこなす。しかし意外と人情深いところもあったり(おそらくこの少年たちにとって有益、若しくは恩義を感じた人に対して。例えば将校、おばあちゃん、神父などがそれに該当すると考える。)、逆に自分たちにとって取るに足るものではないと判断した人に対しては容赦なく切り捨てていく。
彼らに感情が無かった訳じゃない。ただそこでの生活は感情を殺して生きることがベターだったから。だから機械のフリをした人間と感じた。とにかく本人たちの価値観と信念が明確で、そこから外れた物や人はあらゆる手段を用いて排除、もしくは自分たちのための糧として活用する、冷酷な一面もある。
ここで注目すべきは悪童日記の題名である。日記形式で話が区切られ、転々と場面が変わる展開、また著者はそこに一切の感情を明確に描写はしない。これがかなりシリアスな展開を含んでいても淡々と物事は進んでいくので、読んでいてもそこまで重い気持ちにはならず、またサクサクと読めてしまう不思議な感覚があった。
非常に面白かった。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ドライな文章で、客観的に見たら悲惨な兄弟の人生を描く。
怖くて悲惨なんだけど、かわいそうと思うのは許されないような生き方。
でもふたりはちゃんと家族愛を知っている。
それが一般的なものからかけ離れていたとしても。
こういう価値観もある、そうしないと生きていけなかった。
…と衝撃を受ける作品。

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「いたずらっ子の双子の話」とだけ前情報を仕入れて読み始めた。
戦争の影響で、都会から田舎の祖母のもとに預けられた双子が書いた日記という体の小説。
双子は日記を記すにあたってルールを決めている。
客観的な事実のみを記入し、感情などという曖昧なものは排除する。
「母親が大好き」はどれくらい好きなのかわからないから不可。
「夜、母親を思い出す」は事実であれば可能、といった感じ。
したがって、双子の日記には母親がどれだけ恋しいかという表現は全く無い。
しかし、「日記には書かれない」だけで、双子は恋しいと思っていたのかもしれない。本当の所は誰にもわからないが、母親に対して何も思っていないわけではない、という表現は随所に存在する。
しかし、感情はノートには書かれない。

悪童日記三部作は一貫して、「ノートに書かれたことと、書かれないことの違い」「何かを書くと、書いたことのみが事実とされ、(事実であっても)書かれないことは読者にとっては事実にならず、消えていく」という、表現物と事実の齟齬のようなものがテーマになっている気がする。
例えば、どんなに忠実な日記を書こうと思っても、文字数や表現の関係で書かないことは絶対に出てくると思う。
朝ご飯はパンにした。
朝ご飯はパンかご飯か考えたけどパンにした。
朝ご飯はパンかご飯か食べないか考えたけどお腹が空いたし、ご飯は冷凍があると思ったけどなかったのでパンにした…。
食事の選択にしろ、人は色んなことを考えたうえで生きている。全部の思考を書くのは困難なので、「朝ご飯はパンにした」だけを記入すると、日記の中では、「ご飯にしようか迷った自分」「冷凍のご飯があると勘違いしていた自分」は、日記の中にはいなくなる。読んだ人には伝わらない。
この、「記述された事実」と、「消えた事実」を、事実しか記入されない日記を読んでいると意識してしまう。

前述のルールのため、記述は非常に淡々としている。
語り口は淡々としているのに、戦時下の状況はめまぐるしく移り変わっていき、文章量はそこまで多くないのに読み終えた後の満足感は驚くほど高い。
最後の一文を読んだ後、しばらく余韻に浸ってしまった。
双子は決してお互いを区別することなく、一貫して「僕ら」と記述され、二人で一つとなり強かに生き抜いていく。
双子は時には悪事も行うが、私利私欲のために生きているというよりは、双子なりの倫理観は持っていて、双子の倫理観と世間の倫理観が異なる場合には双子の倫理観を優先して双子なりの罰を与える、という印象。

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2025年04月04日

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ネタバレ

独特の文体と設定が面白く、一気に読んでしまった。
強くなるためにお互いに罵り合い、傷つけ合う双子。
ラスト一行は驚き。三作品の中でもこれが一番。

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2025年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画視聴後に続きが気になり読み始めました。
細かい話ごとに分かれてあるので読みやすく、さくさくと読めます。

映画のラスト同じですが内容はやはり小説の方が濃いです。
映画も中々だと思いましたが、小説はそれを上回るえぐみがあります。
また二人の表現力が高く、「頭蓋に受けた愛撫は捨てられない」みたいな表現がとても切なくて好きです

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。
2人の少年の感情が書かれていないから、我々はこの2人の少年のことを知っているようで知らないということが起きて面白い。
森の中で遺体を見つけたらしいと分かるあたりで、この話は全てを書いているわけじゃないんだと分かり(遅かったかも)、最後の最後にあれなのも納得だし手法が凄いと思った。

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2025年10月10日

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ネタバレ

両親の庇護のもと、幸せに暮らしていたはずの賢い双子の男の子。
戦争の苦しみ悲惨さから自分たちを守るため、自ら労働し、勉強し、外国語を習得し、死に対して慣れたり、泥棒したり、傷つけられたりする訓練をする。
私はどうしても、母親としての視点で彼らをみてしまう。

心に残る場面が多くあった。
母親が双子を心配して迎えに来たのに、祖母の元を離れず目の前で亡くなっても動揺せず埋めてしまう2人。
自分のことでいっぱいいっぱいな父親を、利用する2人。
人の死にたいという要望を、抵抗なく叶えてしまう2人。
人の死が当たり前の世界に住んでいて、いちいち傷ついていたら生きていけないのだと思う。
大人たちが始めた戦争に巻き込まれていくしかない子どもたちが、こんなにも残酷にならざるを得ない世界の悲惨さがなんとも言えず悲しい。


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2025年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 第二次世界大戦が激化していく中、疎遠だった祖母の元へ疎開していく双子の日々の出来事を記した作文あるいは日記の体裁の物語。叙情的な表現を排し、即物的な文章で書かれており、戦争の厳しさすらやや寓意的に思える印象を与える文章だった。
 昔使っていた単語帳に、”cruel” の項目があった。その単語帳は意味と共に例文が載っている形式で、その時の例文は ”The children are cruel.” だった。この小説を読んでいて、なぜだかこの例文を思い出した。
 まだ社会的な価値観が形成されていない双子が、自分たちの目で見た戦時中の景色を自分たちの考えで判断し、世界を発見していく過程が記されており、二人のしたたかさに舌を巻く場面が多かった。どうしてもハンガリーという、第二次世界大戦を通しドイツのナチズムの支配からソ連の支配に移っていく苛烈な舞台で、こんな時代を生き残るための双子なりの術が目につきやすい。けれども、双子はただ周りに反発するだけでなく、双子なりの愛や見方で世界を理解しようとしていたと気付くと、物語により深みが産まれていった。
 個人的には、よく引用されやすい章ではあるが、乞食のマネをする章が一番好きだった。隣に住む「兎っ子」のマネをし、乞食として1日物乞いをする。お金や食べ物をくれたり、仕事をくれようとする人、何もないからと撫でていく人もいる。最後にはもらったものを全て捨てていくが、その時の「帰路、ぼくらは道端に生い茂る草むらの中に、林檎とビスケットとチョコレートと硬貨を投げ捨てる。 髪に受けた愛撫だけは、捨てることができない。」という文章はハードボイルドさに溢れていて好きだった。
 実は三部作の一作目なのに驚いた。

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第二次世界大戦期のヨーロッパの地獄を、少年たちの目線から描く傑作。少年たちの日記がそのまま作品になっており、とても読みやすい。
少年たちの成長物語のような娯楽性を兼ね備えつつも、当時の価値観や世俗を批判的に描いている。
母親が目の前で死んだり、祖母を自らの手で殺したりと、地獄の経験を乗り越えてひたむきに生きる姿に胸を打たれる。実の父親の死を利用し、ひとりが他国に逃げるラストの余韻がとんでもない。

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

双子の「ぼくら」が互いを鍛え合い、異常なほど賢く強くなっていく。
人間味が失われているように思うが、生きるためにはそうならざるを得なかったのだろう。祖母と双子の関係が、最初に祖母の元へ連れられた頃からラストの祖母が亡くなる前でかなり変化していたのが印象的。
自分の財産を双子に与えたり、母に付いて行かず祖母の元へ残ったり祖母が望むのであれば楽に殺そうというような、残酷な世界の中でも少しの愛情を感じた。
「ぼくら」で語られ、双子であることが最大の強さだと感じていたが、ラストで片方は国境を越え、もう片方は祖母の家へ戻るというのが衝撃。
続きが気になる。

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2025年12月09日

ネタバレ 購入済み

残酷な戦時中のなかを生き抜く冷酷な兄弟の物語。ずっと読んできたらそこまで衝撃的な結末ではないように感じた。でも一気に読むほど面白かった。

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2022年01月15日

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