エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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西洋の敗北という本を読んで、現在の資本主義が終わりかけていると思いました、これは6冊目の著作となります。今までに「第三次世界大戦」というフレーズを聞いてきましたが、この本を読むと現在はその段階に入っているかもしれないと思いました。
以前、ノストラダムスの予言の本を読んだ時に印象に残っているのは「共産主義は消滅する、そして資本主義も消滅しなければならない」というフレーズです、これを読んだ小学生の頃には見当もつきませんでしたが、実際に、ソ連が消滅して、今のアメリカや欧州を見ていると、見えてくるものがあります。
明日(2026.2.8)は日本の近い将来を決めることになる、衆議院総選挙です、恐らく、自民党が快勝することになると思いますが、日本に暮らす人を幸せにするような政策で導いて欲しいです。
以下は気になったポイントです。
・ウクライナの NATO 入りは絶対に許さないとロシアは明確に警告を発してきたにもかかわらず、アメリカ と NATO がこれを無視したことが 今回の戦争の原因である、とミヤシャイマー(戦略的現実主義の論客)はコメントしている(p18)
・ NATO の東方拡大は、2つの 画期があった、1999年(ポーランド、ハンガリー、チェコ加盟)と2004年(ルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア)である、ロシアは不快感を示しながら受け入れた、その上で、2008年4月のブカレストでのNATO首脳会議で「ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言された、2014年2月に「ユーロマイダン革命」が起きたのを受けて、ロシアはクリミアを編入した(p21)
・広義のロシア「スラブ」の 核心部は、 ロシア(大ロシア)ベルラーシ(白ロシア)ウクライナ(小ロシア)から成るが、ベルラッシュとウクライナの分離独立、 すなわち 講義のロシアの核心部が分裂することまで 受け入れた、ソ連邦が成立した1922年以前に、 ウクライナ も ベルラーシも国家として存在したことがない (p29)
・今の状況は、 強いロシアが弱いウクライナを攻撃している、と見ることができるが、 地政学的にとらえれば「 弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできる(p32)
・第二次世界大戦時に自ら 多大な犠牲を払って ドイツ国防軍を打ち破り、 アメリカ 高黒 グロ イギリス・カナダの連合軍によるフランス 開放を可能にしたのも ソ連であった、ソ連は2000万人以上の犠牲者を出しながらナチスドイツの悪夢からヨーロッパを解放するのにアメリカ以上に貢献した、ところが 冷戦後の西側は、 その歴史をすっかり忘却してしまったかのような振る舞いを ロシアに対して してきた(p33)
・ アフガニスタン、 イラク、 シリア、 アメリカがこれまで行ってきた戦争は、弱小国に対する戦争であった。 それに対して 今回、 大国のロシアが事実上 アメリカを敵に回している、 これは大きな歴史的転換である(p35)
・ロシアは軍事技術 において アメリカに対して一定の優位に立っている、空母キラーと呼ばれる「超音速ミサイル」の分野ではロシアがアメリカに対して4年は先んじていると言われている、アメリカの軍事力の中心にある「 空母」 もすでに 時代遅れの 代物になっている可能性が大きく、 日本を含めて各国がアメリカから 押し売りされている 戦闘機 F 35 も、実戦できちんと 機能するかが疑わしい と言える(p37)
・ ウクライナは、西部に「ウクライナ東方教会」の信徒、中部に「 ギリシア正教」、東部にロシア系 住民、の3つの住民集団を抱えている、3つの地域はあまりにも異なっているので、ソ連が成立するまで、ウクライナは国家として存在していなった(p41)ヤヌコビッチ政権崩壊以降、 ウクライナ東部では、言語的・文化的にロシアに近い住民が攻撃にさらされた、 だからこそ プーチンはウクライナにいる ロシア人の保護を主張してきた(p43)
・ アメリカでは裁判が多く 企業活動でも 法的手続きが膨大にある、 そこで弁護士が手にする 膨大な 報酬も GDP に含まれる、 それに対して正直な人が多い 日本では訴訟も弁護士も少ない、その分 日本の GDP はアメリカより少なく 計上されるが、どちらの社会が生産的であろうか(p67)
・ ヨーロッパとロシアは経済協力を大いに進めるべきである、 ここが ヨーロッパとアメリカの違いである。 アメリカとロシアの経済的な結びつきはほとんどない。 経済制裁によって ヨーロッパとロシアは互いに傷つけ合うことにしかならない、 その最初の象徴 が 天然ガス 海底パイプライン「 ノルド・ストリーム2」の停止であった(p71)
・ヨーロッパとロシアの接近、 日本とロシアの接近、 ユーラシアの再統一はアメリカの戦略的利益に反する、 そこで 平和的関係が築かれてしまえばアメリカ 自身が「 用済み」になってしまうからである。 アメリカ軍のプレゼンスを維持するために、 ユーラシアにおいて アメリカ軍が必要とされる状況を無理にでも持続させるために、 アメリカはユーラシアにおける軍事的・戦略的緊張を維持する必要がある(p73)
・国連総会での対ロシア 決議 や G 20での議論を見ても、 世界の大半の国はむしろ ロシアの勝利を望んでいるようにも見える。彼らは「西洋の傲慢さ」にうんざりしている(p89)
・ウクライナに関心があるのは 三国 だけで、その三国にとっては ウクライナは特別な存在である。歴史的で明白な理由から、ドイツとポーランド、 そして不可解な理由からスウェーデンがウクライナに関心を持っている、 この三国はウクライナに関して自分たちに都合のいい 政策を追求するために EU を利用した(p95)
・アメリカにおける平等という思想は、あくまで 白人同士における平等であり、 家族構造に由来するものというより「 人種主義に由来するもの」である(p122) 黒人も平等となれば 白人同士の平等という感情は崩れ去ってしまう、 (p124)
・ アメリカで「新自由主義 ナショナリズム」が、国内産業・労働者階級・社会保障制度を破壊し、 生活水準を低下させ、ついには 平均寿命まで低下させたという現実がある(p129)
・ ロシアは経済的に弱体した貧しい国なのでヨーロッパによる経済制裁に耐えられないだろうと みられていたが、 進行から1ヶ月以上経って明らかになったのは、 ロシア経済の耐久力である。 ロシア 通貨 ルーブルは一旦は暴落したものの 現在はほぼ通常レベルに回復している、 さらに 戦争勃発 時に ロシアから逃げ出した 多くの ロシア人も再び国に戻ってきている、 この戦争は長期的なものになることを示唆している、 その意味でも今の戦争は第一次世界大戦を彷彿とさせる、 イデオロギーや思想をめぐる対立でない点でも第二次世界大戦 よりも 第一次世界大戦に近い(p139)
・ 今アメリカがロシアの軍事的失敗を喜んでいるのは明らかである、 ロシアに対する経済制裁によって、 ヨーロッパ経済、 特に ドイツ 経済が麻痺していくことについても密かに満足感を味わっている、 しかしそのこと以上に中国に支援された「ロシアの経済的抵抗」によってアメリカ主導の国際秩序が窮地に追い込まれていることを恐れている(p141)
・アメリカの戦争の真の目的は、アメリカの通貨と財政を世界の中心に置き続けることにある、 だからこそ早期の停戦を目指すのではなく この戦争にどんどん突き進んでいて、この戦争にさらに深く コミットする覚悟でいる(p142)
・この戦争から得られる教訓として、 ウクライナ軍の一定の成功から「戦車は時代遅れの兵器である」ことが明らかになった。アメリカがウクライナに供与した「 ジャベリン」 など、携帯式対戦車ミサイルによって 戦車の弱点が露わになってしまった、 この事実はロシアのように 陸地での戦いを得意とするランド パワーにとっては深刻である。 アメリカは シーパワーであるが、 超音速ミサイルの存在によって 空母の弱点があらわになった 、つまり ロシア側が戦車という時代遅れの兵器を抱えている一方で、 アメリカ側は 空母 という時代遅れの兵器を抱えている(p144)
・軍事的な意味での「 真のNATO」は、アメリカ・イギリス・ポーランド・ウクライナ、 そして おそらく スウェーデンからなっている。 ここに ドイツとフランスは入っていない(p148)
・戦争が 現時点で 終結すれば、 ロシアは、ヘルソン州からドンバス地方までの広大な領土を奪取したことになる、クリミア半島への水の供給源確保にも成功し、 アゾフ海は「ロシアの湖」のようになっている。領土を少しずつ 獲得している点では 18世紀のヨーロッパにおける戦争に似ている、 現時点では ロシアが勝利を手にしつつあるが、 これはアメリカには 許容できないことである、 だからこそ この戦争はまだまだ続くことになる(p149)
・この戦争は「西洋の民主主義 VS露中GA代表する専制主義」という構図で捉えられている。 ロシアによるウクライナ侵攻に対して、1) 非難して制裁を科す 国(米英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、欧州、日本、韓国)、2) 非難するが制裁はしない 国、3) 非難も制裁 もしない国、4) 支持する国(ベネズエラ、シリア、ミャンマー、中国、インド、ブラジル、南アフリカ、イスラム諸国)がある(P153) このことから、 ロシアは孤立など全くしていない(P160)
・ ロシアの経済力を ルーブルではなく「 エンジニア」で測るとすれば 2014年からの制裁に耐えられたように、 2022年の西側による制裁にもロシアは耐えられるのではないかと考えられる、 「経済の真の柔軟性」とは 銀行 システムや金融商品を開発する能力ではなく、生産活動の再編成を可能にするようなエンジニア・技術者・熟練労働者にこそあるのではないか(P187)
・対ロシア制裁によって、 ドイツは自国産業の崩壊というリスクに直面するだろうし、 ヨーロッパの中でロシアへの最大投手 国である フランスも ロシアでの権益を失い始めている、アメリカが最も懸念していたのはドイツを中心としたヨーロッパがアメリカから自立することであったが、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインを停止させることに見事 成功した(P197)
2026年1月15日読破
2026年2月7日作成 -
Posted by ブクログ
原作はトランプ当選、ブレグジット、フランス極右政党の拡大があった2016〜2017直後に出版されているが、その当時すでにここまで情勢について分析・理解が進んでいたとは驚きだった。ブレグジットについては社会の上層が下層に寄り添った結果だと評価する姿勢だったが、あとがきで最新のイギリスの動向(ロシアフォビアと米国追従)について懸念が示される立場となっている。初等教育→中等教育→高等教育受講者割合が高まっていく傾向は先進国に共通しているが、教育の階層化によって格差が広がり社会の分断が生じている。英米はとくに、エリート層が短期的に最大利潤を得るためにグローバル化を進め、産業をどんどん労働力の安い海外に移転させた。国内産業は空洞化し特権階級である白人の中間層も生活がどんどん苦しくなっている状況で、その反動の結果がトランプによる保護貿易主義だが、今さらモノづくりやエンジニアリングを復活させることなど不可能で、安い賃金のヒスパニックなどに労働資源としての競争にも勝てず、関税を上げたせいで物価は上がりますます厳しくなる一方の状況。白人の死亡率上昇などデータでも示されている。それに対して日独はレベル1の直系家族システムの影響により垂直方向の伝承が大事にされる傾向と、もとからの保護主義傾向により英米ほどの状況にないとの分析。
そもそも工業化、都市化が進む先進国では家族システムも核家族に収斂されていくのでは?と疑問があったが、人口学者たちも同じ立場からスタートしていた模様。しかし地理データが示す結果は、家族システムによる影響が未だに継続していることを示す。日本でいえば長男が親元で老後の面倒みなければならない、といった慣習は確かに残っている。
本書は遠い過去〜最近の過去まで、様々な比較データを用いることで、現代を生きる我々がどういう世界にいるのかを俯瞰させてくれる良書である -
Posted by ブクログ
著者は2026年1月現在の西洋の「常識」を疑い、否定し、ロシアの優位性を絶対の答えとしている。
ロシアのウクライナ侵攻は、NATO拡大を阻止すると言い続けてきたロシアの反撃であり、ウクライナは1990年からアメリカが育ててきた親米国家であり、ロシア系住民を追い出していっていたのだ。
アメリカやヨーロッパでは、産業が空洞化し、法律サービスや金融などのフィジカルな価値を生み出さない活動によりGDPが膨らんでいるだけで、トッドはこれを国力の衰退と見る。さらに、プロテスタンティズムが死に絶えて勤勉や規律という社会の土台となる価値観の共有がなくなったこと、数学・科学分野での教育レベルの低下が起こっていることから、こうした衰退は「不可逆的」であると主張する。
これによって、西洋が敗北していくことは必須であり、その終わりの始まりがウクライナ侵攻だったのだと著者は言う。
さらに、西洋は世界中が自分達の価値観を共有していてロシアを包囲していると信じ込んでいるが、実際には世界の多数派である非西洋諸国は、西洋のリベラルな思考についていっていないし、そうした鼻持ちならない西洋の価値観への反撃者としてロシアを支持しているという現状把握により、実力だけでなく影響力の点でも西洋が敗北しつつあると主張する。
著者は、ロシア贔屓で、西洋嫌いなのだろう。
著者の言うことにはもちろん一理あるのだろう。しかし、本書は中立とは言い難い。明確な根拠を示さずに、ロシアにとって都合がよく、西洋にとって都合が悪いことのみを偏って取り上げている箇所が多数あったようにも感じた。
しかし、新たな視点を与えてくれた非常に意義深い書籍であったのは間違いない。星4つ。 -
Posted by ブクログ
人類史あるいは社会発展を物語る際に現代人は地政学と経済に重きを置いており、社会を語るのに国家・宗教・教育を重要視しがちだが、人間社会の最小単位である家族システムに注目すると、驚くべき相関関係が見出されることを説明する。トッドとしては家族システムで全てを説明できるわけではない、還元主義とは一線を画すと言っているが、論調的には全てを説明しようとしているように見受けられる点が引っかかる。どこまで現実を正確に表しているか、ちょっと後付け・こじ付けがすぎると思われる点もあるが、原因と結果の説明がうまく聞こえることもあるため、非常に興味深い主張ではある。
まず原初のホモ・サピエンスは外婚制・移動性の高い核家族システムであり、地球上に広く拡散した。この原初の家族システムに近いのがイギリス・アメリカであり、アングロサクソンが覇権を握った遠因になるというのである。経済の躍進の前に政治的変革が根底となる。産業革命の制度的諸条件を築き上げたのは、ピューリタン革命、名誉革命による代表制統治であり、これらの統治制度を受け入れやすいのは核家族システムなのだという。当然アメリカには黒人や他の欧州人含め様々な人種が移民として来ているが核家族システムが根付いていった。19世紀末に大勢渡米したのは直系家族システムのドイツだったが、直系家族も成長を加速させる力があるとのこと。ただし、直系家族は過剰な完璧さで規範にハマリすぎる罠があり、日本やドイツに共通するポイントとなる。直系家族システムは技術伝承に向いているが保守的で創造的破壊を得意としない。(こういった説明を聞いて動物占いを連想してしまうのは私だけだろうか) 他方、中東・中国・インドの父系制社会は女性ステータスを低下させ、他社会の発明によって停滞してしまったことになる。ユーラシア大陸全体で見ると、父系直系家族、父系共同体家族などが中心で、核家族がベースとなっているのはイギリスをはじめ文字通り辺境の周縁部となる。外婚制共同体家族は共産主義や権威主義と親和性があり、中国やロシアが含まれる。我々にとって最も馴染みないのが、従兄弟との結婚が奨励される内婚制共同体家族(アラブ・ペルシャ)。シュメールや中国の初期文明では農業や文字の発明と同じ時期に父系制へ移行し、周辺の遊牧民などに伝播した。その結果、父系制氏族となったトルコ・モンゴルなどが軍事的に脅威となっていくパターンが見出される。その他、プロイセンは直系家族システムのため、長男以外の息子たちは軍への参加がスムーズで軍事力確保に繋がったというのもあった。ところで、ある程度近代化された社会では民法的に遺言・相続の意思も自由で、都市部に人口が集中して核家族化が進んでいくのは世界共通のように思われたが、今後100年たつとどのようになっていくのだろうか。
父系的社会は第二次産業に強く、女性ステータスが高い双系的社会は第三次産業に強い→前者は生産に、後者は消費に特化している。これが本当なのであれば、近い将来とんでもないしっぺ返しを食らうことになりかねない警告に受け止められる -
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ウクライナ戦争の驚き
1.ヨーロッパで戦争が起きた
2.アメリカ対ロシア 中国ではなく
3.ウクライナの抵抗
4.ロシアの経済的抵抗力
5.ヨーロッパの主題的な意思の崩壊 =フランスとドイツ
6.イギリス 反ロシア派の台頭
7.ノルウェーとデンマークのNATO加盟
8.アメリカの軍事物資供給不能 GDPと物資不足は関連がない
9.西洋の思想的孤立 ロシアへの支持
10.西洋の敗北 自己破壊 ロシア死活問題・アメリカの利益小 →ロシアが勝つ
主権はアメリカ、中国、ロシアのみ 共通の文化と中流階級による経済的自立
プーチン政権 生活の安定化 経済的自立
10万人当たり 殺人率4.7人(6分の1) 自殺率10.7人(4分の1)へ改善
1000人あたり乳児死亡率4.4人(アメリカ5.4人)
食料自給自足 農産物、武器、原発 輸出
出国の自由 反ユダヤ主義の不在 エンジニアの率はアメリカを超える
低出生率1.5 1.46億人
ウクライナ
代理母出産ビジネス世界の25%
ロシア寄りの都市の多い東/南部 ロシア嫌い
農村で中流階級の少ないナショナリズムの西部と無秩序な軍事主義の中央部
西洋の危機
プロテスタンティズム=教育と経済の発展・不平等(白人至上) 集団意識
→ 宗教ゼロ=国家ゼロ 状態へ
EU NATOの背後にアメリカ 同盟国の監視と支配インターネットは全てを記録する
ドイツ 軍事をアメリカに頼り エネルギーでロシア密接に 機械社会
1999~2001 ロシアのチェチェン制圧、統一ドイツ貿易黒字化
2004 東欧諸国NATO入り EUへも
イギリス 好戦主義 孤立への恐れ 白人のプロテスタントの国が官僚の有色人種化
高等教育は白人よりも黒人、アジア系 医師新登録は他国出身半数
新自由主義=民営化 倫理の欠如 アメリカにつながりある超富裕層が支配
北欧のNATO加入
デンマークとデンマークから独立したノルウェー アメリカの支配への統合
スウェーデン 2017年 徴兵制復活 自国のために戦う 帰属したい要求がNATOに
アメリカ 離島 自国のために戦ったことがない 外交政策は内部の退行から
空虚さ 金 権力 ニヒリズム 乳児死亡率上昇 GDPは空虚 教育成果低下
能力主義の放棄 リベラル寡頭制
産業基盤欠如 真の実力?西欧州を下回る? GDPの大半は対人サービス
エンジニアリング専攻は7.2% 高収入の法学 金融 経済学へ
貿易赤字拡大 労働者輸入 財よりも貨幣を生産するほうが簡単
合理的な予測が不可能な国に
その他の世界=非西洋 と西洋の対立 ロシア周囲には多数の非敵対国 中国 インド -
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【内容】
2020年に行われた日本に向けたインタビューをまとめた書籍。高等教育の階層化がエリートと大衆の分断と対立、ポピュリズムの台頭を招いていると、トッド氏は指摘する。またグローバリゼーションによってエリート層が富を増大させる一方で大衆が疲弊する「グローバル化疲れ」の問題を指摘し、その対策としての保護主義の必要性を主張する。
【感想】
トッド氏の著作の中では比較的わかりやすいように思われたが、それが文章によるものなのか、私が慣れてきたからなのかはわからない。
現在の反グローバリゼーション、ポピュリズムの台頭といった現象を論理的に説明するトッド氏の分析は、わかりやすく納得性も高い。自由貿易に対する保護主義の必要性の主張については、個人的に最初は受け入れ難かったが、本書を読むにつれて冷静に検討すべきと考えを改めた。
トッド氏は全般に日本の問題については甘めな評価をする傾向がある(但し少子化問題を除く)が、実際日本国内の状況のみを見て悲観し絶望していては、前向きな議論につながらない。教育格差や階級分断といった国際的に顕在化しつつある課題に関しては、冷静かつ国際的な比較分析を実施することにより、我が国の政治、文化、国民性の強みと弱みを明確化し理解することが必要。そして他国の優れた点を参考とし、一方で課題点を反面教師とすることで完全な解決には至らずとも、破滅的な失敗を回避し続ける現実的な対応策を模索し続けることが重要であると考える。
【内容メモ】
1.教育が格差をもたらした
民主主義は本来なら下層の人々が力を合わせて特権階級から社会改善を手に入れるものだが、現在教育格差によって機能不全に陥っている。
「エリート階層の資格」に成り下がった"高等教育"が社会的成功のためのツールとなってしまった結果、エリート層の無能化を招き、さらにこの"高等教育"の発展が社会を階級化し分断を進めてしまっている。
教育から自由、考える時間が奪われ、自らを成熟させる教育から他人を押しつぶすために忍耐強い従順主義者になることを求められるようになってしまった。
教育を受けたが無能なエリートと、教育を受けていないが知性のある大衆による階級間闘争が発生しつつある。
エリート層の漂流、彼らは目的や道徳的規範を失いつつある、そしてエリートたちはこれまで以上に内向化してしまっている。
2.能力主義という矛盾
優秀な学歴を追い求めることに力を費やすと、自分とは何かを考える知的な時間がなくなってしまう。
教育は世代間の知識の伝達を基盤としているため、権威から教えを受けることは必要だが、同時に自らのことを考える自由な時間もまた必要である。
教育によって人々を区分けする能力主義(メリトクラシー)は能力主義は自由平等を旨とする民主主義と矛盾する。
女性の高学歴化による解放、この新傾向のもたらす効果は現時点でトッド氏は分析しきれておらず今後の課題である。
3.教育の階層化と民主主義の崩壊
過去のエリート=頭の良い高学歴で社会的責任感、時に国家への責任感にも溢れた人々
今のエリート=集団エリート、全人口の3割にものぼり必ずしも優秀でない開かれた世界(グローバリゼーション)を代表していると思っている層。
民主主義の3類型、思想的気質と家族構造に由来
①米英仏型→自由平等を普遍的価値観とする、背景に核家族、個人主義、兄弟間の平等
②日独型→権威の原理と不平等、背景に直系家族
③ロシア型→権威主義と平等主義
日独では階層民主主義が発展した、民主主義の手続きと自由な政治アクセスの一方で、権威と階層社会を受け入れる傾向もある
日本は教育レベルの低い人を蔑視する傾向は弱い、背景には米英仏と比べて国民を一体として捉える感情(自民族優越主義)が強い傾向がある。
グローバル化したエリートと地方に暮らす下層の人々による社会の分断から脱するには、この分断状態を認めた上で両者による交渉が必要。
フランスの「黄色いベスト運動」は階級闘争であり、マクロン以下のエリート層は対決を選んだ結果混乱を招いた。この混乱を解決するのは新しい政治勢力だろう。
イギリスのブレグジットは大衆に対してエリート層が歩み寄った好例である一方、アメリカはトランプを巡って大衆とエスタブリッシュメントの分断が深刻化しガバナンス不全に陥りつつある。
民主主義の危機に対する完璧な解決策はない。ベターを選択しつつ最悪な状態を避け続けるしかない。
4.日本の課題と教育格差
日本の特異性は、不平等を受け入れる価値観と江戸時代由来の特殊な階層の考え方をベースとした能力主義が発展した点。そのため身分に対して傲慢な感情がない。階級化したシステムを維持したまま民主化が進んだ。
地政学的には、中国は人口が10倍以上あるため対抗しないと飲み込まれてしまう。国防の選択肢の一つとして核武装も考慮すべき。
日本の1番の問題は人口減少。グローバリゼーションの圧力は日本全体を縮小させつつある。その解決のためには秩序ある移民の受け入れは不可欠。そのためにも、日本は完璧主義を捨てもう少し無秩序を受け入れた方が良い。
5.グローバリゼーションの未来
自由貿易を推し進めすぎた国で中間層の収入レベル停滞等様々な支障が出るようになった。自由貿易は不平等を拡大し続けるため反発も強まりつつある。トッド氏はそれを「グローバル化疲れ」と呼ぶ。トランプの大統領当選やサンダースの躍進は、左右の違いなく自由貿易への反発が進展していることを物語る。
この動きに対して道徳的良し悪しで捉えるのではなく、実際に起きているムーブメントとしてその力学を直視することが重要。
グローバリゼーションはモノと資本の自由な流通である一方、情報、言語、移動の世界化の動きは終わらない。グローバリゼーションの終わりは世界化の終わりを指すモノではない。
6.ポスト民主主義に突入したヨーロッパ
EUによって最も恩恵を受けたのはドイツであり、その台頭をトッド氏は「ドイツ帝国」と呼ぶ。現在移民を最も受け入れるドイツは、人口維持による国際的影響力の維持に固執している。しかし家族制の異なるトルコ系移民の流入はドイツ社会の硬直化と治安の悪化という脆弱性にも繋がりうる。
またドイツの伸長をアメリカが快く思わない場合、アメリカがドイツへ影響力を行使する可能性がありそれもまたドイツの脆弱性である。
フランスはEUによって産業の空洞化が危機的なレベルまで進展してしまっている。グローバリゼーションに取り残される大衆の不満にエリートは対応できていない。そしてその無力なエリートを隠れ蓑にしている中産階級の無能さ、無関心こそが最大の問題である。
7.アメリカ社会の変質と冷戦後の世界
トランプの当選はアメリカのエリート対大衆の分断を露わにした。中年白人死亡率の上昇に見られる中間層の没落は、これまでの自由貿易を推進する傾向からの転換をもたらし、トランプやサンダースの支持拡大につながった。
冷戦後の世界においてロシアの退潮とドイツ、そして中国の拡大が進んだ。アメリカは後者2者、とりわけ中国への反発と対抗姿勢を強め、そのためにロシアと接近、連携する可能性もありうるとトッド氏は指摘する。
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「西洋の敗北」フランスの統計、人類学者の著者が、西洋とその他の世界で今何が起こっているかを解き明かす。
まず、前提としてトッドは人類学と地政学、統計の視点を組み合わせて現在の世界を読み解いている。
「敗北」は単純な戦争での勝ち負けを示すものではないことに留意。
2022年から始まった、ロシアのウクライナ侵攻からすでに4年。西側のあらゆる経済制裁もロシアを止められず、モスクワでは未だほぼ以前とかわらない生活レベルが保てている。なぜか。
西洋は、すでに宗教ゼロ状態に陥っており、個人主義の台頭とともに倫理観ゼロ社会とも言える状態となっている。富の集中による中流階級の崩壊とともに経済の空洞化も進み、みせかけのGDPに絡め取られている。
反面、ロシアは比較的安定した社会を維持できている。個人主義の行き過ぎた「西洋」以外の家族集団主義の残るその他の国が、イデオロギーの近いロシアを支えている。
日本についても、西洋の一員でありながら、宗教ゼロ状態ではない、宗教と慣習が溶け込んだ特殊な形態と解説。
世界は西洋だけではない!自国と周辺のみの視点だと、なかなか見えてこないが、言われてみれば当然か。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1. 西洋の「敗北」の定義とウクライナ戦争
・ウクライナ戦争は単なる局地紛争ではなく、「西洋対ロシア」のグローバルな宗教・文化戦争へと変質した。
・当初、西洋側は経済制裁でロシアが崩壊すると予測したが、実際にはロシア経済は耐え抜き、逆に西洋側の兵器生産能力の不足(脱工業化の弊害)が露呈した。
・この軍事・経済的なミスマッチこそが、物理的な意味での「西洋の敗北」の始まりであると指摘する。
2. 米国の衰退:虚業化と「ニヒリズム」
・米国の衰退の根本原因は、かつての繁栄を支えたプロテスタントの倫理の消滅にある。
・宗教的バックボーンを失った米国は、教育水準の低下(特に理数系)と乳児死亡率の上昇という、先進国としては異例の社会崩壊の兆候を見せている。
・経済面では「実利」を生まない金融や法務などの虚業が肥大化し、自国で砲弾すら十分に生産できない「実体なき大国」と化した。
・共通の価値観を失ったエリート層は、自己破壊的な「ニヒリズム」に陥っており、これが予測不能な外交政策を招いている。
3. ロシアの安定:予期せぬレジリエンス
・プーチン政権下のロシアは、西洋の予想に反して社会的な安定を取り戻した。
・少子高齢化は進んでいるものの、自殺率の低下や乳児死亡率の改善が見られ、社会の基礎体力が回復している。
・ロシアは「自国を維持できればよい」という守備的なリアリズムに基づいて行動しており、西洋が主張するような「欧州全土への侵攻」という野望は、人口動態的に見て不可能であると分析する。
4. 世界の「グローバル・サウス」の動向
・西洋が「民主主義対専制主義」という二項対立を掲げる中、世界の多く(グローバル・サウス)はロシアを「安定した保守的勢力」と見なし、西洋の道徳的押し付けに反発している。
・特に、LGBTQ+の権利拡大などを「絶対的な価値」として輸出する西洋に対し、伝統的な家族観を持つ諸国はロシアに親近感を抱くという、文化的な分断が加速している。
5. 日本への提言と警告
・日本は現在、衰退する米国に過度に依存(追従)している危うい状態にある。
・英国が欧州連合から離脱したように、日本もまた「米国の没落」という泥舟から距離を置き、自律的な外交を模索すべきである。
・地政学的には、敵対するロシアや中国との関係を、米国抜きでいかに安定させるかが死活的に重要となる。 -
Posted by ブクログ
フロイトの精神分析的に社会を意識、下意識、無意識の重層的構造としてイメージすると今まで見えなかったものが見えてくる。
•意識は政治、経済。この経済こそが決定的な要因を持つものとして分析するのが経済学。経済の発展段階の上部構造に政治があるというのが従来の考え方である。
では、経済はどのようにして決まってくるのが。なぜ世界の地域により経済に差があるのか。
例えばマルクスは(1) 原始共産制 → (2) 古代奴隷制 → (3) 封建制 → (4) 資本主義 → (5) 社会主義 → (6) 共産主義と生産力の発展に伴って進むと考えたが、西洋視点の偏りという問題点がある。
これを人間で下意識と無意識に目を向けたのが本書である。
•下意識層は教育。識字率、女性の教育率、中等教育から高等教育率の後を追って経済は成長する。
•無意識層は宗教と家族構造。これらが経済構造と政治構造に大きな影響を与えることに気づくことでコペルニクス的転回がある。
家族構造は原始は核家族から始まり、農耕の発展に連れて直系家族、共同体家族と発展する。何万年、何千年単位の大きな変化であり、数百年や数十年の短いスパンで見れば逆行や例外が起きる事はある。
この観点で見れば最も進んだ形が共同体家族であり、その次が直系家族、そして最も原始的な形が核家族であることがわかる。つまり文明発祥の地に近い場所では最新の共同体家族、その周りに直系家族があり、文明から最も離れた周縁部に核家族が残っている。
そして文明中心部では核家族時代に民主主義は経験済みで、今は英米仏といった最も遅れた地域で民主主義社会となっている。民主主義は産業革命の後の資本主義と親和性が高かったため、西洋が現在の世界覇権を握ることになったと言うストーリー。
ちなみに対戦後に社会主義国となったのはすべて共同体家族構造の地域で、権威主義に基づく平等主義が受け入れやすい土壌があったと考えられる。現在のロシア中国はマルクス主義社会主義ではないが、共同体家族構造が受け入れやすい権威主義体制となっている。
EU、ユーロはキリスト教の神に変わる支配体制。権威主義、不平等主義を受け入れる土壌がある直系家族やゾンビカトリシズムの国家が加盟している。
英国はゾンビプロテスタンティズムかつ絶対核家族であることからユーロに加盟しなかった。EU離脱はその現象。
社会主義国家が共同体家族国家にのみ発生したのと同じメカニズム。
EU、ユーロはフランスがドイツを抑え込むために作ったが、フランスの意図に反してドイツとの経済戦争になり、フランスは敗北。
EU、ユーロがもたらしたもの。
ドイツの経済的一人勝ち。
各国に財政規律=緊縮財政を強いることによる経済的低迷→失業率上昇→有能なエリートの若者のドイツへの流入→ドイツ出生率低下の穴埋め。
グローバリズムにより米国では過去にないほど経済格差が広がっているが、EUを単一国家と見た時は同じ現象が起こっている。
ドイツは経済成長のために移民導入を優先目標としており、そのためにEU内の国家さえ犠牲にしている。ウクライナへの介入もその文脈にあり、民主主義を守るなどは単なるお題目にすぎない。
ウクライナ戦争は西洋の敗北である。ロシアはGDPで測れない強さがあり、西洋以外の国はむしろロシアを積極的または消極的に支持している。
表層的な部分に囚われて本質を見誤ってはいけないことを気づかせる本書である。