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【欧州最大の知性が日本読者のために語り下ろした待望の最新刊を電子書籍化】これまで、ソ連崩壊からトランプ大統領の誕生まで数多くの「予言」を的中させてきたエマニュエル・トッド。著者は本書で「現代における教育はもはや、社会的階級を再生産し、格差を拡大させるものになってしまった」と断言する。かつては平等の象徴であった教育だが、今や高等教育の階層化がエリートと大衆の分断・対立を招き、民主主義の機能不全とポピュリズムを生んでいる。本書では、教育格差を軸として、先進各国で起きている分断の本質を家族構造が能力主義・民主主義に及ぼす影響や地政学的要素に鑑みながら、鮮やかに読み解いていく。日本の未来、そして変質する世界の行方は。欧州最大の知性が日本の読者のために語り下ろした、これからの世界情勢を知るために必読の1冊。 ※本書は累計46万部突破「世界の知性」シリーズ中の1作です。 ◆目次より抜粋◆●第1章 教育が格差をもたらした ●第2章 「能力主義」という矛盾 ●第3章 教育の階層化と民主主義の崩壊 ●第4章 日本の課題と教育格差 ●第5章 グローバリゼーションの未来 ●第6章 ポスト民主主義に突入したヨーロッパ ●第7章 アメリカ社会の変質と冷戦後の世界
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Posted by ブクログ
教育は社会的階級を再生産し格差を拡大させるものになっている が論旨です。
高度教育が分断の根本であり民主主義を崩壊させているという驚くべき内容になっております。
気になった点は以下の通りです。
・高度教育を受けたかといって、能力主義、優秀であるとはかぎらない
・高等教育の発展や不平等の拡大によって集団の道徳的な枠組みが崩壊している
・識字率が向上しているにもかからわず、教育レベルが低下している
・女性が自分より社会的地位が高い男性と結婚する、従来モデルが崩壊している
・民主主義は3種
①アメリカ・イギリス型 核家族・個人主義
②ドイツ・日本型 直径家族・長男継承型
③ロシア型 権威主義・平等主義
・日本型民主主義は、自民族中心主義、能力主義なので、教育格差を広げない
・グローバリゼーションと、世界化は違う
・ドイツは移民を増やしていて、ドイツ帝国をめざしている
・EU諸国は、通貨の発行権限を失い、財政の自立化を失って弱体化している。
・弱体化しつつあるアメリカは、いまほど、日本を必要にしているときはない
・最後に、「新しい事象はよく真実とは反対の見かけで立ち現れる」と述べています。
構成は以下です。
はじめに
第1章 教育が格差をもたらした
第2章 「能力主義」という矛盾
第3章 教育の階層化と民主主義の崩壊
第4章 日本の課題と教育格差
第5章 グローバリゼーションの未来
第6章 ポスト民主主義に突入したヨーロッパ
第7章 アメリカ社会の変質と冷戦後の世界
Posted by ブクログ
筆者は、フランスの歴史家、文化人類学者、人口学者。書名では、教育に関しての論説のように思えるが、そればかりではなく、色々なトピックで、広く世界情勢について論じている。日本についても論じられてはいるが、あくまでも中心は、フランス、ヨーロッパである。
日本でも教育格差の問題が取り上げられることがあるが、それは、例えば東京大学入学者の親の年収は平均を大きく超えていて、良い教育を受けるためには、家庭が裕福である必要があり、結局は、親の所得格差が再生産されるのではないか、というような取り上げられ方である。すなわち、所得格差・階級格差の結果としての教育の機会の格差という捉えられ方だ。
本書の主張は、もっとラジカルだ。すなわち、受けている教育そのものが階級格差を生み出し、固定化しているのだという主張。高等教育を受けた者は、そうでない者のことを理解出来ないし、理解しようとも思わない。逆も然りという主張。あまりピンと来ないな、と思ったが、筆者も、日本はそんな状態にはなっていないと書いていたので、まぁ、そうだよねと思った。
本書の中で、虚をつかれた部分があった。それはテーマである教育とは関係のないところ。
「日本は経済成長を諦めたように見える」という趣旨のことが書かれている部分がある。
ある国の経済規模は、単純に言えば、一人当たりの生産性と人口のかけ算だ。ご存知の通り、日本は既に人口減少社会に突入している。筆者から見ると、一人当たりの生産性はともかく、日本は人口を増やす試みを諦めたように見えるということだ。少子化対策を政府はやっているのでは?と思うのだが、日本以外の先進国は基本的に多くの移民を受け入れて人口を増やそうとしているのに、日本にはそのような動きが全くなく、従って、経済規模を大きくする試みを諦めたように見えるという論旨だ。
そうなの?と思って、ネットで、各国の人口に占める移民比率を調べてみた。
アメリカ・ドイツ・イギリスは14-15%、カナダは20%強、オーストラリアは30%強。他のヨーロッパ諸国も、軒並み10%を超えているのに対して、日本は2%。確かに先進国の中では圧倒的に少ない。
日本経済が停滞している理由でよく議論されるのは、上述の生産性。それはそれで問題なのだろうけれども、確かに経済規模は、生産性が一定であれば人口で決まるというのは、誰が考えても分かることで、そういう意味で虚をつかれた気がした。
大分断 教育がもたらす新たな階
すいすい読めます。
普段なかなか伺えない、ヨーロッパ人からの視点で書かれていて参考になります。
今後の世界の方向性を決定する上で、教育のあり方は重要。避けて通れない道。
そのことを痛感させられる一冊です。
Posted by ブクログ
【内容】
2020年に行われた日本に向けたインタビューをまとめた書籍。高等教育の階層化がエリートと大衆の分断と対立、ポピュリズムの台頭を招いていると、トッド氏は指摘する。またグローバリゼーションによってエリート層が富を増大させる一方で大衆が疲弊する「グローバル化疲れ」の問題を指摘し、その対策としての保護主義の必要性を主張する。
【感想】
トッド氏の著作の中では比較的わかりやすいように思われたが、それが文章によるものなのか、私が慣れてきたからなのかはわからない。
現在の反グローバリゼーション、ポピュリズムの台頭といった現象を論理的に説明するトッド氏の分析は、わかりやすく納得性も高い。自由貿易に対する保護主義の必要性の主張については、個人的に最初は受け入れ難かったが、本書を読むにつれて冷静に検討すべきと考えを改めた。
トッド氏は全般に日本の問題については甘めな評価をする傾向がある(但し少子化問題を除く)が、実際日本国内の状況のみを見て悲観し絶望していては、前向きな議論につながらない。教育格差や階級分断といった国際的に顕在化しつつある課題に関しては、冷静かつ国際的な比較分析を実施することにより、我が国の政治、文化、国民性の強みと弱みを明確化し理解することが必要。そして他国の優れた点を参考とし、一方で課題点を反面教師とすることで完全な解決には至らずとも、破滅的な失敗を回避し続ける現実的な対応策を模索し続けることが重要であると考える。
【内容メモ】
1.教育が格差をもたらした
民主主義は本来なら下層の人々が力を合わせて特権階級から社会改善を手に入れるものだが、現在教育格差によって機能不全に陥っている。
「エリート階層の資格」に成り下がった"高等教育"が社会的成功のためのツールとなってしまった結果、エリート層の無能化を招き、さらにこの"高等教育"の発展が社会を階級化し分断を進めてしまっている。
教育から自由、考える時間が奪われ、自らを成熟させる教育から他人を押しつぶすために忍耐強い従順主義者になることを求められるようになってしまった。
教育を受けたが無能なエリートと、教育を受けていないが知性のある大衆による階級間闘争が発生しつつある。
エリート層の漂流、彼らは目的や道徳的規範を失いつつある、そしてエリートたちはこれまで以上に内向化してしまっている。
2.能力主義という矛盾
優秀な学歴を追い求めることに力を費やすと、自分とは何かを考える知的な時間がなくなってしまう。
教育は世代間の知識の伝達を基盤としているため、権威から教えを受けることは必要だが、同時に自らのことを考える自由な時間もまた必要である。
教育によって人々を区分けする能力主義(メリトクラシー)は能力主義は自由平等を旨とする民主主義と矛盾する。
女性の高学歴化による解放、この新傾向のもたらす効果は現時点でトッド氏は分析しきれておらず今後の課題である。
3.教育の階層化と民主主義の崩壊
過去のエリート=頭の良い高学歴で社会的責任感、時に国家への責任感にも溢れた人々
今のエリート=集団エリート、全人口の3割にものぼり必ずしも優秀でない開かれた世界(グローバリゼーション)を代表していると思っている層。
民主主義の3類型、思想的気質と家族構造に由来
①米英仏型→自由平等を普遍的価値観とする、背景に核家族、個人主義、兄弟間の平等
②日独型→権威の原理と不平等、背景に直系家族
③ロシア型→権威主義と平等主義
日独では階層民主主義が発展した、民主主義の手続きと自由な政治アクセスの一方で、権威と階層社会を受け入れる傾向もある
日本は教育レベルの低い人を蔑視する傾向は弱い、背景には米英仏と比べて国民を一体として捉える感情(自民族優越主義)が強い傾向がある。
グローバル化したエリートと地方に暮らす下層の人々による社会の分断から脱するには、この分断状態を認めた上で両者による交渉が必要。
フランスの「黄色いベスト運動」は階級闘争であり、マクロン以下のエリート層は対決を選んだ結果混乱を招いた。この混乱を解決するのは新しい政治勢力だろう。
イギリスのブレグジットは大衆に対してエリート層が歩み寄った好例である一方、アメリカはトランプを巡って大衆とエスタブリッシュメントの分断が深刻化しガバナンス不全に陥りつつある。
民主主義の危機に対する完璧な解決策はない。ベターを選択しつつ最悪な状態を避け続けるしかない。
4.日本の課題と教育格差
日本の特異性は、不平等を受け入れる価値観と江戸時代由来の特殊な階層の考え方をベースとした能力主義が発展した点。そのため身分に対して傲慢な感情がない。階級化したシステムを維持したまま民主化が進んだ。
地政学的には、中国は人口が10倍以上あるため対抗しないと飲み込まれてしまう。国防の選択肢の一つとして核武装も考慮すべき。
日本の1番の問題は人口減少。グローバリゼーションの圧力は日本全体を縮小させつつある。その解決のためには秩序ある移民の受け入れは不可欠。そのためにも、日本は完璧主義を捨てもう少し無秩序を受け入れた方が良い。
5.グローバリゼーションの未来
自由貿易を推し進めすぎた国で中間層の収入レベル停滞等様々な支障が出るようになった。自由貿易は不平等を拡大し続けるため反発も強まりつつある。トッド氏はそれを「グローバル化疲れ」と呼ぶ。トランプの大統領当選やサンダースの躍進は、左右の違いなく自由貿易への反発が進展していることを物語る。
この動きに対して道徳的良し悪しで捉えるのではなく、実際に起きているムーブメントとしてその力学を直視することが重要。
グローバリゼーションはモノと資本の自由な流通である一方、情報、言語、移動の世界化の動きは終わらない。グローバリゼーションの終わりは世界化の終わりを指すモノではない。
6.ポスト民主主義に突入したヨーロッパ
EUによって最も恩恵を受けたのはドイツであり、その台頭をトッド氏は「ドイツ帝国」と呼ぶ。現在移民を最も受け入れるドイツは、人口維持による国際的影響力の維持に固執している。しかし家族制の異なるトルコ系移民の流入はドイツ社会の硬直化と治安の悪化という脆弱性にも繋がりうる。
またドイツの伸長をアメリカが快く思わない場合、アメリカがドイツへ影響力を行使する可能性がありそれもまたドイツの脆弱性である。
フランスはEUによって産業の空洞化が危機的なレベルまで進展してしまっている。グローバリゼーションに取り残される大衆の不満にエリートは対応できていない。そしてその無力なエリートを隠れ蓑にしている中産階級の無能さ、無関心こそが最大の問題である。
7.アメリカ社会の変質と冷戦後の世界
トランプの当選はアメリカのエリート対大衆の分断を露わにした。中年白人死亡率の上昇に見られる中間層の没落は、これまでの自由貿易を推進する傾向からの転換をもたらし、トランプやサンダースの支持拡大につながった。
冷戦後の世界においてロシアの退潮とドイツ、そして中国の拡大が進んだ。アメリカは後者2者、とりわけ中国への反発と対抗姿勢を強め、そのためにロシアと接近、連携する可能性もありうるとトッド氏は指摘する。
Posted by ブクログ
識字率の上昇、義務教育の普及が民主主義の基礎を作ったということも事実ながら、高等教育の普及による教育格差が社会の分断を生み出し、民主主義を破壊するというパラドクシカルな現実を告発するエマニュエル・トッドの明敏さ。
人類は歴史上初めて、先進国の教育において、女性が高等教育を受ける比率が男性のそれを超えるという時代を迎える、とトッドは指摘する。
現在私たちがいかなる意味で歴史上大きな転換点に立っているかを明晰に教えてくれる著者に感謝。
トッドの深い人間知を垣間見せるフレーズを引用しておく。
ある人が「支配階級はただお金を稼ぎたいのだろう」と言ったのに対して、トッドはそうではないと答える。ありふれた庶民は生活のために働き、生き延びるという、ある意味シンプルな幸福がある生活をしている。
「私は人間とは生きるようにできているのではなく、生き延びるようにできているのだと思っています。つまり、精神的な問題は、お金がありすぎてその使い道に困っているような人々に表れるのです。だからこそ、二十世紀の重要な理想や思想の全てが崩壊した現代社会というのは、非常に気がかりな状態にあるのです。」
Posted by ブクログ
久しぶりの社会観や文明論といった大きな枠組みを論じた本。Globalization は不可逆な流れであり自由貿易は促進するべきである、保護主義は内向きな排斥主義であり移民の流入制限は排斥運動だ、という世の中の流れに対し、
過剰な自由化によりGlobalization fatigue(グローバリゼーション疲れ)が起きている、globalizationを抑制しても世界化(mondalisation)は消えないし、適切な保護主義は有用、移民の一定程度の抑制は国家という単位に帰属意識を持つ上で必要、等カウンターの意見を次々と提示する。
「フリードリヒ・リストの保護主義の定義によると、それは自由主義の一端でありながら、国家(ネーション)の存在を認めるもの」(p117)という保護主義の捉え方は、自由貿易を礼賛しトランプの関税戦争を馬鹿げていると一顧だにしない今日では偏見を打破する上で重要。
能力主義については階級化を招いているという主張はサンデルの本を最近読んだこともあり新鮮味はなかったが、国家という運営単位を維持する上で現在最有力になっている指針である、と考えると、国家の帰属意識の揺らぎを説明するピースになっている思う。
宗教論争に隠れて社会の本当の問題である階級格差の拡大に目が向かないのが問題、という点は、BLMなどの人種対立やPCによるキャンセルカルチャーに連日のニュースが支配されて社会の格差にいつまでも目を向けられないアメリカにも深く刺さる指摘。
トランプ後のアメリカ然りブレグジット然りどの国も新しい国家像や指針を見出せていない中、こうした既存の価値観に対する疑義はとても納得感がある。
保護主義や移民に対するネガティブな意見を民主主義の要素として肯定するなど、国家を基準とした見解が多く、殊更にグローバル化や既存の枠に囚われない企業個人を賞賛する今日では珍しい。民主主義を実現する社会単位として国家はまだまだ基盤となると改めて思わされる。
読んでいると歴史は繰り返す、という見方を改めて思い知る。国家という伝統的な単位を視点に置き、社会階層が流動化すると混乱が起き、また新しい階層が生まれ、、という波の繰り返しに現代も当てはまるように感じた。
新書で社会分析をするとどうしても論拠が書ききれず、アメリカや日本ついての見解には首を傾げる部分もあるが、広い視点を得る上で読んで良かった本。
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