エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。
個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現象。識字が課題となる初等教育の普及段階では、教育が平等主義とつながっているが、高等教育になればなるほど、当然のことではあるが格差が広がる。民主制は指導者が必要だから、エリートも必要なわけだが、経済格差と教育格差がリンクして議論されている日本でも、まさにこの部分を直視して問題の落としどころをさぐらねば -
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ネタバレ人口動態の専門家でそれに関しては納得できる内容だった。
経済的な観点のみで政策を進めると長期的な視点を失いやすい、という記述にも同意。
ただ、各国の経済政策については他の専門家の著書も読んで考えたいなと思った。
概ねの主張としては
今後新自由主義的なグローバルな政策から各国とも保護主義的な政策へ舵を取るべき。そういう局面に来ている。
ナショナリズムと保護主義は=ではなく、差別をしなくても保護主義は達成できると著者は考えている。
各国それぞれに課題がある。
日本は何より人口動態の問題が深刻だが、能動的帰属意識がない。
日本の制度や意識改革、既存の組織方針を刷新をするのは容易ではないので正直 -
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ネタバレいろいろな人達のトッド氏の評判が高いので、著書を読みたいと以前から思っていました。
本書ではコロナ、トランプ氏、中国、フランス、ロシア、ドイツ、欧州、グローバル経済・自由貿易と保護主義、日本の人口動態問題に関してのことが語られています。
「ロシアは騙された。NATOが約束を破って勢力を拡大し、ロシアが追い込まれた」と。
グローバル経済・自由主義は宗教に近い。自由貿易の「自由」とは奴隷制と関係がある。言葉遊び。世界の富裕層が、貧しい人々を安い労働力として使うということ。「自由」ということばそのものが嘘。
自由主義者はいつもいかに支払いを抑えるかと考えます。しかし保護主義は国家がとる自然に備 -
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1.表紙をみて何となくの気持ちで購入しました。
2.歴史学者として名を馳せている著者が自身の思考についてどのように考えているかについて書かれた本です。著者は学者として数々の論文を執筆してきたり、メディアに出演してきましたがあくまでも自分の成果について述べたものです。しかし、今回は自身の思考についてです。普段はどのように思考をしているのか、習慣化しているものは何なのかなど、今までとは違った視点が書かれた本です。
3.一般的な学者世界からは敬遠されがちの著者がどのような思考をしているのかが気になりましたが、根本的には過去のデータを検証すること、日ごろからストックを増やしておくこと等を習慣化して -
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エマニュエル・トッドの日本限定の本で、彼の思考プロセスについての本。
エマニュエル・トッドは、日本では有名(?)だけど、どうもフランスではあまり評価されていない、あるいは批判の対象になってしまうような存在のようです。
日本では、ソ連の崩壊を始め、さまざまな予言のヒット率で評価されているようだけど、フランスでなにかと騒ぎを起こしてしまうのは、彼の思考のプロセスによるものが多いようだ。
この本によると彼の思考は、イギリス経験主義的な方法で具体的な事実、数字を丹念にもていくことを通じて浮かび上がる直感的な仮説をまた丁寧に実証していくというもの。ある意味、当たり前といえば、当たり前の方法論。
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ウクライナ問題に関する著者の見解がユニークなものだったので、こちらも読んでみた。
これは2015年1月におきた『シャルリー・エブド』事件にともない起きたデモなどフランスの反応についての分析。
原著の出版は、その数ヶ月後であることから、エッセイとか、インタビューを集めたものかと思って、読み始めたら、一冊を通してなんか堂々した論考となっている。
まさに社会学的、人類学的な論考で、フランスの地域ごとの価値観の分布とデモへの参加率から、どういう人がデモに参加したのかという推計から始まるところが圧倒的。
脱宗教の度合い、平等主義、権威主義の度合い、社会階層、年齢による差など、定量分析を踏まえなが -
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「大分断」が2020年7月に発行されているので2021年2月に発行された「以後」は新型コロナウィルスについての世界の知見が多少とも整い始めたころとなる。前著では民主主義の失速と後退の原因としての教育格差が語られ、日本の問題にも触れるという構成だったが、「以後」」は聞き書きであり、日本人が質問し、それに答える形で構成されており、より「日本について」語る内容となっている。
トランプ大統領の業績についての評価から始まり、EUの問題や中国の行動原理など、トッド氏の家族制度による人類学的考察をもとにした、世界の見方についての視点は変わらず切れ味が鋭く示唆に富む。自由貿易と保護主義への転換については著書「 -
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グローバリゼーションとポピュリズムの中で、揺れ動く、民主主義と資本主義
四名の知性が語る現代と未来
1 世界の未来 エマニュアエル・トッド 私たちはどこへ行くのか
・核家族こそが人類の最初の家族システムだった
・今見られる政治的な代表制という仕組みは、それが民主的なものであれ、寡頭制的なものであれ、むしろ古い過去から残り続けたものであるとわかったのです。
・民主主義は、人間の小さなグループが自分たちの間で組織したものでした。そしてそれはいくらか排外的だったのです。
・この排外性は民主主義と反対のことではなくて、民主主義の始まり、あるいは再登場の始まりなのです。
・高等教育というのは、体制順 -
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ネタバレトランプ政権が終わった後に、過去の本と比べてどうだったかを照らし合わせるために読みました。
トランプさんの演説内容があり、とても良い発言をしています。
多くの日本人はトランプさんを誤解していると言いたいです。メディアは偏った報道をしていると改めて思います。
まずひとつ思ったのは、ヒラリーは戦争をやりたがっていたので当選しなくて本当に良かったです。
この本でとても気になったのが、多くの大統領に影響を与えた哲学者のニーバーという人物の話でした。
なぜアメリカは、世界の警察と言って様々な国に軍事介入をしたのか、軍事介入を始めた多くの大統領はニーバーの光の子(正義)が闇の子(悪)を倒すという単純 -
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本書は2018年7月から2021年1月までにAERAや朝日新聞などに掲載された6回のインタビューを大幅に加筆修正を行ってまとめたものである。雑誌や新聞では紙幅に制限があり、落とさざるを得なかった内容を加えたものである。
著者のエマニュエル・トッド氏は親日家で、来日回数も10回を優に超え、速水融という人口学者とも深い交流があったという。
雑誌向けのインタビューなので、紙面に乗せやすいように事前に答えがある程度想定される質問を投げかけて、それにトッド氏が答える形式のものが多い。その結果、著者が得意とする定量的なデータをもとに大胆に帰結を引き出すような論理的な記述は少なく、トッド氏のそれまでの主 -
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著者の本は、いくつか読んできて、視点の鋭さと深さに感銘を受けてきました。
昨年は大分断を読み、次に読もうと思っていた本。
読者が本書を読んで、再現するのは難しいが、著者の考え方がよく分かる内容。
一般のビジネスパーソンにも必要な考え方が盛り込まれており、大局観や長期視点を得るために必要な要素が散りばめられている。
参考になった内容は下記の通り。
・直感やアイデアが浮かばない理由
①自分の中に無意識でランダムな考え方がない
②ある考えが許されない・出来ない社会となっている可能性がある
・グループシンク
小さなアトム化した信条を、拠り所にする人々が溢れている
・現実を直視する条件として「 -
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Posted by ブクログ
久しぶりの社会観や文明論といった大きな枠組みを論じた本。Globalization は不可逆な流れであり自由貿易は促進するべきである、保護主義は内向きな排斥主義であり移民の流入制限は排斥運動だ、という世の中の流れに対し、
過剰な自由化によりGlobalization fatigue(グローバリゼーション疲れ)が起きている、globalizationを抑制しても世界化(mondalisation)は消えないし、適切な保護主義は有用、移民の一定程度の抑制は国家という単位に帰属意識を持つ上で必要、等カウンターの意見を次々と提示する。
「フリードリヒ・リストの保護主義の定義によると、それは自由主義の一 -