エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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家族形態から世界を読み解く本!ちょっとあっち寄り トッドは人類学者、歴史家、地政学者として名高い。特に家族システムをベースに様々な社会現象を読み解くのが得意だ。この本は「我々はどこからきて、今どこにいるのか。」の解説書と考えてもよいだろう。
核家族は古い家族形態で、日本の直系家族の方が新しい家族形態ということを初めて知った。女性の地位も時代が新しくなるにつれ低くなるのだそうだ。ユーラシア大陸の中央部で新しい家族形態が生まれたが、大陸周辺部は古い核家族が残っているのだそう。ただ、核家族の社会は「革新」を得意とする。だからイギリスから産業革命が生じたのだと。
家族形態を切り口としてウクライナ戦争、ロシアやアメリカ合衆国の状況を語っているのが興味深かった。
トッドは反米英、佐藤優は新ロシア、片山杜秀もロシアよりなので、仲良しが同じ方向で話をしているだけのような感じもした。トッドに対して、反論や質問をもっとしてくれても良かったのでは? -
Posted by ブクログ
グローバリズム以後
アメリカ帝国の失墜と日本の運命
著:エマニュエル・トッド
朝日新書 589
1998年から2016年の間に進行したグロバリゼーションの分析と評価が本書の目的である
グロバリゼーションを主導したのは、アメリカ帝国である
EU欧州の主導権を握っているのは、ドイツである
しかしながら、欧州は建設から解体へと移行していく
日本はかつてないほどに経済的、軍事的安全にかかわる構造的な問題の解決を迫られている
■夢の終わり
アメリカの白人層の45から54歳までの死亡率が1999年から上昇している
1世代35年は国民国家衰退の時代であった。国家の弱体化の時代、国家の破壊の時代でした。
帝国主義に苦しんでいるのは、まず自国民であった。ソ連であれば、ロシア人、アメリカでは、米国人そのものがその帝国支配に苦しめられてきた。
英国のEU離脱(Brexit)の原因はあまりにたくさんの移民を受け入れることの拒否反応である
平等の幻想。
英国社会には平等はない、なぜなら、階級の違いがある
米国には平等の伝統があるが、それは白人同士の平等で、民主主義である。ただし、黒人を含めてではない。つまり黒人の解放とはかなり幻想だということです
英国では、離脱に投票したのは、ふつうの人でした。エリートは驚愕し慄然していたのです
自由・平等を手に入れるためには、大きな犠牲を払ってきた。
英国1640年清教徒革命、1688年名誉革命、2つの革命を通じて、選挙をともなう君主制を手に入れた。それから産業革命が起き、米国の独立宣言があった。
フランスの人権宣言はそのあとに続きます。フランス革命はいわば最初の反応でした。
エリートの反逆:かつて、エリートとは共同体の公益を担うのが役目であった。教育レベルは高く、外国語で意思疎通もできる。でもそれは、目くらましであった。
欧州連合はエリートが構築したけれど、共同体の構築ということでは失敗している
重要なのは、まず起きていることを見ることです。
欧州の現実は、ドイツ経済が支配力をもつようになり、欧州東部をその中に組織していったことにあります。
しかし、ドイツは、欧州を管理できない。あまりに自己中心的であるが故に、ドイツは帝国の建設には才能がない
現在の巨大国家、世界帝国とは米国、ロシア、中国である
民主主義の危機:民主主義とは、まず普遍的な識字運動であり、だれもが読み書きができるようになるということです。でも、今は、高等教育を受けた人でも、多くの人が、グローバル化の影響に苦しんでいます。
伝統的なモデルで考えると、発展というのは、複雑だった家族構成がシンプルになり、個人というのが登場する。そして、家族構成がもっと個人中心となりもっと自由になり、もっと進歩することになることだ。
■暴力・分断・ニヒリズム
近代への移行が生じる期間は劇的である。
欧州の場合、フランスでは数十年の間、革命と戦争が続きました。
ドイツでも、宗教革命やナチズムがありました
ロシアでは、共産主義革命がありました。
歴史家として、長期間について語るなら、残酷な結果を生みだすもので、そのモデルは、過去から変わっていません。だから、イスラム世界では、今とても厳しい状況にあります。
中東では、国家を組織する能力を備えているように見える国が2つあります。トルコとイランです。
サウジが崩壊の危機にあるのであれば、イランを必要で安定的なパートナーとして見直すべきです。
イスラム世界の戦いは、シーアトスンニの戦いではなく、世代交代が起きていることによる脱イスラムの模索をしている中での対立がおきているためです。
ニヒリズムとは、あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意志を示します。
危機は、そこら中にあり、しかも、国ごとにそれぞれ違った形をとっています。
経済は手段の合理化をもたらしますが、目的の合理化ではない。経済は何が良い生き方であるかを定義してはくれません。これが限界です。
危機の4つの要素 ①共同体的な展望の欠如、②高齢化、③教育革命、④女性の地位の向上 です。
日本の本当の問
東日本大震災で目にしたものは、共同体、会社などの水平連携関係が、事態に対応ができなくなった政治制度に代わって、地域の再建を支えていた姿でした。
文明の衝突には2つの危機があります。
1つは、米欧、日韓などの発展の先頭を行く、国々の危機です。消費社会は停滞して、若者にそのしわ寄せが及んでいます。人口減少が進展し、不確実不透明になっています。
もう1つは、移行期にある途上国のものです。制度変更に伴う混乱、暴力、自由競争の導入は生活水準を押し下げています。
この2つの世界をグロバリゼーションが橋渡しをしていることで、両者を人は行き来するようになりました。これが文明の衝突です。
日本は安全保障的に西側である続ける必要はあるが、こと中東対応では最低限の連帯を口にしておけばよいと説いています。
アメリカ帝国の衰退は予想より早いスピードで進行している。まるでローマ帝国の末期に非常ににた状況である。
グローバル化でアメリカ型世界に収斂していくという予想は外れ、国家の復活、再浮上。米国、ロシア、ドイツ、中国、かつての大国が再び台頭してきている
民主主義の特徴は識字率の向上である。それとともに、出生率が低下し、女性の識字率が上がってくると、政治システムは民主主義に移行しようと、伝統的システムと決別するための政治的危機を体験する
目次
日本の読者へ
1 夢の時代の終わり(2016年8月30日)
2 暴力・分断・ニヒリズム(2016年1月27日)
3 グローバル化と民主主義の危機
4 アメリカ「金融帝国」の終焉
5 終わらない「対テロ」戦争
おわりに 大野博人
初出一覧
ISBN:9784022736895
出版社:朝日新聞出版
判型:新書
ページ数:200ページ
定価:720円(本体)
発売日:2016年10月30日第1刷
発売日:2016年12月20日第5刷 -
Posted by ブクログ
なるほどな〜 こういう見方をする人もいるのか〜と、新鮮な発見があった
筆者は言わずとしれたエマニュエル・トッドさん
フランス人の政治学者
本書では、ウクライナとロシアの戦争について。すでに第三次世界大戦は始まっている!と筆者は説く。
たしかに、ウクライナのバックにはアメリカとイギリスがいる。
兵士訓練と武器供与を行っているのだから、これはちょっとした世界大戦と言っても良いのかもしれない
そもそも、私たち日本人は西側の人間だ
ウクライナに関するニュースというのは、基本的には西側からの観点で伝えられる
ロシアにはロシアの言い分がある
戦後から世界秩序のためにコストを払い続けてきた 本来はロシアなりのプランがあった それが果たせずに、侵攻を開始した…というのが筆者の持論なんだけど、ちょっと世界をフェアに見すぎている気はする
つまり、戦争犯罪を軽んじている
さすが、本国フランスでは出版できない内容…
アメリカは世界で戦争をしていてほしい 軍事大国として君臨し続けるため
その視点は確かに… と思わざるをえない
さらに筆者が言う、日本が核保有すべきとの主張は、納得感がある
核保有は戦争をするためではなく、戦争ゲームから逃れるため
さすがのエマニュエル・トッドさん
サラッとカジュアルに、地政学的な現況を解説する
ロシア寄りと感じる読者もいるかも知れないけれど、国際政治の書籍としてオススメと言えばオススメ -
Posted by ブクログ
ネタバレ2000年代
ロシア :プーチン政権下 安定化した保守的な社会
ウクライナ:破綻
ロシアへの恨み バルト三国、ウクライナ、ポーランド
現在
欧州 :ジャーナリズムという信仰 抽象的な自由 嫌ロシア
アメリカ:ドイツをロシアから引き離す? 戦争への嫌悪感なし
中国 :「平和」で中心に近寄る
ウクライナ戦争で西側は「現実=リアリティー」と直面
親族システム
アングロサクソン、フランス、北欧 :核家族
ロシア、中国、アラブ他 75%の国 :父系、共同体家族
日本、ドイツ :中間的 男子長子以外が自由な個人
世界は多様化
西側 :リベラルな価値観の押し付け
ロシア :権威主義だが、他国の国家主義を容認
アメリカ一強へのロシア、中国の異議
グローバルサウスはロシアに近い
アメリカ:寡頭制の台頭 民主主義の衰退
アメリカが脱落するかが真の問題
無責任な行動の終息が 世界の平和へ -
Posted by ブクログ
内容は、E.トッド氏が、以前からその著書(『第三次世界大戦はもう始まっている』)で言っていたことだ。その主旨は、
「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」ということです。」
前著が2022年6月のこと。1年を経て、ようやくその意見を、日本でも、一般に知られていて、メジャーな池上彰氏が取り上げ、対談をし、その内容が上梓されるようになった。
もとより、専門家でなくても、多くの知識人はその意見を理解してはいただろう。ただ、それを公に発言することがハバカレルか、あるいは聞いてもらえない時合いだったのだろう。ここに来て、少し風向きが変わってきたのかな?
「反ロシア感情、ロシア嫌いの感情というのは政治家の間ではなくて、ジャーナリストたちの間で始まっている」
と、サンフランシスコ州立大学教授アンドレ・ツィガンコフの意見を紹介しつつ、今の世論を形成するメディアも批判している。冷静に情報を分析した報道ではなく、ウケるニュースを垂れ流している責任は重い。
とはいえ、そんな耳障りの良い、自分の欲する情報しか耳に入れない国民にも非はあるとも思う。
ロシアの危機、プーチンの凋落という、西側の大半が求める方向の報道ばかりに耳を傾けていると、今後の判断を誤るだろう。
池上氏も、「実は一番の危機は、アメリカの危機ではないのか。」と。
さらには、
「ウクライナでは大変な苦戦をしている。つい私たちはそこだけを見てしまうんだけど、もっと広い、長いスパンで見ると、実はロシアの世界戦略が成功しつつあるのかもしれないということですね。」
お茶の間の人気者の池上氏にこう言わしめた、トッド氏との対談は価値がある。 -
Posted by ブクログ
第二次世界大戦の結果、生まれたウクライナは独自の言語と文化とを持つ独立国ではあるが、フルシチョフ時代にプレゼントされたクリミア半島にはロシア語しか話せない住民が多かった。マイダン革命と称する選挙によらない権力移動で来たEU寄りの政権がウクライナ語を話せない者を公務員失格とし上司に昨日までの民族主義テロリストを充てたことからおとなしいロシア系住民も怒った!クリミア半島制圧が容易だったのはそのせいだろう。
超大国とは好き勝手できるらしくアメリカは21世紀になってからもアフガニスタン、イラク、ソマリア、などで軍事行動してきた/ロシアはなぜ嫌われて