エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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今までの常識がひっくり返される様な書籍ですね。米国を中心とする英語圏で本書が訳されていないのは、親ロシア派とも取れるトッド氏への嫌悪感もあるかもしれませんが、不都合な真実をある程度含んでいるからと考えるのが妥当かと思います。
エンジニアの数や出生児死亡率から国力を測るという人類学者らしいアプローチは納得感がありますし、米国の国力がGDPの規模が表すほどは強国ではないというのはその通りかもしれません。それに加えてトランプ氏の混迷と欧州のパワーダウンが明らかであり、西洋の敗北とは歴史的にも象徴的なタイトルですね。だからこそ本書は売れてるだと思いますが。分かりにくい部分は多々ありますが、本書で触れている論点と主張は大変興味深いです。 -
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星4.0
時事問題を追っている人こそ読むべき本と感じた。
エマニュエル・トッド氏の書籍は初めて読んだ。
2026年4月21日本レビュー投稿時点で話題になっているハンガリーの首相交代等について、
何となく自分は「反EU、親露な悪意の右派政党が、善意のウクライナ支援派の政党に取って代わられた」とだけ受け止めていた。
ロシアがウクライナに侵略をしかけ、実際に被害が出ていることは許すべきものではないが、
そもそもロシアに対してアメリカとそれの従属国のようになっているヨーロッパがNATO拡大というロシアへの侵略をしていたのでは無いか。
筆者の主張である、家族構成が国家の性格になるのであれば、イラン革命で証明されつつあったように、EU等のグローバリズムは元々無理筋だったのでは無いかと
自分が今まで何となく「善玉」として信じていた社会が揺らぐようで衝撃的だった。
日本は核を持つべきという主張についても、否定したい日本人としての自分と、リアリズム的な考えとの板挟みで言葉が出ない。 -
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フランスの歴史人口学者、家族人類学者である著者が世界情勢を考察する世界各国で発売されている一冊。
歴史人口学、家族人類学という分野は初めて触れますので、このような考え方で見ると、世界はこう見えるのか、という個人的には衝撃的な内容だったと感じました。それだけに、各国の歴史、家族観、宗教観に加え、民族扮装や革命など大小の出来事を把握していないとなかなか理解できず、難解な印象を受けました。たまたまですが、同著者による『西洋の敗北と日本の選択』を同時進行で読みましたので、こちらを先に読んでからのほうが理解が進むと感じました。
本書は、ウクライナ戦争から考察を始めています。そのなかで、乳児死亡率、自殺率などが減少し、エンジニア人口の拡大などのデータから、現在のロシアは想像以上に安定化していること、ウクライナは歴史的に地域の意識差が大きいことなどから、ロシアの勝利を断言しています。それ以外にもヨーロッパ各国の状況などを考察し、アメリカを含めた西洋の影響力の低下の状況など、マスコミが語るものとは違う世界を見た気がしました。
現在のイランの状況を見るにつけ、著者が指摘した内容が真実味を帯びてきます。さまざまな視点を持つことの重要性を改めて感じました。
<目次>
序章 戦争に関する10の驚き
第1章 ロシアの安定
第2章 ウクライナの謎
第3章 東欧におけるポストモダンのロシア嫌い
第4章 「西洋」とは何か?
第5章 自殺幇助による欧州の死
第6章 「国家ゼロ」に突き進む英国ー亡びよ、ブリタニア!
第7章 北欧ーフェミニズムから好戦主義へ
第8章 米国の本質ー寡頭制とニヒリズム
第9章 ガス抜きをして米国経済の虚飾を正す
第10章 ワシントンのギャングたち
第11章 「その他の世界」がロシアを選んだ理由
終章 米国は「ウクライナの罠」にいかに嵌ったかー一九九〇年ー二〇二二年
追記 米国のニヒリズムーガザという証拠 -
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フランスの歴史人口学者、家族人類学者である著者が世界情勢を考察する世界各国で発売されている一冊。
『西洋の敗北』を読んでいたところ、内容が難しい点が多いと感じ、まずは日本のことを述べている本書と同時進行で読んだことで理解が深まった感じがします。
このような視点で世界を見るということが非常に新鮮であり、興味深く読み進めました。家族構造的に、日本は中国よりもドイツに近いこと、日本に対し、核武装と共に通常兵器の増強、さらにロシアとの友好関係の構築を勧めるなど、なかなか言いにくいような提言をしています。著者は、日本にかなり好意的な印象で、期待しているようにも感じます。現状、日本が劇的に何か変われるわけではないものの、将来を見据えた指針を考える上で参考にすべき意見であると感じます。
<目次>
1 米欧の分裂と日本の選択
2 トランプは「敗北の大統領」となる
3 日本は欧米とともに衰退するのか 成田悠輔×トッド
4 ウクライナを“支援”して破壊した米国
5 イスラエルは神を信じていない
6 ロシア・ハンガリーより愛をこめて
7 危険なのはイランより米国とイスラエルだ -
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ロシアがウクライナに侵攻して暴虐を尽くしたのが2022年2月。このトッドー池上対談が行われたのが2023年4月。まだバイデンのアメリカだった頃に書かれたこの書籍を、3年後、トランプがイスラエルと共にイランに先制攻撃した後に読む。まるで答え合わせをするように。
そうか、問題はトランプではなく「アメリカ」だったのか。
ロシアと欧州が抱く家族観の違いの中で、欧州的な個人主義&核家族の価値観がいまだ世界的には「少数」ということや、日本とドイツが「中間」にいる立ち位置など、人類学と歴史学の立ち位置を持つトッド氏の指摘は興味深い。ただ、トッド氏が日本に対して助言する中で、アメリカ主導からの脱却を促すことには同意できるが、核武装した方がいいよ、という部分については池上さん同様に強く否定したい。
ただ、「西側によって作られた物語の中で、私たち日本人は世界を眺めているんだ」ということが改めてわかっただけで、読む価値は高い。しかも、2026年の今こそ読むべき本ではないか。
福沢諭吉の唱えた脱亜入欧から140年、本書が言う「脱欧入亜」という言葉は目から鱗。世界は複雑だし、ロシアやアメリカやイスラエルのやばさは本当に非道で悲観的だけど、各国首脳の言動の是非を冷静に問いNOを突きつける世論形成には、こうした歴史家や民俗学的な視点を冷静に組み込むことが必要なんだと思った。
岸田首相のキーウ電撃訪問すら、アメリカに「連れられて行った」んだね。高市になって、ポチとしての日本がさらに劣化してるのはツラいけど、池上さんが言うように、希望は「作るもの」だと、私も思います。 -
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ウクライナ戦争や米欧の分裂をめぐるニュースは追っていたつもりだったのに、この本を読むと“見えていた世界”がまったく違う姿で立ち上がってきました。プーチンの手段は到底許されないけれど、彼が何を根拠に動いているのかを別角度から示されると、欧米の対応のほうがむしろ行き当たりばったりに見えてくるのが印象的でした。
特に、アメリカが“負けを悟られまいとする国”として描かれるくだりは衝撃的で、イランへの強硬姿勢の背景をこう読むのか、と目が覚めるような感覚がありました。昨年出版された本なのに、その後の国際情勢と照らし合わせると妙に腑に落ちる部分も多く、今のアメリカを著者がどう分析するのか続きが気になります。
読んでいてもうひとつ印象に残ったのは、著者がフランスの方なのですが、マクロン大統領への辛口な評価は、身近な対象だからこそ余計に我慢ならないのだろうという温度感が伝わってきました。
読み終えて、世界の見方が一度リセットされるような体験でした。同時に、地政学やロシア・ユダヤの歴史にも興味が湧いてきて、背景をもっと深く知りたくなっています。 -
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1.日本から「家族」が消滅する日
日本やアジア圏の少子化は「ゾンビ儒教」によるもの。老後の世話と子どもの教育が負担が重すぎ、少子化を招いている。
今後老人はどんどん増えていくため、儒教的な老人支配は強まる一方。親の面倒ばかり見たり老人への支援ばかりしていると少子化は進む一方だが改善される兆しはない(一人一票の民主主義の構造上の欠陥、マジョリティ優先)
フランスは老後の面倒や子どもの教育を国が行っているため少子化になりづらい、移民も多いが。
2.ウクライナ戦争と西洋の没落
ロシアの行動は西欧社会の勝手な価値観(グローバルスタンダード)を世界に押し付けようとしたことへの反発にある。日本もアングロサクソン的なグローバリズムの言説より各国の特殊性を重んじるプーチンの言説に共感するのではないか。
3.トッドと日本人と人類の謎
能力主義社会になってから身分社会以上に格差は広がった。下位のものは上に対して何も出来ずルールにも抵抗できないため自分を攻撃するしかなくなっている。左翼の高学歴エリートは人類という概念を愛しているが、その中に低学歴の労働者層は含まれていないことからより乖離は広がっている。高等教育が格差是認に繋がったことからエリート主義vsポピュリズムという世界になってきている。(アメリカでも日本でも至る所で)
アメリカは巨大な島国、軍事力もあるため侵攻されることがないからとりあえず戦争を吹っ掛けられる。
4.水戸で世界と日本を考える
世界崩壊の前にできることは「考える時間」を与えること。そのためには何もしないこと、いったん立ち止まることが必要。
また、中国は決して覇権国にはならないという意識をもつ。急激な少子高齢化によって、今後十年間で労働人口が大幅に失われる見込み。(まあ、日本もだけど)
「核武装」こそ軍拡競争から身を引くための手段、平和と安全と考える時間を確保するための手段。対米依存から脱却して独立国家としての自律性を確保するための手段ともなる。
5.第三次世界大戦が始まった
ロシアは強い。耐久力。
でも、あと5年以内に決着がつかないとロシアは負ける。
トッドの話を聞くと西欧よりロシアのが正しいのかも、、、となる。まさに世界の見え方が変わる。
これを読んだ今日、まさにアメリカとイスラエルがイランを攻撃した。この行動が正しいとは思えない。 -
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最初のインタビュー記事がコロナ元年だが、2026年に読んでもエマニュエル・トッドの先見性に驚かされる。ただ、経済活動をロックダウンで規制して老人を守る取り組みに疑問点を抱かれていることに違和感を感じた。コロナ禍については産業が空洞化してマスクさえも作れない先進国の危うさが指摘されていてもっともだ。家族システムによる社会論の総集編となっているので非常に読みやすい。日本がメインテーマとなっているが、日本の核武装と直系家族の弊害としての少子化への対策が示される。核兵器は自国防衛に特化し(核の傘はあり得ない)、戦争をなくす画期的なものとの位置づけだ。核拡散防止の観点からはなかなか難しいテーマだが、核保有国が非保有国に対して脅しをかけてくるシナリオを想定して、その場合にゼロから核保有で対抗するまでのリードタイムや方法などは確立しておくべきだと思う。他国のために核兵器を使うことはあり得ないため、核で脅すなら核を持たざるを得ないぞとの牽制が最低限必要。中国については男女比率の不均衡が異常値を示す点と、一人っ子政策の弊害で超少子高齢化が進んでくるので長期的には脅威にならないとの指摘。世界の工場だが外需・輸出に依存している脆弱性も繰り返さられている。日本の少子化対策として移民の受け入れを提言するが、幅広い階層・国籍で受け入れて(寛容な)同化を進めていく政策が提言されている。ドイツはトルコやシリアなどの移民受け入れが劇的すぎて歪を生じるリスクが指摘されている。エマニュエル・トッドといえば反EUだが、本書でも共通通貨ユーロの導入はフランス最大の失敗としてこき下ろされている。直系家族系の日本やドイツはもともと保護主義なところがあり、何でも安いものを選ぶ欧米と消費嗜好も違っていると紹介される。日本もドイツも品質や産地にこだわる傾向が強いのだそう。EU圏内ではドイツの産業面での優位性によってドイツ以外の国は壊滅的な被害を受けた結果になっており、そもそも自国通貨を持たないのは主権国家としてあり得ないとの指摘。ヨーロッパの事情はなかなか見えてこないので、非常に勉強になる。
日本からはずっと脱線が続くが、最後に日本において直系家族がどのように発展してきたかと、その影響の考察が非常に興味深い。もともと中国では春秋戦国〜三国時代あたりが直系家族の時代で、その後共同体家族に移行した経緯があるそう。権威主義家族関係を倫理化したものが儒教だったと。8世紀に日本も中国に倣って律令制を導入して長子(男子)相続原則を導入したが、実際に直系家族が浸透するのは鎌倉時代以降で関東地方が始まりだった模様のため、中国から渡来したのではなく独自で発達したと考えられる。中国では遊牧民からの外圧もあったが文治主義が多いのに対して日本はずっと軍治主義が続いてきた。そして、現代の日本女性は父系的で男性上位社会にいるため、女性の地位が高い社会出身の男性に惹かれやすいのかもしれない、との指摘。これについて、国際結婚が増加傾向にあるとはいえ、それは単に女性の高等教育が進んでいることが背景であって、女性の地位が低い社会出身との交際も増えているだろうと反論できそうだ。
直系家族は江戸時代を通して増え続け、徳川幕府の安定化に貢献したと考えられるが硬直化の弊害もあるため、明治維新という大きな転換に活躍したのが別の家族システムを持つ南西部(薩長、佐賀、土佐など)だったとの指摘(中性的な核家族システムが影響した可能性)。信憑性はさておき、仮説として色んなことを説明できるので、エマニュエル・トッドの作品は面白い。 -
Posted by ブクログ
世界25ヵ国で翻訳され、世界的ベストセラーになっている『西洋の敗北』、そこでの視点から日本の選択に触れ、提言している。『西洋の敗北』は英語での翻訳版はない。一種の発禁に近い扱いを受けているが、本書を読んでいくと、都合の悪い事実が明らかになり、英語版が普及するのを避けていることがわかる。提言は刺激的な示唆に富んでいる。世界の覇権者たる米国の劣化を鋭く指摘し、'世界は米国を必要とする'黄金期は終焉し、いまや逆説的に'米国は世界を必要とする'関係性になっていて、トランプの関税策が誤った針路になることを予見している。平和的観点から、日本は核を持たない、核廃絶を基軸としているが、この見方に警鐘を鳴らしている。戦争は核不均衡な国の間で起きる可能性に触れ、中国、北朝鮮、ロシアといった周辺国が核武装するなか、日本は米国の核の傘の下で保護されているから安心だ、といった考えに違和感を呈している。米国は、日本が核攻撃を受けても、自国への飛び火を避けるために核で防戦することがない。日本は核武装して、初めて、これらの国に対する抑止力を持つ、といった意味深な論説を展開している。日頃慣れ親しんだ考えを根本から問い直す力量が問われていると感じる。