エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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世界の頭のいい人たちからコンパクトに要点教えてもらおう!という、ある意味とても今っぽい本。中公新書で出た企画が成功したので、後追いという印象もある。
後追いとはいえ、世界は変わっており、最新の状態を前提にスピーディに新書化してるので、つまらないということはない。
今回はコロナとウクライナを前提に話している。
複数の人が話し、それをまた複数の人が感想を言う二重構造で議論が深まっていて良い。
学ぶとは考える体験であり、時間がかかるためデジタル化やコスパとは相容れないないという言葉は印象的。
多元的に考えるという言葉一つでも、人によって表現が違い、印象も変わる。
読後は「もっと本を読もう、ネットは減らそう」となった。 -
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筆者の経歴からしても歴史贔屓が強い面はあるとは思うが、他の学問やビジネスにも適応できるような思考法を、噛み砕いて記述している本だと思う。ただ、本の執筆テーマに沿って筆者の過去のエピソードの挿入が多く、主題がとっ散らかってかえって読みにくいところも。
筆者の主観的な要素が強い本という点は注意しつつ、総じて四章あたりまでの内容は、これから論文やレポートを初めて書くという大学一年生におすすめしたい本(ファクトファースト、思考から予測への三つのフェーズ等)。作成方法のヒントだけでなく、大学で論文やレポートを執筆する意味や価値を見い出すことができるかも。
p.197に登場した「Hours de moi」(理性を失うこと。直訳すると「自分の外にいる」)は、初めて知ったが、面白いフランス語のフレーズ。この本のここまでにいたる主張に基づくなら、理性を失う状況はむしろ、「自分の内に籠もり、外が見えていない状態」であるという気がするが、対比的にも見える表現をあえてここで登場させているのかな? -
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『エマニュエル・トッド』
(2022年現在、今後の世界情勢について)私は歴史家が本職。でも歴史の話はまったく役立たず。なぜなら、私たちが経験しているのは、まったく新しい何かだから。
歴史と違う点
・20世紀初めは各国人口増加したが、今は中国も含め減少する見通し
・冷戦時は、ロシアとNATOが直接対決したことはないが、ウクライナ戦争は、核使用が現実味を帯びるロシア対NATOの本物の戦争
・プーチンは独裁者だと言うが、ヒトラーや、ムッソリーニ、スターリンと違いイデオロギーが無い折衷的で多様な独裁者
・各国国民は超個人主義になった。それはロシア国民も同じ。だから国家間の経済紛争や戦争が行っているのにどこの国民もここです。だから参加したがらない33
中国に選択肢は無い。どうしたってロシアに加担せざるを得ない。一方、新興国のインド、トルコ、イラン、パキスタンなどは今後の世界を決める立場になる。しかも彼らは先進国を好きじゃない(旧植民地だから)。それにこれらの国は強烈な父権制文化の国で、女性解放などの先進国の理論には興味を示さない。彼らに選択を迫るのは危険だ39
『マルクス・ガブリエル』
ロックダウンシステムは「近代史上で初めて世界が中国を真似たシステム」。直ぐに見直されたが。56
コロナ禍で分かったのは「国境無き世界」はまだ存在せず、相変わらず「国民国家」が世界の潮流だという姿が炙り出されたこと。結局どの先進自由民主国も、マスクやワクチンを奪い合い、国家内の医療保険制度の範囲に壁を作った57
SNSでは、自由民主主義の水準に達する会話は成立しない。「Twitterで誰が大統領になったのか」を忘れてはいけない。(ガブリエルはコロナ禍の中でSNSアカウントを消去した)71
アイデンティティーで人を見るのは間違っている。例えばジェンダーの問題で、相手をノンバイナリーやクエスチョニングの人として見るのは道徳的に間違い。なぜなら見解の是非を「相手のなかの人間性を見て判断」するのではなく「その人のアイデンティティーを見て判断」しているから。ここで言うアイデンティティーとはジェンダー、人種、国籍など72
SNSでフェイク認定されてBANされる、といった国家が行えば「言論統制」と大問題になることを、Twitterなどの一企業が行っていることは異常 與那覇98
「現代に歴史は参考にならない」は賛成。無文字社会から文字社会になり、歴史は「記憶=暗唱」⇒「記録=叙述」になった。そして現代、歴史は「データ=検索」の時代になってしまった。必要な時に歴史を「つまみ食い」する。私は「歴史家」という肩書きを辞めて「評論家」になった。與那覇109
「日本はアジアで唯一の先進国」というパターナリズムをそろそろ捨てるべき。技能実習生というシステム自体が「途上国人を勉強させてやる」という建て前で成り立っている。これを「人口減少で衰退する日本の生活を維持するため『お手伝いに来てもらっている』」と正直に改めるべき。與那覇119
グローバリゼーションの原因のひとつは「道徳にとらわれない自己利益の追及」だ。「これは禁止されていない」「法的には間違っていない」と経済活動する。これは道徳を外部委託している(政府や行政たけが担っている)ことが関わっている。しかし難しいのは利益追求と道徳がトレードオフになっていて、解決法が見つからないこと。ミラノビッチ167
アフリカや南米、一部のアジアの国で見られるような極端な貧困や低開発がなくなった世界ができたとする。おそらくそうすると、より人々の交流が活発になるのと、各国内(先進国)の格差問題や不平等の縮小が起こると予想できる。ミラノビッチ186
「リープフロッグ現象」先進諸国が経験した段階を「蛙飛び」にして新興国で特定の技術やインフラが先進国より速いスピードで整備、浸透すること。アフリカでは銀行口座持てなかった人々が電子マネーを使い、物資が行き届かず餓死者が出てた村にドローンでモノが供給されたり、携帯ゲームで教育が普及したりしている224
ジャック・アタリの「ポイズンフードをやめよう」「ナチュラルなものを接種しよう」という主張に疑問。アフリカでは虫害や干ばつに強いので遺伝子組み換え大豆が人々の命を救っている。反ポイズンフード思想を先進国の理論で、無自覚に、急速に強要すれば反論と大混乱を招く。小川227
SNSは秒で情報を得られるが、「考える」ことが出来ない。《人新世の資本論》は面白かったが、結論の「一人ひとりが考えて立ち上がるしかない」が不満。本当に今必要なのは「一人ひとりが立ち上がるために、人々に啓蒙や教育をどう届けるか」という方法論だ。東229
AIの恋人が出来たとする。長いあいだ恋人として会話したけれど、ある日、実は会話はアルゴリズムだったと発覚する。その「恋人」に「今まで会話してくれてありがとう」と言えるか。多くの人は「裏切られた」と思い結婚詐欺に遭ったと同じように感じるのでは?東239
私は「人々はそんなに理解しあわなくてもいい」と心から思っている。「理解しあえなくても共存できればいい」と考えるのが大事。この考えは人類が共存しあえる社会を作れる可能性がある。それに自分や自分と同じ考えのグループが、危機に陥って解決策が無い時、自分たちの思想が破綻したときに、全く想像もつかない「別の考え」を得られるリスクヘッジにもなりうる。小川240 -
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本書は朝日新聞記者によるエマニュエル・トッド氏へのインタビュー集(1998年~2016年)とういことで、それぞれのインタビュー記事自体は短く読みやすいと感じました(※日本語が読みやすく大変良かった。以前別の出版社から出たトッド氏の本を読んで翻訳のひどさにストレスが溜まったのとは好対照でした)。冒頭の「日本の読者へ」で書いてあるように、トッド氏はグローバル自由主義礼賛の時代が今年終わったと述べています。米国の大統領選挙でトランプが勝利した後に本書を読んだ身からすると、この主張はかなり説得力を持つなあという印象を本書の冒頭から持ちました。
本書はインタビュー記事と言うことで基本的に読みやすいのですが、トッド氏の主要な研究成果の知識を持っていないとなかなか意味が分かりづらい記述もあります。具体的にいえば、トッド氏は本書内でも各国の家族構造について折に触れて述べていますが、多様な家族構造(兄弟関係、親子関係、婚姻制度)と浸透する政治思想の関係という彼の研究成果については、他の著書(例:「世界の多様性」ただしこの本は大著なので読むのは大変ですが)、もしくはWebで多少勉強した上で本書を読むと理解がかなり深まると思います。 -
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ネタバレ4名の著名な知識人へのインタビューと、それを踏まえた日本の知識人による論評という構成。日本の知識人の方々は、確り自身の意見を述べていて好感が持てた。
また4名のインタビューの中では、ミラノビッチ氏の話が面白かった。
曰く、エレファントカーブを見ると、程度の差こそあれ、あらゆる人々がグローバリゼーションを通じて所得が増加していることがわかる。また、グローバリゼーションに反発するのは、相対的に恩恵の少ない先進国の中産階級だけで、国内政策での対応が可能である。
そう考えると、保護貿易的な政策で中産階級を保護するより、再配分や成長産業への労働力移動を通じた、グローバリゼーションに抗わない政策の方が効果的ということなのだろう。
また、無道徳的な資本主義と道徳的な共同体は両立しない/経済成長しないと絶対的貧困は減らせないとも述べている。
つまり、無道徳的でも資本主義を通じて経済成長を続けるしか道はないということで、現実的な意見だと感じた。(因みに無道徳とは、”道徳・倫理について、内なる規範ではなく、法律などの外部規定に依存する”ことらしく、必ずしも悪いことではない) -
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世界の捉え方が変わる本
フランスの歴史学者、エマニュエル・トッドへの文藝春秋のインタビュー、対談集。
トランプの当選予想やその保護主義的な政策の評価、逆にネオリベラリズムへの批判は日本の主流の論調と異なるものの、根拠となる歴史観を踏まえると一定の説得力がある。日本向けの話としては、少子高齢化への対策が最優先だと何度も触れられ、日本でも30年前から問題を認識しているのは先見性があったのに、何も手を打たず口だけと手厳しい。
右派左派、格差、福祉の話は価値観の問題でもあり、一致した正解などないのだが、トッドは経験主義的な立場で価値観、倫理に踏み込まないことで論理が明解になっている。それでも本能的な好き嫌いは分かれそう。 -
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冒頭に書いてあるが、トッドによる研究の全貌を一般の読者にも読みやすい形で示した「私にとって最も大事な本」だそうだ。全人類の歴史を、家族システムという補助線ひとつで整理しなおしてみせる手際はおみごと。経済学ばかりが重視される社会科学の現状への異議申し立ても傾聴すべきと思う。「反米を煽るものではない」と言いつつ、アメリカとドイツをディスるときの筆の冴えも面白い。
日本やドイツの直系家族が経済的な効率性に優れると言いながら産業革命がテイクオフしたのは核家族のイギリスであったり、それはそれで理由が示されるのだが、全般を通して、ああ言えばこう言う的なところも多く、ウクライナ戦争にまつわる言説も含めすべての議論を真剣に受け止めていいいかどうかは留保したいところ。 -
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上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。
個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現象。識字が課題となる初等教育の普及段階では、教育が平等主義とつながっているが、高等教育になればなるほど、当然のことではあるが格差が広がる。民主制は指導者が必要だから、エリートも必要なわけだが、経済格差と教育格差がリンクして議論されている日本でも、まさにこの部分を直視して問題の落としどころをさぐらねばならないのだろうと思う。
もう一つ面白かったのは、同性婚の法的承認がなされ、女性の社会的ステータスが高い国ほど出生率が高い、という相関関係があるという事実。女性のステータスに関しては、社会的システムの整備など十分想像できる結果だが、同性婚については個人的には新たな視点で勉強になった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人口動態の専門家でそれに関しては納得できる内容だった。
経済的な観点のみで政策を進めると長期的な視点を失いやすい、という記述にも同意。
ただ、各国の経済政策については他の専門家の著書も読んで考えたいなと思った。
概ねの主張としては
今後新自由主義的なグローバルな政策から各国とも保護主義的な政策へ舵を取るべき。そういう局面に来ている。
ナショナリズムと保護主義は=ではなく、差別をしなくても保護主義は達成できると著者は考えている。
各国それぞれに課題がある。
日本は何より人口動態の問題が深刻だが、能動的帰属意識がない。
日本の制度や意識改革、既存の組織方針を刷新をするのは容易ではないので正直悲観的になりそうな気持ち。