エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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ネタバレこの本は、自分がこれまで持っていた価値観をかなり大きくゆさぶってくれる本でした。自分は、この本を読むような人の多くとおそらく共通して、日本でエリート層に属しているとおそらく言えることと思います。一方で世界情勢についてはこのような本を読んだことはなく、新聞に書いてある物の見方を受け入れてきました。すなわち、次のような考え方です。ウクライナはその全土に対して権利があり、その全土をロシアに対して守り切るのが望ましい決着である。米国を中心とした「グローバル化」の進行は受け入れるべき望ましいことであり、また必然として世界を覆っていくだろう。彼らの文化の一つである同性愛やトランスジェンダーの容認についても
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西洋の敗北とあわせてエマニュエル・トッド。日本では西側フィルターの情報が多い中で、アンチ西側、フィルターをできるだけ外して世界を見た時、ウクライナ問題とは何かをズバリと。
良い本。
ロシアウクライナ問題。西側諸国に都合のいい目線ではない切り口。そう、つまるところ、西側諸国の資本主義は寿命を迎えつつあって、NATOは自分たちの食い扶持のために侵略していっているのだ。ロシアがウクライナに戦争をしかけたのは、ウクライナという小国を侵略したいのではなく、西側諸国、アメリカにもう勘弁してくれと手を上げたわけだ。
第三次世界対戦となるかは分からないけれど、中国が台湾をどうにかするのは時間の問題だろうし、 -
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西洋の敗北。狭義の西洋である米英仏にはもはやエンジニアも技術者も労働者はおらずものは作れない。広義の西洋である日独はモノづくりは残っているが米国の保護国になってしまっている。
宗教ゼロ状態の米英仏はウクライナ戦争への大義も戦略もなく場当たり的に進め、兵器製造の観点からして敗北は必至。
経済制裁もGDPでは測れないロシアの経済力を見誤っており、効果はでない。
BRICS諸国、グローバルサウスの反西洋の動きも見えていない。
トランプの生産を国内に回帰させようとする保護主義はもはや手遅れで、いくら関税をかけても優秀なエンジニアや労働者がいない国で良いものはつくれない。プロテスタント的な労働観が -
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いま、個人的に最も信頼できる知識人がエマニュエル・トッドだと思う。その世界認識は極めてラディカルかつ本質的である。
トッドは言う。
私自身の世界である「西洋の民主主義」を、共につくり出した英国、米国、フランスの三極が、いま崩壊しつつある。−中略−英米仏という三極の崩壊は、価値観の面でとくに著しい。西洋の「労働倫理」は言うまでもなく、より一般的に、「自由」「知性」「批判的思考」、理解と前進を可能にする「人間の理性」といった理想や価値観が消滅しつつある。「進歩」という理想が崩壊している。
この言葉はペシミズムから来ているのではない。冷徹なリアリストの診断なのだ。
そして世界における日本の位置づ -
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ネタバレ実家に帰ると、よく「お兄ちゃん」と飯を食いに行きます。
血はつながっていないけれど、小さい頃からいろいろとお世話いただいた人です。
ちょっとアウトローなところがありますが、気のよい人です。
少し前の話になりますが、お兄ちゃんはウクライナ戦争に触れて・・・
「プーチンの○○○○が・・・」
「あいつはほんとに××だな」
と、まぁプーチンのことを口を極めて罵ります。
テレビのニュースを観てればそうなるのも無理はありません。
わたしもどっちかというとそっち側です。
このトッドさんの本には、ざっくり言うとこんなことが書かれています。
・おかしいのはロシアではなく、西側のほうだ
・西側は -
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いち大衆の立場からすると、正直ジレンマ。ウクライナ戦争に至った諸悪の根源が欧米にあるというのは確かにそのとおりかもしれない。ロシアが生存権をかけて戦っているのも事実であろう(それはイスラエルも同じこと)。じゃあ、本来あるべきはロシアに対する同情論か、というとそれも違うと思う。綺麗事に聞こえるかもしれないが、とにかく早く戦争をやめさせるのが先決。でないとベトナムの二の舞になる。気持ち悪いのは、ベトナム戦争のときは米国内で反戦デモが活発だったのに、今回はそういう動きが聞こえない。直接兵士を送ってないから?それともまだまだ世界は事実を知らないから?
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現在の日本における風潮であるリベラルの没落、外国人嫌い、ポピュリズム政党の台頭は広義の西洋諸国に共通の現象である。
その根っこにあるのは、宗教のゾンビ化から無し状態である。それを表す現象はLGBTや同性婚。その変化により国民国家を結びつけていた集合的意識が解体され、結びつきが希薄になり、人々の不安感が増大している結果である。経済的な側面から言えば、富裕層と貧困層への2極化。
それに真っ向から異を唱えたのがロシア。ウクライナ侵攻以降のグローバルサウスのロシアへの共感は西洋の欺瞞への反発の表れ。それに気付いていないのが、西洋国家のエリート層。
もはや西洋には、世界を支配する軍事力経済力宗教がない -
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家族構造や宗教そして教育という、我々の心理を深い次元で司る要素の分析を通して、それぞれの国の政治や経済がなぜ現在のようになっているのかを読み解く書である。無意識・下意識の階層にある何かが、目に見えるものを支配しているという考えには、大いに納得できるものがあった。
核家族か共同体家族かあるいは直系家族か、という言い回しが数多く登場する。核家族はホモ・サピエンスの原初的家族形態であり、むしろ直系家族のほうが最新なのである。ただ、絶対的な核家族は、創造的破壊が非常に得意である一方、技術や知識の継承という観点で直系家族に劣る側面がある。産業面で成功している中国・インド・日本・ドイツを観れば頷ける主張 -
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ネタバレこのような、「現実をちゃんと見ろ」系でちゃんとした本は参考になる。
アメリカは国として行き詰っており、モノを作ることができない。(ウクライナ戦に武器を十分に供与できない)アメリカはまさに今(2025年7月)、貿易不均衡の是正を求めて関税をかけようとしているが、不均衡の解消といってもそもそもアメリカで製造されているモノはどんどん少なくなっている。著者は、「アメリカの最大の輸出商品はドルそのもの」とする。
アメリカやヨーロッパ諸国では乳幼児死亡率や男性の平均寿命などに悪化の兆しがしっかりと現れている。いろいろな指標をアメリカとロシアで比べると国家としての底力はロシアの方が、ある。
な -
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オーディブルだったので、基本的にはながら聞き。しかし内容量が多いので文字では挫折していたかも。
2024年11月発行で作家はフランスの人類学者。人口統計と家族累計型から、人類のあり様を思考している。
ロシア×ウクライナ戦争は、当初はロシアの戦車はボロだとか西側はウクライナの味方だとかでやたらと勢いが良かったが、なかなか収まらない。そもそもこの戦争は避けられなかったのか。妥協点は見いだせなかったのだろうか。ロシアにしろウクライナにしろ戦争を始めた人たちに命の危険はなくて、市井の人々、特に子供たちが犠牲になっている。自分が聞いていた情報がどこか違っていた…というより事象はそんなに単純ではないとい -
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4.1 (9)
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ネタバレはじめに
1戦争、ニヒリズム、耐え難い不平等を超えて
エマニュエル・トッド
現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている
・私たちの生活を変えるでしょう。存在しなかったら、私たちはより悪い状況におちいっていたでしょう。
・人類には「歴史」の感覚が必要。
・私たちは謙虚でなければいけません。
・長期的な視点で物事を考えなくなりました。「自分たちがどこから来たのか:「何を生き延びてきたのか」「何を成し遂げてきたのか」といったことを考えるのをやめてしまいました。
・ある種の健忘症のようなもので…ショックが容赦ないほど大きすぎたのでしょう。…ショックが大きすぎました。そのため、私たちはかっての自分との -
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