エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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トッドにはかねてから興味はあったのだが、ぶあつい著作にはなかなか手が出なかった。これはインタビュー・講演や雑誌への寄稿をまとめたお手軽な新書。現時点で最新のようでもあるので気軽に手にとってみた。時事ネタを扱っているのも良いし、なるほどとうならせる箇所も多いのだが、一方で分量ゆえ仕方ないながら、踏み込み不足というか物足りない感じもある。なかなかうまい広告なのかもしれない。
1,2はBrexitに関する論考で、やや内容はかぶる。本書の中では小手調べ的なかんじ
3はトッド自身の仕事や方法論を振り返っており、初読の身には大変おもしろかった
4は人口学による各国近未来予測、これも興味深い
5は中 -
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ネタバレ第7章の「富裕層に使える国家」が面白かった。その次が第8章の「ユーロが陥落する日」。前半のグルジア/ジョージア問題はあのあたりの地理や背景にもう少し私自身が詳しくなると面白さが増すのではないかと自分の力不足を感じているところ。
トッド先生は、ほんとにドイツの事嫌いなんじゃないかと思いますが、それ以上にフランスに歯がゆさを感じているのだとよく伝わってきます。あと、日本人がドイツと日本を同一視したり同カテゴリに置いたり、過度に親近感を抱く節があるのはちょっと本来のあり様から外れているよ、という指摘は結構重要だと思っています。
日本について論じているところが読みたい人は編集後記を先に呼んで参照ページ -
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20180111〜0131 2015年1月の「シャルリ・エブド」襲撃事件を受けてフランス各地で行われた「私はシャルリ」デモ。「表現の自由」を掲げたこのデモは、実は自己欺瞞的で無自覚に排外主義であった-- と、著者は断じる。私も、これら一連の事件とデモは、とても違和感を覚えた。この事件の背景にある事象ーー宗教の衰退と格差拡大による西欧の没落について分析している。
以下、私の感想;
訳文がやや硬いせいもあるが、読むのに少し難儀した。この回りくどさはさすがフランス人の文章というべきか。
崩壊しつつあるカトリシズムを「ゾンビ・カトリシズム」と述べているが、ゾンビという単語が先走ってしまい、色物のように -
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フランスの学者 エマニュエル・トッド氏のインタビューをまとめた本。
ちょっと違う独特な世界観が新鮮。
以下、読書メモ:
夢の時代の終わり
米国 エリートへの反乱 最低限の安全を脅かさることへの抵抗
EUは崩壊へ 移民への対応
世界は接近するが一致はしない
暴力・分断・ニヒリズム
ニヒリズムとは、あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意思を指す。
先進国の考察
信仰システムの崩壊=共同体的な展望の欠如
高齢化
女性の地位の向上=教育革命
不平等を受け入れる日本
指導層はテロを利用している
グローバル化と民主主義の危機
国家の再浮上 多数を占める中高年が若者にかか -
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ちょうど、平行して読み漁っている水野和夫氏の著書とも通じる部分がある。(当然、異なる部分もあるが)
その中で、やはりエマニュエル・トッド氏の主張を特徴付け、説得力を持たせるのは、氏のバックグラウンドである、文化人類学や人口学の観点からの指摘であろう。
出生率の低下を根拠にイランが近代化の過程であると指摘し、家族制度を根拠に日本やドイツには不平等を受け入れる社会的背景という。さらには、民主主義の発展に不可欠な、国民の識字率や高等教育の発展などがさらに進むと、教育格差として不平等の定着につながるとの指摘も、改めて慧眼であると感じた。
そして、リーマンショックなどの金融危機以降、世界がグローバル化 -
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先進国、つまりヨーロッパ(特に英、独、仏)とアメリカ、日本の行き詰った現状についての解説本。
著者はフランス人なのですが、長期的な歴史の視野に立って現代を観察してるんですね。
アメリカ人やイギリス人(独立志向が強く、かつ差別に寛容、よって「自分さえよければ良い」思考に陥ってる)社会とほかの国との比較が語られて、とっても興味深かったです。
国際的視野ってのは、実は単にアメリカ的視野になりがちですが、実は全然違うんですよね。
たまにヨーロッパ人の視野で話を聞くと全然違って面白いです。
ただ残念だったのは、朝日新聞に掲載されたインタビューをもとにしている割には、文章がわかりずらい。
翻訳が今一つ・ -
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本書は書下ろしではなく、7編の時事論集である。すべてBrexitやパリ多発テロなど2015-16年頃のものなので、当然ながら似ている内容が多い。また、ほとんどが日本で収録または日本で発表されたものということで、日本に言及した部分も多い。
ヨーロッパを主にした世界情勢論、家族形態の歴史に基づく文明論、などが展開されているが、いかに日本人向けにアレンジされて読みやすくなっているとはいえ、決して理解が容易な内容ではない。編をまたいて繰り返されることで、辛うじてぼんやりと分かったような気にさせてくれるが、それは本書の主張を支持するものである。
氏の論調は自国では批判が多いようだが、世界は難しい問 -
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短編や講演をまとめた為か、体系だった論点というより、気付きをもらえる本。
自由を強制される西洋に対し、自由に限界があると認識している日本の方が内面的に自由でいられるというのは、欧米はポリティカル・コレクトネスが行き過ぎてしまった、とも重なるのだろうか。
大家族主義の国家で共産主義が発達し、各家族主義の国家では発達しなかった、というのは結果論では納得できるし、EUの移民許容度を内婚率(イトコと結婚率)で説明するも興味深いが、その論点だけの説明は、危険なプロパガンダと感じた。(すべて、それが原因なの?)
本人の主義にのっとり、多様化した視点を聞きたい。 -