エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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ヨーロッパの真の敵はロシアではなく、ドイツだという話。
また、EUというのは、一握りの金持ちとドイツを独り勝ちさせるためのシステムで、すでにその従僕となっているフランスは、一刻も早く立ち上がるべきだという内容。
世の常識からすると、びっくりするような話で、著者がフランス人だと聞けば、ああなるほど、ドイツ・アレルギーが嵩じたあげくの世迷言かと思ってしまうが、書いたのがあのエマニュエル・トッドということならば、話は違う。
ベルリンの壁の崩壊や、アラブの春など、この人類学者の将来予測は、けっこう的中するのである。
インタビューをまとめたものなので、中身はそう濃くはないが、その分読みやすい。
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フランスの風刺週刊誌「シャルリ・エブド」が武装した犯人に襲撃され
たのは2015年1月7日。そして1月11日、フランス各地では犠牲者を
追悼する為のデモ行進が行われた。参加者は300万人とも400万人
とも言われる。
言論機関への襲撃はショックだったし、各国首脳が参加したパリの
デモの様子は壮観でさえあった。だが、最初の衝撃の波がおさまり
はじめると「何かが違う」と感じるようになった。
それはインターネット上に溢れる「Je Suis Charlie(私はシャルリ)」の
スローガンと、フランスが掲げている「自由・平等・博愛」の間に矛盾が
あるのではないかと思ったからだ。
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欧州の共同体としての信仰は、キリスト教という普遍性の高い宗教の登場とともに始まり、それが政治思想に変化し、民主主義を可能にし、政党を作り上げる力になっていった。
家族構造の進化の観点からは、明治の頃の日本は、中国の紀元前500年くらいの段階にあった。第二次大戦で日独は世界の長男になろうとして失敗し、戦後の日本はアメリカの弟で満足している。他国と同列の兄弟になることにおびえがある。
民主主義とは、普遍的な識字運動であり、高等教育を受けるのはごく少数だった。第二次大戦後、高等教育を受ける人が急速に増え、高等教育を受けていない人たちとのつながりなしに存在するようになり、民主主義の破壊要因となって -
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トランプの共和党候補指名受諾演説の内容を読んで、包み隠さずアメリカの現状を訴えていると思った。
人として受け入れられない部分は多く、実際に人となりがクローズアップされるような報道が多いが(当たり前といえばそうだが)この本を読むと、住んでる場所や学歴などによっては自分はトランプに投票していたかもしれないと思えた。
事実投票した人たちによってトランプは当選したわけで。
分断されたアメリカと盛んに言われているが今に始まったことではないと思う。
トランプの当選で急に分断されるはずがないかなと。むしろ当選によって明らかになったわけで。
どっちみち資本主義?グローバリゼーション?で生まれた負の部分という -
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グローバリズム以後
・アメリカが帝国となって以降、30年がたち、1世代変わった。帝国というものは、帝国の中枢こそは良いが、帝国の中にいながら辺境にいる人間にとっては良いことはないため、辺境の人々が帝国をやめようというエネルギーを発し始めた。アングロサクソンは根本的に不平等なシステムをとりやすいが、アメリカが自由平等の国としていることが出来たのは、内部に黒人差別をすることで辺境を確保し、不平等を発散していたからである。しかし、黒人解放以後、平等化が進み、白人も辺境に追いやられることで考え方が変化し、国民国家に向けて進み始めた。
・欧州は分断に向かっている。それは、一致させるべき明確なビジョンの -
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「グローバル資本主義によって経済は成長する」と信じられてきましたが、実際のデータを客観的に眺めてみれば、真実はまったく逆であって、「グローバリズムは成長を鈍化させる」
グローバル資本主義を推し進める人々は、ビジネスに自由さえ与えれば富も雇用も創出され、最大限の成長があると信じてきた
アメリカにしても日本にしても「国による産業保護」という規制が成長を生ん
アメリカが、実は世界で最も強力な産業政策を行っているのです。インターネットにせよ、半導体にせよ、航空機にせよ、研究開発を支援したのは国防総省や軍などの政府機関
グローバリズムは国境を前提にしないものであって、国境が存在することを前提とした上で、 -
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米国でトランプが登場したり、英国がEUから離脱をするなどグローバリズムが崩壊に向かうとして、今後の世界を人類学の観点から予見する。
1998年~2016年のインタビューを取りまとめた本なので、まとまりに欠けるきらいがありますが、不平等を容認してきたアングロサクソンもこれ以上容認できなくなっている中間層の崩壊。アングロサクソンは、子供が大きくなると直ぐ独立させるので文化が世代を超えて伝承しない。識字率が上がって出生率が下がるのは近代化危機の兆候など、興味深い考察が満載です。
また、日本には移民はほとんどいないが派遣労働者が同じような扱いを受けているとあるのが印象的でした。 -