柚月裕子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ四国のお遍路巡礼と女児殺害事件が同時並行で展開する構成である。主人公夫婦の巡礼を通して、十六年前の過ちと後悔、そして過去と向き合う決意を固める。
ゆっくりと進む展開であるが、夫婦の絆と娘の出生の真実、元部下の成長など、主人公を取り巻く人間関係を丁寧に追う。巡礼を通した内省から、現在進行形で起こる事件の解決のヒントを得る場面は個人的に好みである。
気になったのは、以心伝心のやり取りが多かったことだ。私が空気が読めないだけか、家族ならまだしも、仕事仲間の思考や感情をあまり細やかに読むことができないため、少し現実から乖離したような印象を持った。警察という特殊な環境ならではの密な人間関係がなせる業 -
Posted by ブクログ
裏社会が舞台の本を読みたくて借りました。
ヤクザになってしまった金田にフォーカスしたストーリーを期待していましたが違いました。
でも、内容は面白かったです。
主軸の「生保受給と闇社会の問題」と同時に、
生活保護制度の意義がテーマになっているストーリーだと思いました。(貧困ビジネスの仕組みは、事例をもっとたくさん知りたかったです)
本書とは別に、
生保をどうしても受けたくなかった若者がいて、それでも一時的に生保受給をした事で、社会復帰できた記事を昔、新聞で読んだのを思い出しました。
生活保護は恥ずかしいとかいう考えが少なからずあるせいで、
本来生保受給が必要なのに、忌避感から、生保を受けな -
Posted by ブクログ
第一章から理不尽に理不尽が重なっていくのだろうと少し重い気持ち。
働き始めて4年、真柴は正社員になれる希望が見えてきたところに、それを妬むどうしよーもない先輩に飲みに誘われ断りきれずに付き合う。そこから傷害の加害者になり、転がるように指名手配犯になってしまうとは・・・。真柴の転落ぶりが切ない。もっと愛情ある言葉のなかで育ったら、帰ることのできる支えとなる場所があったならと、あって当然のものがない辛さに今さら気がつく。
体育館に立て籠った真柴に、刑事の陣内はまわりの反対を押し切って生き別れた父の手紙を届ける。父の手紙を読み、暖かいもので心を満たして旅立てたことが救いだ。
真柴が連れ帰った子供なお -
Posted by ブクログ
下巻に入ってようやく主人公である桂介目線の物語が展開される。上巻に比べれば惹きつけられるのだけれど、一向に事件は起こらずに、その事件の真相に迫る刑事二人と、事件に至る桂介の物語が続いて、なかなか核心に触れてこないことにもどかしさを覚えた。そして今ひとつ僕の読書欲が湧かなかったのは、桂介に彼の恩師唐沢と同じような彼の幸福を願う気持ちを抱きながら読み進めていることと裏腹に、物語が最初から悲劇へと続く空気を孕んでいることも、大きく影響していた。
桂介の母のことが語られるにしたがって、芥川龍之介とその母との関係を思い出していた。母の狂気が自分にも及んでいると考えずにはいられなかった芥川のことがオーバー