最近勢いのあるミステリー作家6人の競演。オール讀物か別冊文藝春秋などが初出の読み応え抜群の一冊でした。もし気になる作家さんが入っていたら試し読みに最適です。タイトル的にスカッと爽やかとはいかない内容が多いので、読み心地良いもの求めている人には向きません。
「ヤツデの一家」新川帆立
三代目を継いだ女性政治家の語り。暴君だった父の後妻の連れ子、渉は美しく世渡りがうまく、面倒なことは嫌い。でも私にアプローチしてきて、私も渉なしではいられない。そして私は醜いが、美しく身体の弱い妹がいる。
女の国会みたいな話かと思ったら全く違いました!珍しくドロドロっとしたお話です。
「大代行時代」結城真一郎
世の中流行りの退職代行を使って、銀行の当たり新人がやめていった。残ったのは私についた総合職の使えない猪俣君。一年もしたらすぐ異動してどんどん出世するんだろうけど、とにかく私に声をかけられないでずーっと後ろでもじもじしてるようなダメっぷり。私は時々友人の香奈子に会って愚痴るのだ。
なるほどっていうオチ。捻りが効いた話の多い著者っぽいと思いました。
「妻貝朋希を誰も知らない」斜線堂有紀
ファミレスのスプーンを舐めて元に戻す画像で炎上し、訴訟に発展しそうな妻貝朋希。その彼を追う記者2人が周りの友人知人にインタビューしていく記事やメールだけで構成されている。タイトル通り少しずつ妻貝朋希のことが分かっていくのだが、大題の“罠”も絡んできて更に話が深くなります。
斜線堂有紀の本領発揮!っていう一作。構成やプロットだけでなく、妻貝のような性質のこと、SNSへの過激な投稿など、幾重にも感情が深まるネタが仕掛けられていて深み(あく)が凄い。
「供米」米澤穂信
私は詩の道を志したが諦め銀行員となった。しかし親友春雪はその才を発揮し研ぎ澄まされたその詩集は詩人文人に評価高かったのだが、夭折。遺稿集がでたのだが、その推敲具合から、本人には人に見せる意思がなかったのかと思い…。
紡がれた文章や語彙が設定年代や詩人の考察というのに合致していて美しかった。それに反しでオチが…。不協和音な印象。それが良いのかも。
「ハングマン ―雛鵜—」中山七里
単行本の続編。今回の主人公は裏の機械操作で情報収集役の比米倉。大学生活が少しだけ語られ、少ない友人の一人だった久水が闇バイトのニュースで映像写っており、やがて死体となり発見された。比米倉は真実を追及していく。
「ミステリ作家とその弟子」有栖川有栖
刑部はミステリー重鎮作家。最近弟子を取ったらしく、逗子の自宅へ訪問した編集者の西川は2人のミステリー会話(指導)を興味深く隣室で聞く。ミステリー談義は幾話も続き…しかし、事件が起こる。