小泉悠のレビュー一覧
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職場同僚の紹介。
Audibleにて。
サイバースペースは仮想世界のはなしとして、どこかふわふわと世界で唯一のフラットで境界のないものを想像してしまいがちだ。
この本ではサイバースペースを実現するための最重要物理層である、データセンターおよび海底ケーブルに着目し、実際に現地で取材した内容をもとに、そのようなイメージを払拭し、サイバースペースにおける地政学を講じている。
日頃デジタル技術を利用するときには意識しないが、堅実にその便利さを支えてくれているインフラに気づかせてくれるとともに、その危なっかしさを学ぶこともできる学びの多い本だった。 -
Posted by ブクログ
イズムィコ同志の新刊は原点回帰のロシア軍事について。原子力潜水艦の配置や戦略の歴史を説明するとともに、オホーツク海の原子力潜水艦の現状については一人OSINTで長期間衛星画像を分析して記述しています。
なるほど、永久凍土の上に基地を作って丸見えになることを考えると海底に潜水艦でミサイル基地を作ってしまう方が合理的なんでしょうし、置くなら凍らないバレンツ海と凍る期間が限定的なオホーツク海というのは理にかなってます。とはいえご近所にそんな物騒なものを置かんでくれとも思うわけで……。
れにしてもイズムィコ先生、連日テレビでウクライナ情勢を解説しているというのに執筆の時間があるのさえ不思議なのですが、更に画像分析の時間も捻出できているのが本当に不思議です(くれぐれもお体には気を付けて……)。 -
Posted by ブクログ
「今や米国にとっての第一義的な懸念はテロリズムではなく、国家間の戦略的な競合である」(米国防総省『国防戦略』2018)
ルパート・スミス『軍事力の効用』
「…戦争はもはや存在しない」
核兵器を用いた国家間の大規模戦争は人類の破滅を意味しており、戦争によって達成されるべきあらゆる政治的目的を無意味にしてしまうからである。
「プーチンは、ソ連における彼の前任者や現在の習近平と同じだけの力を持ってはいない。しかし、ロシアは1990年代にそうであったような、弱いガタガタの国家ではないのである」マイケル・マクフォール(ロシア研究者)
P.60
「ウクライナ危機の後、NATOは大きく変わりました。あらゆる脅威に対処する「360度同盟」になったのです」NATO加盟国大使
大規模な犠牲が出る決戦を避けて小規模な勝利を積み重ねる「制限戦争」
「国際関係においては、力のファクターが持つ役割は低下していない」(『ロシア連邦国家安全保障戦略』2015)
スリプチェンコ 非接触戦争
メッスネル 非線形戦争
P.85
現代の世界では、「より軽い、より大衆的な武器」、すなわち情報を通じた心理戦が決定的な意味を持つ
…ひとつながりの戦線を挟んで戦う形態(線形戦争)とはならず、あらゆる場所で人々の心理をめぐる戦いが繰り広げられる
…平時と有事の区別は存在しない
イーゴリ・パナーリン 情報地政学
カラー革命
2003 バラ革命 グルジア
2004 オレンジ革命 ウクライナ
2005 チューリップ革命 キルギスタン
P.95
…ブログやSNSでの言論を萎縮させることだった。特にアクセス数の多い有力ブロガーに実名を義務付けたり、その一部を見せしめ的に逮捕・基礎したり、さらには政権には従わないインターネットメディアが閉鎖されるといった事態が相次ぐようになった。
…ネットユーザーの個人情報を必ずロシア国内のサーバーに保存することが義務付けられ、さらにアクセス元を偽造するために用いられるVPNソフトの頒布も禁止された。
情報安全保障 サイバー安全保障とは違う
ユナルミヤ 若き軍隊
「ロシアは2つの同盟者しか持たない。我が陸軍と艦隊である」アレクサンドルⅢ(ロシア帝国皇帝)
P.139
…モスクワ言語大学安全保障情報センターのバルトシュは、これを①非軍事的手段による闘争→②ハイブリッドな手法を用いる低烈度闘争→③正規軍による高烈度闘争の3ステップに分類した。住民の扇動のみによっては政治的目的(ウクライナの分裂)を達成できずに民兵による蜂起が起こり、続いてロシア正規軍を投入せざるを得なくなったドンバス紛争はその典型的な事例である。
限定行動戦略
「誰も大規模戦争のことを無視することなどできませんし、そのための準備を怠るなど論外です」ヴァレリー・ゲラシモフ(ロシア軍参謀総長)
P.239
ヴォストーク2018 北方領土
防衛白書の編纂委員「北方領土では実施されなかった。これらの活動には「ヴォストーク」という名前がついておらず、そうである以上は別個の訓練活動だ」
「いかなる条件下でも、我々は戦略的抑止力を諦めるべきではありません。それは強化されねばならないのです」ウラジーミル・プーチン
P.260
西側の軍事力の方がより宇宙空間に依存しているという事実の裏返し -
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オホーツク核要塞
歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略
著:小泉悠
朝日新書943
潜水艦とその探知技術の革新史と理解しました
イノベーションの流れは、以下のようなものではないか。
■第2次世界大戦終了 ⇒ 冷戦の軍拡競争がはじまる
通常潜水艦 ⇒ 原子力潜水艦 乗員の体調が許すかぎり潜航できる
核ミサイルを搭載 ⇒ 航行距離が短いので、沿岸にまで忍び寄って発射する必要
⇒ 世界中の海にソナーを設置 潜水艦を探知
海峡にソナーを設置 ⇒ 対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡 ⇒ 日本海は我ら、日米の内海化
⇒ソ連の原潜の無音化 ⇒ 海流にのって、対馬海峡から宗谷海峡へ
大量のミサイルを原潜に搭載可能に ⇒ 核による標的の集中攻撃が可能に ⇒ 報復攻撃の大規模化
ソ連海軍の大演習 ⇒ 全世界的な、海軍兵力の展開
米第七艦隊の空母に対して、ソ連の重航空巡洋艦ミンスク
核ミサイルの燃料の改善 ⇒ 大陸間弾道弾搭載 ⇒衛星で探知 ⇒スター・ウォーズ計画
⇒ソノヴイ 哨戒機
安全な領域から、ミサイルを発射できるように ⇒ オホーツク海の要塞化 ⇒ 直接米本土を攻撃可能に
極東艦隊への上陸用水上艦艇部隊の配備
ベトナム カムラン湾での、ソ連海軍の基地化
極東レーダ設置 早期警戒レーダー ⇒ 日本海をカバー カムチャッカ飛来の核探知は謎のままに
⇒ 1991年ソ連崩壊
■ソ連崩壊後 ⇒極東艦隊は、財政難のため、大幅縮小へ
核保有しつづけるロシアは、核抑止能力を保有しつづけている
核抑止の信憑性
限定核 狭い地域での使用であれば、阻止できない ⇒ 報復はない
参戦の抑止 核を使えば、追加参戦してくる国が減る ⇒ これも報復はない
地域的核抑止論の登場 ⇒ でも運用されたことはない ⇒ 報復がないという確証はないから
■第2次ロシア・ウクライナ戦争(現代)
極東ロシア軍の地上兵力は著しく減少 ⇒ ウクライナ戦に投入
極東の米ロの衝突の可能性は低い ロシアの戦力は、極東艦隊からも、北方艦隊からも、ウクライナへ
⇒ロシアの思惑 日本が北方領土を実力で奪還しない限り、オホーツクは安全
⇒日本には平和憲法があり、ウラジオストックなどの海軍基地を戦略的に排除するシナリオはない ⇒ つまり、日本は攻撃されなれば先に攻撃ができない
目次
はじめに―地政学の時代におけるオホーツク海
第1章 オホーツク海はいかにして核の聖域となったか
第2章 要塞の城壁
第3章 崩壊の瀬戸際で
第4章 要塞の眺望
第5章 聖域と日本の安全保障
おわりに―縮小版過去を生きるロシア
あとがき あるいは書くという行為について
注
ISBN:9784022952530
出版社:朝日新聞出版
判型:新書
ページ数:384ページ
定価:1050円(本体)
発売日:2024年02月28日 -
Posted by ブクログ
HIMARSの果たした戦術的役割については知らなかった。この本が書き上がった当時はまだワグネルの代表が謀殺されていなかったことを思い返し、時の流れの速さを感じる。著者が繰り返し「この戦争の第一義的責任はまずロシアにある」と、ロシアウクライナどっちもどっち論の欺瞞を繰り返し払い除けてくれているのも好印象であった。軍事理論面では、アンドレイ・ココーシン『軍事戦略の政治・社会学』(2005)における「全体戦争」の条件定義を紹介した上で、今回の第二次ロシアウクライナ戦争は「限定全体戦争」と呼びうる、という紹介があり興味深い。(小泉2022: 215-216)
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現代ロシアの軍事戦略
著:小泉 悠
紙版
ちくま新書 1572
20世紀後半の古典的な国家間戦争はもはや存在しない
ロシアによる現代戦とは、ハイブリッドな全面戦争を意味する
戦略縦深とは、奇襲を受けた時に時間的余裕をもてる緩衝地帯のことをいう
ソ連時代にあった東ドイツからソ連本土の距離は800Kmがウクライナが西側になった場合はわずか450Kmになる
これは東京・京都間、大陸弾道弾であれば、数分で核ミサイルが到達する距離だ
ハイブリット戦とはもともとアメリカ軍が生み出した概念だ
ソビエト崩壊も、一種のハイブリット戦とも認識されている
西側は軍事的手段だけでなく、政治・経済・情報などあらゆる手段を用いている
ロシアのハイブリット戦争は中東でも展開されている、それは2016~2018のシリアだ
PCM戦精密誘導兵器の使用、アメリカが湾岸戦争でつかった手法だ
ロシアも2008年のグルジア戦で使用している
ツペツナズが特別なのは任務の内容であって部隊を構成しているのは普通の兵士だ
ロシアの民兵ワグネルは、作曲家ワーグナーのロシア語よみ、ワグネルのリーダ、ウトキン氏はネオナチの信奉者だ
ドローンに対抗するには、電波妨害システム、ドローンはラジコンだからコントロール電波が遮断されると墜落するか基地に戻るしかない
ロシアの戦闘の定義
①武力紛争 国内武力紛争
②局地戦争
③地域戦争
④大規模戦争 第二次世界大戦以来発生していない
ロシア軍の演習
①作戦準備 軍の作戦機関、戦略、作戦レベル、連合部隊の錬成
②戦闘準備 戦闘環境下で訓練活動、戦場での活動に重点を置いた訓練
ロシア軍の大演習プログラムは局地戦のシナリオ
カフカス2009 動員兵力8500名、戦車200両、装甲先頭車両450、火砲250門
オーセニ2008 ベラルーシとの合同演習
ザーハド2009 防空戦 ネットワーク接続
ラトガ2009 NATO軍との大規模戦争
ヴォストーク2014 北方領土をめぐって日本との軍事衝突、米軍が介入
ザーハド2017 北方連邦 防空戦、海上戦、対潜水艦、巡航ミサイル、ドローン、航空機攻撃、NATO軍との北方地域での戦闘
接近阻止・領域拒否(A2/AD)
米軍をできるだけ、本土と遠いエリアで迎え撃つ戦略、中国軍も同様な戦略をもつ
エスカレーション抑止 限定核使用による同盟軍の参戦を防ぐ、失敗した場合の核戦争を合わせてシナリオをもっている⇒最悪のシナリオ
通常戦争におけるエスカレーション抑止もあり、超音速機の攻撃を想定
結論
ロシアの軍事戦略は古典的な全面的な戦争をコアとして、非軍事的な手段を合わせて用いる、ハイブリット戦である
目次
はじめに―不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
第2章 現代ロシアの軍事思想―「ハイブリッド戦争」論を再検討する
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
第4章 ロシアが備える未来の戦争
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
おわりに―2020年代を見通す
あとがき―オタクと研究者の間で
参考文献
ISBN:9784480073952
。出版社:筑摩書房
。判型:新書
。ページ数:320ページ
。定価:940円(本体)
。発売日:2021年05月10日第1刷発行
。発売日:2022年03月25日第4刷発行 -
Posted by ブクログ
こういった進行中の戦争についての本、防衛論などを研究している方の著作を読むのは初めてでした。
題材が題材なので、感想の言葉の選び方を慎重にしなくてはならないかもですが、読み物として、興味深く自分にとっては気付けなかった視点がもたらされる有意義な読書となり、端的に言って面白かったです。
この面白かった、という視点、言葉が。
この本の中で淡々と戦争について語られる論の展開、考え方が。
読む前にこう言った書物になかなか手が伸びなかった理由、懸念のひとつでした。
今現在、生身の人間が苦しみ、悲しみ生活を奪われ、時には命まで落とす。酷く惨たらしい状況に対して、対岸の火事とまで無関心にいかずとも、火の粉がこちらに振りかからない他人事の様に、感情のスイッチや揺れ動きが現地の人や関係者と異なって、淡々としているのは何かの欠落ではないのか、良いのか?と引っかかっていました。
戦争はいけない。
ロシアによるウクライナ侵攻はとても衝撃でした。ここまで長く続くと思わず、どうしたら終わるかも全く皆目見当つかず。ただ無力に願うだけしかできませんでした。
それが、考えも視野も狭く、きちんと世界の状況や戦争について考えられていなかったのではないかとこの本を読んで思いました。
戦争反対も、ロシアのウクライナ侵攻に対する反対声明も、声を上げることは簡単です。人々にそれが広がり、ウクライナの国旗のカラーを身につけ、SNSで表明し、著名人が多くの人に影響を与え、知る機会にはなったとは思いますが、それ以降果たしてどれ程の人が真剣に、戦争を止めるために何ができるか考えたのか。
戦争を止めるために武器の供与についてより戦略的に考え、効果的に使用するべきではと語るその意見は戦争推進派ではなく、攻撃的でなく、武力的でなく、現代において真摯に戦争に向き合っての意見のひとつなのかもしれない。
戦いについて、武器について淡々と語るのは、冷酷ではと思っていたけれど、何もできず願うだけで自分たちはぬるま湯で贅沢してただ暮らしている人々よりかは、現地の状況に寄り添っているのかもしれないと思った。
これはあくまで私の感想なだけで、この本の著者も、おそらく対談相手も、そういったお気持ち表明的な感情論ではなく、淡々と防衛論について考えているだけだと思うのですが、それが逆に、そういった人や考え、意見に今まで触れたことがなかったため、こういった人も意見も考え方も存在としてあるべき、異なる専門家や意見を持つ人が意見を交わして、最適解に辿り着ければ良いのではと思えるきっかけとなり、こういった本をさらに読んでみたい、日常的にも情報を追いたいと思ました。
プーチンが退任すれば、ウクライナ侵攻も、他の問題も片付くと思ってプーチン憎しでいました。
確かに「始めた」点では憎む感情は間違いはないかもしれないけれど、問題を矮小化というのか、複雑に絡み合った国内や、国家間の関係や問題を無視して簡単なところに問題を見出してそこだけで騒ぐのは愚かなことなのだなと気付かされた。
ウクライナとロシアの、不思議な、タイミングの合わなさやお互いを騙せているのか読めていないのか、ズレていることが功を奏したのか、悪かったのか。
こんなに長く戦争が続いていることについて、何故なのか、の一説として納得できる話であった。
中国の官僚の不文律の定年制度がしっかりしていて、新陳代謝が進むのが羨ましいなと思いました。
千々和さんとの対談は、ロシアのウクライナ侵攻だけでなく今までの戦争からの流れを汲んだ意見という感じ。
熊倉さんとの対談は各国の政治、価値観を引き合いに出し、それが判断にどう影響するかという感じ。
高杉さんとの対談は最新情報を元につぶさに観察された戦略、地政学的な感じがしました。
千々和さんの本が読みたくなりました。