小泉悠のレビュー一覧
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ネタバレ東大先端研専任講師にして、軍事オタクでもある小泉悠による新書。最近新書大賞にノミネートされており、またプーチンのアメリカメディア露出が気になり読んだ。2日ほどで読めた。
1章から4章にかけて、開戦前の2021年から執筆時の2022年9月に至る時系列を辿りつつロシア・ウクライナ戦争の政治的原因・推移を考察し、第5章ではそれを踏まえた本戦争の特徴を述べている。
2021年の春からロシアは演習と称してウクライナ国境に軍を大規模展開しており、その時点で軍事的緊張が高まっていた。これにはロシア寄り(というより自国主義のため他国への介入を好まない)のトランプからバイデンへ政権が移ったことが要因として挙げら -
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ロシア・ウクライナ戦争がはじまった年に行われた対談も含まれているので、今更読む必要があるかなと思いつつ読みはじめたけれど、普通に参考になる本だった。
日本の安全保障と朝鮮半島、台湾の安全保障の間には密接な関係がある。
あっさり読み終えることができる割には読みごたえもあって良い。
ロシア・ウクライナ戦争がはじまる前までは、もうこんな戦争は起きっこないと根拠もなく信じ込んでいたタイプなので、戦場のニュースを見ても、戦争をしていることしかわからない。
こういう軍事的知見に立った読みやすい本が出てくれるのは助かる。こういう本が必要な世界であることは悲しいけど…。 -
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著者は2014年のロシアによるクリミア半島強制併合とドンバス地方への侵攻を第1次ウクライナ戦争、2021年2月のロシアによるキーウ襲撃や東部ウクライナ侵攻を第2次ウクライナ戦争と呼ぶ。本書は第2次ウクライナ戦争を、民間利用可能な衛星写真を含め、出典を明記した膨大な資料(特にロシア軍の発表や学術研究)から解釈する内容となっている。ただし、もちろん、戦争は継続中であり、その内容は2022年9月末ごろまでに明らかになった情報に基づくという限界がある。
また、著者の専門分野は軍事戦略(特に直接的兵器による暴力に加えて、情報戦・サイバー攻撃を含める「ハイブリッド戦争」など)の研究がメインであり、「歴史 -
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プーチンがウクライナへ侵攻し世の中を驚かせたのは2022年2月のことであった。当初長い戦車車列で首都キーウ(当時は未だロシアの読みのキエフと呼んでいたが)へ向かう進軍、ミサイルが次々と都市の背の高いビルを破壊していく様、ロシア軍のヘリが撃墜される映像などは大きな衝撃だった。どこぞやの経済的に未発達な国の内戦ならまだしも、落ちぶれたとは言え大国であるロシアが、自国の軍隊を侵略のために国境を越えさせる。果たしてこのようなことが現代社会にあること自体に驚いたし、一体ウクライナがその後どうなってしまうのかとニュース映像やネットの動画に釘付けになった。その当時からよくテレビで見かけるようになったのが筆者
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断片的に捉えていたウクライナ問題を体系的に理解するに有益な本だった。また、ロシア関係だけではなく、最も意識すべき中国に繋げて議論される。個人的には台湾有事とウクライナ戦争がストレートには繋がらない。その視点でも読んでみた。
2003年のイラク戦争はアメリカが全くロシアの言うことを聞かずに開戦した。それまではロシアもG8に参加し、西側との全面戦争は無いのだからと徴兵制を廃止しろと言う主張をしていた。それと前後して2003年にジョージアでバラ革命、2004年にはウクライナのオレンジ革命。そこでウクライナがNATOに加盟すると言い出した。2005年にはキルギスでチューリップ革命。この一連のカラー革 -
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本書が発売されてから一年近くが経とうとしているが、残念ながら戦争は終わりそうもない。
最近日本では、ウクライナ戦争に関する報道も減りつつあるような気がする。
本書は戦争が始まる少し前からの両国の動きと、開戦後昨年の秋に至るまでの経過や、両国と関係諸国の動きを端的に分かりやすくまとめ分析している。なかなかの良書だと思う。
分析にあたり、事実を重視して可能な限り公平であろうとする努力には共感を覚える。終わりに、今後の日本で早急に考えておかねばならぬ事が端的に纏められている。このウクライナ戦争は、日本の国民の一人一人がこの東アジア地区での日本役割をしっかり考えるいい契機になると思うし、そうしな -
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気鋭のロシア軍事研究者である著者が、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略(第2次ロシア・ウクライナ戦争)について、なぜこのような戦争が起きてしまったのか、それは本質的にどのような戦争であるのか、戦場では何が起きており、日本を含めた今後の世界にどのような影響を及ぼすのか、書き下ろしで解説。
2023年7月時点でも現在進行形の世界的な危機である第2次ロシア・ウクライナ戦争について、その背景や2022年秋時点までの状況、戦争の特色がよく整理されていて、参考になった。
今回の戦争はやはりプーチンの個人的要素(原因としての民族主義的野望や、マイクロ・マネージメントによる失敗など)が強 -
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【before】この本を読む前の私はロシアについて無知でした。以下の点について勉強になりました。
・「無理だ」と言われると「何としても突破してやろう」というのがロシア人。ルールを破ること自体が目的にもなる。
・ロシアの人々を統治するのは容易ではない。むしろ「我々は、容易に統治できない民なのだ」というところにロシア人は自負心を持っているような節もある。
・「容易に統治できない我々」意識と「そうであるが故に強い調停者を頂かねばならない」という意識は表裏一体であり、プーチン大統領の人気もこの辺にある。
・全部は監視できないが、時々見せしめ的に警告を発する。「常に監視を意識させることで社会全体を萎縮さ -
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現在のウクライナ侵攻でもロシア側で暗躍している傭兵組織ワグネルの一員として、著者の実体験に基づく作品であり非常に参考となる内容である。文章も小説的で読みやすく、一人の男の物語として共感のようなものも感じられる。
元ロシア空挺部隊の将校である著者が家族のために稼ぐ必要性などもあり、中年となってから傭兵組織であるワグネルに入る。舞台はシリア内戦が主であり、そこでの実戦で、ロシア正規軍が示す本音と建前、シリア政府軍やワグネルの同僚の軍隊としての質の低さなど、葛藤や怒りのようなものを体験していく。
全てが完全な事実なのかは不明であるし、作品の中で表現していない事象などもあるだろうが、傭兵としての実 -
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ネタバレ・ベラルーシはロシアの軍事作戦に使われることを拒否してきてはいたがルカシェンコの再選が難しくなったタイミングでプーチンの介入により再選した経緯から、憲法の文言が外されるなどして軍事作戦に使われてしまうようになった背景
・ウクライナの国境付近に配備された軍がロシアの東の地域からも派遣されてきていたり、準備された武器の種類の多さであったり、野外病院が多く設置されていること等からロシアによる進行は政権陥落まで狙ったものになるというアメリカの事前の見立てはかなり正確であった
・ウクライナでゼレンスキーのライバルだった親ロシア派政治家に対しゼレンスキーからの制裁?締め付けが厳しくなったタイミング、妙にロ