小泉悠のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
.
2022年に、ロシアによるウクライナ侵攻が、勃発しました。
また、中国が台湾を武力により統合する可能性も、取り沙汰されています。
近隣諸国による不穏な動きを見聞きして、「日本は今後、どうなってしまうのだろう?」と、不安に感じています。
日本の防衛力強化についても情報を得たいと思っていたところ、この本の存在を知りました。
近未来の(日本に影響がありそうな)戦争勃発の可能性が論じられてそうな題名が気になり、読むことにしました。
本書は、安全保障関連の専門家2人による対談を、全5章にまとめた構成となっています。
第1章は、2020年代の戦争とは、どういうものなのか?について。
そもそも、戦争とはどういうものなのか?という説明から始まっているので、自分には理解しやすく感じました。
そして、現在の戦争は対象分野が広くなっていること、いつから戦争が始まったかわかり辛くなっているということも、報道を見聞きして感じていたことと符合するなと思いました。
第2章は、軍事力とは何か?について。
なぜ、軍事大国であるアメリカやソ連・ロシアが、軍事力で劣る国に苦戦してきたのか。
装備の多さ、新しさだけでは戦争の勝ち負けは決まらないのだと、理解しました。
実践経験が乏しい日本の自衛隊が、いざとなった時にどれだけ対応できるのか? 不安に感じました。
第3章は、現代の戦争が過去からどう、変わってきているのかについて。
戦闘が行われている/これから行われる現場の状況が、かなり速いスピードで共有されていることに驚きました。
2025年に自衛隊に統合司令部が創設されたことも、世界の流れについていくための施策なのだと、理解しました。
第4章は、日本周辺で近未来に起こる可能性がある戦争とは、どういうものかについて。
第5章は、では日本は何をすべきか、について。
最初に台湾有事が挙げられていることが、印象に残りました。
日本の防衛力が中国より格段に劣っていること、このため中国を抑止できる要点を見つけて、その点に特化する必要があること。
これらのことを国全体の共通認識として、防衛力強化を進めていくべきだと感じました。
また、北朝鮮、ロシアも関与した複数の有事が同時期に起こることも、夢物語ではないのだと、認識しました。
全体を通じて、話がやや専門的な部分はありますが、自分のような素人にもわかるように配慮されて対話・書籍化されていると感じました。
個人的には、なぜ戦争が起こるのか、軍事力とは何かといった基本的な部分がしっかり書かれているので、今後、この問題を考えるにあたっての基礎知識を得ることができました。
本書を読んで、安全保障というのはただ、武器をどれだけ持っているか?ということではなく、幅広い分野に支えられていることも認識しました。
日本を取り巻く状況も刻々と変わっているので、継続して関連書籍を読んで、知識をブラッシュアップしていきたいと思います。
. -
Posted by ブクログ
ネタバレ情報分析力
情報の洪水に揉まれる日々、何を信じてどう行動すればいいのか迷うことが多い。
小泉悠氏のこの本は、そんな混沌の中で冷静に「情報を料理する」技術を教えてくれる。彼の専門はロシアの軍事情報だが、その泥臭い分析のプロセスは日常のビジネスや子育ての判断にも通じる。情報はただの材料であり、自分で調理して自分の知恵に仕立てることが肝心だと実感させられる。著者の文章は硬質で理知的、時に哲学的だが、だからこそ感情に流されやすい現代人にとっては貴重な指針となる。ただ、専門的すぎて読み物としての親しみやすさはやや薄く、自分の生活にどう落とし込むかに工夫が必要かもしれない。しかし、その分だけ情報と向き合う覚悟を秘めた真摯な一冊。情報に踊らされず、家族と仕事を守るための武器として重宝できるはずだ。 -
Posted by ブクログ
現在戦争を継続するロシアとイスラエル、二つの国家のインテリジェンスに関する対談を収録した本。イヴァン四世のオプリチニキ、ロマノフ王朝の皇帝官房第三部などにしても、ロシアの機関は、諜報機関というよりは内部を抑圧、弾圧する傾向があると指摘される。また、戦時下の日本で、参謀本部ロシア課長林三郎は、ソ連の侵攻を予測していたことやロシアの対外政策や盗聴技術など面白いネタが盛り上がる。後半ではイスラエルについて語り合い、他人を信用しない、自分たちの力しかあてにしない、先制攻撃を躊躇しないなど、イスラエルという国家の思想がわかる。イスラエルは中東において最大の戦力を有するサウジアラビア、実戦経験豊富のエジプト、そして核開発のイラン、これらの国々を念頭に戦略を立てている。最後に日本にも言及し、内閣情報調査室は情報を集める目と耳で、NSSは政策をつくる頭脳とわかりやすく例えたり、情報を武器するという視点が欠けているなど、日本の諜報機関の利点、改善点などさまざまな情報を読者に伝える。
-
Posted by ブクログ
著者は特段触れていなかったが、これはインテリジェンスの意味でのOSINT(正確にはIMINTとのハイブリッド)の民主化が進んでいることを示す一冊だと捉えた。
ロシア軍(ソ連時代含む)関係の過去の公開文書に基づき過去の核戦略や潜水艦部隊の変遷を整理し、直近の核要塞については民間の衛星の画像情報に基づいて分析している。
分析に際しては筆者のオタク的な意欲と知識に基づいており、背景をよく理解した専門化による高いモチベーションによる分析であることもインテリジェンスとしての価値を高めている。
インテリジェンスは国家の専権事項のようなイメージがあるが、筆者の活動はインテリジェンスの一種の民主化を推進していると感じた。
また、冷戦時代のソ連のSSBNによる核戦略などはボンヤリと知っている人も多いと思うが、現在のロシア海軍がどういう規模や過去の戦略の変遷に基づいて配備しているのか把握している人は少数だと思うが、本書を読めば、おわりにのサブタイトルである「縮小版過去を生きるロシア」という意味もよく分かる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ3つの学び
・情報をただ集めるだけではダメで、情報処理装置が必要。
・自分の脳みそを過大評価しない。
・人間が一番厄介なフィルターである。
情報が溢れる現代において、単に情報を集めるだけでは意味がなく、それを分析し、意味づけるための『情報処理装置』が必要。
食材(情報)を調理(分析)して、食べられる料理(知見)にすることが必要だ、という例えはすごく腑に落ちた。
情報が容易に手に入るからこそ、ただの「インフォメーション」を「インテリジェンス」に変えることが必須だ。
特に、情報発信を生業にしている身としては、自分のアウトプットが「インフォメーション」なのか「インテリジェンスなのか」は強く意識する必要があると感じた。
SNSなどは「インフォメーション」としてのアウトプットにも価値はあるし、発信者として「インテリジェンス」のかたちでのアウトプットが必要なのも間違いない。
ここのバランスを取ることが、これから先もインフルエンサーとして生きていくなら必要なのだと思った。
自分の脳みそを過大評価しない、という教訓も刺さった。
私の場合は特に「原稿を書く」という作業が一番詰まるところなんだけど、うんうん唸って搾り出すとか、アイデアが出るまで待つという行為は、確かに自分への過大評価だ。
自分から良いものが生み出されるという過信をせず、ただ単にインプット不足を認めてインプットを増やそう。
自分の脳みそはただの部品で、ここからすべてが生み出されるわけではない。
もしどうしてもアウトプットが出ない場合は、環境を変えたり、運動や睡眠を取ることでハードウェアをメンテナンスしようと思った。
また、最後、インプットにしろ、アウトプットにしろ、相手が人間であるという一番の課題へのアプローチが「文学を読む」なのにも痺れた。
人間の考えは曖昧で合理的ではない。「ダブルスタンダード」を責めたり、「論破」することにはあまり意味がなく、曖昧で合理的であること、すなわち人間には人間性があることを理解するほうが、良い結果につながりそうだ。
対人のコミュニケーションにおいては、合理性よりも人間性が必須。
そのために、文学作品は人間性を疑似体験する手段となる。
文学作品を読むことで、さまざまな人間の行動や思考を疑似体験できる。
優れた文学作品は小説家たちが見抜いた人間性のスケッチであり、人間性の勉強には文学が有効である。
というわけで、分析力をブチ上げるために、文学を読もうと思った。 -
Posted by ブクログ
変なタイトル!
戦争おたく?戦闘機おたく?戦車おたく?兵器おたく?映画おたく?アニメおたく?である
ロシアの軍事・安全保障の専門家、小泉悠氏を中心に、戦争について?語る語る。
?ばかりで恐縮だが、
題材の多くは映画やらアニメやら。
ゴジラマイナス1とシンゴジラの違い??
エヴァンゲリオンも時代時代それぞれの映画の描き方、特にアスカ!
ナウシカや風立ちぬを中心に宮崎駿。紅の豚も出たかな。
・・・私も触れている世界であるだけに、状況はある程度理解できるが、
戦闘機の車輪の出方なんてところに目が行くなんて、、、
極めるってのはすごいことだ。
わからんところは斜め読み、知ってる世界は思い出しながら。
楽しみました
はじめに 小泉悠
第一章
アニメの戦争と兵器
小泉悠(東京大学准教授)
高橋杉雄(防衛研究所防衛政策研究室長)
太田啓之(朝日新聞記者)
『宇宙戦艦ヤマト』の多層式空母と空母「赤城」/ザクしか出すつもりがなかった『ガンダム』のリアリティ/冷戦期のソ連の設計局は仲が悪いだけ/『パトレイバー2』のGCIとの通信シーンのリアル/トルメキアのバカガラスはMe-321ギガント/「イングラム」ナンバープレートとペイントの日常との地続き感/軍が民間人を守る話の魅力/「バカメと言ってやれ!」はバストーニュの「Nuts!」がモデル/『新世紀エヴァンゲリオン』のソ連の存在感/『エヴァ』と終末論/『この世界の片隅に』の片渕須直と宮崎駿/『王立宇宙軍』を子どもに観せたら奥さんに怒られた
第二章
ゴジラvs.自衛隊
小泉悠 高橋杉雄 太田啓之
零戦の脚だけで大興奮/16インチ砲ならゴジラに勝てるのか!?/ゴジラを生き物としてリアルに描くと怖くなくなっていく/ゴジラは水圧で死ぬようなタマじゃない/ゴジラ対戦艦「大和」/震電の脱出装置にオタクはみんな気づいていた!?/「高雄」型重巡4隻で巡洋艦戦隊を組んでゴジラに勝つ/ファンタジーに向かう段取りが「リアル」を生む/無人在来線爆弾とソ連原潜の戦略的共通点/アメリカはどんな悪役にしてもOK?/ゴジラは榴弾砲でアウトレンジして倒すべし
第三章
日独『エヴァンゲリオン』オタク対決
小泉悠 マライ・メントライン(職業はドイツ人)
『エヴァ』は両親に見られたらマズい!?/ロシア人は「早くエヴァに乗れや!」と銃を突きつける/「脳内ドイツ」を生ドイツ人に肯定してもらう/じつはドイツ語をしゃべれなかったアスカ/ゼンガーの宇宙爆撃機のガンギマっている感じ/ソ連萌えと人類補完計画/『新劇場版』でアスカがドイツ語をしゃべってくれない!?/ショルツ首相の黒い眼帯は中二病/アスカのドイツ語はかなり変
第四章
宮崎駿のメカ偏愛
小泉悠 高橋杉雄 太田啓之 ゲスト 大森記詩(彫刻家)
宮崎駿は黄海海戦を映像化したかった/「ガンシップ」の燃料は水!?/「車輪が付いた飛行機出さねぇぞ」みたいな謎のこだわり/機体は汚れているほうがかっこいい/「鳥」は宮崎駿の飛行機の原点/宮崎作品とタバコとロシア人の倫理観/80年前のナチスドイツの超技術/アメリカ人には「連続モノアニメ」という概念がなかった/「トゥールハンマー」「グランドキャノン」「ソーラ・レイ」……巨砲兵器の戦場/宇宙ではチョークポイントがないと戦争が発生しない
第五章
『エヴァンゲリオン』の戦争論
小泉悠 高橋杉雄 太田啓之 マライ・メントライン ゲスト 神島大輔(マライの夫)
宮崎駿の『雑想ノート』でデートの約束/『エヴァ』が嫌いで大好き/日本の国歌『残酷な天使のテーゼ』/パパと一緒に「松」型駆逐艦を作ろう/小泉さんはアスカがお好き/『エヴァ』の兵器の使い方は特撮/『ゴジラ−1.0』と『シン・ゴジラ』のフェチの差/アスカがリアルヨーロッパ人だったら?/ドイツ人は効率重視で人類補完計画に賛同する!?
第六章
佐藤大輔とドローンの戦争
小泉悠 高橋杉雄
佐藤大輔『遙かなる星』は完結している!?/“冷戦”に持っていた憧憬/佐藤大輔とアメリカとバブル日本/『クレヨンしんちゃん』の自衛隊考証がすごい/二足歩行ロボットは格闘戦で使うべし/『ガンダム』世界の階級はテキトー!?/今のXのトレンドが、まるで90年代アニメみたい/自衛隊が反乱する可能性/ ChatGPT の哲学的ゾンビ問題/プーチンの補佐官が書いた小説で見えた未来
おわりに 小泉悠 -
Posted by ブクログ
ウクライナ侵攻について、なぜこんなに長期化しているのか?よくわからない。
トランプは、「自分が大統領なら、戦争を24時間で終わらせることができる」と大ボラをふいた。そして、「俺はプーチンと友達なんや」と言って、プーチンに迎合した解決方法を提案した。そのことで、一度はゼレンスキーとケンカ別れをした。ローマ教皇が死ぬことで、バチカンでやっと膝を突き合わせてゼレンスキーと膝を突き合わせて協議した。「30日間の無条件の停戦」をゼレンスキーが受け入れたが、プーチンは権限を持たない部下を送って、知らぬ顔。やっと、トランプも、なんかがおかしいと思っているようだ。2時間ほどプーチンと電話した。さて、どうなるのか。まぁ。トランプは見込み違いで、見当違いな関税政策を乱発して、朝三暮四のトランプ。それでも、ウクライナにおいて「もう血を流すのはやめよう」と言っているのは評価したい。
著者は、ロシアの研究者で、「戦争は、無くなる。国家とテロ組織の非対称戦争であり、総力戦はもう起こらないと考えた。巨大な軍隊同士が激しい会戦を行ったり、国民を総動員するような大戦争は歴史の教科書の中だけの出来事になる」と思っていたが、プーチンはウクライナに戦争を仕掛けた。
それで、ウクライナ侵攻し続けるプーチンの頭の中がどうなっているのかを知りたかった。
この本で、一番の収穫は、プーチンの「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」2021年7月12日のプーチンの論文が、プーチンの思想があらわだった。大統領がこんなことを平気で言うとは。民族の概念がやはり自分勝手である。
「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」2021年7月12日の論文は 「ロシア、ウクライナ、ベラルーシが民族的・言語的に多くの共通性を持ち、多くの歴史を共有してきたことは客観的事実として否定はできないだろう」と言う。ウクライナやベラルーシ の少なからぬ人々はロシア語を母語とし、ウクライナ語やベラルーシ語はまるでわからないというケースさえめずらしくない。ゼレンシキー大統領自身も その一人であり、大統領に就任するまではほとんどウクライナ語が喋れなかったほどだ。 ということは、彼はウクライナ語が喋れなくてもウクライナでコメディアン・ドラマ俳優 として成功できたのであり、この一事のみをとっても、ロシアとウクライナを全く別のものとして扱うのが難しい。
いわく、「ウクライナ」という言葉は12世紀にルーシの「辺境」を指して使われるよう になったものであり、「ウクライナ人」とは「その辺境を守る防人」を意味する言葉である。結局、プーチンの頭は、ウクライナはロシアのものなのだ。
だから、NATOに入ることは許されないし、ウクライナがロシアを攻撃することさえも許されないと思っている。
本来、ウクライナ侵攻作戦において、数日でキーウを占領し、傀儡政権を打ち立てるか、ゼレンスキーが国外に逃亡するというシナリオがあったにも関わらず、ゼレンスキーはキーウに居残り、戦いを続けたことがプーチンの誤算だった。ゼレンスキーをコメディアンということであなどり、油断したことが、戦争の長期化となった。
プーチンによれば、ウクライナには外国の軍事顧問団が派遣され、事実上、NA TOの前哨拠点となっている。そして、ロシアはこうした状況(プーチンは「兄弟殺し」と呼 ぶ)を解決すべく、ウクライナに第二次ミンスク合意を履行させ、親露派武装勢力との合意によって平和と領土の統一を回復するチャンスを与えようとしたが、ウクライナと西側はその全てを裏切った。ゼレンスキーもまた、平和を約束して大統領に就任したが、全ては嘘だった。ウクライナをロシアと対立させ続けることが西側の基本路線なのであって、 政権が変わったとしてもウクライナが西側の影響下にある限りはそれだけは変わらないのだという。
西側とウクライナを激しく非難した上でのプーチンの結論は、「ウクライナの真の主権は、ロシアとのパートナーシップによってのみ可能となる」というものだった。すなわち、「我々の精神的、人間的、文明的繋がりは何世紀にもわたって形成され、 共通の源に遡り、体験、成果、勝利を分かち合ってきた」のであって、「つまるところ 我々は一つの民族なのだ」とプーチンは言う。
プーチン「ロシアが反ウクライナであったことは一度もないし、これからもそうならない。ウクライナがどうするかは、その国民が決めるべきことだ」と言っている。
プーチンの世界観は「背後で操るものがいなければ、大衆は立ち上がらない。大衆は国家の道具や手段であり、物を動かすテコである」大衆が自分の考えで政治意見を持ったり、ましてや街頭での抗議運動にくり出してくることなどあり得ず。そのような事態が起きた時には必ず首謀者と金で動く組織が背後に存在する。それが、NATO、西側だと思っている。
ウクライナ侵攻によって、ウクライナ兵の死者は43000人(2024年12月段階)、ロシア兵の死者は19万8000人と言われている。戦争とは、生命の破壊行為に他ならない。
1985年 レーガン=ゴルバチョフによる共同声明「核戦争には、勝者はなく、戦われてはならない」という精神を生かしつつ、早急に戦争終結を願いたい。これ以上の流血と死はいらない。