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Posted by ブクログ
ロシアが専門の軍事研究者が、ウクライナ戦争開戦の年(2022年)9月までの情勢について書いた新書です。
国際政治にも軍事にも疎いわたしですが、なんとか読み切ることができました。
ゼレンシキー大統領自身も大統領に就任するまではほとんどウクライナ語が喋れなかった(p.67)というのは初めて知りました。
「ロシア、ウクライナ、ベラルーシが民族的・言語的に多くの共通性を持ち、多くの歴史を共有してきたことは客観的事実として否定はできないだろう。」(同上)
このことは、この戦争の背景、プーチンの思考回路を推測する上で示唆的でした。
ウクライナは無垢でも無謬でもないけれど、今回の戦争はロシアによるウクライナへの侵略戦争であり、ロシアは国際的な規範に違反している。また、ロシア軍の戦争犯罪(虐殺、拷問、性的暴行)は悪である。筆者はこう断じています(p.140)。
(ちなみに、2022年3月7日の東京大学大学院法学政治学研究科・法学部における藤原帰一教授の最終講義をオンラインで伺ったのですが、国際政治がご専門の藤原先生も「これは明確な侵略戦争である」「ロシアの言い分にも耳を傾けるべきだという立場には私は賛成することはできません」と語っておられました。)
冷戦や9.11以降の対テロ戦争を経て、わたしはこの世に絶対的正義や絶対悪はないのではないかと考えるようになっていました。ですが、ウクライナ戦争を機に、確かに悪は存在するし、それに対処しないといけないのだと弁えるようになりました。
日本の行く末を考えるには、「おわりに」がよくまとまっています。
第一に、我が国の抑止力をめぐる議論においては、ウクライナ戦争全体の趨勢により大きな影響を及ぼしたのが、非軍事的闘争手段ではなく、暴力闘争の場であったことを踏まえなくてはなりません。
第二に、核抑止は依然として大国の行動を強く縛っている、ということを今回の戦争は明確に示しました。仮に台湾有事が発生した場合、日本は中国の核恫喝を受けることになっても台湾を軍事援助すべきか、前もって国民的な議論が必要です。
第三に、この戦争の第一義的な責任はロシアにあることを踏まえ、大国の侵略が成功したという事例を残さないように日本としても努力すべきではないか、と筆者は問題提起しています。
もうすぐ8月になりますが、毎年8月になると、戦争を繰り返さないためにと言って戦争の悲惨さを強調するテレビ番組が放映されるなどします。今年は戦後80年目の節目なので、一層増えると予想されます。
ですが、真の平和を希求するなら、戦争の悲惨さを学ぶだけでなく、次の戦争が起こった時に日本がどういう立場を取るべきか、現実的な議論が必要な時代になったのではないでしょうか。
わたしも次は安全保障論の本を読んでみたいです。
Posted by ブクログ
HIMARSの果たした戦術的役割については知らなかった。この本が書き上がった当時はまだワグネルの代表が謀殺されていなかったことを思い返し、時の流れの速さを感じる。著者が繰り返し「この戦争の第一義的責任はまずロシアにある」と、ロシアウクライナどっちもどっち論の欺瞞を繰り返し払い除けてくれているのも好印象であった。軍事理論面では、アンドレイ・ココーシン『軍事戦略の政治・社会学』(2005)における「全体戦争」の条件定義を紹介した上で、今回の第二次ロシアウクライナ戦争は「限定全体戦争」と呼びうる、という紹介があり興味深い。(小泉2022: 215-216)
Posted by ブクログ
2021年初頭から、開戦半年ほどの2022年9月頃までの、戦争に至る過程と開戦後の経過、各戦線における戦果の意味が取り上げられている。
現在も経過が目まぐるしく動き続けているために最新の情報との開きはあるものの、ロシアがどのように準備をして開戦に至ったのか、なぜウクライナがここまで持ちこたえられているのかが非常にわかりやすく解説されていた。
情報メディアを活用した現代的な戦争形態や、核の抑止力による東西の躊躇など、ワードとしては知っているものの、具体的に何が起こっているのかよくわかっていなかった部分が語られていて、満足度が高い。
著者の言うようにプーチンの民族主義的野望が戦争を惹き起している場合、今次戦争の落とし所というのは存在するのだろうかという悲観的感想を持ってしまった。
Posted by ブクログ
ウクライナ侵攻について、なぜこんなに長期化しているのか?よくわからない。
トランプは、「自分が大統領なら、戦争を24時間で終わらせることができる」と大ボラをふいた。そして、「俺はプーチンと友達なんや」と言って、プーチンに迎合した解決方法を提案した。そのことで、一度はゼレンスキーとケンカ別れをした。ローマ教皇が死ぬことで、バチカンでやっと膝を突き合わせてゼレンスキーと膝を突き合わせて協議した。「30日間の無条件の停戦」をゼレンスキーが受け入れたが、プーチンは権限を持たない部下を送って、知らぬ顔。やっと、トランプも、なんかがおかしいと思っているようだ。2時間ほどプーチンと電話した。さて、どうなるのか。まぁ。トランプは見込み違いで、見当違いな関税政策を乱発して、朝三暮四のトランプ。それでも、ウクライナにおいて「もう血を流すのはやめよう」と言っているのは評価したい。
著者は、ロシアの研究者で、「戦争は、無くなる。国家とテロ組織の非対称戦争であり、総力戦はもう起こらないと考えた。巨大な軍隊同士が激しい会戦を行ったり、国民を総動員するような大戦争は歴史の教科書の中だけの出来事になる」と思っていたが、プーチンはウクライナに戦争を仕掛けた。
それで、ウクライナ侵攻し続けるプーチンの頭の中がどうなっているのかを知りたかった。
この本で、一番の収穫は、プーチンの「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」2021年7月12日のプーチンの論文が、プーチンの思想があらわだった。大統領がこんなことを平気で言うとは。民族の概念がやはり自分勝手である。
「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」2021年7月12日の論文は 「ロシア、ウクライナ、ベラルーシが民族的・言語的に多くの共通性を持ち、多くの歴史を共有してきたことは客観的事実として否定はできないだろう」と言う。ウクライナやベラルーシ の少なからぬ人々はロシア語を母語とし、ウクライナ語やベラルーシ語はまるでわからないというケースさえめずらしくない。ゼレンシキー大統領自身も その一人であり、大統領に就任するまではほとんどウクライナ語が喋れなかったほどだ。 ということは、彼はウクライナ語が喋れなくてもウクライナでコメディアン・ドラマ俳優 として成功できたのであり、この一事のみをとっても、ロシアとウクライナを全く別のものとして扱うのが難しい。
いわく、「ウクライナ」という言葉は12世紀にルーシの「辺境」を指して使われるよう になったものであり、「ウクライナ人」とは「その辺境を守る防人」を意味する言葉である。結局、プーチンの頭は、ウクライナはロシアのものなのだ。
だから、NATOに入ることは許されないし、ウクライナがロシアを攻撃することさえも許されないと思っている。
本来、ウクライナ侵攻作戦において、数日でキーウを占領し、傀儡政権を打ち立てるか、ゼレンスキーが国外に逃亡するというシナリオがあったにも関わらず、ゼレンスキーはキーウに居残り、戦いを続けたことがプーチンの誤算だった。ゼレンスキーをコメディアンということであなどり、油断したことが、戦争の長期化となった。
プーチンによれば、ウクライナには外国の軍事顧問団が派遣され、事実上、NA TOの前哨拠点となっている。そして、ロシアはこうした状況(プーチンは「兄弟殺し」と呼 ぶ)を解決すべく、ウクライナに第二次ミンスク合意を履行させ、親露派武装勢力との合意によって平和と領土の統一を回復するチャンスを与えようとしたが、ウクライナと西側はその全てを裏切った。ゼレンスキーもまた、平和を約束して大統領に就任したが、全ては嘘だった。ウクライナをロシアと対立させ続けることが西側の基本路線なのであって、 政権が変わったとしてもウクライナが西側の影響下にある限りはそれだけは変わらないのだという。
西側とウクライナを激しく非難した上でのプーチンの結論は、「ウクライナの真の主権は、ロシアとのパートナーシップによってのみ可能となる」というものだった。すなわち、「我々の精神的、人間的、文明的繋がりは何世紀にもわたって形成され、 共通の源に遡り、体験、成果、勝利を分かち合ってきた」のであって、「つまるところ 我々は一つの民族なのだ」とプーチンは言う。
プーチン「ロシアが反ウクライナであったことは一度もないし、これからもそうならない。ウクライナがどうするかは、その国民が決めるべきことだ」と言っている。
プーチンの世界観は「背後で操るものがいなければ、大衆は立ち上がらない。大衆は国家の道具や手段であり、物を動かすテコである」大衆が自分の考えで政治意見を持ったり、ましてや街頭での抗議運動にくり出してくることなどあり得ず。そのような事態が起きた時には必ず首謀者と金で動く組織が背後に存在する。それが、NATO、西側だと思っている。
ウクライナ侵攻によって、ウクライナ兵の死者は43000人(2024年12月段階)、ロシア兵の死者は19万8000人と言われている。戦争とは、生命の破壊行為に他ならない。
1985年 レーガン=ゴルバチョフによる共同声明「核戦争には、勝者はなく、戦われてはならない」という精神を生かしつつ、早急に戦争終結を願いたい。これ以上の流血と死はいらない。
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