【感想・ネタバレ】現代ロシアの軍事戦略のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年12月19日

現代ロシアの軍事戦略
著:小泉 悠
紙版
ちくま新書 1572

20世紀後半の古典的な国家間戦争はもはや存在しない
ロシアによる現代戦とは、ハイブリッドな全面戦争を意味する

戦略縦深とは、奇襲を受けた時に時間的余裕をもてる緩衝地帯のことをいう
ソ連時代にあった東ドイツからソ連本土の距離は800K...続きを読むmがウクライナが西側になった場合はわずか450Kmになる
これは東京・京都間、大陸弾道弾であれば、数分で核ミサイルが到達する距離だ

ハイブリット戦とはもともとアメリカ軍が生み出した概念だ
ソビエト崩壊も、一種のハイブリット戦とも認識されている

西側は軍事的手段だけでなく、政治・経済・情報などあらゆる手段を用いている

ロシアのハイブリット戦争は中東でも展開されている、それは2016~2018のシリアだ
PCM戦精密誘導兵器の使用、アメリカが湾岸戦争でつかった手法だ
ロシアも2008年のグルジア戦で使用している
ツペツナズが特別なのは任務の内容であって部隊を構成しているのは普通の兵士だ
ロシアの民兵ワグネルは、作曲家ワーグナーのロシア語よみ、ワグネルのリーダ、ウトキン氏はネオナチの信奉者だ

ドローンに対抗するには、電波妨害システム、ドローンはラジコンだからコントロール電波が遮断されると墜落するか基地に戻るしかない

ロシアの戦闘の定義
 ①武力紛争 国内武力紛争
 ②局地戦争
 ③地域戦争
 ④大規模戦争 第二次世界大戦以来発生していない

ロシア軍の演習
 ①作戦準備 軍の作戦機関、戦略、作戦レベル、連合部隊の錬成
 ②戦闘準備 戦闘環境下で訓練活動、戦場での活動に重点を置いた訓練

ロシア軍の大演習プログラムは局地戦のシナリオ
 カフカス2009 動員兵力8500名、戦車200両、装甲先頭車両450、火砲250門
 オーセニ2008 ベラルーシとの合同演習
 ザーハド2009 防空戦 ネットワーク接続
 ラトガ2009 NATO軍との大規模戦争
 ヴォストーク2014 北方領土をめぐって日本との軍事衝突、米軍が介入
 ザーハド2017 北方連邦 防空戦、海上戦、対潜水艦、巡航ミサイル、ドローン、航空機攻撃、NATO軍との北方地域での戦闘

接近阻止・領域拒否(A2/AD)
 米軍をできるだけ、本土と遠いエリアで迎え撃つ戦略、中国軍も同様な戦略をもつ

エスカレーション抑止 限定核使用による同盟軍の参戦を防ぐ、失敗した場合の核戦争を合わせてシナリオをもっている⇒最悪のシナリオ
通常戦争におけるエスカレーション抑止もあり、超音速機の攻撃を想定

結論
ロシアの軍事戦略は古典的な全面的な戦争をコアとして、非軍事的な手段を合わせて用いる、ハイブリット戦である

目次
はじめに―不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
第2章 現代ロシアの軍事思想―「ハイブリッド戦争」論を再検討する
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
第4章 ロシアが備える未来の戦争
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
おわりに―2020年代を見通す
あとがき―オタクと研究者の間で
参考文献

ISBN:9784480073952
。出版社:筑摩書房
。判型:新書
。ページ数:320ページ
。定価:940円(本体)
。発売日:2021年05月10日第1刷発行
。発売日:2022年03月25日第4刷発行

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Posted by ブクログ 2022年08月21日

ロシアは地政学的にNATOに対して脅威を感じており、正面戦争である場合では劣勢でもある。この情勢に対して、ロシアは非対称かつハイブリッドに軍事的な戦略を立てている。
またロシアは永続的に非線形な戦争継続を考えており、クリミア半島の一方的な併合以来、ある意味戦争は続いているとも考えられる。ヨーロッパ諸...続きを読む国との対峙において、敵の接近を拒否するために、地理的な不利を抱えているため情報戦的なイメージによる撹乱や妨害を企てる。場合により、核の限定使用もちらつかせるし、使用する可能性もある。
本書ではこういった客観的事実を分かりやすく解説している。
こういった事実は2022年2月以来のウクライナ対ロシアの戦争でも現実となったことでもあり、起きた事実の背景に対する理解を助けてくれる。この内容が当戦争の約一年前に初版が出されており、その断面のロシアに対する筆者の予見的な分析力が興味深い。筆者の小泉氏は最近ではテレビでもよく解説で出演することが多いが、こういった素晴らしい人物がいたことも正直知らなかった。

この書籍で日本が忘れてはいけないことは、
ロシアにとって日本はあくまで西側諸国の存在であり、永続的な戦争の対象でもあることだ。
本書でも解説があるとおり、ロシアはハイブリッド戦や非対称戦のイメージだけでなく、国家間紛争も意識した演習を近年行ってきており、まさにウクライナとも国家間の紛争を開始した。
この事実は重く受け止めなければならないし、ロシアとの関係の裏には戦争があることを日本国民はあらためて理解しなければならない。

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Posted by ブクログ 2022年05月17日

ロシア軍事の専門家、ユーリーイズムイコこと小泉悠先生のロシア軍事戦略本であり、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の直前に書かれた(2014年のロシアによるクリミア半島強奪よりは後)もの。
ソ連崩壊後、東欧共産圏があるいは民主化し、あるいはカラー革命を起こしてきたが、ロシアから見ると、これらは...続きを読む全て西側による謀略であり、正規軍を用いたクラウゼビッツ的戦争ではないが、しかし、情報戦世論戦などを取り入れたハイブリッド戦争を仕掛けられているように見える、と。
この時期のロシアは勢力圏の縮小、経済的社会的混乱から国力を落としてきたが、それでも仕掛けられた戦争に勝利して生き残るためにハイブリッド戦争の手法を鏡面措置として採るのだ、と。
こうして俯瞰すると、クリミアやドネツクへの侵攻は、現地の親露派の分離運動から始まりそれでは勝てないとなると特殊部隊投入から正規軍投入と、徐々にエスカレートしていくのも、まさにハイブリッド戦の要領である。
この辺りのロシア的発想ロシア的行動を読み解くには本書は大いにおすすめである。
本書では時期的に触れていないが、しかし、ロシアによるウクライナ侵攻はあまりに手際が悪いのは何故だろうか。続編を待ちたい。

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Posted by ブクログ 2022年05月03日

ロシアの軍事戦略がわかった。現在のウクライナ戦争でもこの考えに基づいて行動しているように思う。本に書いている通り、最終的に核使用に至らないことを祈る。

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Posted by ブクログ 2022年04月15日

著者のロシア製兵器へのオタク愛により、ありがちな兵器スペックと配備数のみでの軍事力比較が足元にも及ばない、意図と運用を踏まえた圧倒的な分析力、また東側からの視点による軍事戦略の解説により、西側から見ると理解不能なロシアの動きがドクトリンによるものであることなど、マスコミの解説がいかに表面的かも強烈に...続きを読む感じさせる内容。
この分析の延長線上には、【執筆時には起きていない】ウクライナ紛争も有り得ると確信させる分析。
情報資料の量的な面では及ばないが、小泉氏のロシア軍事戦略に対する分析力は、防衛省をも上回っているのではないかと。

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Posted by ブクログ 2022年03月25日

課って積んだまま読んだつもりでいたことに気づいて読み始めたのがウクライナ侵略開始後。ウクライナがなくなるのが咲か、読み終わるのが咲かと思っていたが、ウクライナが予想以上に善戦し、まだ健在である。(NATOからの情報・物資両面の援助があるとはいえ)

さて、本書であるがクリミア電撃占領二代表されるハイ...続きを読むブリッド戦略その他のロシアの軍事戦略についての「先行研究」である。問題は、あれだけ大規模な演習を繰り返していたのに、なぜ、勧進能くらいな本格侵略ではウマ空位化なかったのかについてだが(そもそも、侵略側の将官が次々と敵弾に倒れていくとか21世紀とは思えない)、是非とも紺地戦争の「戦後」に、続編を小泉先生にはお願いしたい。

何が違ったのかと。

ウクライナの泥濘にはまったロシア軍の明日はどっちだ?(エスカレーション戦略をとる前に諦めてくれるとよいのだが…

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Posted by ブクログ 2023年08月26日

2022年のロシアによるウクライナ侵攻を前に刊行されたものであるが、ソ連崩壊以降の「ロシアにとっての文脈」が説明されているのでわかりやすい。
具体的には、ロシアにとっての危機感と、それに対する対外方針の変遷である。
それが妥当かどうかはともかく、ロシアが考えていることがわかるので有益だと思った。

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Posted by ブクログ 2023年03月27日

2021年5月発行なので、クリミア併合後、ウクライナ侵攻前ということになるが、この本を読む限り、ウクライナ侵攻は必然だったように思う。

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Posted by ブクログ 2023年01月14日

非線形戦争について関心を持った。アルメニアのアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフをめぐってずっと衝突していることも恥ずかしながら知らなかった。

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Posted by ブクログ 2022年10月27日

ウクライナ侵攻を機に、ロシアについて軽く知っておきたいと手に取ったが、軍事的な専門用語が目白押しでかなりハードな内容だった。現在のウクライナ戦争やそこでのロシア軍の予想外の苦戦についての著者の意見が聞いてみたい。

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Posted by ブクログ 2022年10月18日

同胞だった東欧諸国がなし崩しにNATOに取り込まれて、今ではベラルーシを除いてウクライナが最後の砦となり丸裸にされたような帝国主義者プーチンの妄執ぶりも無理からぬものだと思えてくる。大国の夢を捨てきれないながらも、現実的に弱者の戦略を駆使して戦いを放棄しない

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Posted by ブクログ 2022年10月09日

ユーゴスラヴィア、セルビアにはじまり、グルジア(バラ革命)、ウクライナ(オレンジ革命)、キルギス(チューリップ革命)、チェニジア(ジャスミン革命)からアラブの春に至るまでの民主化ドミノを、NATO およびアメリカによる謀略の結果であると捉え(事実、まんざら「陰謀論」でもないところがある)、これを非軍...続きを読む事手段による永続戦争であると定義した上で、ハイブリッド戦争(SNS を通じた人心操作から戦略核兵機使用まで、軍事・非軍事両面による目的遂行または状況作成のための行為)で応戦する現代ロシアの軍事戦略を描く。

2022年2月末に始まったウクライナ戦争を予言するかのように、2021年5月に刊行された現代ロシア軍分析の最前線で、最新の政治思想・軍事思想を網羅して圧巻。ウクライナ戦争を理解する上で、必読の一冊。

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Posted by ブクログ 2022年08月09日

ロシア・ウクライナ戦争勃発の前に書かれた本書。いまはほとんど予言の書のようになっているはずだ。
研究の営みはここまで物事を明らかにできるのかと感嘆した。

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Posted by ブクログ 2022年08月01日

曖昧で追いつけていなかったクリミアから今回のロシア侵攻までの流れを学ぶことができた気がする。
特にハイブリッド戦争と目されるものがどのよな位置付けであったかについても。初期対策をされてない状況では、初見殺しになるのだなと素人ながらに。
今回のロシアのウクライナ侵攻が特に東側で古典的な戦闘になっている...続きを読むと聞いていたことも、この本を通して腑に落ちる気がした。とにかく、使えるものはなんでも使って成果を上げるのが大事、という姿勢なのかなと素人ながらに思った。
一般回線を使わざる得なくなったり、情報戦で撹乱されていたり、今回のロシア軍側で聞いたような話もあり興味深かったです。

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Posted by ブクログ 2022年07月04日

本書の発行はロシアによるウクライナ侵略の前だが、テーマといいタイミングといいドンピシャではある。

著者は「人」とも「夜」とも知られるこの道の第一人者。

書名の通り現代ロシアの軍事戦略を多角的に分析、解説したもので非常に参考になる。

ソ連時代からのしがらみを拗らせつつ、経済的資源に劣るロシアが自...続きを読むらの文脈の中で必死に生き残ろうとしていると読めるが、どういう結末に向かうのだろうか。

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Posted by ブクログ 2022年06月04日

ロシア政府・ロシア軍が自国をどう認識しているか、それによりどういう戦い方をするべきと考えているか、とてもよくわかった。
軍備・兵力的に劣勢の状況で、非軍事手段に注力しつつ、主力をどこにしているか、重要人物の発言から丁寧に読み解いている。

組織や兵器の話は、筆者が相当好きな分野だと思われ、充実してい...続きを読むる。が、私はついていけず振り落とされた。

組織や兵器の説明について図や表が少なく、「これなんだっけ」とか「これとこれの関連はどうだっけ」と思うことが結構あり、理解が難しい。好きな人はすらすら頭に入ってくるのかもしれないが、素人の私には辛い。

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Posted by ブクログ 2022年05月15日

軍事情報の機密性はどの国でも高く、他国が正確な必要十分な量のそれを得ることは難しいだろう。
しかし本書では、ロシアの公的な軍事関連の発表や実際の演習•紛争行動や、それらに関連する米国含めNATOの分析を幅広く集め、さらにそれを分析し考察されている。
ロシアの軍事専門家である著者。ロシアのウクライナ侵...続きを読む攻を契機にメディアに引っ張りだこである。
著者が自身でロシア軍事の「オタク」と評するように、本書はその「オタク」的知識が、テレビとは異なり十分に発揮されているように思われる。あまりの筆のノり具合に、多少の軍事知識を持っていないとその疾走感に振り落とされそうになってしまうので注意が必要です。

ロシアは虚実織り交ぜ冷静に戦略的に行動している程度が他国に比べて強いと思われ、また何を考えているのよくわからないという漠然とした恐ろしさを感じさせる。
本書のような(高度な)分析をしている人間やその分析を理解して戦略を立てている国家、組織が存在している一方で、それすらも承知の上でロシアは軍事戦略を立てているのではないかと思わずにはいられない。

ロシアの軍事戦略に関して、本書を通じて理解はかなり深まる。しかしその理解は不十分であり今後もそうであり続けるだろうという認識を持っておくのが無難そう。

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Posted by ブクログ 2022年04月10日

現代ロシアの防衛戦略、軍事力の解説書。そしてロシア政治の考え方、ロシアの思惑等が良くわかる本。ウクライナ侵攻以前の著作であるが、ウクライナ侵攻に至ってしまう思考も分かる気がした。

どうしてロシアが他国に侵攻するのか理解できないという人は、本書を読んでロシアの価値観、考え方に触れることがお薦めである...続きを読む

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Posted by ブクログ 2022年03月22日

軍事系に、あまり関心のない自分でも、これまでの戦争の変遷や各国の思惑、軍機などの特徴がわかるのだから、非常に分かりやすくまとめられているのだと思う。2014に比べて今回ここまでロシア苦戦している状況も、この本を読んであれこれと考えさせられだ。

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Posted by ブクログ 2022年03月13日

現時点で、ウクライナ危機や第二次ナゴルノ紛争以降に出た、これら最近の国際紛争の分析を含む数少ない新書だ。仕事が早くて驚くばかりである。ロシア・ウクライナ戦争が始まり、タイムリーということで手に取った。
ウクライナ危機の当時、「ハイブリッド戦争」という用語が多く用いられたのを記憶しているが、筆者はこれ...続きを読むを「ハイブリッドな戦争」と呼ぶ。
ロシアでは非軍事手段の研究や実践化が盛んであるが、安全保障(非軍事的脅威に対するものを含む)の根底にあるものはクラウゼヴィッツ的な古典的戦争(軍事手段)であり、非軍事手段はそれを補うものとして位置づけられるということである。ウクライナやシリアの「成功」事例では、端的に言えば「結局最も効果あった・不可欠だった要素は軍事力だった」ということだ。
※個人的には、筆者も述べているが、ウクライナ危機を説明する上でしばしば用いられる呼称「ハイブリッド戦争」の定義が多様であるように思われる。宣戦布告をせず体裁上戦争という形を取らず他国に隠密に浸透していく・・・という特徴をもつ国際紛争について、そのように呼称する場合もあるのかなと思う。
筆者は、ロシアはNATO・中国に対し軍事劣勢であると述べる。特に、西側の非軍事的戦争手段(民主化運動など)に晒されており「永続戦争」状態であるという認識が強まっている。優勢な軍事力に対抗するために、軍事手段と非軍事手段を結び付けたうえ、防空、ミサイル、電子戦、情報戦、対宇宙、戦術核により敵戦力(非軍事含む)を妨害する構想であり、最終的にはエスカレーション抑止で戦闘停止・他国参戦停止を狙うという戦略であるという。

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購入済み

読みやすい貴重な本

2021年06月18日

ロシアに関する本自体が少ないので、読みやすいだけでいい本になってしまいます。
ひとつひとつのかたまりが短くて、内容がかわるので、あきずに読めます。
ロシアに対して良いことを書いてある本はとても少ないので、そう思いながら読むのにはいい本だと思います。

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Posted by ブクログ 2023年01月11日

軍事はあまり触れてこなかった分野なので難しい。ロシアが恐ろしく外交巧者だというのはよくわかった。軍が弱体化してんの、「恐ロシア」のイメージがあっただけに意外だった。

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Posted by ブクログ 2022年12月12日

良い意味でも悪い意味でも無く予想とは違った本だった。
事実をありのまま述べると言うより個人的見解が多いと言うか。
それと新書にしてはかなり難解だった。内容の1/3も理解してないかも。それでも一読の価値はあると思う。

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Posted by ブクログ 2022年11月05日

シリアへのロシア関与などマスコミでほとんど報道されていない情報が時系列に沿ってまとめられている。
表面に出てくるウクライナ以外のことを知るには、専門家の厚みのある情報収集力に頼るのが良いと感じた。

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Posted by ブクログ 2022年10月11日

ハイブリッド戦争と同じような内容だったが、ロシアは最終的に物理的軍事力を捨てない。
「現代国際社会」を良しとせず、被害者スタンスにある限り、ロシアはやるだろう。
で、やっちゃって、思った以上にうまく行っていない現実。この先どうするのか。
小泉先生のリアルの分析は外せない。

後、中村逸郎先生。

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Posted by ブクログ 2022年05月29日

筆者自身も言っているが、「オタク」が書いたロシアの軍事に関する本。内容は、流石オタクと言ったところ。

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Posted by ブクログ 2022年05月18日

メモ
経済、科学技術、軍事でもはや米国と並ぶ超大国ではなくなったロシアが2014のウクライナ、2015のシリアなど攻勢をしかけ、成果を収めたのは何故なのか? そこには古典的な軍事力の指標「ミリタリーバランス」では測りきれない要素が働いているのではないか? それを様々な角度から検証した。出版が2021...続きを読む年5月。そこまでの時点でのロシアの「領土」への考え方が示される。

2014のウクライナ介入では、劣勢にみえたロシアの軍事力が見直された。特殊部隊、民兵の動員、人々の認識を操作する情報戦、電磁波領域やサイバー空間での「戦闘」、これらでクリミアを瞬く間に併合した。

ロシアが暴力の行使=軍事的闘争に訴えずに政治的目標を達成するという思想は1990年代に浮上し、2010年代は西側との「永続戦争」という文脈で大きな地位を占めるようになった。

だが、実際の軍事戦略においては依然として軍事的手段は後退したとはいえない。・・ドンパチである。

<「状況」を作りだすための軍事力>
○2014のクリミアやドンバスにおいて軍事力が作りだした「状況」はウクライナを紛争国家化することだった
○ウクライナを征服して完全に「勢力圏」に組み込むのではなく、同国が西側の一部となってしまわないように(NATOやEUに加盟できないように)しておけばよかった。
○「勝たないように戦う」ことがウクライナにおけるロシア軍の任務だといえる。

ロシアの軍事演習からみると、ロシアの想定している様々な戦争の形態は、最終的には大国との軍事紛争である。イスラム過激派や非合法武装勢力の背後にはそれらを「手先」として操る大国が存在し、最終的には核兵器の使用にもつながりかねない、というのが現在のロシアの戦争観である。

しかし正面戦力ではロシアは劣勢なのである。まずは「損害限定」戦略。これでも劣勢を補えないと「エスカレーション抑止」に訴える。限定的な核攻撃や「警告射撃」で戦闘停止を強要したり、第三者の参戦を思いとどまらせる。

●まとめると、ロシアの軍事戦略はクラウゼヴィッツ的な戦争をそのコアとしつつ、非クラウゼヴィッツ的なそれにも備えた「ハイブリッドな戦争」戦略である。

・クラウゼヴィッツ:プロイセンの軍事学者(1780-1831)「戦争とは他を以ってする政治の延長である」「戦争の本質は単なる『強制力』ではなく、物理的な破戒をもたらす『暴力』である」

・国に直属した軍隊が一番強い。上の命令が下まで届くし、それを守る。民兵や軍事会社はそれぞれ個人の思惑や思想があるので、まとまらない。

・ドローン兵器など新しい兵器が出てきて戦い方は変化するが、さらにそれを阻害する兵器や方法が考え出される。

・・テレビでは分かりやすい解説の小泉氏。兵器や軍事、ちょっと難しかった。

2021.5.10第1刷 2022.3.30第5刷 購入

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Posted by ブクログ 2022年04月30日

ロシアが「弱い」ということが意外だった。サイバー空間含めた非軍事手段を含めたハイブリッドな戦略が意識されつつも、軍事手段の重要性は落ちていないという。現下のウクライナ情勢、それから北朝鮮を見るにつけ、自らが非合理的だと相手に思わせる戦略がもっとも合理的ということが現実に即して理解できる。

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Posted by ブクログ 2022年04月23日

ロシアとは被害妄想な構ってちゃんなのかな。

軍事ドクトリンも年々先鋭化しているようで、エスカレーション抑止のための核使用を正当化している節がある。

瞬く間にクリミアを併合した彼の国にしてみれば、ウクライナ侵攻には正当性があり当然成功裡に完了するシナリオだったのだろう。そのような訓練も周到にしてい...続きを読むたように紹介されている。

今、「孫子」を併読しているがウクライナ侵攻が上手くいかない理由に納得しているところ。

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Posted by ブクログ 2022年04月17日

ロシア-ウクライナ問題につき有益な情報を発信している小泉氏の本を書店で発見、読んでみた。

近年のロシアは情報面からのアプローチの印象が強いが、この本を読むと単に兵力など物理的な力だけで戦うのは予算面などから無理があり、結果として「ハイブリット戦略」にならざるを得ないのだと感じた。

軍事演習から何...続きを読むが見えるかなど普段あまり意識してなかったが、出てくる範囲でも色々と解釈ができるのだということを知ることができ、その点でも大変勉強になった。

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Posted by ブクログ 2022年04月02日

【感想】
2022年2月24日、ロシアがウクライナに宣戦布告し、侵攻を始めた。この報道を目にしたとき、私は本当に驚いてしまった。それは、21世紀の時代に「真正面から堂々と殴る」という戦術がここまで通用すると思っていなかったからだ。

本書はウクライナ戦争に先立つ2021年5月に書かれたものだ。ロシア...続きを読むの地政学的・政治的目標やそれを成就するための構想、またテロリストや大国との戦いに備えた軍事的・非軍事的戦略などを幅広く解説している。プーチン政権下でのイデオロギーはもちろんのこと、ロシアが有している具体的な兵器や、過去十数年に渡って行われてきた大演習からロシアの「戦争観」そのものを読み解こうとする広大な内容であり、かなりマニアックな部分まで踏み込んだ密度の濃い一冊となっている。

本書で頻繁に取り上げられているのが「ハイブリッド戦争」という概念である。簡単に言うと、軍隊による物理的破壊といった古典的な侵略方法ではなく、ネットでのサイバー攻撃、現地住民を抱き込んでの独立運動の扇動、ハッキングとスパムによる通信中枢の掌握といった「非軍事的」な要素を交えながら戦うことである。

もともとハイブリッド戦争はロシアが最初に始めたものではなかった。というよりもむしろ、「ロシア国内が敵からのサイバー攻撃に常に晒され続けている」という認識のもと、それに対するカウンター戦術としてロシアが導入しはじめたものだ。
ロシア政府は、非軍事的手段による戦争(情報戦争)が国内で現実に起きていると考えていた。実際にプーチンは、野党指導者たちを、「アメリカの息がかかった体制転覆者」とみなしている。自国政府を批判するものは何であれ西側から送り込まれた反動勢力に違いなく、アメリカが自国を正当化し世界の覇権を握るためにロシアを内部から崩壊させようとしている……。もちろんそれは被害妄想に近いのだが、この心理がロシアの政治思想の土台を決定している。その結果、政府が国民を徹底的に監視し、不満分子を抑え込み、若者に愛国教育を施しておくという強権政治が国内に浸透し、西側諸国との認識に差が開いていった。たとえ仮想敵が国内の反体制派であっても、その背後には彼らを操る大国が存在する、というのが現在のロシアの「戦争観」である。

その結果としてだが、クリミア、ドンバスで起きた紛争は、まさに軍事的手段と非軍事的手段を駆使して体制の混乱を生み出す「ハイブリッド戦争」の様相を呈していた。指揮通信統制への妨害などにより行政機関やインフラが占拠され、ある地域のコントロールが謎の勢力に奪われる。いつの間にかそこで「独立のための住民投票」が始まり、ロシアへの併合が決まっていく。これを軍事力で奪回しようにも、前線ではロシア軍の強力な電磁波作戦能力で軍事作戦が麻痺・混乱させられ、後方地域はドローン攻撃やサイバー攻撃に晒されていく。まさに身動きが取れない状態である。

戦争の法則そのものが、よりスマートに変化している、と言えるのかもしれない。政治的・戦略的な目標を達成するために非軍事的手段が果たす役割が増大し、これが住民の抗議ポテンシャルと相互作用することで、敵国内部からの独立・反乱という形で紛争が具現化するようになった。
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私が本書を手に取ったのは、ロシアが引き起こしたウクライナとの全面戦争の裏にある戦略を知ろうと思ったからだ。しかし、本書を読めば読むほどそれが徐々に分からなくなっていった。
最初に言った通り、この戦争は「真正面から堂々と殴る」という古典的なものだ。ロシアが20年近くをかけて生み出した「情報戦」で人心を掌握する、またウクライナの裏にいる大国と相対しながら、圧倒的不利な状況の中でも「損害限定戦略」や「エスカレーション抑止」を駆使して目標を成就する、といった要素が、この戦争には全くない。ウクライナの中立化と南部クリミア・ウクライナ東部の主権を握ることがプーチンの狙いであるが、その合意がなされるまではあくまで物理的攻撃によってウクライナを締めつけ続けるだけであり、ゼレンスキー体制を内側から崩壊させるといった非軍事的戦略は今のところ見られないままである。

筆者は本書のおわりで、今後のロシアのスタンスに対して見通しを立てている。
――権威主義体制の下にあるロシアと、これを受け入れない西側という構図――すなわち「永続戦争」は今後とも続いていく公算が非常に高い。しかもこの間にロシアが2000年代のように飛躍的な経済成長を遂げるとか、技術革新の最先端に立つことは見通しがたいとすると、質量ともに劣勢なロシアが西側との軍事的対時を続けるという状況にもおそらく変化はないだろう。つまり、本書で見たような「ロシア流の戦争方法」は少なくとも2020年代から2030年代くらいまでは中心的な軍事戦略に留まるのではないかというのが筆者の見立てである。

この「ロシア流の戦争方法」は、このウクライナ戦争で砕け散ってしまった。
何故ロシアが宣戦布告という思い切った手段を取ったのか、そして何故プーチンの戦略が古典的なものに逆戻りしてしまったのか。拡大し続けるNATOを止めるための時間と手段が残されていなかったのかもしれないが、真相は謎のままである。
―――――――――――――――――――――――――――――
【まとめ】
0 ロシアが企てる「ハイブリッド戦争」
軍事バランスでは米国に劣るはずのロシアがクリミア半島占拠のような振る舞いに及び、実際に成果を収めることができたのは何故か。
ウクライナで実際にロシアが用いたのは、国家・非国家を問わずに幅広い主体を巻き込み、現実の戦場に加えてサイバー空間や情報空間でも戦うという方法であった。これは西側諸国で「ハイブリッド戦争」と呼ばれるものである。古典的な軍事的手段だけでなく、非軍事的手段を併用して戦争を進める傾向が現れてきた。


1 NATO拡大 
東欧諸国とバルト三国がNATOに加盟したことによって、ロシアの戦略縦深(敵の侵略に対して余裕を持てるだけの広大な空間)が失われた。加えて、NATOに対する兵力の数的優位も喪失している。
そうした軍事的脅威はもちろんだが、ロシアにとってより受け入れ難かったのは、NATO拡大の政治的側面、すなわち東欧や旧ソ連諸国に対するロシアの影響力が大きく損なわれることであった。

NATOの拡大をロシアが苦々しく思っていたのは、それが「大国」としてのロシアの地位を損なうものとみなされたからである。「大国」はロシア語で「デルジャ一ヴァ」というが、この言葉は単に「規模の大きな国」という意味ではない。一言でいえば、外国の作った秩序に従うのではなく自らが秩序を作り出す側の国であるということだ。
本来は欧州の集団防衛を意図して結成されたNATOが、今や世界中のあらゆる紛争に介入すること、しかもこれらの軍事行動が安保理の承認を経ずに行われてきたことが、NATOを脅威とみなす理由となる。
したがって、ロシアから見ると、まだNATOに加盟していない国々――アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、モルドヴァ、ウクライナ――の中立をいかに維持するか、そしてロシアの勢力圏を脱出しようとする国があれば、軍事力行使に訴えてまでもこれを阻止するというのが、グルジア戦以降のロシアの基本方針だった。

2013-14のクリミア、ドンバスで起きた紛争は、情報戦による人心掌握、ドローンによる遠隔攻撃、電磁波スペクトラム(EMS)を活用した指揮通信統制への妨害、電力網のハッキング、偽のネットワークへの接続といったサイバー戦争の様相を呈していた。多数の死者が出るわけでもなく、行政機関やインフラが占拠され、ある領域が国家のコントロールを離れるが、ロシア軍の姿ははっきり見えない。そのうちに法的整合性のない「住民投票」が始まり、勝手にウクライナから「独立」したり、ロシアへの「併合」が決まっていく。これを軍事力で奪回しようにも、前線ではロシア軍の強力な電磁波作戦能力で軍事作戦が麻痺・混乱させられ、後方地域はドローン攻撃やサイバー攻撃に晒される。
こうした事態に面した西側諸国の間では、国家が暴力を用いて戦う「古い戦争」に対して、多様な主体と方法を混在させた戦いをロシアが行使し始めたのではないかという考えが生まれた。「ハイブリッド戦争」論の登場である。


2 ハイブリッド戦争
戦争の法則そのものが実質的に変化している。政治的・戦略的な目標を達成するために非軍事的手段が果たす役割が増大し、これが住民の抗議ポテンシャルと相互作用することで、敵国内部からの独立・反乱という形で紛争が具現化する。敵対手段を使用する際の重点が変化してきたのだ。

これはロシア内部においても例外ではない。ロシア政府の中では、非軍事的手段による戦争(情報戦争)が国内で現実に起きているという認識が存在していた。実際にプーチンは、野党指導者たちを、「アメリカの息がかかった体制転覆者」とみなしていた。もちろん多くは妄想的であるが、今やロシアはそうした「外国政府による非線形戦争」に晒され続けている、いわば「永続戦争」の戦時下にあるといえる。
これは一種の強迫観念だ。社会を徹底的に監視し、不満分子を抑え込み、若者に愛国教育を施しておかなければ、ロシア社会は西側の「非線形戦争」にあっさりと屈し、政権が転覆せられてしまうに違いないー―そうした強烈な精疑心がその背景には透けて見える。


3 ロシア軍の軍事戦略
非軍事的手段が古典的な軍事的手段と併用される場面は増えているが、戦争の中心を成すのはあくまでも軍隊である。非軍事的手段はその活動を支援する重要な要素の一つだ。ICTのような新テクノロジーは戦争の性質を変えつつあるが、軍事的な局面と非軍事的な局面の間には、暴力の行使という決定的な溝が存在する。

ロシアのシリア介入を成功に導いた要因の一つとして、「限定行動戦略」がある。これはどういうものか。
限定行動戦略の出発点となるのは、ロシアが遠隔地への軍事介入の際に抱えている制約である。
・国土が広いあまりに防衛線が長く、遠隔地に大兵力を送り込む余裕がない
・兵站能力に大きな制約がある
・地政上兵站線が伸びすぎて、大量の人員や整備を安定して送り込めない

そこでロシアが採用したのが「限定行動戦略」だった。これは空軍力や偵察・指揮能力といった、大国でなければ持ち得ない能力だけを現地国に提供し、これに現地の紛争参加勢力を糾合することにより、ロシアから遠く離れた地域でも大規模な軍事作戦を遂行する、というものであった。

今後の地域紛争では、大国による介入をいかにして阻止・回避しながら「新しい」手段による低烈度紛争を戦うかが焦点となってくる。


4 ロシアが備える未来の戦争
2007-2008年のロシア軍大演習で想定されていた対テロ戦争とは、領域支配をめぐる非国家主体との組織的戦闘であったと言えるだろう。より具体的には、イスラム過激派思想をイデオロギー的な支柱とし、旧ソ連域内の一部を世俗政権から奪還してシャリーアの導入を目指すゲリラ組織との戦いがこの時期の対テロ戦争であったことになる。

一方、2008-2009の演習では、NATOとの大規模戦争を想定し、空爆への対処、防空戦指揮システムを破壊しようとする敵特殊部隊の撃退訓練が行われた。また、数的にも技術的にも優勢なNATOに対して戦術核兵器を使用することで通常戦力の劣勢を補ったり、核の力で戦闘の停止を強要するという構想が練られている。

軍事演習は2010年代前半には対テロ組織、中盤には対大規模国家の様相を呈し、ウクライナ危機後の2010年代終盤では非国家主体とその後ろ盾となる大国との戦争を想定している。
2000年代末から2020年代までのロシア軍大演習で想定されていた戦争は、①「カフカス」や「ツェントル」に見られるイスラム過激派との対テロ戦争、②PGMを駆使するハイテク化軍隊との「第6世代戦争」、③より古典的な大規模戦争を想定した総力戦、④大国に操られたプロキシとの「新しい戦争」である。


5 弱いロシアの大規模戦争戦略
米CNAコーポレーションのマイケル・コフマンは、欧州正面におけるロシアの対NATO軍事戦略は、A2 / ADをその構成要素の一部に含むものの、より広範で複雑な「損害限定戦略」であると評した。この「損害限定戦略」とはいったい何なのか。

第一に、損害限定戦略においては、米国の来援を阻止したり、欧州戦域内における米国の行動の自由を拒否することはできないと前提される。したがって、西側との大規模戦争勃発時におけるロシアの現実的な目標は、その初期段階において米国のPGM攻撃を吸収・拡散させることによる抗堪性を確保し、防勢及び攻勢を通じて高価値アセットを消耗させ、指揮統制通信に対する攻撃によって作戦を混乱させることに置かれる。こうした打撃を小規模または大規模に行って米国の組織的な軍事作戦遂行能力を一定期間麻庫させ、迅速な勝利の達成を不可能にさせることにより、戦争継続に関する政治的決意を鈍らせるというのが損害限定戦略の基本的な考え方である。
第二に、以上の目標を達成するにあたっては、防勢と攻勢を組み合わせた「能動的防御」が不可欠となる。特に重要なのは主導権を握るために実施される予防的・デモンストレーション的・限定的攻撃である。
第三に、損害限定戦略は特定の領域を前提としたものではない。ここで追求されているのは、敵が組織的な軍事作戦を遂行する能力の全体を妨害することであって、これに資するアセットはあらゆるものが動員される。

こうした損害限定戦略が失敗に終わった場合には、戦術核兵器の使用によって通常戦力の劣勢を補ったり、戦闘の停止を強要したりする可能性が残されている、というわけだ。

物理空間からサイバー空間に至るまで、あるいは核兵器からレーザー兵器までのあらゆる手段を用いて敗北を回避しながら戦う――これが「弱い」ロシアが2020年代初頭までにたどり着いた大規模戦争戦略である。

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