あらすじ
冷戦後、軍事的にも経済的にも超大国の座から滑り落ちたロシアは、なぜ世界的な大国であり続けられるのか。NATO、旧ソ連諸国、中国、米国を向こうに回し、宇宙、ドローン、サイバー攻撃などの最新の戦略を駆使するロシア。劣勢下の旧超大国は、戦争と平和の隙間を衝くハイブリッドな戦争観を磨き上げて返り咲いた。メディアでも活躍する異能の研究者が、ウクライナ、中東での紛争から極東での軍事演習まで、ロシアの「新しい戦争」を読み解き、未来の世界情勢を占う。
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Posted by ブクログ
ウクライナ戦争前に書かれているが、本書で指摘されているロシアの軍事戦略、つまりはクラウゼヴィッツ的な「軍事力」と、傭兵やSNSなどの非軍事的・非国家的な装置の活用、そして状況に応じて戦術核をチラつかせるエスカレーション抑止などを駆使し、ハイテク化では大きく劣るNATOへの対抗を可能にするという構図は、まさにウクライナ戦争の構図そのものであるように感じられた。
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2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻以前のロシア軍事戦略について解説したもの。この頃は安倍総理の外交政策によりロシアの対日感情が良好であったり、中国との軍事同盟に限界があるとの指摘に、現在の情勢との差異に驚かされる。一つの戦争で国際情勢は大きく変わるものだ。本書で述べられたロシアの兵力整備はウクライナで起きている現代戦の片鱗を見せており、極超音速兵器・ドローンの増勢はロシア・ウクライナ戦争でのトレンドの一つだろう。もちろん、ハイブリット戦争によるサイバー攻撃などは当たり前になりつつある。
本書の語られる現代ロシアでは列強が9.11をキッカケにした対テロ戦争から、大国間の戦争へ揺り戻しを起こす過渡期にあると考える。本書の書かれた頃から国際情勢は大きく変わってしまった。しかし、ロシアの戦略を考察し理解する上で本書は大きな助けになると思う。
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小泉さんのロシア観に興味をもち購入しましたが、
現代ロシアにおける安全保障に対する観念から具体的な政策に至るまでを、多少興味のある人向けですが、とても分かりやすく書かれているので勉強になりました。
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「今や米国にとっての第一義的な懸念はテロリズムではなく、国家間の戦略的な競合である」(米国防総省『国防戦略』2018)
ルパート・スミス『軍事力の効用』
「…戦争はもはや存在しない」
核兵器を用いた国家間の大規模戦争は人類の破滅を意味しており、戦争によって達成されるべきあらゆる政治的目的を無意味にしてしまうからである。
「プーチンは、ソ連における彼の前任者や現在の習近平と同じだけの力を持ってはいない。しかし、ロシアは1990年代にそうであったような、弱いガタガタの国家ではないのである」マイケル・マクフォール(ロシア研究者)
P.60
「ウクライナ危機の後、NATOは大きく変わりました。あらゆる脅威に対処する「360度同盟」になったのです」NATO加盟国大使
大規模な犠牲が出る決戦を避けて小規模な勝利を積み重ねる「制限戦争」
「国際関係においては、力のファクターが持つ役割は低下していない」(『ロシア連邦国家安全保障戦略』2015)
スリプチェンコ 非接触戦争
メッスネル 非線形戦争
P.85
現代の世界では、「より軽い、より大衆的な武器」、すなわち情報を通じた心理戦が決定的な意味を持つ
…ひとつながりの戦線を挟んで戦う形態(線形戦争)とはならず、あらゆる場所で人々の心理をめぐる戦いが繰り広げられる
…平時と有事の区別は存在しない
イーゴリ・パナーリン 情報地政学
カラー革命
2003 バラ革命 グルジア
2004 オレンジ革命 ウクライナ
2005 チューリップ革命 キルギスタン
P.95
…ブログやSNSでの言論を萎縮させることだった。特にアクセス数の多い有力ブロガーに実名を義務付けたり、その一部を見せしめ的に逮捕・基礎したり、さらには政権には従わないインターネットメディアが閉鎖されるといった事態が相次ぐようになった。
…ネットユーザーの個人情報を必ずロシア国内のサーバーに保存することが義務付けられ、さらにアクセス元を偽造するために用いられるVPNソフトの頒布も禁止された。
情報安全保障 サイバー安全保障とは違う
ユナルミヤ 若き軍隊
「ロシアは2つの同盟者しか持たない。我が陸軍と艦隊である」アレクサンドルⅢ(ロシア帝国皇帝)
P.139
…モスクワ言語大学安全保障情報センターのバルトシュは、これを①非軍事的手段による闘争→②ハイブリッドな手法を用いる低烈度闘争→③正規軍による高烈度闘争の3ステップに分類した。住民の扇動のみによっては政治的目的(ウクライナの分裂)を達成できずに民兵による蜂起が起こり、続いてロシア正規軍を投入せざるを得なくなったドンバス紛争はその典型的な事例である。
限定行動戦略
「誰も大規模戦争のことを無視することなどできませんし、そのための準備を怠るなど論外です」ヴァレリー・ゲラシモフ(ロシア軍参謀総長)
P.239
ヴォストーク2018 北方領土
防衛白書の編纂委員「北方領土では実施されなかった。これらの活動には「ヴォストーク」という名前がついておらず、そうである以上は別個の訓練活動だ」
「いかなる条件下でも、我々は戦略的抑止力を諦めるべきではありません。それは強化されねばならないのです」ウラジーミル・プーチン
P.260
西側の軍事力の方がより宇宙空間に依存しているという事実の裏返し
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現代ロシアの軍事戦略
著:小泉 悠
紙版
ちくま新書 1572
20世紀後半の古典的な国家間戦争はもはや存在しない
ロシアによる現代戦とは、ハイブリッドな全面戦争を意味する
戦略縦深とは、奇襲を受けた時に時間的余裕をもてる緩衝地帯のことをいう
ソ連時代にあった東ドイツからソ連本土の距離は800Kmがウクライナが西側になった場合はわずか450Kmになる
これは東京・京都間、大陸弾道弾であれば、数分で核ミサイルが到達する距離だ
ハイブリット戦とはもともとアメリカ軍が生み出した概念だ
ソビエト崩壊も、一種のハイブリット戦とも認識されている
西側は軍事的手段だけでなく、政治・経済・情報などあらゆる手段を用いている
ロシアのハイブリット戦争は中東でも展開されている、それは2016~2018のシリアだ
PCM戦精密誘導兵器の使用、アメリカが湾岸戦争でつかった手法だ
ロシアも2008年のグルジア戦で使用している
ツペツナズが特別なのは任務の内容であって部隊を構成しているのは普通の兵士だ
ロシアの民兵ワグネルは、作曲家ワーグナーのロシア語よみ、ワグネルのリーダ、ウトキン氏はネオナチの信奉者だ
ドローンに対抗するには、電波妨害システム、ドローンはラジコンだからコントロール電波が遮断されると墜落するか基地に戻るしかない
ロシアの戦闘の定義
①武力紛争 国内武力紛争
②局地戦争
③地域戦争
④大規模戦争 第二次世界大戦以来発生していない
ロシア軍の演習
①作戦準備 軍の作戦機関、戦略、作戦レベル、連合部隊の錬成
②戦闘準備 戦闘環境下で訓練活動、戦場での活動に重点を置いた訓練
ロシア軍の大演習プログラムは局地戦のシナリオ
カフカス2009 動員兵力8500名、戦車200両、装甲先頭車両450、火砲250門
オーセニ2008 ベラルーシとの合同演習
ザーハド2009 防空戦 ネットワーク接続
ラトガ2009 NATO軍との大規模戦争
ヴォストーク2014 北方領土をめぐって日本との軍事衝突、米軍が介入
ザーハド2017 北方連邦 防空戦、海上戦、対潜水艦、巡航ミサイル、ドローン、航空機攻撃、NATO軍との北方地域での戦闘
接近阻止・領域拒否(A2/AD)
米軍をできるだけ、本土と遠いエリアで迎え撃つ戦略、中国軍も同様な戦略をもつ
エスカレーション抑止 限定核使用による同盟軍の参戦を防ぐ、失敗した場合の核戦争を合わせてシナリオをもっている⇒最悪のシナリオ
通常戦争におけるエスカレーション抑止もあり、超音速機の攻撃を想定
結論
ロシアの軍事戦略は古典的な全面的な戦争をコアとして、非軍事的な手段を合わせて用いる、ハイブリット戦である
目次
はじめに―不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
第2章 現代ロシアの軍事思想―「ハイブリッド戦争」論を再検討する
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
第4章 ロシアが備える未来の戦争
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
おわりに―2020年代を見通す
あとがき―オタクと研究者の間で
参考文献
ISBN:9784480073952
。出版社:筑摩書房
。判型:新書
。ページ数:320ページ
。定価:940円(本体)
。発売日:2021年05月10日第1刷発行
。発売日:2022年03月25日第4刷発行
Posted by ブクログ
ロシアは地政学的にNATOに対して脅威を感じており、正面戦争である場合では劣勢でもある。この情勢に対して、ロシアは非対称かつハイブリッドに軍事的な戦略を立てている。
またロシアは永続的に非線形な戦争継続を考えており、クリミア半島の一方的な併合以来、ある意味戦争は続いているとも考えられる。ヨーロッパ諸国との対峙において、敵の接近を拒否するために、地理的な不利を抱えているため情報戦的なイメージによる撹乱や妨害を企てる。場合により、核の限定使用もちらつかせるし、使用する可能性もある。
本書ではこういった客観的事実を分かりやすく解説している。
こういった事実は2022年2月以来のウクライナ対ロシアの戦争でも現実となったことでもあり、起きた事実の背景に対する理解を助けてくれる。この内容が当戦争の約一年前に初版が出されており、その断面のロシアに対する筆者の予見的な分析力が興味深い。筆者の小泉氏は最近ではテレビでもよく解説で出演することが多いが、こういった素晴らしい人物がいたことも正直知らなかった。
この書籍で日本が忘れてはいけないことは、
ロシアにとって日本はあくまで西側諸国の存在であり、永続的な戦争の対象でもあることだ。
本書でも解説があるとおり、ロシアはハイブリッド戦や非対称戦のイメージだけでなく、国家間紛争も意識した演習を近年行ってきており、まさにウクライナとも国家間の紛争を開始した。
この事実は重く受け止めなければならないし、ロシアとの関係の裏には戦争があることを日本国民はあらためて理解しなければならない。
Posted by ブクログ
ロシア軍事の専門家、ユーリーイズムイコこと小泉悠先生のロシア軍事戦略本であり、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の直前に書かれた(2014年のロシアによるクリミア半島強奪よりは後)もの。
ソ連崩壊後、東欧共産圏があるいは民主化し、あるいはカラー革命を起こしてきたが、ロシアから見ると、これらは全て西側による謀略であり、正規軍を用いたクラウゼビッツ的戦争ではないが、しかし、情報戦世論戦などを取り入れたハイブリッド戦争を仕掛けられているように見える、と。
この時期のロシアは勢力圏の縮小、経済的社会的混乱から国力を落としてきたが、それでも仕掛けられた戦争に勝利して生き残るためにハイブリッド戦争の手法を鏡面措置として採るのだ、と。
こうして俯瞰すると、クリミアやドネツクへの侵攻は、現地の親露派の分離運動から始まりそれでは勝てないとなると特殊部隊投入から正規軍投入と、徐々にエスカレートしていくのも、まさにハイブリッド戦の要領である。
この辺りのロシア的発想ロシア的行動を読み解くには本書は大いにおすすめである。
本書では時期的に触れていないが、しかし、ロシアによるウクライナ侵攻はあまりに手際が悪いのは何故だろうか。続編を待ちたい。
Posted by ブクログ
ロシアの軍事戦略がわかった。現在のウクライナ戦争でもこの考えに基づいて行動しているように思う。本に書いている通り、最終的に核使用に至らないことを祈る。
Posted by ブクログ
著者のロシア製兵器へのオタク愛により、ありがちな兵器スペックと配備数のみでの軍事力比較が足元にも及ばない、意図と運用を踏まえた圧倒的な分析力、また東側からの視点による軍事戦略の解説により、西側から見ると理解不能なロシアの動きがドクトリンによるものであることなど、マスコミの解説がいかに表面的かも強烈に感じさせる内容。
この分析の延長線上には、【執筆時には起きていない】ウクライナ紛争も有り得ると確信させる分析。
情報資料の量的な面では及ばないが、小泉氏のロシア軍事戦略に対する分析力は、防衛省をも上回っているのではないかと。
Posted by ブクログ
冷戦終結後、ロシアの軍事戦略はどのような構成でなされているのかを解説する。本書p23にあるように、ロシア軍は陸軍、海軍、空軍の三つに加えて、空挺部隊、戦略ロケット部隊、その他の国防省直轄軍事部隊という構成となり、陸、海、空軍に関しては、その大半は5つ(中央、北方、西部、東部、南部)の軍管区ごとに総合戦略コマンドと呼ばれる統合部隊を編成する。このほかにもロシア軍は細かい部隊があるが、著者によると、ロシアの軍事戦略の理解において、上記のものとは別の「準軍事組織」の存在が重要だと強調する。
ロシアはよくNATO拡大を嫌悪するが、その理由はロシアの兵力バランスが崩れて戦略上不利になること、また大国としてのロシアの地位低下を懸念しているためである。
近年、ロシアの軍事戦略ではサイバー戦や情報戦による非軍事的手段が目立つ。しかし著者によると、これらの手段の影響はさほど大きくなく、依然としてクラウゼヴィッツが唱えた古典的な軍事力のほうが戦争の勝利において影響力は大きい。そのため、たとえロシア軍が新テクノロジーを積極的に利用したとしても、戦争の性質に変化は起きないのである。とはいえ、このような軍事的手段と非軍事手段を合わせた「ハイブリッド戦争」は今後も展開されるので、この特徴をつかむことが、現代ロシアの軍事戦略の理解に欠かせない。
Posted by ブクログ
2022年のロシアによるウクライナ侵攻を前に刊行されたものであるが、ソ連崩壊以降の「ロシアにとっての文脈」が説明されているのでわかりやすい。
具体的には、ロシアにとっての危機感と、それに対する対外方針の変遷である。
それが妥当かどうかはともかく、ロシアが考えていることがわかるので有益だと思った。
Posted by ブクログ
非線形戦争について関心を持った。アルメニアのアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフをめぐってずっと衝突していることも恥ずかしながら知らなかった。
Posted by ブクログ
ウクライナ侵攻を機に、ロシアについて軽く知っておきたいと手に取ったが、軍事的な専門用語が目白押しでかなりハードな内容だった。現在のウクライナ戦争やそこでのロシア軍の予想外の苦戦についての著者の意見が聞いてみたい。
Posted by ブクログ
同胞だった東欧諸国がなし崩しにNATOに取り込まれて、今ではベラルーシを除いてウクライナが最後の砦となり丸裸にされたような帝国主義者プーチンの妄執ぶりも無理からぬものだと思えてくる。大国の夢を捨てきれないながらも、現実的に弱者の戦略を駆使して戦いを放棄しない
Posted by ブクログ
ユーゴスラヴィア、セルビアにはじまり、グルジア(バラ革命)、ウクライナ(オレンジ革命)、キルギス(チューリップ革命)、チェニジア(ジャスミン革命)からアラブの春に至るまでの民主化ドミノを、NATO およびアメリカによる謀略の結果であると捉え(事実、まんざら「陰謀論」でもないところがある)、これを非軍事手段による永続戦争であると定義した上で、ハイブリッド戦争(SNS を通じた人心操作から戦略核兵機使用まで、軍事・非軍事両面による目的遂行または状況作成のための行為)で応戦する現代ロシアの軍事戦略を描く。
2022年2月末に始まったウクライナ戦争を予言するかのように、2021年5月に刊行された現代ロシア軍分析の最前線で、最新の政治思想・軍事思想を網羅して圧巻。ウクライナ戦争を理解する上で、必読の一冊。
Posted by ブクログ
ロシア・ウクライナ戦争勃発の前に書かれた本書。いまはほとんど予言の書のようになっているはずだ。
研究の営みはここまで物事を明らかにできるのかと感嘆した。
Posted by ブクログ
曖昧で追いつけていなかったクリミアから今回のロシア侵攻までの流れを学ぶことができた気がする。
特にハイブリッド戦争と目されるものがどのよな位置付けであったかについても。初期対策をされてない状況では、初見殺しになるのだなと素人ながらに。
今回のロシアのウクライナ侵攻が特に東側で古典的な戦闘になっていると聞いていたことも、この本を通して腑に落ちる気がした。とにかく、使えるものはなんでも使って成果を上げるのが大事、という姿勢なのかなと素人ながらに思った。
一般回線を使わざる得なくなったり、情報戦で撹乱されていたり、今回のロシア軍側で聞いたような話もあり興味深かったです。
Posted by ブクログ
本書の発行はロシアによるウクライナ侵略の前だが、テーマといいタイミングといいドンピシャではある。
著者は「人」とも「夜」とも知られるこの道の第一人者。
書名の通り現代ロシアの軍事戦略を多角的に分析、解説したもので非常に参考になる。
ソ連時代からのしがらみを拗らせつつ、経済的資源に劣るロシアが自らの文脈の中で必死に生き残ろうとしていると読めるが、どういう結末に向かうのだろうか。
Posted by ブクログ
ロシア政府・ロシア軍が自国をどう認識しているか、それによりどういう戦い方をするべきと考えているか、とてもよくわかった。
軍備・兵力的に劣勢の状況で、非軍事手段に注力しつつ、主力をどこにしているか、重要人物の発言から丁寧に読み解いている。
組織や兵器の話は、筆者が相当好きな分野だと思われ、充実している。が、私はついていけず振り落とされた。
組織や兵器の説明について図や表が少なく、「これなんだっけ」とか「これとこれの関連はどうだっけ」と思うことが結構あり、理解が難しい。好きな人はすらすら頭に入ってくるのかもしれないが、素人の私には辛い。
Posted by ブクログ
軍事情報の機密性はどの国でも高く、他国が正確な必要十分な量のそれを得ることは難しいだろう。
しかし本書では、ロシアの公的な軍事関連の発表や実際の演習•紛争行動や、それらに関連する米国含めNATOの分析を幅広く集め、さらにそれを分析し考察されている。
ロシアの軍事専門家である著者。ロシアのウクライナ侵攻を契機にメディアに引っ張りだこである。
著者が自身でロシア軍事の「オタク」と評するように、本書はその「オタク」的知識が、テレビとは異なり十分に発揮されているように思われる。あまりの筆のノり具合に、多少の軍事知識を持っていないとその疾走感に振り落とされそうになってしまうので注意が必要です。
ロシアは虚実織り交ぜ冷静に戦略的に行動している程度が他国に比べて強いと思われ、また何を考えているのよくわからないという漠然とした恐ろしさを感じさせる。
本書のような(高度な)分析をしている人間やその分析を理解して戦略を立てている国家、組織が存在している一方で、それすらも承知の上でロシアは軍事戦略を立てているのではないかと思わずにはいられない。
ロシアの軍事戦略に関して、本書を通じて理解はかなり深まる。しかしその理解は不十分であり今後もそうであり続けるだろうという認識を持っておくのが無難そう。
読みやすい貴重な本
ロシアに関する本自体が少ないので、読みやすいだけでいい本になってしまいます。
ひとつひとつのかたまりが短くて、内容がかわるので、あきずに読めます。
ロシアに対して良いことを書いてある本はとても少ないので、そう思いながら読むのにはいい本だと思います。
Posted by ブクログ
軍事はあまり触れてこなかった分野なので難しい。ロシアが恐ろしく外交巧者だというのはよくわかった。軍が弱体化してんの、「恐ロシア」のイメージがあっただけに意外だった。
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良い意味でも悪い意味でも無く予想とは違った本だった。
事実をありのまま述べると言うより個人的見解が多いと言うか。
それと新書にしてはかなり難解だった。内容の1/3も理解してないかも。それでも一読の価値はあると思う。
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シリアへのロシア関与などマスコミでほとんど報道されていない情報が時系列に沿ってまとめられている。
表面に出てくるウクライナ以外のことを知るには、専門家の厚みのある情報収集力に頼るのが良いと感じた。
Posted by ブクログ
ハイブリッド戦争と同じような内容だったが、ロシアは最終的に物理的軍事力を捨てない。
「現代国際社会」を良しとせず、被害者スタンスにある限り、ロシアはやるだろう。
で、やっちゃって、思った以上にうまく行っていない現実。この先どうするのか。
小泉先生のリアルの分析は外せない。
後、中村逸郎先生。
Posted by ブクログ
メモ
経済、科学技術、軍事でもはや米国と並ぶ超大国ではなくなったロシアが2014のウクライナ、2015のシリアなど攻勢をしかけ、成果を収めたのは何故なのか? そこには古典的な軍事力の指標「ミリタリーバランス」では測りきれない要素が働いているのではないか? それを様々な角度から検証した。出版が2021年5月。そこまでの時点でのロシアの「領土」への考え方が示される。
2014のウクライナ介入では、劣勢にみえたロシアの軍事力が見直された。特殊部隊、民兵の動員、人々の認識を操作する情報戦、電磁波領域やサイバー空間での「戦闘」、これらでクリミアを瞬く間に併合した。
ロシアが暴力の行使=軍事的闘争に訴えずに政治的目標を達成するという思想は1990年代に浮上し、2010年代は西側との「永続戦争」という文脈で大きな地位を占めるようになった。
だが、実際の軍事戦略においては依然として軍事的手段は後退したとはいえない。・・ドンパチである。
<「状況」を作りだすための軍事力>
○2014のクリミアやドンバスにおいて軍事力が作りだした「状況」はウクライナを紛争国家化することだった
○ウクライナを征服して完全に「勢力圏」に組み込むのではなく、同国が西側の一部となってしまわないように(NATOやEUに加盟できないように)しておけばよかった。
○「勝たないように戦う」ことがウクライナにおけるロシア軍の任務だといえる。
ロシアの軍事演習からみると、ロシアの想定している様々な戦争の形態は、最終的には大国との軍事紛争である。イスラム過激派や非合法武装勢力の背後にはそれらを「手先」として操る大国が存在し、最終的には核兵器の使用にもつながりかねない、というのが現在のロシアの戦争観である。
しかし正面戦力ではロシアは劣勢なのである。まずは「損害限定」戦略。これでも劣勢を補えないと「エスカレーション抑止」に訴える。限定的な核攻撃や「警告射撃」で戦闘停止を強要したり、第三者の参戦を思いとどまらせる。
●まとめると、ロシアの軍事戦略はクラウゼヴィッツ的な戦争をそのコアとしつつ、非クラウゼヴィッツ的なそれにも備えた「ハイブリッドな戦争」戦略である。
・クラウゼヴィッツ:プロイセンの軍事学者(1780-1831)「戦争とは他を以ってする政治の延長である」「戦争の本質は単なる『強制力』ではなく、物理的な破戒をもたらす『暴力』である」
・国に直属した軍隊が一番強い。上の命令が下まで届くし、それを守る。民兵や軍事会社はそれぞれ個人の思惑や思想があるので、まとまらない。
・ドローン兵器など新しい兵器が出てきて戦い方は変化するが、さらにそれを阻害する兵器や方法が考え出される。
・・テレビでは分かりやすい解説の小泉氏。兵器や軍事、ちょっと難しかった。
2021.5.10第1刷 2022.3.30第5刷 購入
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ロシアが「弱い」ということが意外だった。サイバー空間含めた非軍事手段を含めたハイブリッドな戦略が意識されつつも、軍事手段の重要性は落ちていないという。現下のウクライナ情勢、それから北朝鮮を見るにつけ、自らが非合理的だと相手に思わせる戦略がもっとも合理的ということが現実に即して理解できる。
Posted by ブクログ
ロシアとは被害妄想な構ってちゃんなのかな。
軍事ドクトリンも年々先鋭化しているようで、エスカレーション抑止のための核使用を正当化している節がある。
瞬く間にクリミアを併合した彼の国にしてみれば、ウクライナ侵攻には正当性があり当然成功裡に完了するシナリオだったのだろう。そのような訓練も周到にしていたように紹介されている。
今、「孫子」を併読しているがウクライナ侵攻が上手くいかない理由に納得しているところ。