小泉悠のレビュー一覧

  • 2030年の戦争

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    第1章から第3章章までが概論、第4章と第5章が台湾、朝鮮半島有事と日本のすべきことを論じている。知識を整理するにはいいと思う。

    【目次】
    はじめに 

    第1章 戦争をどうとらえるか 
    2人が軍事問題に関わるようになったきっかけ 
    新しい戦争と古い戦争 
    戦争は「変遷」ではなく「拡張」している 
    今の戦争はわかりにくい 
    軍事作戦にずっと参加してきたオーストラリア 
    防衛「イエスかノーか」の先の議論を 
    臨戦状態にある台湾・韓国 
    コラム1 厳しさを増す安全保障環境 

    第2章 軍事力とは即応力である 
    軍事ランキングは当てにならない 
    構造即応力と運用即応力 
    即応力の質を測る困難さ 
    軍事力のあいまいな部分を抑止力にせよ 
    コラム2 軍事力は測れない 
    予備力のあるロシア、予備力のない日本 
    ネットアセスメントとシナリオプランニング 
    ロシアが短期決戦で勝てなかった理由 
    スポーツと戦争の似ている点、似ていない点 
    交戦のレベルをずらす 
    コラム3 国防計画のきほん

    第3章 テクノロジーの進化、統合運用、戦場の霧 
    C4ISRによる革命的な変化 
    大きく変えた作戦と軍のあり方 
    アイデアの原型はあったが、実行しなかったソ連 
    ハイテク軍事力は模倣される 
    平時と有事の境目がはっきりしないサイバー戦 
    能動的サイバー防御 
    統合運用は重要だが、実践は難しい 
    作戦とドクトリン 
    戦略、作戦、戦術の整合性 
    「戦場の霧」をめぐって 
    AIにどこまでゆだねるか 
    戦争を起こすのは人間だ 
    コラム4 戦争予測はなぜ外れるのか

    第4章 これから何が起きるかーーメインシナリオを考える 
    中国による台湾の海上封鎖 
    中国が「今しかない」と思った時が危ない 
    中国が台湾を海上封鎖したら、米国は助けにいくのか
    海軍力の劣る国にとっては、潜水艦や機雷が重要 
    米中全面戦争が起きたら 
    沖縄と九州の基地へのミサイル攻撃 
    朝鮮有事のメインシナリオーー偶発的事態の後のエスカレーション 
    北朝鮮のミサイルと中国のミサイルの違い 
    朝鮮半島と台湾海峡の「ダブル有事」
    コラム5 北朝鮮の即応力不足と核使用の脅威 

    第5章 では、日本は何をすべきか 
    グレーゾーン事態への準備 
    ポジティブリストをネガティブリストに 
    海上自衛隊と海上保安庁の連携強化を急げ 
    戦略的コミュニケーションの重要性 
    中国の直接侵攻を躊躇させるために 
    日本独自の打撃力 
    足りない住民避難の議論 
    米国の抑止力が信用できなくなる時 
    コラム6 急ピッチで進む中国の軍事近代化 

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    2025年04月26日
  • ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界

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    何年か前の本とは思うが勉強になる。最近の米露の関係性とトランプ大統領のウクライナに対する決断の意図がなんとなく想像できた気がした。ロシアは歴史的にアメリカに対する劣等感や敵対感が国全体にわたって刷り込まれていて、ウクライナ侵攻とその結果も今後の米露の関係に多大な影響を与える。アメリカ側としてはロシアとの溝を深めることは不本意で、今ここでウクライナという”小国”を見捨ててでもアメリカ国内の今後の平和のため、ウクライナに降伏を進めているのではないか。自分の認識している道理だけだと、ウクライナは侵攻されている側なので、静止するのであればロシア側だろと思うので。またロシアのウクライナ侵攻を中国は今後の台湾併合の参考として見ているという話にゾッとした…。

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    2025年03月06日
  • ゴジラvs.自衛隊アニメの「戦争論」

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    タイトルや帯、特装版の表紙から想像する内容とは少し異なると感じる方がいるかも。
    本書の内容は、はじめに、に集約されていますので、そういうものだと思って読むものです。
    アニメを居間のテレビで観て、プラモデル作りにいそしんだ世代には激しく刺さると思いますが、本書に出てくるアニメを今、全部観たとしても、当時の空気感や世相ありきで話されていることに共感できるのだろうか、とは思います。知識≠実体験。
    いずれにしても大量の注釈を、ほぼ注釈無しで読める自分に少し驚いた。

    書籍の販売という商業的な観点でのタイトルや帯なんだと思いますが、もう少し本書の内容に沿った、「あの」小泉氏や高橋氏のオタク談義であることを前面に出したり、むしろ社会学的なタイトルでも良かったのではないか、想像していた内容と違うという書評で本書の評価が下がるのはもったいない。

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    2025年02月23日
  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

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    序章
    鈴木敏夫 スタジオジプリプロデューサー
     鈴木敏夫は「風の谷のナウシカ」の制作背景やそのテーマについて語っている。彼は、作品が発表された当時の社会的・環境的状況がどのように影響を与えたのかを考察し、ナウシカというキャラクターが持つ強い意志や優しさが、現代においても重要なメッセージを持っていることを強調している。
     風の谷のナウシカの題材は『新諸国物語』(NHK ドラマ1952年)。

     ナウシカが旅をして、見聞きしたものによって、読者が世界の秘密を知っていく。宮崎駿は「勧善懲悪」が好きで、それが「自然を守る人がいいひとで、自然を破壊するのは悪人」と言う物語にした。
     赤坂憲雄の『ナウシカ考 風の谷の黙示録』を読み、宮崎駿は「おもしろいね。俺ってこんなもの書いていたんだ」と言った。他者からの深い考察が、作者に新たな気づきを与える。
     映画では「腐海は自然の象徴で、腐海こそが人類を救う」と謳ったのに、第7巻で「腐海や王蟲が、実は人間の文明が作り上げた人工的な生態系だった」ことが明らかになった。物語全体の構図がまるで変わってしまった。
     ナウシカは、本来、風の谷の500人のために闘った。そして、もののけ姫のアシタカは「個人的な理由で戦う主人公」となった。宮崎駿は、どんどんと変わっていく。

    杏 俳優
     時間の経過とともに死生観や価値観が大きく変わる。そういう時代に生きている。ナウシカは「母は決して癒されない悲しみがあることを教えてくれましたが、私を愛さなかった」という。母は絶対的な存在でなくていい。巨神兵は、ナウシカを母親と思い込んだ。そして王蟲はナウシカを守って死んだ後、「母は私を愛さなかったけれど、オーマは私を愛してくれた」とナウシカはいう。母と娘の関係が全く違うものがある。

    叶精二 映像研究家
     アニメーションが前提でない『風の谷のナウシカ』、コミック版。なるほど。
     連載中に、東西冷戦の終結、ユーゴースラビアの内戦など衝撃的な事件があり、影響を受けている。

    小泉悠 軍事アナリスト
     現実のウクライナとナウシカの世界、戦争の「ネイチャー」は変わらない。核戦争による世界の破滅は、ウクライナでは現実のものになるかもしれない。戦争を経験した世代、戦争を経験した世代を親に持った世代、戦争を知らない世代。世代によって、大きく戦争の捉え方が違ってくる。

     『宇宙戦艦ヤマト』『ウルトラマン』は、作り手の戦争体験が塗り込められている。
     庵野秀明は、『宇宙戦艦ヤマト』『連合艦隊』に影響を受け、『エヴァンゲリオン』を作っている。
    戦後の日本では、戦争の悲惨さや反戦が訴えられたが、戦争そのものを真正面から描きにくかった。それがサブカルチャーの一部がになった。日本人には「敗戦で自分たちの国は、一度滅びてしまった」という感覚がある。

     ナウシカによって、「滅びはやってくる可能性がある」「文明が滅びた後はこうなる」を知らされる。小泉は、戦争が、悲惨であるにもかかわらずかっこよさがある。「人間は本来、こんなひどいことをするはずはない」と小泉は言いたくもないという。宮崎駿は、兵器や飛行機の時として持つエロティックな美しさに魅了されているところがある。戦争の実相は、巨大な悲惨が人々を襲い、世界が破滅の淵に追いやられていくこともある。

    川上弘美 作家
     ナウシカは不思議な人。自分を傷つけるクシャナ、敵国の人々、深井の動植物など自分の周囲に来たものを全部守ろうとする。ナウシカは、物語の中でみんなを繋ぐ絆になっている。ちょっとした破綻、なんでこんな文章がという驚きや作者自体が制御できないものが雑音としてあっても、ノイズがあることは避けられない。それも受け入れることだ。

     精一杯生きること、自らの死を認めることは、両立する。原発の使用済み核燃料は10万年も危険な放射能を出し続ける。その間、人類が確実に存続し、責任もって保管し続けられると考えること自体がおかしい。「滅びはあり得ない」と信じ込もうとしているのではないか。
     ボーヴォワールは「人おのおのは死にますが、人類は死ぬべきものではないことを我々は知っています」というが。川上弘美は「人類の未来を自然に委ねる」という選択をする。確かに、『風の谷のナウシカ』は、単純な物差しで測れるようなシロモノではないのだね。

    福岡伸一 生物学者
     老いるからこそ、死ぬからこそ人は美しい。環境の全体のバランスを考え、人間に害を及ぼしかねない存在とも共存していく。ナウシカは人類のことを「大地を傷つけ、奪い取り、汚し、焼き尽くすだけの、もっとも醜いいきもの」としている。

    竹宮恵子 漫画家
     物語が始まった時「これから何かが違う世界が始まるんだ」ナウシカはあまり言葉で説明しない。ナウシカの世界でも、たとえ人工的に作られたものでも、生命は常に変化し、創造主の意図を超えていくとして描かれた。素晴らしきディストピアの拒絶があり、それでも自分の意思で生きようとする。

    鈴木涼美 文筆家
     『娼婦の本棚』を書いた著者は、夜の街=腐海に生きている。腐海に生きる蟲たちは美しい。闇があって光がある。悪の方に魅力を感じる。ナウシカは生に執着せず、死の恐怖がない。

    河野真太郎 英文学者
     ナウシカは戦う力と、腐海の真実に気づく科学的知識を持ち、包み込むような母性とカリスマ性のない混ぜになった女性。族長の父は「男であったら何もいうことはない」という。
     クシャナは、母親が、王家の陰謀の犠牲、家父長制の犠牲になって心を病んだことへの怒りを動機に、父王や兄王子たちと戦ってきた人。女性性を捨て、男性性を獲得しなければならなかった。
     ナウシカの物語は、「自然を守ればそれでいい」という考え方とは、異なる思想。

    大木毅 現代史家
     戦争では多くの住民が飢えや病気で死んでいく。ナウシカは「なんという戦争、いかがわしい正義すらかけらもないなんて」という。戦争はそのような残虐性を持っている。

    赤坂憲雄 民俗学者
     ゴジラは1954年に発表された。ゴジラの映画には、科学やテクノロジーへの信頼がある。ゴジラを最終的に葬るのは、一人の科学者の自己犠牲。それは宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』の主人公の姿と重なる。ナウシカは、最先端テクノロジーが暴走し、地球環境を破壊してから1000年後の世界。科学や文明への信頼が裏切られていく時代を予感しながら作られている。「何が起こるか分からない」という不気味さ、不安の中に置かれている。ナウシカの世界が、とてもリアルに感じられる時代へ運ばれつつある。
     ナウシカの物語は、宮崎さんの巨大な無意識が充満している。それが最大の魅力。宮崎駿はいう「こういうふうにしたい、じゃなくて、こうなっちゃう、ものを作る主体というより、ただ後ろ方くっついていっただけ」

     権力に善意は期待できず、権力そのものを無化する仕掛けを作り出すしかないという作品。
     王という存在は必然ではない。首長というのは、部族の人々に隷属を求める権力ではなく、むしろ、言葉によって自分の権力を絶えず無化していくことを求められ、それを理念や義務として積極的に引き受ける。ナウシカは、人々に命令を下すことはなく、権力を持たず、深い思索に裏打ちされた言葉だけで人々を励まし、なだめ、導き、ひたすら調停者としての役割を果たそうとする。宮崎駿は「虫愛づる君」に、自らの知性と探究心で腐海の謎を解き明かす役割を与えた。
     民主主義は、権力の毒や腐敗を知る人が作り出した暫定的なシステムである。愚かにして美しい人間を完全にコントロールはできない。ナウシカの物語は、それぞれがれっきとした価値を持つ声たちによる真のポリフォニー(多声音楽)が本質なのだ。いやはや。ナウシカを読み解く力の深いことよ。

    もう、ナウシカの物語は、実に多面的な見方ができる。いろんな問いかけがあり、考えるきっかけになるいい本である。なぜか、頭の中の芯を熱くする。

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    2024年12月22日
  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

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    マンガのナウシカは、最後の方の記憶がなく、途中までしか読んでいないかもしれない。
    改めて読み直そうと思う。
    読んでいても読んでいなくても面白かったが、自分はここまで考えながら読めなかったから、途中までしか読んでないのだろうと思った。

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    2024年12月01日
  • ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔

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    現在のロシアの日常生活から軍事、政治の内情を分かりやすく説明している。知らない人に突然話しかけてくるロシア人は私も好き。ロシアという国の体制が怖いだけであって一人一人のロシア人を遠ざける理由はどこにもない。それにしてもロシアに売っていたドシラクという韓国のカップラーメンがロシアにしか売ってないとは驚き。私もよく食べていたから懐かしくなった。買いたいと思ってももう買えないと思うとさみしい。
    ユーゴザーパトヌイの朝鮮料理店もよく行ったなあ。

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    2024年10月13日
  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

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    いろんな解釈があってほんとうに面白い。
    ナウシカの原作再読したくなった。
    闇の中にも光があって、完全な世界よりも、いつかは滅びるかもしれない世界、それがまたいい。

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    2024年10月05日
  • ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界

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     ロシアによるウクライナ侵攻、また今後起こりうるといわれる台湾有事の予測など、昨今の国際情勢について、著者が複数名の専門家と対談する。本書は主にアメリカとロシア、中国の関係を中心に語っており、それによると、ロシアと中国は日本を半植民地と見なす、つまりアメリカと同盟国を結んでいることは完全な主権を確立していないと考えている。また日本のロシアに対する性善説は江戸時代末期からあり、実際に日露戦争の直前、桂太郎が英国と同盟を結ぶことに対し、伊藤博文は日露協商を唱えるという事例があった。さらに2022年のウクライナ侵攻時に、ロシアに経済制裁を実行したが、これは短期的に見ると効果は現れないが、相手のコストを上げるという利点があるので、制裁期間が長引くほど、ロシア側は戦争の継続が厳しくなり、そこから停戦交渉が行われると指摘する。
     一方で台湾有事での中国の動向についてだが、これは明確な時期は不明であるが、中国人は周年を大事にする文化をふまえると、人民解放軍100年でかつ習近平国家主席3期目の終わりである2027年に注意すべきだという。また米ソの冷戦と異なり、アメリカと中国間には安定した対話の枠組みがないことが懸念される。それに加えて、もし台湾有事が起きた場合、日本はウクライナ侵攻におけるポーランドと同じ立ち位置になること、同時にロシアと北朝鮮の動向に注意すべきなど、他人事でないことがわかる。このように、今後の世界情勢はアメリカ一強の時代ではなく、18、19世紀のような帝国主義、多極的な世界へと変貌する。

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    2024年10月02日
  • サイバースペースの地政学

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    確かに、いまや空気のようになってしまっているインターネット空間(≒サイバースペース)だが、どこでどうつながっていて、どういうルートで目的のサーバにたどり着くのか全くわからない。、、が、日本から外国に繋ぐ以上、空か海しかないわけで、その大半を占める「海底ケーブル」の脆弱性について語られていました。

    一方、昨今の地震で「スターリンク」が活躍していることから、人工衛星経由のインターネット接続も話題ですね。

    前に、アット東京に行ったことがあるのですが、セコム傘下になっているとは驚きでした。

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    2024年10月01日
  • ウクライナ戦争

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     2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が起きた。ロシア側は特別軍事作戦と称し、ウクライナの非軍事化、非ナチ化、ロシア系住民の虐殺の阻止という名目で、侵攻を仕掛けた。依然としても終戦の見通しがつかないが、本書はそんなウクライナ戦争を著者の分析によって今後の展開を予測する。
     本書で何度か言及されるが、2022年以前からロシアのウクライナに対する動向は怪しかった。2014年クリミア半島の併合の時点で、ある意味戦争が始まっていたと著者は指摘する。(そのため本書では今回のウクライナ戦争を第2次ロシア・ウクライナ戦争と呼んでいる)2021年、著者は衛星画像から戦争準備を進めていることが明らかであったという。駐屯地に大量のテントが用意されていること、また兵舎に収まらないほどの兵士が集結していること、予備の飛行場に戦闘機や戦闘爆撃機を展開しているなど、既に戦争の予兆がみられた。そのほかにも、ウクライナ国境付近の住民がTikTokに投稿した映像が情報源となった。
     しかしその一方で、予想外の事態もいくつか見られた。ゼレンスキーの指導力はもちろんのことだが、今回の戦争が短期決戦には至らず、ウクライナ側が思った以上に持ちこたえていることである。意外にもウクライナは旧ソ連諸国で2番目に軍事力を持っている。

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    2024年09月08日
  • 現代ロシアの軍事戦略

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     冷戦終結後、ロシアの軍事戦略はどのような構成でなされているのかを解説する。本書p23にあるように、ロシア軍は陸軍、海軍、空軍の三つに加えて、空挺部隊、戦略ロケット部隊、その他の国防省直轄軍事部隊という構成となり、陸、海、空軍に関しては、その大半は5つ(中央、北方、西部、東部、南部)の軍管区ごとに総合戦略コマンドと呼ばれる統合部隊を編成する。このほかにもロシア軍は細かい部隊があるが、著者によると、ロシアの軍事戦略の理解において、上記のものとは別の「準軍事組織」の存在が重要だと強調する。
     ロシアはよくNATO拡大を嫌悪するが、その理由はロシアの兵力バランスが崩れて戦略上不利になること、また大国としてのロシアの地位低下を懸念しているためである。
     近年、ロシアの軍事戦略ではサイバー戦や情報戦による非軍事的手段が目立つ。しかし著者によると、これらの手段の影響はさほど大きくなく、依然としてクラウゼヴィッツが唱えた古典的な軍事力のほうが戦争の勝利において影響力は大きい。そのため、たとえロシア軍が新テクノロジーを積極的に利用したとしても、戦争の性質に変化は起きないのである。とはいえ、このような軍事的手段と非軍事手段を合わせた「ハイブリッド戦争」は今後も展開されるので、この特徴をつかむことが、現代ロシアの軍事戦略の理解に欠かせない。

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    2024年09月08日
  • サイバースペースの地政学

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    サイバースペースの地政学
    著:小宮山 功一朗
    著:小泉 悠
    ハヤカワ新書 026

    いきなりデータセンターである
    ネットワークの7層のうちの下1層、物理層がデータセンターのきもである
    千葉ニュータウンにあるデータセンター
    そのインフラエンジニアの聖地が、本書のテーマである

    なぜ、千葉ニュータウンなのか
    ・北総台地の地盤が堅固で、地震を含めた災害リスクが低い
    ・都心から、30~40Kmという比較的交通アクセスのよい土地である
    そして、データセンターが集まり出すと
    ・電力会社は、特別高圧電力の供給を
    ・通信会社は、高速で、安定した通信回線を、この地に優先して供給するようになる
    つまり、一度、データセンターが集まり出すと、ネットワーク効果が生まれ、さらなるデータセンターを
    呼び寄せることとなる

    日本と海外とのインタネット通信量は、99%が海底ケーブルだ
    2024年01月現在、世界には、574本、総延長140万kmの海底ケーブルが存在している

    海底ケーブルのルートは、19世紀に往来が活発であった海の交易路と似ている
    マラッカ海峡やスエズ運河などの海上交通の要衝は、海底ケーブルのルートしても、やはり重要なポイントである

    実際のデータセンターでの電力消費量は、機器そのものの電力量ではない、機器を最適に保つための冷却装置の電力量、つまり、空調費用がふくまれている

    データセンターとは過酷なところ
    ・寒い
    ・湿気が大敵、長時間いれば、肌がカサカサになる
    ・うるさい、キーンというファンのノイズが、センターには満ちている
    ・特殊なにおいがする

    ここでいうリスクとは、中国の漁船に誤ってケーブルを切断されたり、ロシアの攻撃にさらされないように管理しようだ

    目次
    はじめに
    第1章 「チバ・シティ」の巨大データセンター―千葉ニュータウン
    第2章 日本がサイバースペースと初めて繋がった地―長崎市
    第3章 ケーブルシップの知られざる世界―長崎市西泊
    第4章 AI時代の「データグラビティ」―北海道、東京
    第5章 海底ケーブルの覇権を巡って―新たな戦場になる海底
    第6章 ポスト帝国のサイバースペース―エストニア、ロシア
    おわりに
    謝辞

    ISBN:9784153400269
    出版社:早川書房
    判型:新書
    ページ数:208ページ
    定価:1000円(本体)
    2024年06月25日初版発行

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    2024年09月03日
  • サイバースペースの地政学

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    サイバースペース、とは言いながらも
    データセンターや海底ケーブルなどの物理的な実体やその設置場所からは逃れられない、という事実を改めて考えさせられる本。

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    2024年08月26日
  • サイバースペースの地政学

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    現代の人間にとってサイバー空間なしの生活は考えにくい。
    しかしサイバー空間は当然データセンターや海底ケーブルという物理的インフラがあることで成立している。
    物理的なものであるので、機械は電力を大量に消費するし、ケーブルは破損する。
    また利用者とデータセンターの通信距離が遠い場合、わずかな通信遅延も発生する。

    データセンターが集まる地域はサイバー空間を含めた地政学的な重心と言える。

    海底ケーブルの脆弱性にも注目が必要である。

    攻撃側が海底ケーブル破壊にかけるコストは防御、修復側のコストに対して圧倒的安価となるため、攻撃側が有利になる。

    筆者のうち一人の小泉氏は専門はロシアの軍事安全保障だが、
    過去にサイバーセキュリティシンポジウムで基調講演されていたことを偶然拝見している。
    本書でもロシアを切り口にしながらもある種普遍的な問題提起をなされている。

    サイバー空間を守りたい人、すなわち現代人の全てに読んで欲しい一冊。

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    2024年08月15日
  • 僕らは戦争を知らない 世界中の不条理をなくすためにキミができること

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    ちょっと小学生には難しいかもしれないけど、
    平和学習にとても役立ちそうな本。
    世界の紛争の詳細、日本を取り巻く現状などわかりやすい。北朝鮮がミサイルを打つ理由や、防衛費が過去最大など、勉強になる。

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    2024年08月11日
  • サイバースペースの地政学

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    サイバースペースの物理的実体を捉えて、有事の際のリスクを考えてみようという本。面白かった。

    インターネット/サイバースペースは、利用者側からはバーチャルな空間と認識されがちだが、当然物理的な実体を伴っている。
    それは物理的なサーバ群であり、それを収容するデータセンター(DC)であり、そこに電力を供給する送電網であり、国間を繋ぐ海底ケーブルだったりする。これらは有事には攻撃対象となり、平時には諜報の対象となる。

    個人的には、本書でも紹介されている千葉ニュータウンの某DCに行ったことがあるのだが、千葉ニューって他にもDC多いよな、地盤が硬いのかな?などと呑気に考えていた。本書を読むと、理由はそれだけではないことがわかる。一つDCができると、回線業者が通信回線を増強し、電力会社が送電網を強化する。そうすることで、DCに適した環境になる。そうすると、他の事業者がその地域にDCを新設しやすくなる、みたいなメカニズム。
    そうやって集まったDCは有事には敵国からの攻撃対象になる可能性があり、ITインフラの重大なリスクであるとの視点が提示される。

    他にも海底ケーブルの敷設や補修の話も興味深い。普段意識しない、知らない世界を垣間見れる本でした。これは男の子が好きなヤツですわ。

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    2024年07月26日
  • ウクライナ戦争

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    ずっと読みたかった本。現在進行形で起こっている惨劇であり、今更ってことなんかなく、むしろそういう気持ちへの自戒の念も込めて。さすが第一人者の手になる書で、戦争に至る背景から、予想される展開に至るまで、十分な裏付けをもって語られる。ロシアが事ここに至った原因が、いまひとつ明白でないというのも、出口が見出しにくい大きな原因。戦争反対。

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    2024年07月17日
  • オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略

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    ウクライナ戦争はロシアが核大国であることを思い出させた。オホーツク海は、バレンツ海と並んでロシアの弾道ミサイル原潜の「要塞」(むしろ隠れ家?)になっている。それを冷戦〜ソ連崩壊〜現代の歴史とともに紹介してくれる。ディテールがいっぱいで興味深く読んだ

    1980年代には60隻以上いたロシアのSSBNも今は増強途上とはいえ10隻にまで減っており、筆者の分析によれば1隻もパトロールに出ていないことも珍しくないらしい。しかし1隻あたり100発以上の核弾頭を搭載できるのでまだまだ物騒

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    2024年06月08日
  • 現代用語の基礎知識 2024

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    本書を通読するのも三度目。発売からこっち、時間をかけて丹念に読み通す。分野横断的に、基礎知識が網羅されている本書の存在は貴重。

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    2024年05月23日
  • ウクライナ戦争

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    本当ところはプーチンの頭の中にしかないのだろうけれども、ウクライナ戦争を軍事と政治の様々な状況証拠から読み解いていく。
    現在はさらにイスラエルとパレスチナの紛争が起きたり、周辺環境も大きく変動しており、執筆当時よりウクライナの置かれている状況も苦しくなっており、混迷の度合いはさらに深くなっている。

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    2024年05月15日