【感想・ネタバレ】「帝国」ロシアの地政学(東京堂出版) 「勢力圏」で読むユーラシア戦略のレビュー

あらすじ

朝日新聞(読書欄)、読売新聞(「本よみうり堂」)、産経新聞(書評欄)、毎日新聞(「今週の本棚」)をはじめ、北國新聞、北日本新聞、東日本新聞、信濃毎日新聞など各紙で紹介! 第41回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞作品。 【本書の内容】ロシアの対外政策を、その特殊な主権観を分析しながら読み解く。今やロシアの勢力圏は旧ソ連諸国、中東、東アジア、そして北極圏へと張り巡らされているが、その狙いはどこにあるのか。北方領土問題のゆくえは。蜜月を迎える中露関係をどう読むか。ウクライナ、グルジア(ジョージア)、バルト三国など、旧ソ連諸国との戦略的関係は。中東政策にみるロシアの野望とは。ロシアの秩序観を知り、国際社会の新たな構図を理解するのに最適の書。北方領土の軍事的価値にも言及。第41回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞作品。

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Posted by ブクログ

ロシアの主権や勢力圏に対する考え方に触れられるいい本だった。
ロシアなりのロジックを理解する助けになった。
(無論、ロシアのロジックは国際的な標準とは程遠いものだが……)

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2023年12月08日

Posted by ブクログ

とても面白かった。
私にとっては馴染みのない分野の書籍だったが、読みやすかった。
大国ロシアの国家戦略を簡単には理解することはできないが、ひとりの日本人学者の視点を通して、ロシアの一端を理解させてくれる。
物事に対しての認識や、優先事項の異なる国家と国家との関係を良好に保つためには、相手への想像力を大切にしながら、愚直にコミュニケーションをとりつづけなければならないと感じた。

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2023年03月21日

Posted by ブクログ

日本は日米安全保障条約体制にあるのでロシアから見たら「半主権国家」としか見做されていない。
旧ソ連構成国も同様に主権国家ではなくロシアが主権を持ってるものなんだと思っている。
シンプルに書いてしまいましたがそのような考えを持っているんだということがよく理解できました。

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2023年02月15日

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わかりやすい言葉で、多くのことを知りました。温暖化による北極圏の氷が溶ける、といったことも勢力圏に関係してくるとは。

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2022年10月29日

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イズムィコ先生の代表作。ロシアの対外戦略を勢力圏をキーに読み解きます。勢力圏の概念自体は19世紀や20世紀には存在して今も根底にはあるのでしょうが、それを武力で公然とは主張しないというのが国連時代のルールなんじゃないのかなとは思うわけで。そもそも過去の最大領土を元に現在の勢力圏拡大していこうっていうのは、一度も負けたことの無い国の我儘でしかない気がします。

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2022年10月07日

Posted by ブクログ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻については「プーチンは頭おかしいんじゃないの?」と思ったが、本書を読むことでここに至るまでの経緯を知ることができた。

本書は、著者がこれまで発表してきた論文等を加筆・修正したものを主体としているが、非常にわかりやすい内容となっている。

以下(本書からの抜粋)を知るだけでも今後の世界情勢を理解する上で極めて有用。

①旧ソ連諸国はロシアにとっての勢力圏であり、NATOのような外部勢力が旧ソ連諸国に拡大してくることは阻止されなければならない。
➁ロシアは、より弱体な国々の主権を制限しうる「主権国家(大国)」である(プーチンはドイツでさえも「主権国家」でないとしている、日本については推して知るべし!)。
③ロシアにとってウクライナはベラルーシと並ぶ「スラブの兄弟」、「ほとんど、我々」。
④元々ソ連としては冷戦に敗北したという意識は希薄であり、むしろ冷戦の終結は、人類の破滅を避けるために米国と成し遂げた「共通の成果」であると見られていた。
⑤ロシアが「勢力圏」とみなすグルジアとウクライナがNATOへの加盟を公然と掲げるようになったことに、ロシアの被害者意識はさらに強まっていた。

必読書!

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2022年05月15日

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ロシアのウクライナ侵攻前に書かれたものだが、ロシアの考える勢力圏、主権というのが、よくわかった。到底受け入れられるものではないが、彼らの理屈からいくと、直近の北欧のNATO加盟などで更に態度を硬化していくのだろう。お互いの主張が真っ向から対立する妥協点が見いだせない泥沼の状況を解決できるやり方があるのだろうか。。。

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2022年05月15日

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小泉悠さんの著作。ストーリーとしてよく組み立てられていて、北方領土訪問の導入は成功だと思う。読み始める前はやや警戒していたがどんどん読み進めてしまった。
西欧近代がいわゆる「モダン」であり、国民国家をベースとして組み立てられてられているのに対し、ロシアは融通無碍でロシア人がいるところが「ロシア」であるといういわゆる「帝国」概念に基づいている。その中でも、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(著者はグルジアと呼ぶ)は特に重要な国=地域でその国々が独立して西欧的な国民国家になるのは「帝国」を脅かす脅威と認識される。
ただこの考え方はあくまで権力者目線だと思うわけで、結局モスクワ、サンクトペテルブルクの市民もマクドナルドやコカコーラに代表される西欧文化を満喫していたことからも分かるように、別にロシアなるものは鬱屈した権力者や弱者のアイデンティティを慰める概念でしかないんだと思う。そんなことより、ロシアは地方に目を向けて全国民的に真の意味で豊かになれば、別にウクライナだって反発はしないだろうし、日本だってそこまで警戒はしない。要はそういうことなんだと思うので、プーチンには仮想現実的世界にでも引きこもっていただいて、その世界で自由にやってもらいたい。その意味でメタバースの発展は世界を救うかもしれず、一刻も早い進化が待ち望まれる。

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2022年04月10日

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受け入れられるかどうかは別として、ソ連時代を含めたロシアのイデオロギーや周辺諸国に対する考え方、そして西側諸国に対する見方など理解することが出来た。
それと同時に、個人的なレベルは別として、ロシアをはじめとする権威主義的な国家と国同士で分かり合える事は無いのだろうと、絶望的になった。
今起きているウクライナ侵攻はロシアにとって必然であり、さらには日本にとって懸案事項である北方領土返還など、実現する事はないだろうと思わされた。

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2022年03月10日

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【あるいは、ロシアを夢見る巨人と見立ててもよいかもしれない。ユーラシアの巨大な陸塊の上で、ロシアは壮大な「勢力圏」の夢を見ている】(文中より引用)

「地政学」や「勢力圏」といったキーワードを軸としながら、冷戦崩壊後のロシアが持つ国際秩序観を丸裸にしようと試みた一冊。著者は、東京大学先端科学技術研究センター特任助教を務める小泉悠。

ロシアに関する作品は数あれど、ここまで同国の国際秩序観を支える内在的論理・感情に迫った一冊は稀なのではと思うほどの名著。サントリー学芸賞を受賞したのも宜なるかなというほどの充実ぶりで、今後もこの著者の作品は追っかけていきたいなと。

今年のトップテンに入ってきそう☆5つ

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2019年12月16日

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ロシア独自の「勢力圏」概念及び、ロシアの言う「主権」がようやく、どんなモノなのか理解に近づくことができた。

ロシアが「勢力圏」や「主権国家」をそのような意味で用いることは理解する必要があるが、その「勢力圏」や「主権国家」概念を受け入れることは決してできないことがウクライナやバルト三国などの「事例」を通じて、理解できた。
また、北方領土問題を抱える日本としては、これは決して他人事では無く、現在進行形且つ自らの身に降りかかっている火の粉である。

なればこそ、ロシアの概念としての「勢力圏」や「主権」を理解する必要がある。そして、その概念からして、「共同経済活動」が穂法領土の返還に繋がるものでは無いという結論は容易に導き出せる。(そもそも先方に「返還」の意思などない。

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2019年11月10日

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ロシアにはロシアの論理がある。

戦前の日本には戦前の日本の論理があったように。しかしそれは、いつの間にか欧米史観に上塗りされ、そこからしか物が見えなくなり、しかも、それこそが正論だと考えたり、あるいは誤りだと気付いても、世の中は既にその普遍的ルールで動いているからと、諦めたりしている。

2000年に成立したプーチン政権は当初、エリツィン政権末期に悪化した西側諸国との関係改善を掲げ、現在では考えがたいほど、米国に配慮した対外政策をとっていた。たとえば2001年、米国で同時多発テロ事件では、プーチンはアフガニスタンにおける米国の対テロ作戦に協力を表明し、中央アジア諸国への米軍展開を認める方針を打ち出した。「勢力園」である中央アジアへの米軍展開については軍や情報機関からの強い反対があったとされるが、これを政治判断で押し切ったのがプーチンだ。

2004年にバルト三国のNATOおよびEU加盟が決まった際にもロシアは強く反対せず、2006年にはグルジアに駐留していたロシア軍の撤退が一部平和維持部隊を除いて完了した。

変化は2000年代半ば以降。米露関係は次第に悪化していく。米国がロシアの反対を押し切ってイラク戦争に踏み切ったことや、2005年に米国が東欧への弾道ミサイル防衛(MD)システム配備計画を打ち出したことに加え、旧ソ連諸国において相次いだ政変が米国の陰謀によるものであると見るロシアは、米国に対する不信感を募らせていった。ロシアが「勢力圏」とみなすグルジアとウクライナがNATOへの加盟を公然と掲げるようになったことに、ロシアの被害者意識はさらに強まっていた。

西側諸国がロシアを冷戦の敗者とみなし、何かにつけてロシアの政治体制や経済体制に注文をつけてくることもロシアは気に入らなかった。元々ソ連としては冷戦に敗北したという意識は希薄であり、人類の破滅を避けるために、アメリカと成し遂げた共通の成果であると見られていたのだ。

グルジア、バルト三国を巡る歴史からシリア介入、北方領土問題まで、歴史を紐解きながら、ロシア側の論理を解読する本書は秀逸である。また、中国との関係性、北極エリアまで話は及ぶ。それだけロシアが複雑で広く、影響力を維持しながら注目されてきた由でもある。ウクライナ情勢を理解するためにも読むべき一冊ではないだろうか。

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2024年08月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2019年7月発行。コロナ禍とウクライナ侵攻前というと隔世の感が出てきた今日この頃(2023年4月)ですが、ロシアという国がどういった思想によって政治を行っているのかがよく分かる良書だと思います。

バルト三国やウクライナとの関係についてはここ最近よく取り沙汰されているので馴染みがありましたが、中東とロシア、北方領土、北極についてはまだまだ不勉強、というか北極を巡る攻防は初めて知りました。北極を中心にした地図を見ると不安が募ります。

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本書とはあまり関係がありませんが、バルト三国というとチャペック『オランダ絵図』の「小さな民族」の冒頭、ラトヴィア人の若者の「どの言語で仕事をしていくべきなのか」という苦悩を思い出します。バルト三国は、今まさにロシアから離れていこうとしていますね。

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2023年04月29日

Posted by ブクログ

2016年にプーチンとロシア軍について著した二冊によって新進気鋭の専門家として認知された筆者が今をときめくウクライナシリーズともいうべき論説を展開し始めた一冊。クリミア併呑、ドンパス侵攻に言及するのはもとより、そこまでに至るロシアにとっての「必然性」に関し幾つかの異なる角度から論考するお馴染みのパターンがもう確立している。本書では一見関連がなさそうな中東介入と北極戦略に関する二章が目を引く。

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2022年12月03日

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ジョージアが「ロシアとの紛争を抱えている限り、集団防衛機構であるNATOはロシアとの戦争を避けるために加盟を認めることはできない」
ウクライナが「ロシアとの終わらない紛争を抱えているということは、当面はNATO加盟が不可能になる」
「戦争状況を継続させることそのものがロシアの目標であると考えられよう
「ロシアにとって重要なのは、旧ソ連諸国に対して介入を行う際、西側がそこに横槍を入れてこないよう抑止しておくことである」

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2022年11月29日

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「境界」の概念を軸として、ロシアの地政学的戦略を解説。現在のロシアによるウクライナ侵攻前に出版された本だが、今に至るロシア(プーチン政権)の国際秩序等についての考え方(浸透膜のような境界観、「勢力圏」の論理など)について理解が深まった。
安倍政権下の北方領土交渉における日本の考え方がいかに甘々だったかも再認識した。日本はロシアから「半主権国家」とみなされてるというのは納得感があった。

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2022年10月31日

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プーチン大統領の頭の中を知りたい、西側の理論ではなくロシアの立場に立った時の見方を知るべきではないか、と思って何冊かの本を読んでいます。いくつかの発見はありました。例えば
・2007年2月のプーチン氏の演説は民主主義を標榜する西側の論理?のみが唯一の正義と見なされることに対する反論。
・クリミア侵略についての考え方としてクリミアはロシアと(ロシアの一部であるところの)ウクライナの共有財産であり地域安定のための重要なファクターなので強く安定した主権(ロシア)の下になければならない。
・他国に依存せず「自由」=自己決定権を自らの力で保持できる国だけがプーチン大統領の言う「主権国家」であり、この要件には軍事力(核保有含む)が含まれており、この能力を持たない旧ソ連諸国(ドイツも日本も)は真の「主権国家」ではないと見なされる。
・ロシア、中国にとって不安定で巨大な国家を統治する上で不可欠な体制が権威主義体制なのであり安易な民主化は国家の崩壊を招きかねないと見なされている。

プーチンにとっての言葉の定義(自由、主権国家など)は私達=西側とかなり違うことを再認識しましたが、プーチンは「国家」を優先する余りその中にいる「人」への優先順位が低くならざるを得ないのかと感じました。

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2022年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、身勝手にみえるロシアの行動の論理を理解するための材料を提供してくれる。我々とは違う国境観・主権観について説明し、ジョージア (本書では「グルジア」) やバルト三国、2014年のウクライナ危機、中東介入、日本の北方領土の実効支配、北極政策といった事例を解説しながら、その思想の説明を補足していく構成になっている。

ロシアの「主権」観は、自由民主主義陣営に生きる我々とは異なっている。我々は、国境ははっきりと定まったものであり、各国がその範囲において不可侵な主権を持つという現代的な価値観を共有している。しかしロシアの考える国境は、本書が半透膜に例えるように、近代以前の国家像に近い曖昧なものであり、ロシア民族の広がりにより伸び縮みする。
ロシアの考える「主権」は、ロシアやアメリカ、インド、中国など、独立した大国のみが持つものである (ドイツや日本すら主権国家とはみなされていない)。ソ連崩壊直後はアメリカによる一極世界だったが、現在は、そうした「主権国家」がそれぞれ勢力圏を従えている多極世界になりつつある。そしてロシアは、自らが主権の危機にあると考えている。
まず、国家のアイデンティティが曖昧になってしまった。ソ連の持っていた共産主義というアイデンティティは失われてしまい、かつ (「ほとんど我々」であるウクライナ人などを含む) ロシア民族が分断されてしまった。
そして、ロシアの勢力圏は次々にロシアの影響から外れていっている。その主な原因は民主化革命だが、ロシアはこれをアメリカ陣営の陰謀とも捉えており、これを防ぐことはロシアの「主権」侵害への正当防衛であると考えている。

本書は、このような理解をベースに、各事例をわかりやすく説明していく。時にエッセイ風の雑談を差し込みながら容易な口調で綴っていく文体で、とても読みやすかった。また、今後の見通しや現行政策の是非などについての筆者の意見も含まれており、興味深いものであった。特に、日本国民にとって重要な (とはいえ本書のいうとおり、ロシアにとっては広大な領土の一面に過ぎないことに注意すべき) 北方領土問題については、筆者の訪問体験から政策への意見に至るまで詳しめに書かれており、面白かった。類書と比べても読みやすく、おすすめできる一冊である。

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2022年05月31日

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ロシア政権が大国を維持しようとする思惑を転換できずに侵略という愚行へと決断する過程が、周辺国への体裁や意地を絡めて読み解いていく。置き去りにされるのは市井の人々であり権力は命の尊厳を躊躇わず踏みにじっていく。現在のウクライナ情勢しかり、何が急務なのか。様々な意見が飛び交う中、決して突き進んではいけないのは軍事力強化への道である。これは一部の人々の自己満足にとどまる。そうではなく外交努力に邁進することを願う。日本政府の不得手な手段なのだが。

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2022年05月13日

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ロシア目線での世界観がよくわかる1冊。
2022年のウクライナ侵攻は唐突感があると思っていたが、ロシア側の理屈の上では、いつ起きてもおかしくなかったことも理解できた。

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2022年04月24日

Posted by ブクログ

プーチンロシアの対外政策を、同国の国家観を踏まえて軍事的な話題を中心に考察した本

著者は小泉悠氏。ロシアのウクライナ侵攻により、今メディアで最も私達が目にしている人である。
ロシアの軍事、安全保障が専門。現在は東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野、専任講師。
出版は2019年。

本書において、ロシアとの関係で考察されている国はウクライナや日本(北方領土)をはじめ、シリア、ジョージア(著者は自身の意向でグルジアと記載)、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、北極。

今まさに世界的関心事のウクライナ侵攻、そして北方領土について、ロシアの政策や論理を知りたくて本書を手に取った。
軍事的な突っ込んだ記述も一部ありイメージできないところもあったが、基本的には非専門家でもわかりやすいように書かれており読みやすい。


ここではウクライナのことをご紹介します。

まずウクライナの基本的な情報として
•旧ソ連国
•広い国土、多い人口。旧ソ連指折りの重工業地帯と農業地帯
•ロシアとの密接な関わり。天然ガスの供給、パイプラインの通行料。多くの工業製品、農産物をロシアへ輸出。軍需産業は旧ソ連時代に築かれたソ連とのサプライチェーンに依存。ヒトモノカネの往来活発
がある。
またロシアにとってウクライナは、ベラルーシとともにスラブの兄弟で、「ほとんど我々」「同胞」という認識がある。

そしてロシアの対外政策を読み解く上で、ロシアの主権観ともいうべきものが重要で、それは
•ごく一部の大国のみが保持できるもの
•政治•軍事同盟に頼る国は完全な主権を発揮できない
•旧ソ連諸国は主権国家ではなく、ロシアの影響下におかれるのは当然
だという。

「ドイツは主権国家ではない」とのプーチンの驚くべき発言もある。
またプーチンの国家観を想像させるものとして、ロシア語の前置詞が紹介された。ロシア語には場所を意味する前置詞に「ヴ」と「ナ」があり、普通国名は「ヴ」を使うのだが、プーチンは独立国であるウクライナに対してすべて「ナ」を使う、と。


ウクライナは独立後、EUやNATO加盟を目指す(憲法にも明記)など西側諸国に近づいていったが、ロシアにとって、そんな「我々の」ウクライナの行動はとうてい容認できるものではないのだろう。
本書を読んで改めて思った。

一方で、ロシアの「対外政策には思想的要素と実利的要素、戦略的思考と場当たり主義の相克」があると述べられている。
場当たり主義、確かに。
今回のウクライナ侵攻におけるロシアの動機や目的は、連日の専門家の分析によりある程度理解できたところも多いが、そもそも「なぜ今このタイミングで侵攻?」などの基本的なことでわからないことが多かった。
そのわからなさに関しては、私は独裁的な国家体制かつプーチンの性格•精神状態によるところが大きいと思っていたが、ロシアの政策としてそういう場当たり主義的なところがあるのであれば、納得できる(もちろん自分が見逃している事実や視点もあるだろう)。


北方領土問題…こちらも解決の道のりは非常に険しい。これまで以上につくづくそう思った。

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2022年04月16日

Posted by ブクログ

刊行から少し時間は経っているものの、特に前半では「ロシアが考えていること」がわかる。バルト三国、グルジアの話は今目の前で起こっているウクライナの状況に通ずる部分が多く、何か解決の糸口はないか、と考えさせながら読んだ。

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2022年02月27日

Posted by ブクログ

Twitterで人気のイズムィコ先生著。プーチンの"主権国家"観をベースに現代ロシアの外交戦略を分析。「安全保障を自国で完結できて初めて主権国家であり、日本もドイツも非主権国家」とのロシアの(プーチンの?)安全保障感覚は言われるとめちゃくちゃ納得する解釈だった。シリアにロシアが絡む理由とか全然分かってなかったが、改めて納得。読みやすい文章やし、サントリー学芸賞にハズレなしという法則を改めて実感。

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2020年06月05日

Posted by ブクログ

著者が実際に歩いたロシアの周縁部の風景から、ロシアにとっての国境、ひいては国家観が描き出される。

ソ連という国はなくなったし、それはロシアとは異なるものだということは分かってはいても、ロシアの人々にとっては、どうもすんなり片付けられるものでもないというのが、旅先で出会った人たちの話すあれこれから浮かび上がる。
旧ソ連諸国とは冊封体制のような関係で、自分たちはその中心でありたい、というものなのだろう。
少なくともチャイナのように、全世界の中心を考えているわけではなく、自意識としてはあくまでも旧ソ連邦の範囲内というのがロシアらしい。米と張り合っての超大国はもう目指すべくもないということか。
無論その自意識は、もうソ連の一員ではなくなったのだから干渉しないでくれ、という国々とは軋轢を生むし、またその自意識は少なくとも北方領土においてもそれがその枠内にある以上、日本との交渉もうまくは進まないだろうことも容易に推測できる。

ウクライナ紛争についても、この視点からの解説である。
自分などウクライナの場所も地図を見てもあやふやで(、というか先日ポンペイオも記者から場所がわかるかと問われて激昂したらしいが、)あの紛争の内実もよくわからなかったが、ウクライナ海軍の総司令官が、クリミアが侵攻された後には、ロシア黒海艦隊の副司令官になったとかいうくだりを読むと、紛争と言っても自分らが持つ領土戦争の感覚では到底理解出来なさそうで、今後も下手にコメントしないようにしようと思う。

全編通して、大陸国家と海洋国家の国家観の違いについて、改めて驚くとともに、日本を含め周辺国を主権国家とは見ていないロシアの本音がチラホラと見え隠れする様に、やっぱり核武装は必要との思いを強く持つに至る。

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2020年02月04日

Posted by ブクログ

大国ロシアを取り囲む極東(および中国)、北極、西方(=西側諸国との境界となるNATOおよび旧ソ連邦)と中東に関し、とりわけ軍事的観点に軸を置いた政治的状況を概観する。
ストーリー的というよりは現状分析的内容(歴史から読み解くというよりは軍事的重要性の読み解きや目下軍事行動などからロシアの現状の考え方を整頓する内容)。
誤解を恐れずに表せば、架空戦争モノの漫画やアニメのようなクリアな整理がどんどん出てくるエンターテインメントとして読める。他方、ニュース解説を聞いているような感じで、ロシアをわかったという気にはあまりならないと感じた。

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2022年03月05日

Posted by ブクログ

丁度、読んでいる瞬間にロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ウクライナとロシアの関係についても言及されており、侵攻にいたった経緯を理解できた。ロシアが北方領土問題を抱える我々日本の隣国であることについても記述されており、筆者の旅の感想がリアリティーがあり、興味深い。

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2022年03月01日

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