断片的に捉えていたウクライナ問題を体系的に理解するに有益な本だった。また、ロシア関係だけではなく、最も意識すべき中国に繋げて議論される。個人的には台湾有事とウクライナ戦争がストレートには繋がらない。その視点でも読んでみた。
2003年のイラク戦争はアメリカが全くロシアの言うことを聞かずに開戦した。
...続きを読むそれまではロシアもG8に参加し、西側との全面戦争は無いのだからと徴兵制を廃止しろと言う主張をしていた。それと前後して2003年にジョージアでバラ革命、2004年にはウクライナのオレンジ革命。そこでウクライナがNATOに加盟すると言い出した。2005年にはキルギスでチューリップ革命。この一連のカラー革命をプーチンや彼のブレーンたちは、アメリカの陰謀だと思い込んだ。
よく言われるのは、東西ドイツ統一時のNATO東方不拡大発言の反故。本著では「アチソン発言」を引き、開戦に踏み切る2ヶ月前の2021年12月、プーチンとバイデンが電話会談にも原因を求める。ロシアがウクライナに侵攻しても米軍の派遣は行わないと明言。バイデンの失言だと。
中国について。人民解放軍が創設100周年を迎える2027年までに戦闘体制の全面強化を宣言、台湾有事可能性があると。しかし、武力を背景に統一させても遺恨は残り、そんな事をせずとも爆発的な変化を起こさずじわじわと原状変更できるなら中国にはその方が良策。諸刃の剣となる経済制裁に及びたくない西側の利害とも一致する。敢えて手を汚さない。その為には、ロシアがウクライナと戦争状態に無い方が良い。どちらが勝つかではなく、決着がついていないとアクションが判断できない。ならば、後4年、中国を動かさないためには。連関する事情はあるような気がする。