小泉悠のレビュー一覧
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ロシアが専門の軍事研究者が、ウクライナ戦争開戦の年(2022年)9月までの情勢について書いた新書です。
国際政治にも軍事にも疎いわたしですが、なんとか読み切ることができました。
ゼレンシキー大統領自身も大統領に就任するまではほとんどウクライナ語が喋れなかった(p.67)というのは初めて知りました。
「ロシア、ウクライナ、ベラルーシが民族的・言語的に多くの共通性を持ち、多くの歴史を共有してきたことは客観的事実として否定はできないだろう。」(同上)
このことは、この戦争の背景、プーチンの思考回路を推測する上で示唆的でした。
ウクライナは無垢でも無謬でもないけれど、今回の戦争はロシアによるウクラ -
Posted by ブクログ
YouTubeで三宅香帆さんがオススメしていたので読んでみた。とても面白かったし、いっぱい気づきを得られた。
著者はロシアの軍事専門家で、一時期ウクライナ戦争のコメンテーターとしてテレビにたくさん出てた人だ。
正直、ロシアの軍事情報にはあまり興味もないし、積極的に知ろうとも思わない。
ただ、ロシアの軍事情報なんて普通は取得できないものを、どのように入手して、どのように分析するのか?周辺情報の入手の仕方、得た情報の分析の仕方がとてもわかりやすく面白かった。まさか個人でお金払って衛星写真を手に入れられるなんて!
軍事情報だけではなくて、ビジネスマンとしての情報の取得方法、分析の仕方など、学ぶべ -
Posted by ブクログ
良書。
安全保障や軍事に関して基本的なところは知識があると、なお読みやすい。
「もし。日本が戦争に巻き込まれるとしたら?」というシナリオは4章にあるのだが、著者も書いているとおり、正確に予測することは出来ない。
この本で重要なのは特に「2章 軍事力とは即応力である」ではないかと思う。一般的な軍事力の比較では、なぜ兵員数と装備品(航空機・艦船等)の総数で比較されるのか、なぜそれが実態を現していないのか、これまで十分に説明されてこなかった点を明確に解説している。
またその理解により、装備品のスペックでの優劣を測る傾向や空母保有論、核武装論まで、巷の軍事情報通?の方々の主張するポイントがなんだかなぁ -
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▼最も印象に残って今後意識したいこと
提供対象者と解像度を合わせる
▼粗約
まずは地道に情報収集(定点観測)して差異を見出す。足でも生の情報を稼ぐ。専門家のものも読む。
それらを組み合わせて分析対象の思考をエミュレート(模倣装置)する装置を頭の中に作る。
定期的にアウトプットして足りない情報を発見してまた収集する。
それを繰り返しアウトプットにつなげていくというスパイラルを生む
▼その他印象に残ったところ、つなげられそうなこと
現代は情報入手のコストが下がったが、分析する処理装置を持つ人はまだ少ない
情報分析は料理と同じ。素材(生の情報)を加工、分析してインテリジェンス(料理)にしてお客さんに -
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職場同僚の紹介。
Audibleにて。
サイバースペースは仮想世界のはなしとして、どこかふわふわと世界で唯一のフラットで境界のないものを想像してしまいがちだ。
この本ではサイバースペースを実現するための最重要物理層である、データセンターおよび海底ケーブルに着目し、実際に現地で取材した内容をもとに、そのようなイメージを払拭し、サイバースペースにおける地政学を講じている。
日頃デジタル技術を利用するときには意識しないが、堅実にその便利さを支えてくれているインフラに気づかせてくれるとともに、その危なっかしさを学ぶこともできる学びの多い本だった。 -
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イズムィコ同志の新刊は原点回帰のロシア軍事について。原子力潜水艦の配置や戦略の歴史を説明するとともに、オホーツク海の原子力潜水艦の現状については一人OSINTで長期間衛星画像を分析して記述しています。
なるほど、永久凍土の上に基地を作って丸見えになることを考えると海底に潜水艦でミサイル基地を作ってしまう方が合理的なんでしょうし、置くなら凍らないバレンツ海と凍る期間が限定的なオホーツク海というのは理にかなってます。とはいえご近所にそんな物騒なものを置かんでくれとも思うわけで……。
れにしてもイズムィコ先生、連日テレビでウクライナ情勢を解説しているというのに執筆の時間があるのさえ不思議なのですが、 -
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「今や米国にとっての第一義的な懸念はテロリズムではなく、国家間の戦略的な競合である」(米国防総省『国防戦略』2018)
ルパート・スミス『軍事力の効用』
「…戦争はもはや存在しない」
核兵器を用いた国家間の大規模戦争は人類の破滅を意味しており、戦争によって達成されるべきあらゆる政治的目的を無意味にしてしまうからである。
「プーチンは、ソ連における彼の前任者や現在の習近平と同じだけの力を持ってはいない。しかし、ロシアは1990年代にそうであったような、弱いガタガタの国家ではないのである」マイケル・マクフォール(ロシア研究者)
P.60
「ウクライナ危機の後、NATOは大きく変わりました。あ -
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オホーツク核要塞
歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略
著:小泉悠
朝日新書943
潜水艦とその探知技術の革新史と理解しました
イノベーションの流れは、以下のようなものではないか。
■第2次世界大戦終了 ⇒ 冷戦の軍拡競争がはじまる
通常潜水艦 ⇒ 原子力潜水艦 乗員の体調が許すかぎり潜航できる
核ミサイルを搭載 ⇒ 航行距離が短いので、沿岸にまで忍び寄って発射する必要
⇒ 世界中の海にソナーを設置 潜水艦を探知
海峡にソナーを設置 ⇒ 対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡 ⇒ 日本海は我ら、日米の内海化
⇒ソ連の原潜の無音化 ⇒ 海流にのって、対馬海峡から宗谷海峡へ
大量のミ -
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HIMARSの果たした戦術的役割については知らなかった。この本が書き上がった当時はまだワグネルの代表が謀殺されていなかったことを思い返し、時の流れの速さを感じる。著者が繰り返し「この戦争の第一義的責任はまずロシアにある」と、ロシアウクライナどっちもどっち論の欺瞞を繰り返し払い除けてくれているのも好印象であった。軍事理論面では、アンドレイ・ココーシン『軍事戦略の政治・社会学』(2005)における「全体戦争」の条件定義を紹介した上で、今回の第二次ロシアウクライナ戦争は「限定全体戦争」と呼びうる、という紹介があり興味深い。(小泉2022: 215-216)