小泉悠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
プーチンロシアの対外政策を、同国の国家観を踏まえて軍事的な話題を中心に考察した本
著者は小泉悠氏。ロシアのウクライナ侵攻により、今メディアで最も私達が目にしている人である。
ロシアの軍事、安全保障が専門。現在は東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野、専任講師。
出版は2019年。
本書において、ロシアとの関係で考察されている国はウクライナや日本(北方領土)をはじめ、シリア、ジョージア(著者は自身の意向でグルジアと記載)、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、北極。
今まさに世界的関心事のウクライナ侵攻、そして北方領土について、ロシアの政策や論理を知りたくて本書を手に取った。
軍事的な突っ込んだ記述も一部ありイメージできないところもあったが、基本的には非専門家でもわかりやすいように書かれており読みやすい。
ここではウクライナのことをご紹介します。
まずウクライナの基本的な情報として
•旧ソ連国
•広い国土、多い人口。旧ソ連指折りの重工業地帯と農業地帯
•ロシアとの密接な関わり。天然ガスの供給、パイプラインの通行料。多くの工業製品、農産物をロシアへ輸出。軍需産業は旧ソ連時代に築かれたソ連とのサプライチェーンに依存。ヒトモノカネの往来活発
がある。
またロシアにとってウクライナは、ベラルーシとともにスラブの兄弟で、「ほとんど我々」「同胞」という認識がある。
そしてロシアの対外政策を読み解く上で、ロシアの主権観ともいうべきものが重要で、それは
•ごく一部の大国のみが保持できるもの
•政治•軍事同盟に頼る国は完全な主権を発揮できない
•旧ソ連諸国は主権国家ではなく、ロシアの影響下におかれるのは当然
だという。
「ドイツは主権国家ではない」とのプーチンの驚くべき発言もある。
またプーチンの国家観を想像させるものとして、ロシア語の前置詞が紹介された。ロシア語には場所を意味する前置詞に「ヴ」と「ナ」があり、普通国名は「ヴ」を使うのだが、プーチンは独立国であるウクライナに対してすべて「ナ」を使う、と。
ウクライナは独立後、EUやNATO加盟を目指す(憲法にも明記)など西側諸国に近づいていったが、ロシアにとって、そんな「我々の」ウクライナの行動はとうてい容認できるものではないのだろう。
本書を読んで改めて思った。
一方で、ロシアの「対外政策には思想的要素と実利的要素、戦略的思考と場当たり主義の相克」があると述べられている。
場当たり主義、確かに。
今回のウクライナ侵攻におけるロシアの動機や目的は、連日の専門家の分析によりある程度理解できたところも多いが、そもそも「なぜ今このタイミングで侵攻?」などの基本的なことでわからないことが多かった。
そのわからなさに関しては、私は独裁的な国家体制かつプーチンの性格•精神状態によるところが大きいと思っていたが、ロシアの政策としてそういう場当たり主義的なところがあるのであれば、納得できる(もちろん自分が見逃している事実や視点もあるだろう)。
北方領土問題…こちらも解決の道のりは非常に険しい。これまで以上につくづくそう思った。 -
購入済み
読みやすい貴重な本
ロシアに関する本自体が少ないので、読みやすいだけでいい本になってしまいます。
ひとつひとつのかたまりが短くて、内容がかわるので、あきずに読めます。
ロシアに対して良いことを書いてある本はとても少ないので、そう思いながら読むのにはいい本だと思います。 -
Posted by ブクログ
著者が実際に歩いたロシアの周縁部の風景から、ロシアにとっての国境、ひいては国家観が描き出される。
ソ連という国はなくなったし、それはロシアとは異なるものだということは分かってはいても、ロシアの人々にとっては、どうもすんなり片付けられるものでもないというのが、旅先で出会った人たちの話すあれこれから浮かび上がる。
旧ソ連諸国とは冊封体制のような関係で、自分たちはその中心でありたい、というものなのだろう。
少なくともチャイナのように、全世界の中心を考えているわけではなく、自意識としてはあくまでも旧ソ連邦の範囲内というのがロシアらしい。米と張り合っての超大国はもう目指すべくもないということか。
無論その自意識は、もうソ連の一員ではなくなったのだから干渉しないでくれ、という国々とは軋轢を生むし、またその自意識は少なくとも北方領土においてもそれがその枠内にある以上、日本との交渉もうまくは進まないだろうことも容易に推測できる。
ウクライナ紛争についても、この視点からの解説である。
自分などウクライナの場所も地図を見てもあやふやで(、というか先日ポンペイオも記者から場所がわかるかと問われて激昂したらしいが、)あの紛争の内実もよくわからなかったが、ウクライナ海軍の総司令官が、クリミアが侵攻された後には、ロシア黒海艦隊の副司令官になったとかいうくだりを読むと、紛争と言っても自分らが持つ領土戦争の感覚では到底理解出来なさそうで、今後も下手にコメントしないようにしようと思う。
全編通して、大陸国家と海洋国家の国家観の違いについて、改めて驚くとともに、日本を含め周辺国を主権国家とは見ていないロシアの本音がチラホラと見え隠れする様に、やっぱり核武装は必要との思いを強く持つに至る。 -
Posted by ブクログ
ディスインフォメーションをキーワードに現在の情報安全保障に関して3人の著者がそれぞれの観点から各章をまとめた本。特に現代情報戦争における物理インフラと情報インフラに焦点を当ててるのが特筆すべき点であった。物理インフラのレジリエンスや、企業に掌握される論理インフラのガバナンス不透明さなど、これらが戦時に与える影響とその対応について、高市政権が考える国家情報局で十分に検討されることを望む。
そもそもサイバー空間はそろそろ規制が必要かもしれない。「民主主義が脅かされている」という具体的な一面を知った。しかしながら、自由な情報の堅持、データの分散、選挙の保護、で、民主主義を守ってく必要はある。
情報はもはや闘争手段のひとつであって安全保障の一領域である。 -
Posted by ブクログ
ロシア・ウクライナ戦争について、自称軍事オタクの著者が書いた本。確かに戦闘機や武器の名前など頭に入らない内容も多かった。しかし、我々からすると理不尽極まりないロシア側の言い分もロシアの支配層からすると正義になるという自国第一主義の感覚を改めて感じた。ロシア国民も世界的な見られ方を理解しているだろうが身に危険が及ぶため黙認するしかない、というのは社会主義/共産主義国家の宿命か。
また、今やイラン戦争を起こし、自分の都合で停戦合意に持ち込んだアメリカ(トランプ)の関わり方は、ロシア・ウクライナ戦争にも通ずるところがあると思いながら読んだ。自分の主義主張がこれだけ真逆に振れても、自信満々でいられるというのはトランプのみならず日本の政治家も同じことであり、政治家というのはどれだけ顔の皮が厚いのかと思い知らされた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦争の解説など、丁寧でよかったのに、ウクライナカフェをやる、というくだりを読んだときに、すごくがっかりした。学生らしい初々しい感じがあるけど、理解を深めるのに、転校してきたばかりの言葉も不自由な子がメインのカフェをやる必要、本当にあるんだろうか? 飲食業の大変さを知る者として、この展開が一人の生徒の意見を優先したものという形に読めてしまうことに、すさまじい違和感しかない。ウクライナカフェをやるとして、その食事などはどう準備するのだろう? ウクライナ料理のレシピなどはこの女の子に聞くのだろうか? そうすると一人の生徒に一クラスの連帯という(しかもこの子は言語が不自由なのだ)凄まじい責任を押し付けてしまうことになるだろう。
この登場人物たちは、まだ生身の人間ではないから傷つかないと思うけど、多分現実の世界にはもっと深刻なトラウマを抱えた子もいるはずで、そういう彼らにとっては、カフェの出し物なんかが救いになるわけないだろう、と私なんかは思ってしまう。
まあ架空の話だから良いとして、これを読んだ学生がどう思うかということは考えた方が良い。私はこの本を反面教師に読んだ。やるとしても多文化共生イベントとか、そういう形にできなかったのだろうかと思えてしまう。
とまあ私自身は、結末に納得できなかったが、学生が考える材料としては良いと思う。移民の人数や地域差によっては、カフェとしてやる意味もあるのかもしれない。ただ、その場合でもウクライナだけに偏らないことも必要になる、ということは生徒間で考える必要も出てくるだろう。私が先生なら、学生のアイデアとしては100点をつけ難い案であることは書いておいても良いと思う(まあ、だがそもそも正解はあるのか、となると、難しいが……)。 -
Posted by ブクログ
純粋な「戦争」に対する自分の立場としては全ての戦争は無くなればいいと思っている。だってそれが歴史を通じて日本のみならず世界が学んできたことだと思うから。それでも戦争がなくらないのはどうしてだろうと考えた時に結局みんな戦争が起こってしまうかもしれないという可能性を恐れて自分たちの国を守るために牽制として仕掛けているのではないかと思う。なんとも本末転倒とも理にかなっているとも言える事態である。本書を読めば、やはり想像を遥かに超えるウクライナ、ロシア双方、さらにはヨーロッパやアメリカにとっても複雑な問題であるということは火を見るより明らかだ。だから、外から戦争やめろとヤジを飛ばすのはナンセンスである。
また、日本もまた他人事としては捉えられない。ここで問題になるのが、日本が戦争に対してどのような立場をとるのかということである。すなわち、核を持ち軍事費を増加させるのか、平和主義を貫き自衛のためだけの能力に限り保持するのかということである。前述の通り私は戦争を避けるのがもっとも重要なことだとは思うが、起きてからじゃ遅いのもまた一理ある。ここでは流石に結論を出すことはできないが、戦争が起きないに越したことはないと思う。