小泉悠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ユーゴスラヴィア、セルビアにはじまり、グルジア(バラ革命)、ウクライナ(オレンジ革命)、キルギス(チューリップ革命)、チェニジア(ジャスミン革命)からアラブの春に至るまでの民主化ドミノを、NATO およびアメリカによる謀略の結果であると捉え(事実、まんざら「陰謀論」でもないところがある)、これを非軍事手段による永続戦争であると定義した上で、ハイブリッド戦争(SNS を通じた人心操作から戦略核兵機使用まで、軍事・非軍事両面による目的遂行または状況作成のための行為)で応戦する現代ロシアの軍事戦略を描く。
2022年2月末に始まったウクライナ戦争を予言するかのように、2021年5月に刊行された現代ロシア軍分析の最前線で、最新の政治思想・軍事思想を網羅して圧巻。ウクライナ戦争を理解する上で、必読の一冊。 -
Posted by ブクログ
プーチン大統領の頭の中を知りたい、西側の理論ではなくロシアの立場に立った時の見方を知るべきではないか、と思って何冊かの本を読んでいます。いくつかの発見はありました。例えば
・2007年2月のプーチン氏の演説は民主主義を標榜する西側の論理?のみが唯一の正義と見なされることに対する反論。
・クリミア侵略についての考え方としてクリミアはロシアと(ロシアの一部であるところの)ウクライナの共有財産であり地域安定のための重要なファクターなので強く安定した主権(ロシア)の下になければならない。
・他国に依存せず「自由」=自己決定権を自らの力で保持できる国だけがプーチン大統領の言う「主権国家」であり、この要件には軍事力(核保有含む)が含まれており、この能力を持たない旧ソ連諸国(ドイツも日本も)は真の「主権国家」ではないと見なされる。
・ロシア、中国にとって不安定で巨大な国家を統治する上で不可欠な体制が権威主義体制なのであり安易な民主化は国家の崩壊を招きかねないと見なされている。
プーチンにとっての言葉の定義(自由、主権国家など)は私達=西側とかなり違うことを再認識しましたが、プーチンは「国家」を優先する余りその中にいる「人」への優先順位が低くならざるを得ないのかと感じました。
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Posted by ブクログ
曖昧で追いつけていなかったクリミアから今回のロシア侵攻までの流れを学ぶことができた気がする。
特にハイブリッド戦争と目されるものがどのよな位置付けであったかについても。初期対策をされてない状況では、初見殺しになるのだなと素人ながらに。
今回のロシアのウクライナ侵攻が特に東側で古典的な戦闘になっていると聞いていたことも、この本を通して腑に落ちる気がした。とにかく、使えるものはなんでも使って成果を上げるのが大事、という姿勢なのかなと素人ながらに思った。
一般回線を使わざる得なくなったり、情報戦で撹乱されていたり、今回のロシア軍側で聞いたような話もあり興味深かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書は、身勝手にみえるロシアの行動の論理を理解するための材料を提供してくれる。我々とは違う国境観・主権観について説明し、ジョージア (本書では「グルジア」) やバルト三国、2014年のウクライナ危機、中東介入、日本の北方領土の実効支配、北極政策といった事例を解説しながら、その思想の説明を補足していく構成になっている。
ロシアの「主権」観は、自由民主主義陣営に生きる我々とは異なっている。我々は、国境ははっきりと定まったものであり、各国がその範囲において不可侵な主権を持つという現代的な価値観を共有している。しかしロシアの考える国境は、本書が半透膜に例えるように、近代以前の国家像に近い曖昧なものであり、ロシア民族の広がりにより伸び縮みする。
ロシアの考える「主権」は、ロシアやアメリカ、インド、中国など、独立した大国のみが持つものである (ドイツや日本すら主権国家とはみなされていない)。ソ連崩壊直後はアメリカによる一極世界だったが、現在は、そうした「主権国家」がそれぞれ勢力圏を従えている多極世界になりつつある。そしてロシアは、自らが主権の危機にあると考えている。
まず、国家のアイデンティティが曖昧になってしまった。ソ連の持っていた共産主義というアイデンティティは失われてしまい、かつ (「ほとんど我々」であるウクライナ人などを含む) ロシア民族が分断されてしまった。
そして、ロシアの勢力圏は次々にロシアの影響から外れていっている。その主な原因は民主化革命だが、ロシアはこれをアメリカ陣営の陰謀とも捉えており、これを防ぐことはロシアの「主権」侵害への正当防衛であると考えている。
本書は、このような理解をベースに、各事例をわかりやすく説明していく。時にエッセイ風の雑談を差し込みながら容易な口調で綴っていく文体で、とても読みやすかった。また、今後の見通しや現行政策の是非などについての筆者の意見も含まれており、興味深いものであった。特に、日本国民にとって重要な (とはいえ本書のいうとおり、ロシアにとっては広大な領土の一面に過ぎないことに注意すべき) 北方領土問題については、筆者の訪問体験から政策への意見に至るまで詳しめに書かれており、面白かった。類書と比べても読みやすく、おすすめできる一冊である。 -
Posted by ブクログ
軍事情報の機密性はどの国でも高く、他国が正確な必要十分な量のそれを得ることは難しいだろう。
しかし本書では、ロシアの公的な軍事関連の発表や実際の演習•紛争行動や、それらに関連する米国含めNATOの分析を幅広く集め、さらにそれを分析し考察されている。
ロシアの軍事専門家である著者。ロシアのウクライナ侵攻を契機にメディアに引っ張りだこである。
著者が自身でロシア軍事の「オタク」と評するように、本書はその「オタク」的知識が、テレビとは異なり十分に発揮されているように思われる。あまりの筆のノり具合に、多少の軍事知識を持っていないとその疾走感に振り落とされそうになってしまうので注意が必要です。
ロシアは虚実織り交ぜ冷静に戦略的に行動している程度が他国に比べて強いと思われ、また何を考えているのよくわからないという漠然とした恐ろしさを感じさせる。
本書のような(高度な)分析をしている人間やその分析を理解して戦略を立てている国家、組織が存在している一方で、それすらも承知の上でロシアは軍事戦略を立てているのではないかと思わずにはいられない。
ロシアの軍事戦略に関して、本書を通じて理解はかなり深まる。しかしその理解は不十分であり今後もそうであり続けるだろうという認識を持っておくのが無難そう。