小泉悠のレビュー一覧
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小泉悠さんの著作。ストーリーとしてよく組み立てられていて、北方領土訪問の導入は成功だと思う。読み始める前はやや警戒していたがどんどん読み進めてしまった。
西欧近代がいわゆる「モダン」であり、国民国家をベースとして組み立てられてられているのに対し、ロシアは融通無碍でロシア人がいるところが「ロシア」であるといういわゆる「帝国」概念に基づいている。その中でも、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(著者はグルジアと呼ぶ)は特に重要な国=地域でその国々が独立して西欧的な国民国家になるのは「帝国」を脅かす脅威と認識される。
ただこの考え方はあくまで権力者目線だと思うわけで、結局モスクワ、サンクトペテルブルクの市民もマクドナルドやコカコーラに代表される西欧文化を満喫していたことからも分かるように、別にロシアなるものは鬱屈した権力者や弱者のアイデンティティを慰める概念でしかないんだと思う。そんなことより、ロシアは地方に目を向けて全国民的に真の意味で豊かになれば、別にウクライナだって反発はしないだろうし、日本だってそこまで警戒はしない。要はそういうことなんだと思うので、プーチンには仮想現実的世界にでも引きこもっていただいて、その世界で自由にやってもらいたい。その意味でメタバースの発展は世界を救うかもしれず、一刻も早い進化が待ち望まれる。 -
Posted by ブクログ
【あるいは、ロシアを夢見る巨人と見立ててもよいかもしれない。ユーラシアの巨大な陸塊の上で、ロシアは壮大な「勢力圏」の夢を見ている】(文中より引用)
「地政学」や「勢力圏」といったキーワードを軸としながら、冷戦崩壊後のロシアが持つ国際秩序観を丸裸にしようと試みた一冊。著者は、東京大学先端科学技術研究センター特任助教を務める小泉悠。
ロシアに関する作品は数あれど、ここまで同国の国際秩序観を支える内在的論理・感情に迫った一冊は稀なのではと思うほどの名著。サントリー学芸賞を受賞したのも宜なるかなというほどの充実ぶりで、今後もこの著者の作品は追っかけていきたいなと。
今年のトップテンに入ってきそう☆5つ -
Posted by ブクログ
ロシア独自の「勢力圏」概念及び、ロシアの言う「主権」がようやく、どんなモノなのか理解に近づくことができた。
ロシアが「勢力圏」や「主権国家」をそのような意味で用いることは理解する必要があるが、その「勢力圏」や「主権国家」概念を受け入れることは決してできないことがウクライナやバルト三国などの「事例」を通じて、理解できた。
また、北方領土問題を抱える日本としては、これは決して他人事では無く、現在進行形且つ自らの身に降りかかっている火の粉である。
なればこそ、ロシアの概念としての「勢力圏」や「主権」を理解する必要がある。そして、その概念からして、「共同経済活動」が穂法領土の返還に繋がるものでは無いという結論は容易に導き出せる。(そもそも先方に「返還」の意思などない。 -
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「職業的軍事オタク」を謙虚に自称する著者のウクライナ戦争に関する論考です。
この戦争を5つの視点から分析しています。
まず、双方の軍人、そして主にウクライナの民間人の戦争での死者数。次に戦争を仕掛けたロシアの軍事戦略。3つ目がロシアの軍事政治経済を合わせた戦争遂行能力の強みと弱み。4つ目は諸外国の国益や思惑を踏まえたロシアへの対し方。そして最後に日本はどうするべきか。
普段目にする言論や報道には、ともすれば、自分にとって都合が悪いことや気に入らないことに目を向けずに「ないことにしてしまう」 傾向がありますが、調査と根拠に基づいて展開されるこの本の論考には説得力があります。
特に最後の章でウクライナの経験から学ぶこととして、ひとたび相手国が自国に対して戦争を始めてしまえば、主権の放棄に等しい理不尽な要求を飲んで自国民の苦しみを受け入れるか、さもなくば、自国民が命を落とし続けるのと引き換えにあくまで抵抗するか、の二者択一が待っている、との結論を述べていました。これが今ウクライナが直面している事態です。そして、日本が同じ目に遭いたくないならば、何としても抑止を維持しなければならないと。
深くうなずける言葉でした。
普段の断片的なニュース報道を全体的、包括的に理解できることもあり、とても良い本だと思いました。 -
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まずは、この戦争による死者の数から語りはじめる。この後に、軍事戦略やロシアの国内政治・対外関係、あるべき安全保障などもろもろ述べられていくことについて、意味合いをあたえる役割がある。著者の矜持であるとおもう。ロシア軍の戦死者数は陸上自衛隊の総数を上回ると言われると「ああ、そうなのか」となる。逆に言うと、そうでもしないことには余りに数が多くて実感が湧いてこないのだ。
著者の言説はあちこちで目にしているので、おさらい的な読書ではあったが、読んでよかった。予想外のウクライナの抗戦を支えたのは士気の高さで、その士気の高さの原因のひとつは2014年の第一次侵略後の占領地でのロシアの非道であろうという(ロシアにとっての)自業自得。また、人類は核兵器をうまくマネージできないのではないかとの懸念を再認識。また、特に日本のような「小国」は、リアリズムぶって国際秩序みたいなものを軽視してはいかんとの主張にはまったく同感。 -
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ロシアがウクライナに戦争を仕掛けて4年経過するが、停戦・終戦の兆しは報道されていない。本書の考察では、電撃的な作戦により1週間程度で勝負は決し、ウクライナ政府はロシアの支配下に治まる見込みだったのだろうとされるが…。
本書で展開される論考の是非を検証する能力は持ち得ていないので、データや公開情報をもとに著者が論考したものとして教えを乞うが、本当に気が重い状況だと思う。何より、そこには戦死者が存在するのだから。兵士も、戦場に生活する人も、全ての人には生活があり、人生があるのに、全て破壊されていく。地方の貧困層出身が戦死者の多くを占める兵士の属性も哀れだ。弾丸やドローンが飛び交う戦場だけでなく、経済的な側面、著者が言う経済戦線も愚かだ。
戦争で守るべきものとされる国家主権は最上のものなのか? 個人にとって、国家主権より個人の生命・財産のほうが大切なのではないか? 防衛装備(武器の言い換え)移転三原則の転換や経戦能力の強化等の文言が政府から発信される度、憂鬱で腹立たしくなる。
『Made in JAPAN』と刻印された自爆ドローンの破片を見た被害者は何を思うんだろう。
日本の仮想敵となる国は、核兵器を持つ巨大国家だろう。資源がない日本が経戦能力を高めた先には紙風船で爆弾を飛ばし、簡易ドローンと称することになるのではないか? 巨大国家に戦線を開いた太平洋戦争と同じ道のりにならないか? いろんなことが、うまくない方向に流れていっている気がする、暗澹な読後だ。 -
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2022年の「ウクライナ戦争」続編。
前書から3-4年が経ち、戦況、経済的状況、国際情勢、武器・兵力の確保、戦術としてのドローンの普及などの変容を総括し、現代の環境で起こり得る戦争の姿や我が国で取り込むべき教訓について書かれた論考。
大半がロシア(とウクライナ)について書かれているが、そこからエッセンスを抽出したという点で、確かに「現代戦争論」でもある。
特にドローンの普及により戦争当事者の行動が互いに筒抜けとなり、戦闘の様相が視認できる範囲での肉弾戦となっているというのは、筆者ならではの指摘ではないか。
巻末の「いかなるときにも、なにごともお願いしてはいけません。とくに、自分より強い人にはお願いしてはいけません」という悪魔の台詞は、性善説に立つ我が国の外交当局者や大半の政治家、マスコミに対する痛烈な指摘だろう。 -
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最近コパイロットでデータの分析をすることが増えたが、その分析結果を受けて何をするかがうまくできてないと感じていたので読んでみた
アクションや提案まで変換するには、①バックグラウンド情報、②コア情報、③足で稼ぐ情報 の3種類が必要だが、コパイロットの分析で不足しているものを補うのが大事かなと思った。どれご足りていないかを知るには、人と会話してヒントを得るのも必要かも
情報調理するには、可能行動(起こりうることのマックス値)×意図(確率)で捉えるのが大事。特に意図の方は、人によって合理性が異なるので、行動様式を理解することが必要。異なる立場、文化の人の本を読むのが良いらしい -
Posted by ブクログ
◯ロシア・ウクライナ戦争が突きつけた現実
・「古典的な戦争」の回帰:21世紀において、主権国家同士が領土を巡って大規模な軍事力を行使する「正面衝突」が再発した。これは、冷戦終結後の世界が期待していた「ハイテク・ピンポイント攻撃による短期決着」という幻想を打ち砕いた。
・消耗戦の再来:精密誘導兵器の重要性は変わらないものの、実際には大量の砲弾、装甲車、そして兵士の「数」が勝敗を分かつ、第一次・第二次世界大戦のような物量戦・消耗戦の側面が色濃く出ている。
・核の影とエスカレーション・マネジメント:ロシアが核による威嚇を行うことで、西側諸国の直接介入を抑止している。核保有国による侵略をどう食い止めるかという、核抑止論の新たな課題が浮き彫りになった。
◯現代の戦いを変えたテクノロジー
・戦場の可視化(透明化):ドローン、商用衛星、SNSの普及により、戦場の様子がリアルタイムで把握されるようになった。「不意打ち」が極めて困難になり、情報の隠蔽がほぼ不可能となっている。
・非国家主体の関与:スターリンク(衛星通信)を提供するスペースX社や、サイバー防衛を支援するマイクロソフト社など、民間企業の技術力が国家の防衛力を左右する重要なファクターとなった。
・認知戦と情報空間:単なる武力行使だけでなく、SNSを通じた世論工作や、自国の正当性を訴える「物語の構築」が、国際的な支援を取り付けるための死活的な戦場となっている。
◯国際秩序の変容と日本の展望
・グローバル・サウスの動向:欧米対ロシアという構図だけでなく、中立を保ち自国の利益を優先する発展途上諸国(グローバル・サウス)の影響力が増大し、世界が多極化している。
・「力による現状変更」への警戒:ロシアの行動は、台湾海峡を含む東アジアの安全保障環境にも直結する。国際秩序が崩壊すれば、日本も「力」の論理に直面せざるを得ない。
・防衛力の質的転換:単に兵器を揃えるだけでなく、継戦能力(弾薬の備蓄や修理体制)や、国民の抗戦意志、社会のレジリエンス(復元力)が重要であることを示唆している。