大森望の作品一覧
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「大森望」の「三体」「息吹」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
京都大学文学部英文科卒。『タイタンのゲームプレーヤー』(フィリップ・K・ディック)、『時間衝突』(バリントン・J・ベイリー)など数多くの翻訳を手がける。『ニュースの時間です』、『商人と錬金術師の門』の翻訳により、第36回、第40回星雲賞海外短編部門を受賞。
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Posted by ブクログ
断片的に時系列や場所が変わり、慣れない中国人の名前が山ほど出てくるので、全体像を掴むのが難しかった。
文化大革命で物理学者の父を同じく物理学者の母が告発し、処刑されるところを目の当たりにした葉文潔。その後も田舎の労働所?で働かされ、心を通わせかけた人にも裏切られ、人類への圧倒的な絶望感を募らせていく。半ば幽閉に近い形で仕事することになった天文軍事基地では、太陽を電波を増幅させる鏡のように使い、他の文明に地球を変革してほしいと訴えるメッセージを送ってしまう。
絶望感が、なぜ国に向かず人類全体への憎悪に直結するのか、謎。学もあるんだから、普通は国を出る発想になりそうだが‥
石油会社の御曹司ながら環境過激派のエヴァンズの場合は、その辺りがなんとなく理解できた。
もう1人の主人公はナノマテリアル研究者の王ミャオ。基礎研究の有力科学者達の自殺が相次ぐ中、王ミャオもある日突然、目の前にカウントダウンのような数字が見えるようになる。
並行して、3つの太陽により過酷な環境で文明を発達させる奇妙なゲーム、「三体」に参加することになる。三体世界では、気候や温度が安定せず、文明はは比較的温暖な恒紀(ただし、いつ終わるかは誰にもわからない)で発達し、突然訪れる乱紀には滅亡し、を繰り返していた。乱紀には、個体は死滅するか脱水して倉庫に入れられることを繰り返し、200回近く勃興を繰り返しながらも着実に進化を遂げていく。
やがて、ゲームの「三体」は、葉文潔が発信した電波を受け取り、環境の安定した楽園のような地球を乗っ取ることを目論む三体文明を模したものであり、三体文明によって人類を管理してもらう/滅ぼしてもらうことを望むETOという組織が、同じ志を持つ者を集めるためのものだったことがわかる。ETOの象徴的人物が葉、資金源と実働上のリーダーがエヴァンズ。
三体文明との交信はETOのみを通じて行われ、その拠点は洋上に浮かぶ巨大な船「審判の日」号にあった。地球を守りたい勢は、交信内容を奪取するための大胆な作戦に出る。王ミャオのナノマテリアルワイヤーを、審判の日が通る日にパナマ運河0.5メートル間隔に仕掛け、乗務員もろとも輪切りにし、データを奪取する。
そこには、
葉のメッセージを受け取った三体文明は地球をはるかに凌駕する文明を築いていること、
それでも乱紀に怯え新たな移住先の惑星を探していること、
三体文明が地球に到達するまでの400年間に地球文明が三体文明を追い越さないように陽子に11次元のスーパーコンピュータを埋め込んだ智子(ソフォン)を送り込み、地球の文明の発達を妨げさせていること
三体人は思考を隠すことができず、人類の「嘘をつく」という能力を恐れていること
などが記録されていた。
三体人はもはや自らの存在を隠そうとせず、全人類の網膜にこう表示させる「お前達は虫ケラだ」
王ミャオらエリート達が絶望する中、無学だが勘も頭もよく回る警察官「大史(ダーシー)」はイナゴの害に苦しむ畑を見せる。「人間と虫ケラの知性は隔たっているが、それでもなお人間は虫ケラに悩まされている」
人間と三体人が簡単に言葉の壁を超えてコミュニケーションを取れてしまう点や
11次元の陽子に全地球を監視できるほどのスパコンを詰め、わずか数年で地球に到達させられるほどの文明なら、とっくに三体世界を脱出できるのでは‥と多くの違和感があったが、細かい点は気にせずぐんぐん読み進めるタイプの作品。話のスケール感やダーシーの人物造形など、日本や欧米の作家ではない異質性を強く感じた。
文系なのでどこまでがサイエンスでどこまでがフィクションなのか、次元の話など何を言っているのかさっぱりわからないところもあったが、大筋がわかれば気にしなくてOK。
続きが楽しみ。