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Posted by ブクログ
自分は元々キルラキルは好きな作品だったが、本作へはキルラキル経由ではなく、ベイリー経由で偶然たどり着いた。長年色々追っていると、こういう偶然が出来て面白い。
読後感を振り返るとまるっきりキルラキル。服がテーマってなんだよ?という、多少穿ったような、本当に面白いのか?という疑問も抱きながらの読み始め、荒唐無稽でありながらもグイグイ引き寄せてくる構成に徐々にハマっていき、最終的には秀逸なオチに唸る。振り返ってみると見事としか言いようがない作品で驚くに至る。なるほど、中島かずき氏が本作の影響を受けた、というのはよくわかる。中島氏の視点を追体験する意味でも、読んでよかった。
Posted by ブクログ
もう記憶が定かではなくなっていたが、解説を見ると、本書はバリントン・ベイリーの初翻訳長編だったようで、『禅銃』なども翻訳はこのあと。ワイドスクリーンバロックなどといって、なんだあ大したことないじゃないかと思ったのは、短銃で恒星を破壊してしまうような『禅銃』の突拍子なさと比べると、『カエアンの聖衣』のアイディアはちょっとスケールが小さい気がしたのだ。
服を着ることによってその人の潜在能力が開化して別人のように力を発揮できるようになるというアイディア。そしてそのような服飾文明を発展させたカエアン人。物語はカエアン星系と対立するザイオード人の視点から描かれる。原題は「カエアンのガーメント」。ガーメント・バッグのあのガーメントであって、「聖衣」などという宗教がかった特別な意味はない。これは初訳のなごりであり、新訳の本書でもそれを踏襲している。問題となるカエアンのガーメントは伝説の服飾家フラッショナルの仕立てた5着のうちのひとつだが、見た目は単なる地味なスーツであり、それを手に入れたザイオードの服飾家ペデル・フォーバースはザイオード社会でのし上がっていく。
他方、カエアンとの戦端が開かれるまえの情報収集にカエアン星系に密かに調査にはいった文化人類学者の調査団一行が話のもうひとつの軸。人類が銀河に広がって千年、日本人の末裔ヤクザ坊主とソヴィエト・ロシア人の末裔が戦っている宙域を発見し、カエアン文明がこのソヴィエト・ロシア人の末裔からさらに発展したのではないかと推測する。
知性を持った線維というアイディアをアニメ『キルラキル』で使った脚本家のエッセイも巻末に。『ど根性ガエル』みたいな『キルラキル』の服はやはりアニメ的にわかりやすいが、ベイリーが知性を持った線維を考えたときにそれは喋る服ではない独特なアイディアが投入されている。
Posted by ブクログ
惑星カイアに墜落した交易船にはカエアン文明が創り上げた衣装が満載されている。情報をつかんだ密貿易集団に誘われた服飾家・ペデルは、危険を犯してその衣装を回収する。その中には、伝説の芸術家・フラショナールのスーツがあった。ペデルがスーツを手に入れたことで、ザイオード星団の運命が変わっていく…。
日本では1983年に翻訳出版。星雲賞受賞作。(本国イギリスでは1976年刊)。当時は手に取る事がなかったので、新訳版で読んでみた。壮大なスケールで描かれる本書は“ワイドスクリーン・バロック”の代表作と呼ばれる。なるほど。面白い。
ネタバレはしない。旧版の大野万紀氏の解説の一部だけ紹介するに止めよう。
【ワイドスクリーン・バロックとは、一種のサギのようなものなのかもしれない。常識的な目で見れば何の役にも立たないガラクタを、あたかも黄金のように見せてしまうのだ。そして少なくとも話を聞いている間は、それはまぎれもなく黄金なのである。SFファンとは、そういう条件づけがなされてしまった者なのだ】
…おっしゃる通りです、はい(笑)
Posted by ブクログ
なるほど、これが噂のベイリーか。ブルース・スターリングなんかと比べるとどうしても古いという感じはぬぐえないけど、これだけアイディアをてんこ盛りにされるとSFファンとしては抵抗できない。超音波が飛び交う惑星や、蝿の惑星など魅力的な設定が矢継ぎ早に出てきて、それが途中でちゃんともう一度いかされているところがなかなかいい。サイボーグ対装甲スーツの対決みたいに、これだけでもっと引っ張って欲しいというところもたくさんあるが、逆に言えば服飾文化のルーツの設定だけのためにこのアイディアを考えちゃうところがすごいのかも。
しかし、最初の展開からは、ラストの植物が宇宙を征服しようとしている、という展開はよめないよな。バカバカしいといっちゃあそうなんだけど。
Posted by ブクログ
相当変、だけど好き、な世界観。いいのか「服」で、まさか「服」が、と戸惑う私を力ずくで持っていく剛腕。この無茶苦茶で風呂敷広げすぎな世界を大いに真剣に不真面目に書く、この世界観、何かに似てると思ったら、かつて大ファンだった劇団★新感線の作家中島かずき氏が解説してた。やっぱり(笑)。何でか宇宙で全裸の集団率いるヤクーサ・ポンズ、ジャドパーとマストの交渉の場面、ふざけすぎて逆に意味があるのかと思ってしまったし、ザイオードの秘密結社の秘儀の場面の描写とか、もう新感線でした。アマラとエストルーとウィルス船長のトリオも味があるな…。後半やや失速した(というか、カストールと蠅の惑星の場面がさすがにきつくてそのあたりからついていけなくなった)ところもあるが、満足感高いSFでした。
Posted by ブクログ
人類が宇宙の星々へ飛び出し、新たな文明を切り開いた時代の話。カアエン人という服飾文化を奉る人々がいた。彼らの存在を異端および脅威とみなしたザイオード星団の人間は、カエアン人を仮想敵とみなし、弱点を探るべく調査団を送る。そのいっぽうで、高価格で闇取引されるカエアン製の衣装を密輸するザイオード人の悪党。彼らの陰謀に巻き込まれ、さらにカエアン製の衣装の秘密にせまることになるひとりの「服飾家」。
衣装が人を操るという発想だけでも面白いのに、さらに踏み込んで衣装の材料となるとある植物に知性があって、彼らが人類の制覇を狙っているという設定がぶっ飛びすぎている。
アイデアの面白さはそれだけではない。カエアン製の衣装を満載した船が墜落したという惑星は「インフラソニック」恐竜(強力な低周波で敵を粉砕する)がいるため、専用の防護服が必要だとか、一生をロボットスーツの中で過ごし、ロボットのボディを本物の体だと認識するソヴィヤ人、彼らの敵として登場する、肉体を改造してサイボーグ化することで宇宙に適応した種族。他にも使い捨ての面白すぎる小ネタ満載で、湯水のようにネタを使い捨てにしながら力強く本筋が展開してゆく。この手の小説を「ワイドスクリーン・バロック」と呼ぶという。
アイデアの展開が主眼になっているせいか、キャラクターはあまり作りこまれていない。主役級の服飾家ペデルにしても、社会学者のアマラにしても、話をすすめるための駒のような扱いだ。あたかもフラショナール・スーツに操られた人々のように。
かろうじて人間臭さがにじみ出ているキャラクターといえば、悪党の頭のマストと、これはある意味皮肉かもしれないが、ロボットスーツの肉体を持つソヴィヤ人のアレクセイぐらいだったりする。
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