越前敏弥のレビュー一覧
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マイクル・コリータ『穢れなき者へ』新潮文庫。
初読み作家のハードなミステリー・サスペンス小説である。
なかなか読ませてくれるではないか。何よりも、あってもおかしくはない、べたべたとした男女の恋愛関係など一切排除し、島を蝕む悪の正体に向かい物語が突き進んでいく所が良い。
メイン州のサルヴェーション・ポイント島の沖で、対立する上院議員候補2人を含む7人の惨殺体がヨット上で発見され、第一発見者のイズレル・パイクがイズレルの父親の弟で保安官補のスターリングにより殺人の第一容疑者とみなされる。
イズレルは10年前に実の父親を殺した罪で収監されていたのだが、州警察の女性警部補ジェン・サラザールにより釈放され、彼女から密命を受け、問題のヨットを監視していたのだ。
一方、サルヴェーション・ポイント島の近くの別の島で、12歳の少年ライマン・ランキンがアルコール中毒の父親から逃れるために忍び込んだ廃屋の中で、手斧を手にし、傷付いた謎の娘と出会う。
スターリングによる復讐とも取れる厳しい捜査の手が迫り、島の住人たちからも襲撃を受ける中、イズレルはライマンと出会い、大量殺人事件の理由と島を蝕む悪の正体を知ることになる。
本体価格1,150円
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ファーブル昆虫記は子供向けのを読んだことがあったが、何故かシートン動物記は未読。完全に忘れていたのだが、偶然見かけて手に取ってみた。
結果、大当たり。解説にある様に子供向けの、人と動物のふれあい等という話では無く、徹底したリアリズムに基づくドキュメンタリーと言うべき内容。翻訳も更にその魅力を高めているし、シートン自筆の挿絵がまた美しい。
思うに、シートンは動物をひたすら観察し続け、共に生き続けて来たのだろう。だからこそ、実際には見ていないはずの光景すらもまるでその場にいたかのように、動物の心理すらも描き出すことが出来たのだと思う。動物をただ可愛い可愛いでは無く、人間と同じ存在として冷静に捉えたからこそ出来た事だと思う。
個人的には、動物のお医者さんと同じだと思う。あちらは冷静な観察をユーモアに包んでいるが、変に媚びたり可愛いだけで終わらせたりしていないのは同じ。
人間も動物も、等しく自分たちのために生き、自分たちの善をなして生きていく。そこには善悪はなく、それがぶつかった時だからこそ悲劇が起こることもあり、それもまた善悪の範疇の外。そこが淡々と描かれていて、説教臭いところが無いのが良い。とは言え、何処となく人間の欲深さに呆れているように思えるのは気のせいか。
個人的に好きなのは、スプリングフィールドのキツネと、サンドヒルの雄ジカの足跡。キツネの方は、本当に動物にこんな気高い哀しい選択が可能なのかと疑うほど。でも嘘とは思えないのが凄い。
雄ジカの話はただ美しい。ラストシーンが目に浮かぶよう。まさに、「これは黄金の日々」と言う言葉がぴったりだった。 -
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読みはじめから面白くて、最後まで興味は尽きませんでした。本書には短編8作がおさめられ、原文に忠実に訳されており、大人向けです。シートンが描いた挿絵も入っています。
野生動物の生態が面白いだけでなく、人間と動物の知恵比べにも夢中になり、いつも動物の方を応援してしまう自分がいました。
語られるエピソードのひとつひとつが、深く記憶に残るものでした。
・愛する妻が殺されたのを知らずに、探しまわる夫のオオカミの姿
・死んだふりをすることで敵をおびき寄せる、母ぎつねの賢さ
・人間に捕獲されてしまった子ギツネに対する母ギツネの行動には、ドキッとさせられました。“これが野生動物の真の姿なんだ。こんな愛情の表し方があるんだ。”
・雄のハトが伝書バトとして働いている間、他の雄のハトに気を許して不倫関係になるも、素知らぬ顔の雌のハト
最後の短編は、主人公の言葉で締めくくられています。この言葉に込められたメッセージ、深く深く心に沁みました。
何度も繰り返し読みたくなる作品ばかり!(私は、伝書バトとシカのお話が特に好きです。)
腰前敏弥さんの訳、おススメです。
〈目次〉
ワーブ 灰色グマの一代記
暴れ馬のコーリーベイ
オオカミ王ロボ
スプリングフィールドのキツネ
マガモの親子の旅
だく足の野生馬(マスタング)
アルノー ある伝書バトの物語
サンドヒルの雄ジカの足跡
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この本は確かアガサクリスティの文庫を読んだときに巻末に載っていて面白そうだと思ったので読んでみた。他のアンソロで「後ろを見るな」だけは読んだことがあったけど(もちろんそのアンソロでも一番最後に収録されていました)他の短編も総じてクオリティが高く面白い!
一見どういう意味…?という短編もありますが、じっくり考えてみると意味が分かって後からじわじわと怖さが来る作風が特に好みでした。
以下お気に入り作品。
「叫べ、沈黙よ」
駅で電車を待つ男。そばに座っている男はどうやら耳が聞こえないらしい。駅員が語るその男の罪とは。
これ最初どういう意味?と思って何回か読み返してるうちに理解して、ぞっとした。真相はわからないところがまた闇深い。
「背後から声が」
妻との喧嘩の末「あたしを捨てるなら殺してやる!」と言われ、背後から追ってきた妻を逆に刺し殺してしまう夫。
なんとも皮肉な結末。悲劇だけどちょっと滑稽。
「闇の女」
とある下宿屋にやってきた謎の女。夜中も電気を消して部屋から出ようとしない。近くで起った銀行強盗の犯人一味なのでは?と女主人や下宿人は疑いだすが…
これは面白いミステリ。最後のオチもなるほどな!となった。
その他にも、新婚夫婦が破格の値段で手に入れた家はいわくつきの物件だった「真っ白な嘘」駅の待合室で居合わせた男が近くの精神病院から脱走してきた殺人犯なのでは?と疑う男の話「危ないやつら」などはまるでコントのようなすれ違いからの結末が面白い。
そして言わずもがなの「後ろを見るな」や「町を求む」は、他人事として読んでいるうちにいつの間にかこちらに銃口を向けられたようなヒヤリ感が最高でした。
SF短編集も出ているようなので、そちらも読んでみたい、 -
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ハワード・ヴァン・ホーンは夢遊病に悩まされていた。その日も見ず知らずの安宿で目覚める。シャツには血がついている。死ぬことも考えたハワードだが、この街に住む旧友エラリー・クイーンを訪ねた。
エラリー・クイーンは推理小説作家で、NY市警警視の父の捜査協力して素人探偵としても名を挙げていた。二人は10年ぶりの再会だった。
エラリー・クイーンはハワードから相談を受ける。夢遊病の時になにかしているのではないか?
ハワードの邸宅はライツヴィルにある。父親は富豪で「父」たる器量を持ったディードリッチ、父の弟で陰険なウルファート、二人の母親で時間の止まったような老婦人クリスティーナ、そしてディードリッチの若妻サリー。
エラリー・クイーンは、サリーに魅力を感じ、包容力のある実業家ディードリッチの歓迎を快く感じる。だが何かが起きそうだ。
そしてハワードからある相談を受ける…。
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これは、探偵小説としての犯人探しだけでなく、探偵が直面する問題、探偵が常に考えなければいけない問題に向かい合っている。
いままでも探偵が事実を公にしないことはたくさんあった。しかしエラリー・クイーンが直面したのは、もっと根本的な、人間というもの、そんな人間にどのように対面するのかという問題だ。事件は解決させたものの、エラリー・クイーンの探偵としてのアイデンティティを揺るがしたこの問題。
エラリー・クイーンがこれにどういう答えを出したかは、次作「九尾の猫」でわかるようなのでそれも読まなきゃいけないではないか。 -
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ネタバレいや、面白かった。名作と呼ばれるものは食わず嫌いぜすに読んでみるべきだなと思った。
サンティアーゴが魚を見つけることができるのか、仕留めることができるのか、無事に帰ることができるのか、はらはらしながら読み進めた。
途中の自分への問いかけが哲学的でとても考えさせられた。
特に、印象に残っているのは魚を仕留めた終盤の内省である。
“だが老人は、自分のかかわるあらゆることを考える性分で、いまは読むものもラジオもないので、あれこれと思いをめぐらし、罪について考えつづけた。あの魚を殺したのは、自分が生き長らえるためと食い物として売るためだけだったのではない、と思った。殺したのは自尊心のためであり、それは漁師だからだ。やつが生きていたときには愛していたし、死んだあとも愛していた。愛しているなら、殺しても罪にならない。それとも、むしろ重い罪なのか。”
人は時に(というか常に)、自尊心のために大きなものを得ようとしている。海でひとりで戦っている中で、こんなにも孤独で自分のアイデンティティがゆらぐ問いを考え続けられたなと、サンティアーゴに対して思いを巡らせてしまった。
人生は無常だけれど、芯を貫く生き方がかっこいいと思う。
また、自分は逆に音を常に聞くことで考えすぎてしまい、人生の孤独な問いにたどり着くことから身を守っているのではないかと思った。
今回、たまたま宿に角川文庫、そして自分が買った新潮文庫両方の訳があったので途中から角川文庫の方を読んだ。そしてそれぞれの解説を読んだ。
少年の年齢など人それぞれで正解はなくていいじゃないかと思う。しかし、しっかり熱い思いで持論を主張しているのを読むと、ここまで議論を引き起こすことができる本だからこそ名作と言われるのだろうと思った。
哲学的な問いと余白によって読者が色々と深読みできる面白さがある。
もう何冊かヘミングウェイを読んでみたいと思った。次はアフリカの緑の丘を読んでみたい。そしてこの本は年を重ねたのち、また読みたいと思う。
新潮文庫の後書きには、ヘミングウェイの年表とともに同時代の映画や本の名作が記載されていてすごい時代だったんと感じた。 -
Posted by ブクログ
ロンドンアイと呼ばれる巨大観覧車に乗ったいとこが消失(一周しても降りてこない)どこに消えたのかを主人公の二人が追う。
子供が小学校高学年になったら読むかな?
と思って単行本を買おう買おうと本屋に通ってたもののいつのまにか消えてしまい…
文庫化でようやく入手、大人が読んでも面白い。
複雑なものを読みすぎてきたので、ストーリーの線はシンプルな構造と感じるけれど、主人公と姉のコンビのキャラクターが良くて読んでしまう。
ちゃんと仮説を用意して、一つずつ潰していく方法で推理するのだけどワープや自然発火による消失など突飛な案もいったん挙げるテッドの頭の柔らかさ(別の固さもあるけど)がいい。
アストリッドとラファエルというドラマを見てるので、テッドを見てるとアストリッド(テッド同様障害を持つが高度な推理力を持つ)を思い出すし、解説文にアストリッドの名前が出てきた時は嬉しかった。 続編は絶対読む。