越前敏弥のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレライツヴィルでの事件を扱うエラリー・クイーン。三作目。
大富豪とその若い妻、そして義理の息子、三人に瑣末な事柄までを解決して欲しいという探偵。読む側にしてみればそんな事まで引き受けて!と怒りたくなる。我らがクイーンが、なんと宝石泥棒の謗りも受け…
でも、殺人事件にまで事態は悪化して、まさかの『十戒』にまでその構想は至る。
クイーンの推理が冴え、謎が解き解され…
そして一年後、クイーンは再びライツヴィルを訪れ、自分の推理が操られていた事を真犯人に糾弾する。
結末、納得いかないけれど美学なのか。
読んでいる最中はその推理力を堪能したけれど、そしてその中心人物の懐の深さ、寛大さに感動もしたけれどなんとなんと!
事件の奥深さに驚くばかり。これが1959年、本邦初翻訳だなんて60年以上前のミステリーの質の高さに驚き。 -
Posted by ブクログ
ネタバレリーマという女性をこのお話の中でどういう風に動かすんだろう。それが、私の一番の興味でしたね。最後まで読んでみてどうだったか。始めから終わりまで出続け、途中で呆れながらも(君がエラリイに餌を与えたんだろう?と)、そううまくはいかないんだなあと思ってみたり。
エラリイはほろ苦さと喜びをぐちゃぐちゃにしながら、半ば周囲を敵に回すように事件に取り組んだわけですが、なりふりかまわず真実を求めようとする姿は、痛々しさもあり、気がちがったように尋問する姿にはスポーツに取り組む汗臭さすら感じました。見立て引き摺り込まれたのか、それとも見立ての職業の連続性(風が吹いたら桶屋的な)が絶妙なのか!
国名シリーズも何作か読んでるんですが、このお話を経て、はじめてエラリイが好きになったかもしれない。クイーン警視から離れたエラリイのほうが自由なのかもなあとか、思ったりも。ライツヴィルシリーズ、他にも読んでみたいです。 -
Posted by ブクログ
一九四五年発表の作品。デイヴィー・フォックス大尉ーー何人もの日本兵を叩きつぶした「英雄」ーーの凱旋を、ライツヴィルの人々が華々しく歓迎する場面から物語は始まる。しかし実際のところ、彼は戦場で心を壊してしまい帰還したのだった。ミステリー作家として、殺人事件が核となる娯楽小説をずっと書いてきたクイーンだが、戦局が激しくなってきて、改めて「人が人を殺すとはどういうことか」をきちんと示したかったのかな…と思わせる冒頭。
後半でも、ナチスの強制収容所の話が出てくるが、それ以外はいつもの謎解きエンタメ性バッチリ。ドラマツルギー的にだいたいこういう筋書きだろうなあとは予想ができるものの、どうやってその結論にたどりつけるのかはさっぱりわからなかった。そこへ、エラリーの推理でピシッパシっとパズルのピースが埋まっていく快感はやっぱりたまりません。
私は今『ダブル・ダブル』の新訳発売に向けて、先延ばしにしていた未読のライツヴィルシリーズを今こそ読まなきゃ〜と焦っているところ。それでも、唯一読んでいたが忘れかかっていた『災厄の家』を読み直してから臨んで良かった。懐かしい面々がたくさん登場するので、エラリーと一緒にライツヴィルに戻ってきたかのような気持ちになれます。デイキン署長、マーティン判事はもちろん、エミリーン・デュプレさえ愛おしくなる不思議。
ニューヨーク組のパパ・リチャードとヴェリー部長刑事も、出番はほんのちょっとながらいい感じで出演してくれるのも嬉しい。巻末解説に「裏ベスト」なんて言葉もあったけれど、確かに確かに、エラリー初心者には響かずとも、エラリー作品に愛着のある読者にとってはかなり満足度の高い一作なのでは。好き。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエラリー・クイーンの1942年発表の本、その新訳。
災厄の家、という話かと思ったら、災厄は町全体、その人々。
銀行家のライト氏の美しい3人の娘たちと、
偶然訪れた小説家、エラリー・クイーン(?都合良すぎ!)アメリカの田舎の富裕層の家庭が、推測ではあるけれど垣間見られて、長閑で平和だけれど悪意に満ちた物見高い庶民達の噂話が大きくこのストーリーを左右している。だけど、年代をみたら大戦前夜。
この町も国も、そして我が国もやがて時代の大きな波に飲み込まれてゆくんじゃないですか!
アメリカという大きな国のまた、その一部をみつけてしまった -
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あまり日本では翻訳されていないのだが、どの作品も外れなし。オーストリア人だがイギリス在住経験もある著者ロボサムは、北欧ミステリーにも似たキャラクター中心の決め細かさを備えた文句なしにおススメ作家である。このレベルで安定して走り抜けている作家なので、本来もっと読まれる需要はあるはず。未訳作品の日本市場での販促は本邦の出版社一同に、是非とも加速化して頂きたい。
さて本書は前作『天使の嘘』シリーズの続編である。前作では特異極まりないヒロイン。嘘を見破る特殊な能力を持つイーヴィ。死体と一緒の塒で生き残っていたのを幼児の時に発見された出生不明の少女イーヴィーの魅力と謎の部分は、本作である程度解明されてゆくことになる。
無論、イーヴィとのコンビであるサイラス。家族全員を狂気の兄に殺害された無残な事件の生き残りであり、臨床心理士であるサイラス。彼の造形も本作ではまた深まってゆく一冊となっている。前作読者であれば垂涎ものの何とも楽しみな一冊である。
例によってイーヴィとサイラスという二人の語り手による物語運びは前作同様、巻置く能わずのリーダビリティ。何より生を求める傷ついた二つの心の成長の物語であり、愛を求める彷徨のドラマであるように見える。熱さでいっぱいの魂の叙事詩だ。
特に最終章は、泣けること請け合い。三作目続編もあるとのことだが、ここまでの二人の主人公の過去を清算に運び込む物語は、本作までの二作で、一端完結する。ただ、ここまで魅力的な二人の主人公をここで使い捨てしてしまうのもなかなかもったいない。これだけのオリジナリティを持った印象的なキャラクターはそうそうないはずである。
なのでシリーズ続編という三作目も、首を長くして待ちたいと思う。また本主役コンビのみならず、未読独立作品もこの作家は是非読まねば。ロボサム、の名は、ぼくの熱気の中核に、永遠に刻み込まれてしまったと思う。 -
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あまり日本では翻訳されていないのだが、どの作品も外れなし。オーストリア人だがイギリス在住経験もある著者ロボサムは、北欧ミステリーにも似たキャラクター中心の決め細かさを備えた文句なしにおススメ作家である。このレベルで安定して走り抜けている作家なので、本来もっと読まれる需要はあるはず。未訳作品の日本市場での販促は本邦の出版社一同に、是非とも加速化して頂きたい。
さて本書は前作『天使の嘘』シリーズの続編である。前作では特異極まりないヒロイン。嘘を見破る特殊な能力を持つイーヴィ。死体と一緒の塒で生き残っていたのを幼児の時に発見された出生不明の少女イーヴィーの魅力と謎の部分は、本作である程度解明されてゆくことになる。
無論、イーヴィとのコンビであるサイラス。家族全員を狂気の兄に殺害された無残な事件の生き残りであり、臨床心理士であるサイラス。彼の造形も本作ではまた深まってゆく一冊となっている。前作読者であれば垂涎ものの何とも楽しみな一冊である。
例によってイーヴィとサイラスという二人の語り手による物語運びは前作同様、巻置く能わずのリーダビリティ。何より生を求める傷ついた二つの心の成長の物語であり、愛を求める彷徨のドラマであるように見える。熱さでいっぱいの魂の叙事詩だ。
特に最終章は、泣けること請け合い。三作目続編もあるとのことだが、ここまでの二人の主人公の過去を清算に運び込む物語は、本作までの二作で、一端完結する。ただ、ここまで魅力的な二人の主人公をここで使い捨てしてしまうのもなかなかもったいない。これだけのオリジナリティを持った印象的なキャラクターはそうそうないはずである。
なのでシリーズ続編という三作目も、首を長くして待ちたいと思う。また本主役コンビのみならず、未読独立作品もこの作家は是非読まねば。ロボサム、の名は、ぼくの熱気の中核に、永遠に刻み込まれてしまったと思う。 -
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翻訳家、越前敏弥さんのエッセイ。
二〇二〇年、「なんだか日々疲れるから夢中に読書をして癒されたい」という思いからエラリー・クイーンを読み返そうと決めたとき、越前さんは「エラリー・クイーン作品の新訳をしている人」として私の人生に登場した。それまで翻訳者の名前など気にしたことがなかったが、越前さんがこの新訳にまつわるあれこれについて語るトークイベントのアーカイブ動画を見つけて視聴したらとても楽しかったので、「気になる翻訳家」としてばっちり胸に刻まれた。
そして同じころにたまたま見つけて読んだ、『世界物語大事典』(二〇一九)というファンタジーやSFに重きを置いた文学事典の翻訳者も、偶然にも越前さんだった。この事典に収められた系統の作品が私はけっこう好きだと自覚したので、その後この事典をきっかけとしていくつかの翻訳作品を読み、楽しんだ。
これまでなんとなく「翻訳ものってなじみにくい」という印象を少なからず持っていたのだが、そういうわけでここ最近急激に翻訳作品づいている。しかも例の動画視聴のおかげで、「そういえば今まで当たり前のように思っていたけど、ほにゃらら語で書かれたこの作品を汗水流して日本語に訳した人がいるんだ」ということを、今さらながら強く意識して読んでいる。
と、このように、私にとっては翻訳作品を読む楽しさに目を開かせてくれた張本人である越前さんの翻訳業四方山エッセイが、面白くないわけがない。どんな仕事なんだろう?舞台裏は?修業時代は?そのさらに前史は?同業者は?といった興味がほどよく満たされ一気読み。特に印象に残ったのは、邦題の決め方(特に『夜の真義を』)、『思い出のマーニー』の超短期翻訳プロジェクト(華麗なチームプレーに感嘆、と同時にどんな仕事も肝は同じ?という親近感も)。
誰の訳は好きだとか素晴らしいとか言えるような見巧者の域に達する日がくるかどうかはわからないが、翻訳者がいて翻訳してくれていることがなんと有難いことか!それだけで幸せ!という思いを持ってこれからも楽しく生きていけそうです。
(それから、翻訳そのものの話ではないが受験勉強についての話も胸に刺さった。努力したという経験が大事、と。。。)