越前敏弥のレビュー一覧
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19世紀のエセックスと20世紀のカリフォルニア、二か所に存在する謎めいた「ターングラス館」でそれぞれ起こる事件を描いた本作は、「テート・ベーシュ」と呼ばれる造りの本になっています。各章を読み終えるごとに反転する物語の構成はとても凝っていて、これは是非とも紙書籍で読むべき一冊です。どちらから読むことも可能ですが、個人的にはエセックス篇→カリフォルニア篇の方がよいんじゃないかな、と思いました。実際正当な向きとしてはこっちが正しいかな?
ガラスの牢獄に閉じ込められた女性を巡る物語であるエセックス篇は、時代背景もあって幻想的な雰囲気に彩られています。一族の因縁の物語、そして見事な毒殺トリックに驚愕させ -
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ネタバレ決闘の介添人を頼まれたエラリーは、銃の実弾を空砲にすり替えることで流血沙汰を回避しようとする。しかし何者かによって再び実弾にすり替えられ、片方が死んでしまう。弾丸をすり替えたのは誰なのか。遅々として捜査が進まない中、さらなる事件が発生する。
引き鉄を引いた人間はわかっているのに、被害者を死に至らしめた犯人はわからないという状況が絶妙。登場人物の癖の強さはシリーズ屈指。レギュラーメンバーの警視やヴェリーも大活躍。ヒロインのシーラも、ラスト含めて素晴らしい。
捻れた事実を解きほぐして真実に辿り着く過程が爽快。特に、サーロウのチャーリーに対する「殺してやる」の意味に驚嘆。 -
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ネタバレ天才未来学者とAIによる壮大な自作自演。
人類誕生はエントロピーで説明できるからやっぱり神様なんていなかったよ。人類はサイバー化していくよ。全部スーパーコンピュータで計算できたから正しいんじゃないかな。生い先短いからAIにやりたいようにやらせたら、最高のプレゼンが演出できて、ついでに気に入らない連中を破滅させてくれたよ。オブラートに包んだからそんなに悲観しなくてもいいよ(意訳)。
エントロピーは揺らぎによって挙動を変えるけど、結局その揺らぎは自然発生するのか超自然的力によるものか、という議論になりそうな。AI無双になるとミステリーは何でもありになってしまうな。宗教のタブーは、日本人の宗教観 -
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ネタバレ■普通に面白い
ヤングアダルト向けの作品を得意とし、賞を取りまくっている作者による唯一の本格ミステリ、とのことだが、普通に面白い。
文章は読みやすく、登場人物も少なく覚えやすく、キャラクターも立っており、状況もプロットも超シンプル。それでいてしっかりヒントや伏線がちりばめられ、無駄な描写もなく、1日で読めてしまう。
こういう作品は普通に好み。
■古典
現代作品であるにも関わらず、そのトリックは古典そのもの。「変装(して出てきた)」というのは、もはや古典のパターンであり、現代作品でもそれが踏襲されているのを見ると嬉しくなる。
「超シンプルなプロット=観覧車に乗って消えた」というのは本 -
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-あらすじ-
主人公テッドのいとこサリムがロンドンに訪問してくる。
テッドと姉のカットはサリムと共にロンドンで有名な観覧車"ロンドンアイ"に訪れるのだが、そのロンドンアイに乗ったサリムがそのまま姿を消してしまう。
密室の観覧車で何が起こったのか?
この不可解な事件を、アスペルガー症候群(物語上表記はないが恐らく)を抱えるテッドがカットの協力の元、独自の視点と論理的思考により真相に迫る物語
-感想-
テッドの普通とは違う視点や思考が事件解決に導くのだが、普通ではないいわゆる変わり者ということが欠点ではなく、強みとして書いていることに作者のメッセージを感じる。
姉のカットが時 -
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ネタバレアリストテレスはキャラクターより出来事のほうが創作に芸術的技巧を要し、観客にも大きな影響を与えると考えていた。この考え方は二千年にわたって幅を利かせていたが、セルバンテスの『ドン・キホーテ』以降は小説がストーリーのおもな表現媒体へと進化し、十九世紀末になると、執筆に関する本の著者たちがアリストテレスの上位ふたつを入れ替えて、読者がほんとうに求めているのは印象に残るキャラクターだと主張した。彼らに言わせれば、プロットにある一連の出来事は、作家がキャラクター達を並べて掛けておく物干し綱にすぎない。
この考え方では、プロットを物理的、社会的な平面で展開する数々のアクションやリアクションと見なす一 -
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ライツヴィルものの第4作目。クイーンは、執筆中だった「インド倶楽部の秘密」でやろうとしたプロットをクリスティの「そして誰もいなくなった」に先を越されてしまい、そのプロットを「ダブル・ダブル」で使ったといわれている。
ニューヨークのエラリーのもとに届く匿名の手紙。郵便物はライツヴィルで起きる事件の新聞記事だった。病死した隠者、自殺した億万長者、失踪した飲んだくれの物乞い。そこへ父親の失踪を調べてほしいと魅力的な娘リーマが訪ねてくる。エラリーがライツヴィルを訪れ、事件を調べるうちに関係者の死が続き、この事件がマザーグースの童謡に合わせて起きていることに気づく。
この話の前半の主役は妖精のように -
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ネタバレ残忍なハサシンを前に、もはや絶望しかない。感想を書くのももどかしいほど、続きが気になって仕方ありません……!
それにしても、一体作者の頭の中はどうなっているのでしょうか。
ここに書かれているのはほんとうのこと?と調べたらうっかり重大なネタバレを踏みかけてしまい、もうこうなったらダン・ブラウンを信じて最後までついていきたいと思います。
枢機卿の最期はどれも凄惨極まるものですが、私が「フィクションでよかった!!」と思ったのは保管庫のシーン。
書棚をドミノ倒しにしてガラスの壁をぶち破るなんて、映像化されたらさぞ映えるでしょうが、どれだけの貴重な図書が失われたかと思うと……((;゚Д゚))ガクブ -
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突然ですが、皆さまは今話題の映画『教皇選挙』ご覧になりましたか?
口コミの評価の高さを聞いて事前知識なしで鑑賞したのですが、明快なストーリー、神秘的な舞台裏、荘厳な舞台美術……いやはや、圧倒されました。好評につき現在も上映中ですので、機会がある方はぜひぜひ。
さて。そんな『教皇選挙』のレビューを眺めていると、この『天使と悪魔』を思い出している方がちらほらおりまして。
以前読んだ『ダ・ヴィンチ・コード』もかなり面白かったので、この機会に!と上中下3冊ぽちったわけです。
開幕からシュタゲで知った「セルン」が出てきてテンションが上がっていたら、そこから核弾頭の何倍もの威力を持つ反物質が盗まれ、ま