野中郁次郎のレビュー一覧
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かなり前になりますが、野中教授が主催した社会人向けセミナーに参加したのですが、その事務局より送っていただいた本です。
本田宗一郎氏関係の本は「夢を力に」をはじめとして何冊か読んでいるのですが、やはり何度振り返っても刺激になりますね。 本書は、本田宗一郎氏の軌跡を辿ったうえで、知識創造理論の権威である野中教授が稀代の経営者たる宗一郎氏の思想・姿勢等について論考を加えたものです。
新たな気づきはたくさんありますが、その中のひとつ、宗一郎氏の思考の根源である「世の中にないものを生み出す」こと、それこそが、宗一郎氏が生涯追い続けた“夢”でもあったのだと思います。 -
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「全員経営」の続編みたいな感じで、事例の紹介とその「知識創造理論」による解説という構成。本のデザインも似た感じ。
基本的にはいつもの野中さんなんだけど、これは、ある意味、わたしが初めて「共感」した野中さんの本かもしれない。
これまでは、野中さんの言っていることは「分かる」んだけど、なんか再現可能性が低い感じがしていた。この本で、なんか、その辺の距離感が縮まった感じがした。
もともとのSECIモデルは、共同の暗黙知の形式知化というEのところにフォーカスがあったのだけど、これはSの部分、つまりメンバー同士の「共感」による暗黙知の共有みたいなのは、日本企業にはもともとあるという前提があったとのこと。
が、この前提が自明のものではなくなってきたので、Sの非言語レベルでのコミュニケーションにフォーカスしたのがこの本との説明で、これはとても腑に落ちた。
わたしが、野中理論に距離感を感じていたところも、「共有されている暗黙知はすでにある」という「暗黙」の前提があったからだとわかった。
「全員経営」では、誰でも知っているような大企業の事例が中心だったのに対して、こちらはやや地味かもなんだけど、今起きている変化をピックアップしたようなもので、私的には希望がもてる事例が多く、その辺もよかった。
タイトルからも分かるように、共感性とか、ストーリー性といったところを強調していて、あと、パーパスみたい言葉もでてくる。
なんとなく、ナラティヴとか流行り物(わたしもはまっているが)を取り入れてみましたという軽さもあるが、悪くはない。
でも、流行り物には止まらない新しさ、深さがこの本にはある。それは、昨年でた「直観の経営」における現象学、相互主観性という哲学的な考察が取り入れられているからだと思う。
最後の章で、この本でのインプリケーションをこれまでの優れた経営者、たとえば、本田宗一郎さんとか、稲盛さんに当てはめて、改めて共感が大事なんだという、野中さんのこれまでの本との連続性を整理しているところが、ややくどい、言わずがもな気がしたが、それはご愛嬌ということで。。。。
野中さんも随分ご高齢だけど、まだまだ進化しているな〜、と思った。 -
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野中郁次郎先生の"本質"シリーズの4冊目です。
"戦略の本質への答えは「知略」である。これは日々変化する状況下のもとで組織員一人一人の実践知によって「いま・ここ」に相応しい行動を取らせる唯一の方法である。"
知略とは、マネジメント・リーダーシップ領域の概念だと言う説明が冒頭になされている事からもわかる通り、焦点の当て方がスターリン、チャーチル、ホー・チ・ミンのリーダーシップ論に比重を置いているように思えました。『戦略の本質』でも取り上げられていた独ソ戦、バトル・オブ・ブリテンベトナム戦争が題材です。
以下、章別の気付きのサマリーです。
■独ソ戦
国防軍のモスクワに迫る戦いが加筆されています。カフカス攻略と二面作戦である大戦中最も過酷な戦いであるスターリングラード攻防戦、最大の戦車戦であるクルスクの戦いを描きます。二正面作戦の前に東部戦線がそもそも二正面作戦なので、四正面作戦と言えなくもありません(北アフリカ戦線を入れたら戦線はもっと増える)。
何とあのスターリンが敗戦から学び謙虚になっていくと言う点が意外だった。試行錯誤を繰り返した者にのみ運(無傷の補給や冬将軍など)は味方すると言う点も納得。
■バトル・オブ・ブリテン
航空戦であるバトルオブブリテンに加えて、大西洋の戦いが記載されているが、新たな発見をしたとは言い難いと感じました。
チャーチルとダウディングの"戦いの本質"を見抜く選球眼とそれによる、戦略的持久、テクノロジーの採用が、1941年までの英国の優れた行動と言う理解です。
■ベトナム戦争
ホー・チ・ミン率いる北ベトナム軍が、開放戦線及び米国に毛沢東の遊撃戦論を下敷きに戦った方法を解説しています。
『戦略の本質』を読み返してみましたが、加筆修正されていたのは、対仏国のインドシナ戦争の部分です。ベトナム戦争は、インドシナ戦争の蓄積があったが故に勝利できたと言う事です。
■イラク戦争
これは全くの新章です。ベトナム戦争の反省から確立されたドクトリンの元で完勝した湾岸戦争とイラク戦争までを描きます。
イラク戦争序盤が、純軍事的動機から行われていたのに対し、COINドクトリンを現地住民に融和的なものに改版して行った成功事例が説明されていますが、些か"何が成功要因だったのか"の踏み込みが甘いと思いました。結局、マッカーサーが日本を統治した時代に戻ってきたと言う事でしょうか。
シリーズ全般を通じて、純粋に読んでいて面白かったのは、2冊目の"戦略の本質"なので星4つ。 -
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知略とリーダーシップの本質に迫る失敗の本質シリーズの最終章。構成は前著群と変わらず、時系列かつ叙事的に戦闘展開を述べた後に、アナリシスを導出するというもの。
失敗の本質以上に、企業経営その他あらゆる勝負事に援用しやすいフレームワークにまとめてある点で、その有用性はシリーズ最終作に相応しいものと言える。
冒頭p7より引用。この部分こそが核心となる。
"軍事戦略をめぐっては従来、攻撃と防御、機動戦と消耗戦、直接アプローチと間接アプローチといったような二項対立的なとらえ方があるが、われわれは、そうしたとらえ方よりも「二項動態」的なとらえ方こそ、戦略の本質を洞察していると理解している。戦略現象を「二項動態」的に把握したうえで、情況と文脈の変化に応じて具体的な戦略を実践していくことが重要なのである。そのような戦略を、本書では「知略」と呼ぶ。" -
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ネタバレ失敗から学ぶことは多々あり、それが戦時のことであれば、生死をかけた戦略や行動であるために、更に学ぶべきことは多いと考える。ただし、完ぺきな人間などいるはずもなく、限られた情報の中で、限定合理的に行動した結果であることを念頭に置く必要がある。
・ウェーバーの価値自由原理である、ヒト/モノ/カネを効率的に利用できているかという効率性の問題と、価値の問題は分けて考えるべきというのはなるほど。そして、効率的なものが常に正当であるということにはならないというのも納得である。
・戦時において、成功した体験は、なかなか否定できない。実績が一度伴うと、それに寄りかかってしまう。必要な時には自己否定ができることが良いリーダーであり、その場合でもスピード感を持って判断できるようになるべきである。この判断のためには、大局観を持ち、真実に目を向け、新しいことを生み出そうとする思考が重要である。
・部下たちの面倒をこまめに見ることが、指揮官への信頼と親近感を増幅させる。
・これらを成すのは、体力と健康である。 -
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2部構成になっていて、1部が山口さんによる現象学の解説、2部が野中さんによる知識創造経営の話。で、2人の対談が3つという構成になっている。
現象学は何を言っているのか皆目分からない感じで、入門書も含めて、これまでできるだけ近寄らないようにしていた。
そういうなか、組織開発の哲学的基礎にはフッサールがいるという話しを「組織開発の探究」で読んで、経営との関係で現象学が解説してあるこの本はいいかもと思って読むことにした。
「直観」は、「直感」じゃないわけね。
推論などに寄らない「直接的な認知・経験」みたいな話。
つまり、インスピレーションで経営しようという話ではなく、先入観のない直接的な経験を共感しあうような経営をしようという話。
現象学というと、なんか、独我論的な印象を持っていて、個人における主観的経験がまずは重視された上で、間主観性、相互主観みたいなところに、少しづつたどりついていくという印象を持っていたが、ここでの説明では、相互主観性の話が中心というか、まず共通感覚があるので、主観が存在するみたいな説明になっていて、驚いた。
現象学はよくわかってないので、この理解がどこまでフッサールの議論に忠実なのかは分からない訳だが、フッサールだけではなく、メルロ・ポンティ、オートポイエーシスのヴァレラ、脳科学のレビットなどの議論なども組み合わせて説明されるので説得力はある。
後半は、いくつかの新しい事例紹介などはあるものの、「いつもの」野中節という感じ。
とはいえ、現象学という哲学的な考えと組み合わせることで、SECIモデルの意味がより深くなった感じはする。
あと、脇道の議論だが、ブーバーの「我と汝」の「汝」というのは、ドイツ語では、親しみを込めた二人称の訳であるというのは驚いた。
ブーバーの「我と汝」関係って、仲良い友達が、「おれ=お前」関係で共感しながら話しているみたいなことを言っていたのかな?(そういう風には受け取れなかったのだが。。。。もしそうだとすると、私は全くブーバーの議論を理解してなかったということになる) -
Posted by ブクログ
2012年7月に書かれた本で、1984年に書かれた「失敗の本質」に対して多面的な検証とさらなる考察が実施された本、「失敗の本質」はずっと読みたかった本なのですが、まだ読めておらず、先に新しい版を読むことになりました。
相応の歴史知識や、太平洋戦争時代の人物像に関する情報がもともとないと、やはり難解であるとは思うが、それなりに長い間勉強してきてから読んだので、僕にはさらに造詣が深まったと思う。
『戦場のリーダーシップ』という観点では、僕もこれまでいくつか勉強してきてましたが、「キスカ撤退の木村」や「組織人になれなかった天才参謀 石原莞爾」、「独断専行はなぜ止められなかったのか 辻 政信」など、これまで知らなかったことも新たに知ることができました。
後半には、大和特攻の伊藤長官の
「我々(大和)は死に場所を与えられたのだ」の名言による戦艦大和特攻作戦における意思決定プロセスに関しても記載あり、大変興味深い。 山本七平の『空気論』という部分も大変勉強になった。
(山本七平:『「空気」の研究』1977年)
→ 伊藤長官の論理的思考は空気で説明できない
→ 「空気」の本質を科学的に分析する
2009年度ノーベル経済学賞を受賞した、
オリバー・E・ウィリアムソンの取引コスト理論に従って分析
→ いかにして、空気に水を差すか
カントの人間学的道徳哲学を引用して「自律的な意思を実践できる人間:啓蒙された人」と
以下、引用 P277
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日本軍は、設立当初はメンバー同士が自由闊達に議論する組織であった。 ところが時間の経過とともに制度が完備され、特に人事制度が明確になると、制度上、どうすれば昇進できるのかが明確になった。 こうした状況で、昇進制度に忠実な他律的エリートたちが育成され、実権を握っていった。 (中略)
こういう他律的エリートが統率する組織では、メンバーは容易に取引コストを計算し、合理的計算のもとに全員一致で「空気」を読み取ることになる。 そして、合理的に非効率で不正な結論に導かれることなる。
この意味で、海軍は、不条理に陥ったエリート集団の典型であった。 取引コストにとらわれた人々の、他律的な意思決定に対し、一石を投じることのできる人物、それが自律的な意思を実践する「啓蒙された人」である。このようなリーダーが帝国海軍に数人いれば、組織の不条理から救われたはずである。
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