Posted by ブクログ
2019年05月31日
2部構成になっていて、1部が山口さんによる現象学の解説、2部が野中さんによる知識創造経営の話。で、2人の対談が3つという構成になっている。
現象学は何を言っているのか皆目分からない感じで、入門書も含めて、これまでできるだけ近寄らないようにしていた。
そういうなか、組織開発の哲学的基礎にはフッサー...続きを読むルがいるという話しを「組織開発の探究」で読んで、経営との関係で現象学が解説してあるこの本はいいかもと思って読むことにした。
「直観」は、「直感」じゃないわけね。
推論などに寄らない「直接的な認知・経験」みたいな話。
つまり、インスピレーションで経営しようという話ではなく、先入観のない直接的な経験を共感しあうような経営をしようという話。
現象学というと、なんか、独我論的な印象を持っていて、個人における主観的経験がまずは重視された上で、間主観性、相互主観みたいなところに、少しづつたどりついていくという印象を持っていたが、ここでの説明では、相互主観性の話が中心というか、まず共通感覚があるので、主観が存在するみたいな説明になっていて、驚いた。
現象学はよくわかってないので、この理解がどこまでフッサールの議論に忠実なのかは分からない訳だが、フッサールだけではなく、メルロ・ポンティ、オートポイエーシスのヴァレラ、脳科学のレビットなどの議論なども組み合わせて説明されるので説得力はある。
後半は、いくつかの新しい事例紹介などはあるものの、「いつもの」野中節という感じ。
とはいえ、現象学という哲学的な考えと組み合わせることで、SECIモデルの意味がより深くなった感じはする。
あと、脇道の議論だが、ブーバーの「我と汝」の「汝」というのは、ドイツ語では、親しみを込めた二人称の訳であるというのは驚いた。
ブーバーの「我と汝」関係って、仲良い友達が、「おれ=お前」関係で共感しながら話しているみたいなことを言っていたのかな?(そういう風には受け取れなかったのだが。。。。もしそうだとすると、私は全くブーバーの議論を理解してなかったということになる)