【感想・ネタバレ】全員経営 ―自律分散イノベーション企業 成功の本質のレビュー

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Posted by ブクログ 2017年06月07日

「失敗の本質」で有名な野中郁次郎の最新著書ということで、読んでみました。
(すでに今年になって2冊出版されているようですが)

まえがきから、この著書に込められた野中氏の問題意識がわかります。
”日本は(中略)あらゆるレベルで、世界に向けて柔軟に構想し、迅速に判断し、俊敏に行動していく組織能力が弱体...続きを読む化の傾向を見せていました。
また、欧米流の分析的な経営手法に過剰適応するあまり、分析過多、計画過多、コンプライアンス過多に陥るという現象が日本企業から活力を奪い、組織能力の弱体化に拍車をかけていました。”
このような問題意識のもと、彼が着目したのは近年成功した、もしくは復活を遂げたいくつかの日本企業、および組織の特徴から導き出した、
”一人一人が当事者意識を高め、実践的な知恵、すなわち、「実践知」を縦横無尽に発揮”する、『全員経営』という概念です。
その代表的な企業・組織として紹介されるのは下記8つ。非常に多くの具体事例を列挙しながら、全員経営とは何か?そのための組織のあり方、仕事のやり方などについて、示唆を与えます。

・JAL
・ヤマト運輸
・セブン&ホールディングス
・小惑星探査機・はやぶさプロジェクト
・釜石の津波防災教育
・テラモーターズ
・良品計画
・ダイハツ ミライース
(そのほか分量は少ないですが、最後の章で伊那食品工業、メガネ21、未来工業、三鷹光器、植松電機の5社についてもケーススタディがあります)

確かに、上記のいずれも企業も、社員一人ひとりが会社のためを考え、自律的に行動したことによって顧客満足や業績を伸ばしたように読み取れます。
これらの事象をベースに、著者によって概念化されたいくつかの視点が面白かったです。

1. 「ミドルアップダウン」

ビジョンや方向性を示すトップ、そして第一線の現場で実践するフロントに加え、これらの両者をつなぐミドルリーダーやミドルマネージャーが重要。ミドルがビジョン(トップ)と現実世界(フロント)の矛盾を統合していくことで新しいビジネスモデルが生み出される。

→ 現場感覚だけでは大局を見失うし、トップマネジメントだけでは抽象的すぎる故に、両者を仲介することができる能力を持ったミドルの存在の有無がキーということでしょう。

2. 「SECIモデルのサイクル」

全員経営が実践されている企業では、(野中氏の提唱する)SECIモデルのサイクルが回っている。すなわち、暗黙知が形式知される組織となっており、知識創造がマネジメントされている

→ あらゆる階層が普段から情報や経験を伝え・蓄える仕組みづくりが行われているような、質の高いコミュニケーションができているかどうかがキーだと思います。しかしながら、あらゆる階層で忌憚のない意見を言い合えるというのは、相当難しいことだとは思います・・・。

3. 「自己組織化するチーム」

組織やチーム内の管理−被管理の関係を超え、自分の役割と価値を理解し、自らを動機づけながら新たな知を生み出していく。自己組織化したチームは、主体的なコミットメントがメンバー各自の高質な経験に基づく深い暗黙知を触発する。
なお、自己組織化のためには、目標設定とストーリー作りが重要とのこと。目標設定はメンバーの誰もが「面白い」と共振、共感、共鳴するようなものであること。ストーリーは、色々な目標が有機的につながっており全体像が浮かぶ状態。各メンバーが、自分の立ち位置をストーリーに照らし合わせ、全体像の中でどのような意味、どのような価値を持つべきかを自覚できるようになる。

→ 良い目標が人を動かす、ということでしょうが、どんな目標が響くのか、というのはまさに十人十色。そこに関しては、後述する「コモンセンスの共有」ができているかどうかがキーなのだと思います。

4. 「サイエンスよりアート」

知識創造には、サイエンス、すなわち客観性やデータによる形式知だけではなく、アート、すなわち経験則や主観的な暗黙知の両面が重要。
釜石の防災教育の事例では、ハザードマップを用いた避難のルール化ではなく、「想定は信じるな」「その状況下において最善を尽くせ」、そして「率先避難者たれ」という3つの原則が教え込まれたとのこと。特に3つ目の「率先避難者たれ」は、見方によっては他人を差し置いて自分だけが助かろうとする反倫理的な原則であるが、その本質は「自分が勇気を持って逃げれば、周囲も同調する。だから自分の命を守るということは、みんなの命を守るということ」。

→ ルールや知識だけではなく、「生き方」というアートの教育を行うことで、不確実性の高いカオスな状況において状況判断する力が身につくらしい。

そして、全員経営実現の上で私が最も重要だと感じたメッセージは、その企業や組織が「何を大切にしているのか」という『コモンセンスの共有』です。社員一人ひとりが自由に行動するにしても、その企業や組織にとって「何が正しいのか」によって取るべき行動や得るべき成果は異なるはずだからです。『価値観の共有』と言っても良いかもしれません。
また、コモンセンスは「存在論」を問うものであり、存在論が共有されているのであれば、ルールや規則で統制する必要もなくなる、と述べられています。オーバーコンプライアンスの状態にある日本の組織から再び活力を与えるためにも、コモンセンスの経営を実践すべきであると具申しています。
一人の天才やカリスマ性に頼るのではなく、チームの有機的な結合により成果を出していく。全員経営は、まさに日本人が本来得意とするプレースタイルなのではないかと考えます。

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Posted by ブクログ 2015年07月25日

前半だけでOKなので再読必須!!

●JAL 同じ立場。涙。
・稲盛氏は「倒産した!」という意識が極めて希薄だったことに驚いたといいます。

・人間として何が正しいかで判断する。各人が考え、行動する

・費用の見える化。整備現場で軍手88円等の値札をはり、コスト意識を植え付ける。10円削減できた!な...続きを読むど浮いたお金を開示。


●ヤマト運輸のまごころ宅急便
お年寄りを見守るのをいつも顔を出す配送員が行うビジネスモデル。
普段からその家まで行ったので、相乗効果! 自治体と手を組んだエコシステム!!
また、その気付きがすごい。ヤマト運輸の配達員(セールスドライバー)が、普段配送している家庭のいつものおばあちゃんが元気なく、顔をみせてくれないと思ったら3日後に孤独死が発見された。
自分が最後に会った人かもしれない。
なんとかしなければ!できるかも!
俺にもできるなんかがあるんじゃないか?

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年05月31日

「全員経営」といえば、松下幸之助の
「衆知を集めた全員経営」や稲盛和夫
の「アメーバ経営」が有名だが、本書
は、欧米の分析的な経営手法の過剰な
適応が日本企業の活力を奪ったとし、
日本企業のDNAである「全員経営」を
激しい環境変化に適応する手法として
見直すべきと主張。

最近の日本でのイノベーシ...続きを読むョン事例や
成功事例を紹介し、そこに見られる
パターンを帰納的に抽出、「全員経営」
を実践する企業の特徴を論じている。

紹介事例は、稲盛さんの「全員経営」
による「JAL再生」、ヤマト運輸の
女性セールスドライバーが悪戦苦闘
の末に生み出した「まごころ宅急便」
小惑星探査機「はやぶさ」のプロ
ジェクト、東日本大震災において
津波の直撃を受けながら、小中学生
の生存率99.8%という驚異的な数字
を記録した「釜石の奇跡」等、興味
深い事例が数多く記載されている。

物語と理論を通じて、全員経営を
実践する上でのポイントがわかり易く
整理されており、非常に参考となる
一冊。

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Posted by ブクログ 2015年03月02日

JAL、ヤマト運輸他、V字回復あるいは高収益企業数社を採り上げ、その経営理念のあり方、組織運営の実相を深く掘り下げ、「全員経営」との処方箋を提示。現在における企業経営の成功の本質に近づくことのできる啓蒙的な書。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年02月11日

マニュアル経営にも良いところもあるし、裁量を持たせた全員経営にも良いところがある。
モノがあふれていて、同じような商品がたくさん出回っている世の中では、商品の差別化に加え、この人から買いたいといった観点も必要だと思う。
その中で、上司のお伺いを立ててからとか言っていたら「サービスを提供する瞬間」は逃...続きを読むしてしまうので、それぞれが考えて最適行動をする必要がある。

最適な行動をするには、どうすれば良いのか。
本書では、「何が良いことなのかという共通善(コモングッド)を持つ」ことが必要と説く。
なるほど、おっしゃる通り。
例えば、世のため人のためになること。モラルがあること。「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である」とおっしゃった二宮尊徳さん、さすがです。


また、そういった人材になるために、日々心がけ、身に着けるべき能力は、次の通り。
・直感的な状況把握
・的確な情勢判断
・迅速な意思決定
・俊敏な行動
・テンポ「質量かけ速さ」
・威力「質量かけ加速」
・精神的な要素

まず、何でもやれること。3つの得意分野を持っていること。2倍の質、2倍の量で4倍速で成長すること。
人間は少数になると責任範囲が広がり、精鋭になるんだから、考えさせ、そして行動に移させる。
NATO(no action talk only)ではだめ。口先だけで行動が伴わないなんて、インテリやくざじゃん。

そして、会社経営に関しても勉強になる。
人材は実践を通してしか育成できない。修羅場を体験し、徒弟制で自律分散リーダーを育成することが会社には必要。
会社は社員を幸せにするためにある。この考えは共感できる。やっぱり、資本を出資してくれた株主に対して働くというよりもこっちだよな。
そして、会社は永続することで社会に貢献するという指摘も納得。
また、とある旅館の方針である、客室係の声はお客様の声だから最優先で対応すること。ありません。できません。はNGとする。
お客様第一主義とはこういうことを言うんだろうな。

最後に、システム開発をする自分へ、はやぶさへの取り組みのように、作っているものに対して感情移入することが大切。
システム開発は人の子を育てることに似ているように感じる。愛情を持って、自分の最大限の知識スキルを導入してお客様のシステムを作っていく。
みんなこういった考えならいいのに。家族を持つとやっぱ難しいだろうし、人それぞれ優先順位あるもんなあ。

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Posted by ブクログ 2020年07月26日

自律分散型組織を構築する上でのヒントが満載の本書。いい会社とは? いい仕事とは? 各ケースの物語編は感動的で涙がホロリ...。まだまだ“される側”なのだと物語る力が圧倒的に弱い自分に気づく。常に考える自分でありたい!

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Posted by ブクログ 2018年12月09日

22 社内SNS
34 ミドルアップダウン
73 10の知識を1にする
73 見えてくるまで考え抜く
166 率先して逃げることが皆の命を救う
189 サムシングニュー テラモーターズ
190 NATOな日本人=NotAction,Talk Only
255 利益は経営のウンチ 伊那食品

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Posted by ブクログ 2016年01月23日

メンバー全員が自分の領域を勝手に区切らずに自律的に動き出すのが自分の理想の組織。そんな思いにヒントを与えてくれた。

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Posted by ブクログ 2015年08月27日

社員一人一人が経営者の感覚を持ちながら仕事をする。
中小企業で働いている人にとっては常日頃意識しなければならない事だと思います。JAL、ヤマト運輸、セブンイレブン等の大企業を例にどうやって”全員経営”を成し遂げられたが書かれていますが、最終章で取り上げられている企業の事例は素晴らしいです。社員の幸せ...続きを読むやノルマやホウレンソウのない会社。。。世の中には色々な企業があるものです。

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Posted by ブクログ 2015年04月08日

今までの知っている知識の再整理という意味合いを
感じる内容ではありましたが。再度いろいろ勉強に
なった本です。
事例が書かれてあって、そのあとに解説という形式で
いろいろな会社(全員経営を成し遂げられている
事例)が紹介されている本です。
こういう本(事例を参考にする本)について、いつも思うのは、う...続きを読むまくいかなかった事例とその解説。タラレバの
ポイントなどを解説する本ってないのかなあと
思います。太平洋戦争の日本軍の内容はよくありますが

○SECIモデル(組織的知識創造の一般原理)
 表出化・連結化・内面化・共同化の流れにおいて
 暗黙知を形式知に、個人と組織の間で流れを作る
○フラクタル組織の形成
○『何が(人間として)正しいか』という共通善の創出
 と共通感覚とコモンセンスの形成
○ホンダの『試す人になろう』
最後に一番あたまに残った文章
『同じ失敗を2度起こせば発見になり、安定的に繰り返せれば製品になる』!!!!

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Posted by ブクログ 2018年02月25日

ミドルアップダウンマネジメントで高名な野中郁次郎先生共著ということで期待して読んだ。
解釈編より物語編の方が断然面白い。

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Posted by ブクログ 2016年11月02日

他にも多くの言葉があるけど一番気に入ったのは「指示待ち族は指示をするから生まれる」かな。この本は、成功企業の事例が紹介されているけど、お勉強好きでない人は、"経営講義" 部分を読み飛ばし、背景がグレーの事例部分と第7章の事例部分だけ読めばいいと思う。僕には "経営講義&...続きを読むquot; 部分は難しくて読めなかったので、すっ飛ばした^^

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Posted by ブクログ 2016年09月17日

・ミドルマネジャーの「ミドルアップダウン・マネジメント」…いちばん難しい問題は、現場で実践知を発揮しながら、新しい価値や価値をもった概念を生み出し、そこからひとつのビジネスモデルを作り出して収益を結びつけること。その中で重要な役割を演じるのがミドルマネジャーやミドルリーダー。実践知にすぐれた人材の共...続きを読む通する「6つの能力」。
1)「何がよいことなのか」という判断基準を持ち「よい目的」をつくる能力を持つ
2)ありのままの現実のなかで本質を直観する能力を持つ
3)場をタイムリーにつくる能力を持つ
4)直観した本質を概念化し、物語として伝える能力を持つ
5)あらゆる手段を駆使し概念を実現する政治力を持つ
6)実践知を埋め込み組織化する能力を持つ

・人間が行う最も知的な営みである知識創造は、暗黙知と形式知が互いに作用しあい、相互変換し、それがスパイラルに循環していくなかで行われる。この知の循環運動が組織やチームで起きる場合、知識創造理論では次の4つのモードをたどる。
1)個人はまわりの世界との相互作用のなかで暗黙知を組織的に共創する(=共同化)。
2)次に暗黙知を形式知に変換する「表出化」。
3)続いて、形式知化を組織内外の他の形式知と組み合わせ、一つの体系としての新たな形式知を作り出す「連結化」。
4)こうして体系化された形式知は行動や実践を通して、新たな暗黙知としてメンバー全員に吸収され、体化されていく。つまり、形式知からまた暗黙知へと変換される(=内面化)。
この知識変換の4つのモードを共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)のそれぞれの頭文字をとってSECI(セキ)モデルと呼ぶ。この一連のプロセスが回ることで、知識は個人、集団、組織の間を循環し、より豊かに増幅されていく。と同時に知識が新しい価値として具現化されていく。これが組織的な知識創造の基本原理。

・「試す人になろう」(本田宗一郎氏の石碑)…人生は見たり、聞いたり、試したりの3つの知恵でまとまっているが、多くの人は見たり聞いたりばかりでいちばん重要な”試したり”をほとんどしない。ありふれたことだが失敗と成功は裏腹になっている。みんな失敗を恐れるから成功のチャンスも少ない。ものごとの大筋をつかんだら、まずは試してみる。失敗したら、成功するまで試せばいい。日本企業の再創造に向けた集合的実践知経営は、一人ひとりがこの言葉「試す人になろう」を胸に刻むことから始まるのだろう。

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Posted by ブクログ 2016年01月20日

かつての日本企業の強さの秘訣がこの全員経営ないし自律分散型組織だったと思うが、今はいろんな条件が整わないとこれの実現が難しい時代になった。それでもこのような組織づくりをしたい場合にどうすればいいのか、その示唆を与えてくれる一冊。 和田

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Posted by ブクログ 2015年04月05日

全員が経営者視点で仕事に取り組む、なんて無理かと思っていたけど、やり方次第だと思いました。
JALや良品計画など、具体的な会社の事例が見れて良かったです。解説記事部分は文章が難しいです。

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